【医師監修】子供に感染しやすいマイコプラズマ肺炎とは?症状や検査・治療、予防法まとめ

子供の咳が長引いている、夜に咳がひどくなる、といったときはマイコプラズマ肺炎の可能性があります。子供のマイコプラズマ肺炎は重症化することもあるので注意が必要。早期発見のために知っておきたい症状や原因、病院で行われる検査や治療法などをまとめて解説します。

子供に多い「マイコプラズマ肺炎」

マイコプラズマ肺炎とは

マイコプラズマ肺炎とは、「マイコプラズマ・ニューモニエ(以下、マイコプラズマ)」という細菌に感染することで引き起こされる肺炎のことを言います。肺炎球菌などが原因となる一般的な肺炎とは区別され、以前は「異型肺炎」とも呼ばれていました。異型といっても決して特殊というわけではなく、健常人に発症し、肺炎の中でも頻度は高いです。昔は4年周期で流行になり、それが夏季オリンピックの年と重なったことから「オリンピック病」とも呼ばれていましたが、1990年代からは少しずつ流行は収まり、大々的に流行するというよりも、地域など小さな範囲で流行するという傾向になってきています。

マイコプラズマ肺炎は赤ちゃん・子供に多い病気

マイコプラズマ肺炎は幼児や小学生などの子供の発症が多病気です。患者の約8割は14歳以下の子供といわれています。特に6歳~12歳の間で流行りやすいため、保育園や学校で拡がることもあります。

マイコプラズマ肺炎の原因菌と感染経路

原因菌となるマイコプラズマとマイコプラズマ感染症

マイコプラズマ肺炎の原因となる細菌「マイコプラズマ)」は、ほかの一般的な細菌と違って細胞壁がありません。よく治療に使われる抗生物質はこの細胞壁をもつ細菌に対して効果を発揮するものであるため、マイコプラズマ肺炎は有効な抗生物質が限られてしまいます。

また、マイコプラズマは気管支などで炎症を起こすこともあります(マイコプラズマ気管支炎)。このようなマイコプラズマによって引き起こされる症状を総称してマイコプラズマ感染症と言います。

マイコプラズマはどううつる?

マイコプラズマの感染は、主に咳やくしゃみなどによる飛沫感染です。感染者の咳でおよそ半径1mに菌が飛び散ります。また、マイコプラズマは付着したものを触った手から菌が口に入るなどの接触感染もあります。ただし、マイコプラズマの感染力自体はそれほど強くないので、軽い接触ではうつらないこともあります。

マイコプラズマの潜伏期間

潜伏期間とは、菌やウイルスに感染してから実際に症状が現れるまでの期間のことを言います。マイコプラズマ肺炎の場合、マイコプラズマに感染してからの潜伏期間はおよそ2~3週間程度。比較的潜伏期間が長めなので、気づかずに他の人に感染させている可能性があります。

潜伏期間が過ぎると発熱や倦怠感が現れます。

マイコプラズマに感染しやすい時期

マイコプラズマの感染者が増えるのは秋の終わり頃から春の初め頃にかけて。つまり、冬の間ということになります。感染者が増加するのはこの時期ですが、マイコプラズマ自体は一年を通して感染する可能性があります。

マイコプラズマ肺炎の症状

子供のマイコプラズマ肺炎の症状

マイコプラズマ肺炎では、最初に発熱と倦怠感が出ます。この初期症状から少し遅れて、咳も出るようになります。咳は、初めのうちは乾いた咳ですが、症状が進行すると、湿った重い咳になっていきます。特に、夜間に咳がひどくなるのが特徴です。咳は長引きやすく、1か月以上続くこともあります。肺炎が起きているので、ゼイゼイとした呼吸音がすることも。このほか、のどの痛みや鼻水などが見られることもありますが、ひどくはなりません。夜間に強い子供の咳ということで、しばしば百日咳が鑑別に挙がりますが、一般に百日咳では発熱を認めず、一回の罹患で終生免疫を獲得します。

大人と子供の症状の違い

子供のマイコプラズマ肺炎は、大人と比べて症状の個人差が大きいのが特徴です。年齢によっても症状の重さが異なり、5~10歳くらいまでの子供は重い肺炎になってしまうこともあります。

大人のマイコプラズマ肺炎では、子供と同じく発熱や倦怠感が初期症状として出ることもありますが、ゆっくりと長い期間をかけて症状が出てくることもあります。その場合、最初は微熱や軽いだるさ程度でほとんど自覚していないこともあります。

赤ちゃんのマイコプラズマ肺炎は症状が軽い?

重症化することもある5~10歳くらいの子供のマイコプラズマ肺炎。一方、0歳~5歳くらいまでの小さな子供や赤ちゃんは重症化することが少なく、マイコプラズマに感染しても咽頭炎程度で済んで肺炎にならないこともあります。これは、マイコプラズマ肺炎の症状が免疫反応によって起こるためで、まだ免疫力の弱い赤ちゃんや幼児はかえって炎症が起こりにくいためです。

マイコプラズマ肺炎の検査と治療

マイコプラズマ肺炎の検査方法

肺に炎症が起きている可能性がある場合、胸部のエックス線検査が行われます。マイコプラズマ肺炎ではこのエックス線検査で影が見られるケースが多く、マイコプラズマ肺炎が疑われれば、診断するために必要な検査が行われます。

もっとも多く行われているのは血液を採って反応をみる血清検査です。このほか、のどの奥のたんや唾液を採ってマイコプラズマの特徴的なDNAを見つける迅速遺伝子検査(LAMP法)もあり、発症初期(約2日目)から検出でき、確定診断が可能ですが、こちらは病院により行っているところと行っていないところがあります。

マイコプラズマ肺炎は、最初のうちは風邪などと区別がつきにくいこともあり、このようなマイコプラズマの確定検査が行われるのは症状がある程度進んでからがほとんどです。

子供のマイコプラズマ肺炎の治療方法・薬の種類

マイコプラズマ肺炎は、風邪やほかの肺炎とは効果がある抗生物質も異なるため、多くの場合マイコプラズマ肺炎と確定してから治療行います。

治療では、クラリスロマイシン(クラリス)アジスロマイシン(ジスロマック)というマクロライド系の抗生物質が使用されます。マイコプラズマの中にはマクロライド系の抗生物質が効かないもの(耐性)もありますが、効果の有無がわかるのには時間がかかるため、まずはマクロライド系の抗生物質を使用するのが一般的です。

数日様子を見てマクロライド系が効かないと判断されたら、テトラサイクリン系の抗生物質が使用されます。ただし、テトラサイクリン系の抗生物質は8歳未満の子供には重大な副作用(歯の着色や崩壊、骨発育障害、新生児の頭蓋内圧上昇など)が起きる可能性があるため、原則として使用されません。代わりにレボフロキサシン(クラビット)などニューキノロン系の抗生物質が使われます。抗生物質の投与後、数日もすれば熱も引いていきますが、咳は1週間ほど続くこともあります。

子供がマイコプラズマ肺炎にかかったら

マイコプラズマ肺炎になった場合の登園・登校について

マイコプラズマ肺炎の登園・登校禁止の期間については厳密には決まっておらず、基本的には医師と相談し、医師が感染のおそれがないと認めてからになります。ただ、目安としては、抗生物質での治療を行ってから3日以上は日を空け、症状が改善してからと考えましょう。

マイコプラズマ肺炎は特に子供が集まる施設や学校で感染が拡がりやすいため、医師から言われた期間は必ず登園・登校を控えるようにしましょう。

家庭内感染は徹底して予防

子供がマイコプラズマ肺炎にかかったら、登校・登園を控えると同時に家族内でも感染予防を徹底しましょう。子供の咳やくしゃみでの飛沫感染が多いので、マイコプラズマ肺炎が治るまでは家族でマスクを着けるようにします。手やのどに付着した菌を洗い流すために、手洗い・うがいも忘れずに。手には消毒液を使用するとより効果的です。

早期受診・診断で子供のマイコプラズマ肺炎の重症化を予防できる

子供がゼイゼイと苦しそうにしている姿を見るのはつらいですよね。子供のマイコプラズマ肺炎は重症化することもあるので注意が必要です。重症化を防ぐには何よりも早期の受診で早めに治療を受けさせることが大切。ただ、症状が風邪と似ているため、見逃してしまいがちです。やけに咳が長引く、夜間に咳が悪化する、周囲でマイコプラズマ肺炎が流行している、といったときは、マイコプラズマ肺炎の可能性があるので早めに小児科を受診しましょう。

0