鍼灸師は東洋医学の力で体をサポートする仕事!国家試験の合格率や資格取得の方法について

美容鍼の登場により、体のケアの手段として身近になった鍼灸。鍼灸の施術は国家資格を持った鍼灸師によって行われます。今回は東洋医学の力で体の自然治癒力を高め、元気な体づくりのサポートをする鍼灸師の仕事について紹介します。

鍼灸師とは?

東洋医学の専門家として施術をする人

鍼灸師は、はり師ときゅう師の両方の国家資格を取得して鍼やお灸を用いて鍼灸施術を行う人です。鍼灸師という資格は存在しません。しかし多くの人が両方の資格を同時に取得し、両方の施術を行っています。

鍼灸とは全身に存在する経穴と呼ばれるツボを鍼やお灸で刺激して、自然治癒力を高める施術です。施術の時は患者さんとコミュニケーションを取りながら顔色や匂い、脈の形や速さなどから病状を診断します。鍼灸師は患者さんの治療行う東洋医学の専門家だと言えます。

はり師ときゅう師の違いは

  • はり師とは
  • はり師は患者さんの症状に応じて、全身に存在するツボに鍼を刺すことで刺激を与えて治療を行う専門家です。刺激を与えることで心身のバランスを整え、本来持っている自然治癒力を引き出し病気の治療を行います。

    WHO(世界保健機関)は神経痛、リウマチ、腰痛、肩こり、花粉症、ぜんそくやアトピーなどの病気に鍼灸治療が有効だと認めています。また、鍼治療は副作用がなく関節炎などの痛みを緩和すると言われているため、多くのスポーツ選手が取り入れています。

    出典:日本医学柔整鍼灸専門学校

  • きゅう師
  • はり師と同じようツボに刺激を与えることで治療を行う専門家です。鍼の代わりにもぐさを燃やして温熱刺激を与えます。多くの場合、はり師と同時に資格を取得して、鍼灸師として治療を行います。

年収や待遇は

鍼灸師の場合は治療院でスタッフとして働く人もいれば、独立開業する人もいます。

治療院のスタッフして働く場合は月収は18万円〜20万円年収は350万円〜400万円できます。

独立開業の場合は自分の腕次第では年収1,000万円以上を狙うことも可能です。ただし鍼灸治療は保険適用外のため、独立をする場合は経営者として院を運営する必要があります。独立して成功するにはしっかり経営について学んでおく方がいいでしょう。

鍼灸師の活躍できる業界は?

  • 医療や介護業界
  • 鍼灸の効果は病院でも認められています。最近は他の医療関係者と連携して治療を行うケースも増えています。例えば整形外科と連携している治療院。また企業内のクリニックの中に鍼灸院を併設しているところもあります。それだけなく介護施設やデイサービスでも高齢者のケガのリハビリ治療や機能回復のために、鍼灸治療を取りいれています。

  • 美容業界
  • 最近女性に注目を集めている美容法が美容鍼灸です。美容鍼灸は皮膚や筋肉に直接刺激を与えることでニキビやほうれい線、しみ、しわ、たるみの改善や肌質、体質改善を目的とした鍼灸治療です。アンチエイジングが気になる40~50代の女性に人気があります。

    ハリウッドスターなど海外のセレブリティが鍼灸治療を受けていることが米国などのメディアが報道したことをきっかけに、日本でも多くのモデルや芸能人が美容鍼を取り入れています。菜々緒さんや道端アンジェリカさんがインスタグラムに、美容鍼の施術を受けた写真を投稿したことで、若い女性からも注目を集めています。そのため、最近では多くの治療院で鍼灸メニューの中に美容鍼灸のメニューを加えているところが増えています。

  • スポーツ業界
  • スポーツトレーナーになるために資格は必要ありませんが、多くの場合は鍼灸師などの資格を持った人がスポーツトレーナーとして活動しています。
    スポーツトレーナーはプロのスポーツチームや実業団で専属契約を結んで仕事をします。プロチームの専属スポーツトレーナーの場合は他の仕事に比べ年収も高額なため、人気の仕事です。またフリーのトレーナーとしてプロスポーツ選手と個別に契約を結んでいる人も増えています。

女性鍼灸師のメリットは?

鍼灸院にはホルモンバランスの乱れや生理痛、不妊といったトラブルを抱えた女性の来院が増えています。このような体の悩みは男性よりも女性の鍼灸師の方が患者さん自身も相談しやすいでしょう。

鍼灸治療は直接肌に触れて治療を行うため、女性の患者さんの中には男性の鍼灸師ではなく、女性の鍼灸師に治療して欲しいと思う人も多いです。美容鍼の人気の高まりでエステサロンや美容クリニックでのニーズも増えているため、今後も女性鍼灸師の活躍の場が広がっていくことが予測できます。

鍼灸師になる方法

鍼灸師になるための学校・ルート

鍼灸師になるためには、はり師ときゅう師の国家資格を取得する必要があります。この二つの国家資格には受験資格があるため、まずは受験資格を得なければいけません。

受験資格は、厚生労働省と文部科学省によって定められた専門学校や大学を卒業することです。多くの場合、高校卒業後に鍼灸学科のある4年制大学や」」短大、もしくは鍼灸系の専門学校に進学し、卒業後はり師国家試験ときゅう師国家試験を受験するのが一般的です。

費用や学費はどのくらい必要?

はり師ときゅう師の国家試験を受験するには、鍼灸師養成施設である全国の大学や専門学校に進学する必要があります。国内には80〜90校程度あるといわれており、そのほとんどが専門学校です。

専門学校の場合は3年制、大学の場合は4年制です。専門学校の場合、卒業までの学費は合計で400万円〜500万円程度で、大学の場合は600万円以上が相場です。

鍼灸師国家試験の概要と難易度

  • 難易度や合格率は?
  • はり師・きゅう師の国家試験の合格率は例年70%前後でしたが、平成29年2月に実施された第25回国家試験では初めて70%台を割り込みました。

    はり師・きゅう師の国家試験を受験した人は平成20年をピークに減少傾向です。最も受験者数が多かった平成20年のはり師の受験者数が5,561人(合格者4,347人)、きゅう師が5,539人(合格者4,344人)で、平成29年の試験は受験者総数4,527名(合格者3,032人)、きゅう師が4,443人(合格者3,010人)と受験者数が1,000人程度減少しています。

    ただし新卒者に限ってみると、はり師は3,472名、うち合格者2,899名、合格率83.5%。きゅう師は3,472名、うち合格者2,891名、合格率83.3%のため、学校で学んだことがしっかり頭に入っていればそれほど難しい試験ではないことがわかります。

    出典:three sides

  • 試験の内容は?
  • はり師ときゅう師の国家試験を同時に受講する場合は医療概論、衛生学・公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学概論、臨床医学総論、臨床医学各論、リハビリテーション医学、東洋医学概論、経絡経穴概論など共通科目は受験者の申請によって、どちらか一方の試験が免除されます。

    これらの受験科目に加えて、はり師の場合ははり理論、きゅう師の場合はきゅう理論が受験科目に加わります。試験科目からも鍼灸師は国家資格を持った東洋医学の専門家だといえます。

鍼灸師の他に取得しておきたい資格は?

  • あん摩マッサージ指圧師
  • あん摩マッサージ指圧師は、鍼灸師と同じようにあん摩マッサージ養成学校で学んだあと、国家試験に合格することで取得できます。

    あん摩・マッサージ・指圧の3つで成り立っていて、それぞれの手技(なでる・揉む・押す・さする等)によって、体の不調を改善する施術を行います。あん摩マッサージ指圧師の試験科目は、はり師ときゅう師の受験科目と重複している科目があるため3つの受験資格を同時に取得できる学校もあります。また、あん摩マッサージ指圧師、はり師ときゅう師の3つの資格を取得している人を三療師と呼びます。

  • 柔道整復師
  • 柔道整復師は整骨師とも呼ばれ、骨や関節、筋や腱、靭帯といった箇所に発生する骨折や脱臼、打撲、捻挫、挫傷などを治療する仕事です。基本的に素手でのみ治療し、湿布や包帯、テーピングのみで施術をします。骨折や脱臼、打撲、捻挫、挫傷などの治療に関するエキスパートです。

    資格を取得するには鍼灸師と同じように大学や専門学校で学んだ後、国家資格を受験します。試験の難易度は柔道整復師の方が高いため、一般的に柔道整復師の資格を取得した後、鍼灸師の資格を取得する人が多いです。

鍼灸師に必要な能力は

カウンセリング能力

患者さんの治療を行うには問診をします。問診の時には治療のためにプライベートなことまで聞くこともあります。鍼灸師としての技術も大事ですが、患者さんの気持ちに寄り添いながら、信頼関係を築くことも同様に大切です。この先生なら安心して自分の体を預けれると思ってもらうために、カウンセリング能力は必須です。

コーチングスキル

鍼灸による治療が開始すると、患者さんと二人三脚で治療を進めていきます。体の不調を改善するためには鍼灸院の治療だけでは難しいことも。また即効性がある治療法ではないため治療には時間を要します。患者さんが治療に前向きに取り組んでもらうために、コーチングスキルが必要です。

体力

鍼灸師として働き始めると1日何人もの患者さんの施術を行います。鍼やお灸を用いる治療は危険を伴うため、常に緊張感を持った状態で施術を行います。鍼灸師として仕事を続けるには、それに耐えられるだけの精神力や体力がないと辛いでしょう。

学ぶ意欲

鍼灸は古代中国で誕生し、日本では古くは平安時代からその鍼灸技術が取り入れられられていたと言われるほど歴史のある施術です。国家資格を取得したとしても、鍼灸の世界をすべて網羅できないため常に勉強が欠かせません。鍼灸に関する知識だけでなく、患者さんを施術する上で西洋医学の知識も欠かせません。鍼灸師としてレベルアップするためにも、常に新しいことを学びたいという意欲が必要です。

判断力

鍼灸師の仕事は医師と並んで医療行為を行います。治療の際は常に冷静に患者さんの症状を判断し、適切な処置を行うことが求められます。

経営スキル

鍼灸師として将来独立を考えるなら経営スキルは欠かせません。鍼灸師になるための専門学校の中には独立開業までサポートするカリキュラムがある学校もあります。

また東洋鍼灸専門学校が実施したアンケートによると、鍼灸師としてすでに独立している人の約35%は3年以上前から資金や開業に向けての準備を行ったと回答しています。将来的に独立開業も視野に入れているのなら早い段階から経営スキルを磨き、準備しておくことが独立開業で成功する秘訣と言えます。

鍼灸師の仕事の魅力や大変なことは

鍼灸師の仕事の魅力

  • 今後活躍できる場が広がる
  • 鍼灸師は今後も医療現場だけでなく、介護業界、スポーツ業界、美容業界などで資格を活かせる場が広がると予測できます。また鍼灸師の中には海外でも活動している人もいます。
    鍼灸師は街の鍼灸院で仕事をするだけでなく、スポーツ業界や美容業界に特化して仕事をすることもできるため、自分の頑張り次第で活躍の場を広げることが可能です。

  • 東洋医学の力で多くの人の健康をサポートできる
  • 鍼灸師は東洋医学の知識を持つプロの治療家です。鍼灸院に訪れる患者さんの中には身体が重い、頭が痛いなどの慢性的な不調を抱えて、悩んでいる人も多いです。そのような患者さんが施術によって慢性的な不調が解消し、元気になった姿を見られるのは鍼灸師の仕事の醍醐味です。

  • 実力次第で稼ぐことができる
  • 鍼灸師として独立し、テレビや雑誌などで取り上げられるなど知名度が上がれば、年収1000万円以上稼ぐことも可能です。またスポーツトレーナーとして実力があればプロ野球チームと専属契約をすることも。プロスポーツチームの専属スポーツトレーナーの年収は、約300万円~1000万円が相場だと言われています。このように自分の腕次第では独立開業でも、フリーでも稼ぐことが可能です。

鍼灸師の仕事の大変なこと

  • 下積みが必要
  • 鍼灸師は国家資格を取得したからといってすぐに現場で活躍できるものではありません。多くの患者さんと症例に触れることで経験を積みながら技術を磨いていかなければならないため、最初のうちは勤務先の治療院などで下積みをする必要があります。

  • 勤務時間が不規則
  • 治療院の多くは鍼灸院の営業時間に合わせたシフト制のため勤務時間が不規則です。都心部の場合は仕事をした人が仕事帰りや休みの日に来院できるように平日は夜遅くまで営業し、土日も営業しているところが増えています。そのため、不規則な生活を強いられてしまうことが多いでしょう。

  • 安定して稼げるとは言えない
  • 独立開業した場合、必ず毎月患者さんが来るとは限りません。独立開業して軌道に乗るまでは、毎月の収入が安定せず必要な経費を支払うと、鍼灸院に勤務していた時よりも手取りが少ないケースもあります。

生涯現役も可能な鍼灸師の仕事を目指してみませんか?

いかがでしたか?鍼灸の世界は奥深く、一生かけて知識や技術を追求できる世界です。やる気さえあれば自分のペースで働き続けることもできます。社会人向けのカリキュラムを行っている専門学校もあるため、何歳からでもチャレンジできます。自分の手で誰かを癒したい、元気にしたいと思うなら挑戦してみてはいかがでしょうか?

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