不動産鑑定士になるには?国家資格や試験内容・働くために必要な実務修習について

「不動産鑑定士」という職業はそれほどメジャーなものではなく、どんな仕事をしているのか知らない人も多いのではないでしょうか。不動産鑑定士として働くためには難しい国家試験を合格しなければなりません。今回は不動産鑑定士になるためにはどうしたらいいのか、仕事内容も合わせてご紹介いたします。

不動産鑑定士の仕事を知ろう

不動産鑑定士の仕事内容

不動産の鑑定

不動産鑑定士の仕事は、国や都道府県、市町村などからの依頼で都道府県の地価調査や固定資産税の評価、路線価格の調査を行う「公示地価」。個人や企業からの依頼で所有する資産の価値評価や不動産の購入や売却の鑑定評価を行う「民間評価」があります。決められた手順でレポートを作成して依頼者に提出します。

不動産の調査・分析

不動産の調査・分析をするのは重要な仕事です。賃貸マンションなどの家賃を決定するときに、賃貸料が適正な価格であるために、家賃に関わる調査や分析を行います、また、契約手数料や地代を決定するときにも調査・分析が必要です。

コンサルティング

不動産における色々な相談を受けて、今までの経験を生かして指導やアドバイスを行います。マンションの建て替えのアドバイスや土地の有効利用を提案したり、企業が所有する土地の管理や運用を提案することが仕事です。

不動産鑑定士の給料・平均年収

不動産鑑定士の給料は勤務先によって異なります。主な勤務先は不動産鑑定事務所です。その他には大手不動産会社の鑑定部門、大手銀行の信託部門や担保評価部門で働く場合もあります。大手の会社で勤務する場合は、給与や福利厚生が充実している場合が多いのが特徴です。

平成28年の「賃貸構造基本統計調査」によると、不動産鑑定士の平均月収は約43万円で平均年収は約693万円でした。平均年齢は46.6歳で勤続年数の平均は9.2年です。

不動産鑑定士の役割

不動産の価格を適正に評価する

不動産の評価というのは「その土地建物が本来有している価値」であり、それは適正な価値だということです。不動産が最も有効な活用方法ができるよう、適正な価値を評価することが必要なのです。また、公示価格や固定資産税評価などの公的評価なども不動産鑑定士が行い、土地の適正な価格を保ちます。

納税に関するトラブルを防ぐ

土地に関する固定資産税や相続税は税金の徴収が関わってきます。納税の基になるのは不動産の評価価格です。その価格が適正でないと納税者が納得せずトラブルに発展しかねません。そういったトラブルを防ぐために不動産鑑定士がその土地に適正な価格をつけることが重要なのです。

投資家を保護

近年、企業が所有する不動産を適正に評価することによって、それを決算に反映させる会計ルールが増えています。そのため、土地の評価が適正ではないと会社の財務状況を正しく表すことができないのです。
また、不動産鑑定士は不動産を証券化する時の評価を行うこともあります。不動産を投資対象にした投資家からお金を集め、運用するために必要なため、不動産鑑定士が行う仕事は投資家の保護に繋がっていると言えます。

[2]不動産鑑定士になるには

専門学校で不動産鑑定士になるための勉強をする

建築系や法律系の専門学校では、不動産鑑定士になるための勉強が幅広くできます。不動産に関した法律や簿記、マーケティングなどビジネス知識を含めた専門的、実践的な知識を得ることができます。専門学校の特徴は、その分野において専門的にしっかり、卒業後に即戦力となれるように学ぶことができます。

資格試験予備校で不動産鑑定士になるための勉強をする

不動産鑑定士になるための勉強する場として、資格予備校があります。数は少ないですが、自分に合うところを選んで試験対策を行うといいでしょう。

不動産鑑定士は独学でなれるのか

不動産鑑定士の試験は第一次試験である「短答式」と、短答式を合格したら「論文式」の試験を受験します。

短答式の試験は、資格予備校などに通わなくても過去問を何度も問いてしっかり対策していれば独学で合格することも可能性です。しかし、論文式試験の場合は独学で合格するのはかなり難しく、ほぼ不可能だと言われています。合格するためには資格予備校などでしっかり学ぶことが必要です。

不動産鑑定士の国家試験について

不動産鑑定士国家試験の受験資格

国家資格である不動産鑑定士は国土交通省が管轄になります。この資格は業務独占資格で、資格を取得すれば一生有効なものです。

国家試験には「短答式」と「論文式」があり、短答式の試験資格は特にありません。しかし、論文式の試験を受験するためには「短答式の試験を合格した者」が受験資格になります。また、短答式試験を合格すると、2年間は短答式試験を受けずに論文式の試験のみを受験することができます。
そして論文式の試験には科目免除制度があります。司法試験に合格した者は「民法」が免除され、公認会計士試験に合格した者には「会計及び合格した試験において受験した科目」が免除になります。試験に合格したら「実務修習」を経て不動産鑑定士として登録されます。

不動産鑑定士国家試験の難易度・合格率

不動産鑑定士の短答式試験の合格率は例年25%前後です。そして、論文式の合格率は例年10%前後になっています。難易度はどの科目でもハイレベルです。実務修習の修了考査は合格率が90%程ですので、しっかりとこなしていればさほど難しくないものです。

不動産鑑定士になるための実務修習とはどんなもの?

資格試験を合格したら不動産鑑定士の登録をするための「実務修習」を修了しなければなりません。期間は1年・2年のコースのなから選択し、「講義」・「基本演習」・「実務演習」の内容のものを修了してからテストや報告書の作成を実施し、それを見て単位認定が行われます。
そして、実務修習を終えて「修了考査」に合格したら不動産鑑定士として登録することができるのです。

不動産鑑定士として働く

不動産鑑定士に向いている人とはどんな人?

責任感のある人

不動産鑑定士の仕事は、不動産に適正な価値をつける重要な仕事です。社会的にも責任重大な仕事なので、この仕事をする人は責任感が強くて常に学ぶ姿勢を持っていることが重要です。

事務処理能力を持っている

不動産鑑定士は実際に鑑定する土地へ足を運んで調査を行います。そのためフットワークの軽さも重要になりますが、鑑定評価を行なった後はレポートや鑑定評価書などを作成しなければなりません。このため不動産鑑定士には、顧客に分かりやすいように数値や文章をまとめる事務処理能力も必要になってきます。

そして、仕事はパソコンを使用して行うので、パソコンの操作もできなければなりません。複雑な表計算や関数を使ってレポートを作成することもあるので、Excelでいうと中級以上のレベルの知識がないと仕事になりません。

論理的にものを考えることができる人

不動産の鑑定は国土交通省が発表している「不動産鑑定評価基準」を基に行います。しかし、時にはこの不動産鑑定評価基準に載っていない事案が生じることがあります。そのときにはそれに対して適正な結果を導き出す必要があります。そのためには不動産鑑定士には論理的思考力が求められるのです。

努力を続けられる人

不動産鑑定士は不動産に適正な評価をつける人ですが、地価などを適性に判断することも仕事です。公示価格は日本の経済に影響を与える重大なことなので、不動産鑑定士には高度な知識と技能が求められます。
重要な仕事をする不動産鑑定士の資格試験の難易度が高いのは、このように重要な仕事を任せてもよい人なのか判断するためでもあり、この難易度の高い試験を合格するためには、真面目に勉強を続けることが重要です。

不動産鑑定士の求人はあるの?

不動産鑑定士は国家試験に合格し、実務修習を経てから不動産鑑定士として登録することができます

この実務修習はインターンシップのようなかんじで、指導鑑定士がいる不動産鑑定事務所などで働かせてもらいながら行うのが一般的です。このインターン先にそのまま就職する人もいますが、通常は不動産鑑定士協会のホームページや月刊不動産鑑定の求人情報などから求人を探す場合がほとんどです。また、資格予備校が就職説明会に参加するのも就職先を探す有効な手段です。

女性は不動産鑑定士として活躍できる?

最近では女性の不動産鑑定士が増えてきています。仕事内容は力仕事があるわけではありませんし、事務的な処理もExcelなどのソフトを使って進めるので、女性ならではの目線や感性を生かして行うことができます。

また、女性ならではの活躍の場所があり、現地調査をする場合、先方の営業の邪魔をしないように女性にしかできない場所があります。例えば、ホストクラブがそれにあたります。女性客が多いためその中で女性の不動産鑑定士が中で鑑定することがあるのです。このように、女性の不動産鑑定士の存在は重要だと言えます。

不動産鑑定士の将来性

不動産鑑定士はどんな時でも仕事がなくなることはないため、安定した仕事と言えます。世の中が不況になると、それに伴って融資の担保評価の仕事が増えます。
また、最近は不動産鑑定士の経験を生かして不動産に関する悩み相談に乗り、適切なアドバイスをしたり指導を行う仕事も多くなっています。企業を相手にする場合は、企業が持っている不動産の管理や運用を提案すること、個人の場合は相続や贈与に関する相談が増えています。不動産に関しては知識が豊富な不動産鑑定士に相談することで、相続が円滑に行われてトラブルを防ぐことになります。

このように、不動産鑑定士は持っている専門的な知識や豊富な経験を生かして人々のために活躍する、今後も必要とされる職業なのです。

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