事件や問題が起こった時に、法律にかかわる問題に困っている人から頼られる弁護士。ドラマなどで見ることはありますが、日常ではあまり弁護士の仕事ぶりを目の当たりにすることは少ないのではないでしょうか。先生とも呼ばれる弁護士の仕事とはどのようなものか、弁護士になるまでの道のりや、やりがいと苦労などご紹介いたします。
弁護士の仕事とはどのようなもの?
弁護士の仕事について
弁護士とは、社会正義を実現し、基本的人権を守る法律の専門家です。人は社会で生活する中で、さまざまなトラブルや争いごとなどの問題に遭遇します。一般人にとって法的なことは難しく、解決するのは困難です。弁護士は、そんな問題が起こった時にアドバイスや法的な対応を行い、問題解決のサポートをしてくれます。
- 民事事件
- 刑事事件
個人と個人、法人間の事件のは、民事事件といいます。民事事件の裁判は、事務的に行われることが多いです。
警察が介入するような犯罪などの事件は刑事事件といいます。刑事事件の裁判は、弁護士が法廷で発言する機会が多いです。
弁護士の一日
事務所によって違いはありますが、出勤時間は厳格に決められていません。また、一般企業と比べて出勤が遅いところもあるようです。一例ではありますが、弁護士のとある一日の流れをお話します。
まず出勤したら予約されていた法律相談に応じ、その後相手側の書面を作成したりその他の事件の事務処理などをします。午後からは民事裁判のため、裁判所へ移動をすることが多いです。裁判終了後は、弁護士会の会館へ移動して郵便を確認したり資料探しをします。その後事務所に戻り、裁判の判例などを調査しながら起案します。夕方からはクライアントと打ち合わせを行い、その後21時頃まで事務作業を行なってようやく帰宅です。
弁護士の年収
弁護士の給与は高いことで知られていますが、事務所によっても異なります。弁護士実勢調査によると、弁護士活動として申告した年収の中で一番高い割合は500万円~1,000万円です。また、「弁護士報酬」という弁護士の料金についてお話すると、法律相談の場合一時間5,000円に設定しているところが多くみられます。契約書の作成となると、5万円~10万円です。訴訟の場合は着手金が15~20万円ほど、報奨金は20~40万円ほどとなっています。
弁護士に向いている人とは?
真面目な人
弁護士になるのは難関と言われているように、司法試験に受かるための法律の勉強を根気よく取り組むことが必要です。真面目で努力家な要素がないと、司法試験を受ける資格さえ得る事ができません。また、弁護士となったあとも多くの細かい資料を読み、書類を作成していかなかなければなりません。手間も時間もかかる作業が多い仕事なので、真面目で根気よく取り組める性格でないとできないでしょう。
弁護士に興味がある
「好きこそ物の上手なれ」という言葉があるように、どのような仕事でも興味がないと、なかなか仕事の技術が上達することも仕事が長続きすることもありません。ただなんとなく弁護士になりたいという軽い気持ちでは、その夢を叶えることさえ難しいでしょう。それくらい難しい職業なのです。
精神的に強い
司法試験は難関で、受験資格を得てから5年間の間に3回までしか受験できません。計り知れない大きなプレッシャーを乗り越えられる精神力が必要といえます。弁護士になってからも、依頼者の大切な権利や財産、時には命までも背負って仕事をしていくので、ミスはできません。日常的に精神的な負担がかかるので、とても強い精神力が大切です。
人と対話する能力がある
弁護士には、ユーモアー溢れる話し上手な人が多くいます。弁護士という職業は対人業なので、相談にのるときや、法廷で弁護を行うとき、相手側に交渉するときなど、人と対話することが多くあります。細かい事務作業をこなす能力も大切ですが、人と対話する能力が欠けていては弁護士は務まりません。対話が苦手だと感じている人は、まずは普段から身近な人のことを理解しようという姿勢を身につけていくといいでしょう。
理想を持っている
弁護士になった人の中には、勉強が得意だから目指したという人がいます。そのような理由で弁護士になった人の中には、勉強はともかく仕事の大変さを身をもって実感し、なぜ弁護士になったのだろうと自問自答してしまうこともあるようです。どうして弁護士を志したのか、理想がなければ続けていく気力が継続することは難しいのでしょう。弁護士としての理想と覚悟をもって仕事と常に向き合わないと、続けていくことは困難な厳しい職業といえるでしょう。
弁護士になるにはどうすればいいの?
司法試験に合格しなければならない!
弁護士になるためには、弁護士資格を取得するための司法試験に合格しなければいけません。超難関といわれている司法試験は、かなりの勉強量が必要となります。
司法試験を受けるには2つのルートがある
- 法科大学院を修了する
- 司法試験の予備試験に合格する
司法試験を受験するためには、法科大学院(ロースクール)を修了し、司法試験合格後、司法修習を終了しましょう。弁護士になるための最も一般的なコースです。法科大学院は超難関なので、容易に入学することはできません。大学で法学を学んでいる人は、2年制の「法学既修者コース」を受験し、法学を学んでいない人は3年制の「法学未修者コース」を受験するということが多いようです。
法科大学院を修了していない人は、「司法試験予備試験」を受験し合格すれば司法試験が受けられます。予備試験には、資格や受験制限はなく、誰でも受験ができます。難関である法科大学院に通わなくても、司法試験を受けたいと思っている人は受験できます。しかし合格率はとても低いため、狭き門といえるでしょう。
司法試験に合格後、司法修習考試にも合格しなければならない
法科大学院を卒業または予備試験を合格し、最難関といわれている司法試験も合格できたとしても、すぐに弁護士にはなれません。約1年司法修習を受け、司法修習考試に合格できれば弁護士資格を取得することができます。
女性の弁護士も活躍しているの?
近年、女性弁護士の割合が増えています。女性が社会へ出て働くことが当然となってきたことや法科大学院設置も背景にあるようです。日弁連の資料によると、平成元年から25年ほどの間で、10%以上女性弁護士が増加しているという結果がでています。これからもますます、女性弁護士の活躍に期待されるに期待されるでしょう。
また、女性が離婚やDV、セクハラ、ストーカーなど法的問題に遭遇した際に男性弁護士に相談しにくいことも、女性弁護士だと相談しやすいということも多いです。同じ女性の立場から気持ちをよく理解してあげることができ、事件の解決だけではなく、心の支えになれることは女性弁護士だからこそでしょう。
参考:日本弁護士連合会 第2章
弁護士は英語ができないといけないの?
近年、弁護士や司法修習生の留学がとても増えています。弁護士有資格者も増加しており、日系企業の海外進出も目覚ましいです。また、外国人が多く日本に訪問したり在住するようになりました。弁護士として仕事を獲得し続けていくためには、英語のスキルが必須能力ともいえます。英語ができるかできないかで、将来弁護士として活躍し続けることができるかどうかの要ともなるかもしれません。
弁護士の資格が取得できたらどこで働けばいい?
弁護士事務所に就職
弁護士資格を取得すると、独立して事務所を開き弁護士活動をすることは可能です。
しかし、初めから仕事のノウハウがないまま独立するのはとても大変なことなのです。一般的には、弁護士事務所に籍をおいて活動することが多い傾向にあります。事務所によっては、個人の案件が多い事務所、企業の依頼が多い事務所があります。扱う事件の内容に差があるので、自分がどのような弁護士活動をしたいかを考えて選択するといいでしょう。
大学教授や講師となって働く
弁護士にはならず、大学法学部や法科大学院で講師になる人もいます。専任の大学教授となる人もいれば、弁護士活動と兼務で講師をしている人もいます。
組織内弁護士になる
企業や行政庁に就職し、法律事務を行う弁護士となる人もいます。現在はまだ少数ですが年々増えている傾向にあり、新しい弁護士としての働き方といえるでしょう。
弁護士がやりがい・大変さを感じる時
弁護士がやりがいを感じるとき
- 依頼人に感謝をされるとき
- 困っている人を助けられる
- ビジネスの大事な局面に貢献できる
民事事件だと、人生に大きく関わる相談や依頼を受けることが多くあります。大きな問題を抱えている人を、法律家として救済できるのは弁護士ならではです。心から感謝をされることも多いので、「人の役に立ちたい」という思いが強い弁護士は、やりがいと喜びを多く感じることができます。
重大な問題を抱えて困っている人を助けることもありますが、被疑者となった人の弁護も行うこともあります。裁判で有罪が確定するまでは、無罪の可能性もあるので被疑者の声にしっかり耳を傾け、被疑者にとってたった一人の味方となってあげるのです。弁護士とやりとりを通し、深く反省する被疑者も少なくありません。追い込まれた人の支えにもなることもやりがいの一つのようです。
「契約」はビジネスにおいてとても重要なものです。契約内容に落ち度があれば、会社の損失にも成りかねません。そのため、弁護士のチェックやアドバイスがとても重要な意味を持ちます。新規事業を始めたり、会社が合併する際など法律的な面でクリアしなければいけないことが多くあります。大切なビジネスの局面で、企業から頼りにされることもやりがいのようです。
弁護士が大変さを感じるとき
- 地道な作業が多く、仕事量もたくさん
- 些細なミスも許されない
- 体力も必要
多くの資料を調べたり書類を作成したり、地道な作業が多い弁護士の仕事は根気がいる大変な作業です。また、一つの仕事に時間がかかるうえ、複数の仕事を同時進行しているので、仕事の進行予定を考えたり割り振りすることも大変です。基本的に、自分が担当している仕事は自分一人でこなし、誰かに代わってもらえるものではないため、オーバーワーク気味になることが多いようです。
裁判手続き過ぎたり読み込みが浅いなどのミスをすると、取り返しのつかないことになることもあります。書類の作成やスケジュールの管理は徹底して行わなければ、裁判の形成が不利になるなど、一切許されないことが起こってしまいます。些細なことに目を向け、計画的に仕事をこなせないと弁護士の仕事は難しそうです。
弁護士の仕事は対人業なので、クライアントの予定に合わせて朝が早かったり、夜が遅かったりするものです。また、遠方の裁判所へ移動することもあり、早朝から深夜まで働くこともあります。細かな事務作業の時間も多くあるので、体力と気力が備わっていないと、仕事として成り立ちません。普段から基礎体力をつけることが大切でしょう。
人を助ける弁護士を目指しているあなたへ
テレビドラマなどでは、弁護士が法廷で華麗に弁護している姿などをよく目にします。その姿はかっこよくて、憧れますよね。しかし現実の弁護士事情は、ドラマチックなこととはかけ離れていることが多いです。大きな事件を取り扱うということも、多くはありません。むしろ、小さな事件の方がはるかに多いものです。
仕事内容は細かい作業が多く、早朝から深夜まで働くこともあり、地味で大変です。また、人の人生を大きく変えてしまう重責もあります。それでも、困っている人たちを救いたいという強い信念や覚悟をもっていれば、立派な弁護士として務まるはずです。弁護士になるまでの道のりは決して楽ではありませんが、信念と覚悟を忘れずに努力すれば弁護士への道は必ず拓くでしょう。