厚生年金とは?加入や受給額・計算方法について徹底解説

年金といえば、国民年金と厚生年金がありますが、その違いはなんでしょうか。今回は厚生年金について知っていきましょう。厚生年金はどんな人が加入するのか、アルバイトで働く人は厚生年金に加入できるのか。厚生年金の支払いや受給について、詳しく解説していきます。

厚生年金について

年金とは?

国が国民に加入を義務づけている年金制度を「公的年金」といいます。その目的は、老齢・障害・死亡によって国民の生活が不安定なものになることを防ぐものです。

老齢年金は老後の生活を支えるために、所得保障としての大切な役割があります。公的年金制度は、大きく分けて3種類があり、「国民年金」「厚生年金」「共済年金」で、職業によって加入する年金が異なります。

厚生年金と国民年金の違い

  • 厚生年金
  • 会社に勤めている70歳未満の会社員や公務員は加入する義務があります。保険料は毎月の給与から天引きされています。この保険料の一部は国民年金に自動的に搬出されています。厚生年金に加入している人は手続きをしなくても、国民年金に加入していることになるのです。厚生年金の保険料は、給料に応じ異なり、個人と会社が折半して支払います。半分は会社が負担してくれるので、個人の負担が軽くなります。受け取る年金額は納めた保険料により変わってきます。

  • 国民年金
  • 自営業・農業・従業員が5名未満の個人事業に勤めている場合は国民年金に加入します。その他、学生・厚生年金に加入できない短時間勤務社員、失業している人も国民年金に加入することになります。保険料は給料に関係なく定額です。支払いは全額本人が負担し、受取額は加入年数によって決まります。

アルバイト・パートの人は厚生年金に加入できるの?

アルバイトやパートタイマーとして働いている人でも、正社員の所定労働時間および所定労働日数の4分の3以上勤務している場合は厚生年金に加入できます。それに加え、2016年10月から、「週20時間以上」「残業を含まない月額賃金が8.8万円以上」「勤務期間が1年以上の見込みがある」「学生ではない」「501人以上を雇用している企業」のすべてに該当する人も厚生年金に加入できるようになりました。

厚生年金の加入について

厚生年金の加入と脱退年齢について

国民年金には20歳以上60歳未満の人が加入する年齢の条件がありますが、厚生年金には年齢の制限はあるのでしょうか。

まず、加入についてですが厚生年金の加入には下限がありません。会社に入った年齢が厚生年金の加入の年齢になります。そのため、中学を卒業して働くことになり、会社に入ったら15歳で厚生年金に加入することになります。

そして、厚生年金の脱退年齢は会社を退職する際の年齢になりますが、脱退の場合は70歳が上限の年齢という定めがあります。すなわち、70歳になり会社に勤務していたとしても70歳になったら自動的に厚生年金を脱退することになるのです。例外として、70歳になった時点で老齢年金を受ける資格が満たせていない場合は、満たせるまでの期間「任意加入」することができます。

老齢基礎年金の受給要件は、20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めたことです。この期間、保険料を納めていると65歳から満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。

被保険者1号2号3号とは?

被保険者の種別について解説していきます。被保険者には、第1号被保険者・第2号被保険者・第3号被保険者があります。

  • 第1号被保険者
  • 対象:20歳以上60歳未満の自営業、農林漁業者、学生、失業者など
    手続:市町村役場に届け出をする
    保険料:各自が保険料を全額払う(前納割引がある)

  • 第2号被保険者
  • 対象:民間の会社に勤める会社員、公務員など
    手続:勤務先で手続きをする
    保険料:給料から天引きされる(会社と個人が折半して支払う)

  • 第3号被保険者
  • 対象:第2号被保険者に扶養されている20歳から60歳までの年収130万円未満の配偶者。もしもパートなどで年収が130万円以上になった場合は、第1号被保険者になるため、夫は別に国民年金に加入する必要があります。
    手続:夫の勤め先を通じて手続きをする
    保険料:夫が負担するため支払いはない

会社員の扶養家族の年金加入は?

第3号必要が制度は、会社員や公務員の妻ななどが保険料を負担せず、国民年金に加入できる制度です。この制度は昭和61年4月1日より開始されました。それまではこのような制度はなく、国民年金の任意加入の対象者でしたので、加入せずに保険料を納めていなかった場合、その分の年金額が減ることとなって満額の老齢基礎年金を受け取ることができないのです。

ただし、昭和36年4月から昭和61年3月までの間の会社員、公務員の妻(20歳以上60歳までの期間)であった期間は、合算対象期間としての年金を受給するための必要な期間に加えられます。

厚生年金の保険料支払いについて

厚生年金の保険料は「標準報酬月額×保険料率」で計算される

厚生年金保険の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に、共通の保険料率をかけて計算されます。それを事業主と被保険者が折半して負担します。そして、年金制度改正に基づいて、厚生年金の保険料率は平成16年から段階的に引き上げられてきました。それが平成29年9月に終了したため、今後の厚生年金保険料率は18.3%で固定となります。

出典:全国健康保険協会「平成30年度の協会けんぽの保険料率」

  • 標準報酬月額とは
  • 保険料や年金額の計算に「標準報酬月額」を使います。これは、被保険者の給与を一定の幅で区分したものです。ここでいう給与は基本給のほか、残業手当、通勤手当、住宅手当、などを含んだ税引き前のものを指します。報酬月額は毎年9月に、4月から6月の報酬月額をもとにして改定を行い、現在は1等級から31等級までの等級に分かれています。

  • 報酬とは
  • 厚生年金保険で標準報酬月収の対象になる報酬は、「被保険者が自分自身の労働の対償として受け取るもの」「事業所から一定に受け取るもので、被保険者の生計にあてられるもの」の2つの条件を満たすものです。

自分は厚生年金保険料をいくら払うのか

自分は厚生年金をいくら支払うのか、年金保険料試算ツールがありますので、ご自身の収入などの必要事項を入力してみてください。

保険料の納め方

厚生年金保険の保険料の徴収は、日本年金機構(年金事務所)が行なっています。事業主が事業所負担分の保険料と、被保険者が負担する保険料を毎月の保険料および賞与から差し引いた分を併せて翌月の末日までに納めます。

例えば、5月分の保険料納付期限は6月末日になということです。保険料を給与から差し引くときは、当月支払う予定の給料から前月の標準報酬月額に係る保険料を差し引くことができます。賞与の場合はその標準賞与額に係る保険料をその賞与から差し引きます。

保険料額は、事業主が提出した被保険者の資格取得や喪失、標準報酬月額および賞与支払などの変動に関わる届け出をもとに、毎月20日頃に事業所に送られてくる「保険料納入告知額通知書」または「保険料納入告知書」で知ることができます。

厚生年金の受給について

厚生年金の受給資格とは

  • 老齢厚生年金
  • 国民年金の老齢年金と老齢厚生年金の違いは、年金受給の開始年齢が生年月日により変わることです。詳細は日本年金機構のホームページで確認できます。そして、厚生年金に加入している人は、国民年金加入者がもらえる「老齢基礎年金」に加えて「老齢厚生年金」がもらえることになります。

    【受給条件】
    厚生年金保険の被保険者の期間が1ヶ月以上あること。つまり、厚生年金保険料を1ヶ月以上、納めていることです。

    出典:日本年金機構「厚生年金の受給開始年齢」

  • 障害厚生年金
  • 国民年金の加入者が1級~2級の障害が残った場合は、障害基礎年金を受給することができます。厚生年金加入者の場合、その障害基礎年金に加えて「障害厚生年金」をもらうことができます。そして、障害厚生年金の場合は1級~軽度の障害までが受給対象になっているため、範囲が広がっているところが特長として挙げられます。

    【受給要件】
    1. 厚生年金に加入中に障害の原因になったケガや病気での受診があること
    2. 一定の障害の状態であること
    3. 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間につき、保険料が納付されている、または免除されていること
    4. 初診日の時点で65歳未満であり、初診日のある前々月までの1年間で保険料の未納がないこと

  • 遺族年金
  • 厚生年金に加入している人は、遺族年金を受け取れる人の範囲が広いことと「遺族基礎年金と遺族厚生年金(夫の年金額の4分の3)がもらえるため、国民年金加入者よりも手厚い遺族年金になっています。受給のためには、死亡した厚生年金加入者が一定の厚生年金保険料(保険料納付済期間が、国民年金加入期間の3分の2以上)を納めている必要があります。

    【受給要件】
    1. 厚生年金加入者が在職中に亡くなった場合
    2. 厚生年金に加入中、死亡原因になったケガや病気での受診があること。そして初診日から5年以内に亡くなった場合
    3. 老齢年金の資格期間を満たした人が亡くなった場合
    4. 1級・2級の障害厚生年金を受けられる人が亡くなった

厚生年金受給額の計算方法

厚生年金の「老齢厚生年金」を受け取るためには、「老齢基礎年金の支給要件を満たしていること」と「厚生年金保険の被保険者期間が1ヶ月以上あること」が要件です。65歳未満の人に支給する場合は、1年以上の被保険者期間が必要)

  • 65歳未満の場合の受給額計算方法
  • 定額部分+報酬比率部分+加給年金額

計算方法の詳細は日本年金機構のサイトを御覧ください。

年金制度を知って損をしないようにしよう!

厚生年金について、どんな人が加入するのか、高齢になったらどのくらいの額の年金が受給できるのか、知っておかないと将来損をする可能性があります。転職した場合、手続きをしっかりすることや、結婚で名字が変わった場合に氏名の変更手続きをするなどして受給漏れがないようにしましょう。

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