航空管制官になるには?受験資格や試験の難易度・必要なスキルについて

ドラマや映画で航空機にトラブルがあったときにパイロットと連絡を取り合い、的確な指示を出すというシーンを見たことはありませんか?「航空管制官」はこの指示を出している人のことをいいます。今回は航空管制官について、仕事内容やどのようにしたらなれるのかなどを解説していきます。

航空管制官とは

航空管制官とは

航空管制官の仕事内容

航空管制官は国土交通省に所属する国家公務員です。飛行機が空を安全に飛べるように情報や指示をパイロットに伝えるのが航空管制官の仕事です。勤務場所は、全国4ヶ所にある「航空交通管制部」、全国各地にある「空港」です。

航空交通管制部の仕事

おもに日本の空域を飛ぶ航空機の管制を行います。また、航空交通管制部と空港は常に連絡を取り合いながら仕事をします。

空港での仕事

  • ターミナル・レーダー管制業務
    レーダールームでレーダー画面を見て、航空機の飛行状況を確認し、必要に応じてパイロットにさまざなま指示を出します。
    この仕事は、レーダーや無線で状況に合わせて適切な指示を出さなければなりません。非常に集中力を必要とし、事故が起こらないように緊張感を持ちながら仕事をします。また、滑走路近くで着陸する航空機が何機も重なってしまった場合、どの順番で航空機を着陸させるかを判断し、パイロットへ誘導することもあります。
  • 飛行場管制業務
    管制塔の上の方にあるタワーと言われる場所で、空港周辺の官制を行います。ここにもレーダーがあって、空港内の地上走行の指示、航空機に離着陸の許可を出すなどの業務にあたります。

航空管制官の給料・平均年収

航空管制官は国土交通省に所属している国家公務員なので、「専門行政職俸給表」という給与の指標が適用されます。これは専門的な知識や技術を必要とする特殊な仕事に就く人の給与形態です。

そのため、一般の国家公務員よりもやや高い給与となります。「平成28年(2016年)国家公務員給与等実態調査」では、平均年収は約716万円でした。

航空管制官の1日

航空管制官の1日

航空管制官は勤務地によって24時間体制の業務を行う場合があり、数人でチームを作りシフト制で早番・遅番・夜勤をこなします。早番のシフトの場合、1日の流れは以下の通りになります。

7:00 出勤する
7:30 打ち合わせで引き継ぎなどの情報を得る
8:00 管制業務開始
12:00 昼休憩
12:45 管制業務
15:30 反省会
16:00 業務終了

管制業務は集中力を保つために30分ごとに交代しながら行います。パイロットに指示を出すリーダー席と管制機関などと連絡を取り合う調整席での交代となります。業務はとても神経を使うため、1時間ごとに休憩を取ります。

航空管制官に向いている人

責任感が強い

航空管制官は、航空機が無事に離着陸するように、パイロットに指示を出して人びとの安全を守る仕事です。万が一、航空機が事故を起こしてしまったら大惨事になってしまいます。自分の仕事は大勢の人の生命を守る仕事なのだという、強い責任感や使命感を持って仕事ができる人が向いているといえます。

記憶力や空間認識力がある

航空管制官は飛行機がどの位置を飛んでいるか、レーダーを見ながら正確に認識し正しい指示をパイロットに出さなければなりません。そのため、飛行機が飛んでいるイメージをしっかり認識できる能力が必要になります。
また、担当する航空機はときには10機以上になることがあります。正確にその台数をコントロールするために、記憶力が求められるのです。

見えないところで支えることが好き

航空管制官の仕事は目立たない仕事です。航空業界でも縁の下の力持ち的な存在で、表に立つことはほとんどありません。人びとの生命を陰で支える仕事にやりがいを感じられる人は、航空管制官に向いていると言えるでしょう。

他のスタッフとの連携を大事にできる

航空管制官は専門的な高度なスキルを必要とする仕事で、各自が集中して業務にあたることが大切です。しかし、仕事は全てを一人でやるわけではありません。もしものときは、他のスタッフと連携してトラブルを回避したり、乗り切ることが必要になってきます。チームワークを大切にして仕事ができる人が求められます。

航空管制官になるには

航空管制官になるには

航空管制官になるためには大学を卒業したほうが有利?

航空管制官の採用試験には学歴は問われません。しかし、試験の内容は大学卒程度の問題が出ることから、それなりの学力が求められます。

航空管制官として働いている人の多くは4年制大学を卒業しています。学部では、航空学部がある大学や理学、機械工学について学べるところか、英語を必要としますので外国語学科などで学んでいると、その知識を生かして採用試験が有利になる可能性があります。

航空管制官を目指す人の中には、採用試験をクリアするために大学に通いながら英語の専門学校などで英語力を身につける人もいるようです。

航空管制官には英語力が必要?

航空管制官とパイロットの通信は英語で行われます。それが日本人同士であっても英語で行うので、管制業務を行うためには英語力は必要不可欠です。国際線で違う国の航空機が離着陸する際に、それぞれの国のことばでやりとりしてしまうと混乱が起きてしまいます。そのため、英語が共通語として使用されているのです。

万が一、緊急なことに対応しなければならないとき、パニックになり英語が出てこない、というようなことがあったら大変です。そのため、航空管制官になってからも定期的に英語の実力試験があり、一定のレベルに達していないといけません。TOEICの点数でいうと600点以上の実力が望まれます。

航空管制官採用試験を受験する

航空管制官採用試験を受験する

航空管制官採用試験の受験資格

航空管制官の採用試験を受ける際、「満21歳になる者から30歳に達する者まで」であれば学歴には関係なく受験することができます。満21歳未満である場合、受験する年の翌年の3月までに大学、短大、高等専門学校を卒業か卒業見込みである必要があります。

受験資格に学歴は問いませんが、内容は大学卒程度のものになっているので、しっかり勉強をしておかなければ合格は難しいでしょう。

また、日本の国籍を持っていない人や国家公務員法第38条の規定で公務員になることができない人は受験できません。その他には視力や聴覚などの規定もあります。詳細は、国土交通省 航空保安大学校「航空管制官採用試験」でご確認ください。

航空管制官採用試験の難易度・合格率

航空管制官の採用試験は難易度が高いことで知られています。例年合格率は5%前後を推移しています。平成28年度の航空管制官採用試験の合格率は7.1%でした。

航空管制官の採用試験に合格したら航空保安大学校で1年研修を受ける

航空管制官の採用試験に合格すると、関西国際空港の近くにある「航空保安大学校」に入り、1年間の研修を受けます。この場合、国家公務員として採用されているので、研修中でも月に約18万円程の給料がもらえます。この1年間の研修を終えてから、国土交通省がどこに勤務するのかを割り当てます。

勤務地へ赴任すると、訓練生として専門知識を身につけるために学びます。航空機を誘導する仕事をする航空管制官の仕事は、人の命を守る仕事といえます。そのため、充分な時間を訓練に費やし、判断力や精神力を養います。この期間は数ヶ月で終わる場合もありますが、数年かける場合もあります。

出典:国土交通省 航空保安大学校

航空管制官として働く

航空管制官として働く

航空管制官の需要はどのくらい?

近年、格安航空の航空会社参入などで国際線の発着便が増えてきています。そのために航空管制官はますます需要が高まってきています。専門性の高い業務で、神経を使う仕事ではありますが、それだけにやりがいも感じられる仕事です。

航空管制官の就職先

日本各地にある空港

航空管制官は空港に必要な存在であるため、日本にある空港すべてが航空管制官の働く場所となります。勤務地は自分で決めるわけではなく、辞令が出て決定します。各地域にある空港は立地によってそれぞれの特徴があり、土地の特徴によって異なる資格を取得しなければならないため、赴任したら一定の期間、訓練を受けて試験を受ける必要があります。

全国4ヶ所にある航空交通管制部

航空交通管制部は札幌・東京・福岡・那覇にあり、空港の周辺以外での航空路を飛ぶ飛行機を誘導し、指示を出す仕事をします。管制業務は非常に集中力を要する仕事です。空港で管制業務をする場合も、航空交通管制部の場合でも30分~1時間ほどで交代しながら業務にあたります。

管制業務以外の仕事

空港や航空交通管制部で経験を積んだ後、実際に管制業務を行わない業務に就く場合もあります。航空保安大学校で研修生の育成に携わることや、国土交通省本省や各地方航空局で管制に関するルールの作成を担当することもあります。

航空管制官には転勤・異動はあるの?

航空管制官は国家公務員であるからには転勤の可能性はあります。しかし、現在働いている航空管制官の中には、10年以上同じ場所で働いている人や、3年程で転勤している人もいます。何年たったら転勤しなければならないという決まりはありません。もしも転職の辞令が出た場合、必ず従わなければならないのかですが、家庭の事情などで転勤を断る人もいます。

しかし、転勤をして新しい環境で人間関係を築き、いろいろな経験を積むことは自己のスキルアップにつながります。昇進には転勤がつきものという見方もあるようで、理由もなく転勤を断ることは避けたほうがよいとされます。

航空管制官は、航空交通管制部、各空港に転勤になると、その勤務地で訓練を受け資格を取得する必要があります。地方の空港では資格が少ないので3年~5年ほどで転勤になる人が多いとされます。

女性の航空管制官は活躍できる?

女性の航空管制官は活躍できる?

航空管制官の仕事は、24時間のシフト制で不規則な生活を強いられることがあります。しかし、残業はほとんどないことや休日は週に2日必ずとれることから、体調を整えながら仕事に臨むことができるでしょう。福利厚生がしっかり整っていること、収入の面でも安定していることから女性の航空管制官も増えてきています。

平成29年の合格者の男女の割合は、男性が54.3%女性が45.7%でした。体力を使う仕事ではないため、女性も充分に活躍することができる職場といえます。

航空管制官の将来性

航空業界は、格安航空会社の新規参入によって国内線は今までよりも発着回数が増えてきています。また、2020年に行われる東京オリンピックに向けて、国土交通省は羽田空港の発着便を増やす取り組みを行なっています。

今後は国際線の年間発着便が現在よりも1.7倍になると見込まれています。このことから、航空管制官の仕事はますます需要が高まることが予想されます。

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