残業代について詳しく知っておこう!計算方法・未払い請求の仕方・ゼロ法案などについて徹底解説

日々多忙に働いていると、必ず発生するのが残業です。毎月の給与明細で残業代をチェックしている方は多いと思いますが、その残業代が正しく払われているのか、自分で計算できる方は実は少ないかもしれません。もしかしたら未払い残業代が発生している可能性もあります。収入にダイレクトに影響してくる残業代について詳しく解説していきましょう。

残業代の基本知識

残業代について知りたい!計算方法、未払い残業代の請求などを徹底解説!

まず残業代について基本的な知識を押さえていきましょう。

残業代の計算式

残業代の計算式は以下の通りです。

残業代=残業した時間×基礎賃金(1時間当たり)×割増率



残業代を正しく計算するには、残業時間を正確に把握しておくこと、基礎賃金と割増率を明確にしておく必要があります。

残業時間を正確に知ろう

残業時間は、所定の労働時間を超える労働時間を指します。所定労働時間はおおむね8時間程度ですが、職場によって異なりますので、雇用契約書を見て確認しておきましょう。

残業時間を制限する法律や規則

  • 労働基準法

所定労働時間を規制している法律が、労働基準法(労基法)です。この労基法により、所定労働時間は、1日8時間まで、1週間で合計40時間までと規制されています。これを「法定労働時間」といい、法定労働時間をオーバーした分は、すべて残業時間になります。

また、労基法は休日についても規制しています。労基法にも基づき、雇用主は労働者に、1週間に1日(または4週間に4日)の休日を与える必要があります。これを「法定休日」と言います。もし法定休日に働いた場合は、勤務時間すべてが残業時間となります。

  • 36協定(さぶろくきょうてい)

もし、会社が法定労働時間を超えて残業させたい場合には、36協定(さぶろくきょうてい)が締結されている必要があります。36協定を締結することで、1ヶ月あたりの残業を45時間以内にするなど、残業時間の上限を決めることができます。

残業代の計算において、この36協定で決めた残業時間の上限は関係がありません。36協定の上限以上に残業した場合でも、実際に労働した時間が残業代の対象になります。

基礎賃金とは

基礎賃金は、残業1時間当たりの時給のことです。これは、1ヶ月当たりの基本給を時給換算して算出します。この基本給には、通勤手当やボーナスなどは含まれませんが、別途支給されている必要があります。

例えば、月間の基本給が20万円、1週間の労働時間が40時間の場合、1日当たりの基礎賃金は、以下の通りです。

20万円÷40時間÷4週=1,250円

割増率とは

割増率には、その勤務時間帯によって3種類に分かれます。

  1. 法定労働時間を超える残業
  2. 22:00〜5:00の時間帯におこなう深夜残業
  3. 法定休日に行なう勤務(残業)

それぞれの割増率を確認していきます。

法定労働時間を超える残業

法定労働時間を超える労働時間については、割増率は1.25倍です。

大企業において、1ヶ月の労働時間が法定労働時間よりも60時間以上になった場合、その超過部分の割増率は、1.5倍になります。

  • 22:00〜5:00の時間帯におこなう深夜残業

法定労働時間外の残業を、深夜帯(22:00から翌朝5:00まで)に行なう場合には、割増率は1.5倍になります。

また、中小企業ではない大企業において、1ヶ月の労働時間が法定労働時間よりも60時間以上になった場合、60時間を超えて、かつ深夜残業にも該当する残業時間の割増率は、1.75倍になります。

ちなみに中小企業では、1ヶ月の労働時間が法定労働時間より60時間を超えていても、割増率の加算はありません。

  • 法定休日に行なう勤務(残業)

法定休日に働いた時間は全て残業時間になります。割増率は、1.35倍になります。また、深夜残業にも該当する場合、割増率は1.6倍になります。

ただし、法定休日以外の休日に残業した場合は、通常の勤務日における残業の場合と同じ割増率が適用されます。

残業代を計算してみよう!

では、実際に残業代を計算してみましょう。残業代の計算式をもう一度確認します。

残業代=残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率

(例題)

1時間の基礎賃金が1,300円、法定労働時間が月160時間、法定休日以外で50時間残業した場合の残業時間はいくらでしょうか。深夜残業はしていません。

(例題の答え)

残業時間50時間の割増率は、1.25倍です。

50時間×1,300円×1.25倍=81,250円 これが残業代になります。

残業代にまつわる気になる情報

残業代について知りたい!計算方法、未払い残業代の請求などを徹底解説!

残業代に関して気になる情報がいくつかありますので、ご紹介していきましょう。

3月〜5月は残業するな!?残業と税金・社会保険料の関係

収入が上がると、税金や社会保険料が上がりますが、その算出方法はご存知でしょうか。

まず税金についてです。所得税は、毎月の基本給や役職手当・残業代などを足した金額に対して、住民税は、前年の収入全体に対して計算されています。そのため、残業をしすぎると納める税金も多くなりますが、収入も上がりますので、そこまで気にする必要はないでしょう。

残業するタイミングが大きく影響するのは、社会保険料の計算です。厚生年金保険料や健康保険料は、「標準報酬月額」というものが基準となって決まります。この標準報酬月額は、毎年4月・5月・6月に受け取った報酬の平均額を元に、毎年7月1日に決定されます。

そのため、3月〜5月に集中して残業してしまうと、その後1年間の厚生年金保険料と健康保険料が高くなってしまうのです。可能であれば、この期間は平均的な残業時間に収めた方が良いでしょう。

残業代ゼロ法案

残業代ゼロ法案は、正式名称を「日本型新裁量労働制」といい、平均年収3倍以上(年収1,075万円以上)の収入を得ている高度な専門職に対して、労働時間の規制をなくすというものです。

元々は2006年に話題に登りましたが成立せず、2017年の働き方改革に盛り込まれる形で復活し、2017年7月に閣議決定されたため、いつ施行されてもおかしくない状況になりました。

対象となる職業は、金融ディーラー、アナリスト、金融商品開発、コンサルタント、研究開発の5つとされ、年収が1,075万円以上であることが条件です。対象者は、残業時間の規制が撤廃されるほか、残業代も一切支払われなくなるため、「過労死法案」とも言われて問題視されています。

残業代ゼロ法案は、労働時間ではなく成果で評価することを目的とされていますが、目的通りの効果が出るかどうかは疑問の声が上がっています。対象になる方は相対的に少ないと思いますが、法律化するかどうか大注目です。

パートやアルバイトでも残業代は出るの?

パートやアルバイトでも残業代をもらえるかどうか気になる方も多いと思います。答えは「もらえます」。ただし、割増賃金の対象になるのは、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた部分です。決められたシフトを超えた時間というわけではないので、ご注意ください。

割増率は、法定労働時間を超えた残業時間に対しては1.25倍、深夜残業については1.5倍と、正社員を同じ割合です。長時間勤務しているパートやアルバイトの方は、給与明細で一度確認してみるといいでしょう。

未払い残業代を取り戻すには?

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残業代について解説してきましたが、「残業代が十分に支払われていなかった!」という方もいるかもしれません。その場合は、未払い残業代を請求することで、正しい残業代が支払われる可能性があります。この請求方法について説明していきます。

未払い残業代の証明に必要なもの

未払い残業代の証明には、いくつかの証拠資料が必要です。主な必要書類は以下の4つです。

  1. 雇用時に交わした雇用契約書や労働契約書
  2. 就業規則のコピー
  3. 勤務時間を立証する資料
  4. 残業時間中の労働内容を立証する資料
  • 雇用時に交わした雇用契約書や労働契約書

雇用契約内容が書かれた書類のことです。給与の計算方法や残業代の支給についても記載されているはずです。雇用されるときに交付されるので、きちんと保管しておきましょう。

  • 就業規則のコピー

労働者が10人以上いる職場では、就業規則の制定が義務になっています。作成された就業規則は、労働者が見ようと思えば見られる状態になっているはずですので、それをコピーして取得しておきましょう。

  • 勤務時間を立証する資料

あなたの出勤時間と退勤時間を証明する資料が必要です。会社のタイムカードや、ビルの入館履歴、使用している社内PCのログイン・ログアウト履歴、社内メールアカウントでのメール送受信などが証拠となります。ライムカードは手書きで改ざんされる可能性もありますので、改ざんしにくいものを証拠として取得しておきましょう。

  • 残業時間中の労働内容を立証する資料

しっかりと仕事をしていたとしても、残業時間内に遊んでいたのではないか?という疑いを、どうしても持たれてしまうことがあります。そのため、残業時間内に行なった業務内容を証明する資料が必要です。作業指示書や業務時間内に送受信したメールなどがあるとよいでしょう。

未払い残業代請求の証拠になりにくいもの

残業時間や残業時間内の仕事を証明するものとして、証拠になりにくいものもあります。例えば、業務時間に作成した走り書きやメモです。内容が不明確なものは証拠とはなりにくいです。そして、業務日誌も不定期につけたものでは説得力が低くなります。日記や業務日誌を証拠とするなら、毎日作成することを心がけましょう。

また、残業時間内の私用メールを使った送受信も証拠とはなりにくいです。業務には業務用のアカウントを使用するようにしましょう。

残業時間を証明できる資料がない場合は、請求できないの?

もし残業時間を証明できる資料がなかったとしても、未払い残業代の請求ができないわけではありません。

実は、労働基準法では、会社は労働者の労働時間の管理すること、労働時間の記録を3年間保存することが義務付けられています。また、労働時間の管理に関する資料を提供するよう要求された場合、会社は正当な理由なく拒むことはできません。そのため、証拠資料を会社側に請求することができるのです。

ただ、会社側の資料をあてにせず、自分でも資料を集めておいた方が安心でしょう。

未払い残業代の請求方法は4つ

証拠が揃ったら、いよいよ請求です。未払い残業代の請求方法は主に4通り存在します。それぞれメリットとデメリットが違いますので、どの方法が適しているか検討して請求しましょう。

  • 会社と直接交渉する場合

裁判に持ち込まなくても、会社と直接話し合うことによって解決することもできます。自分で請求することで、弁護士費用がかからないメリットもあります。

ただ、双方に話し合いの意思がないと解決は難しく、雇用主と被雇用者という立場の強弱もあるため、自分では請求しずらいという方も多いです。

  • 労働基準監督署に申告する場合

残業代未払い請求は労働トラブルに当たるため、きちんとした証拠があれば労働基準監督署に相談して対応してもらうこともできます。費用も発生しないので、気軽に相談することが可能です。また、残業時間の証拠があれば正確な残業代を計算してくれますし、匿名で申告をお願いすることもできるので、ぜひ相談してみましょう。

  • 通常訴訟で請求する場合

裁判所に提訴して、未払い残業代を請求する方法です。未払い分を取り戻せる可能性が高めで、未払い残業代だけでなく、労働基準法上の割増賃金と同額の付加金、遅延損害金も一緒に請求することができます。より多くの金額を請求したい方におすすめの方法です。

デメリットとしては、弁護士費用がかかること、個人で訴訟を起こすため、個人名が表に出ることです。在職中に訴訟を起こすときは、このデメリットを踏まえて検討した方がいいでしょう。

未払い残業代請求の要注意ポイント!時効は2年!

未払い残業代を請求するときに注意すべきことがあります。
未払い残業代の請求には証拠資料や、立件するための手間や費用がかかるため、「先延ばしにしたいな」と思う方もいらっしゃると思いますが、実は未払い残業代の請求には時効があります。労働基準法によって、賃金や災害補償の請求権は2年間に限るという時効が決められているのです。先延ばしにせず、なるべく早めに訴えるようにしましょう。

参照:労働問題弁護士ナビ

残業代を正しく受け取るために

残業代について知りたい!計算方法、未払い残業代の請求などを徹底解説!

残業代は、既定の労働時間よりも働いたことに対する、正当な報酬です。残業代が正しく支払われている会社であれば、安心して勤務できますが、もし不正があったら早めに行動を起こすべきでしょう。

万が一のときのために、日頃から自分の勤務時間を証明する資料を確保しておく癖をつけましょう。そして、未払い残業代があることがわかったら、時効で無効化してしまう前に行動して解決することをおすすめします。

参照:残業証拠レコーダー

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