【医師監修】18トリソミー(エドワーズ症候群)とは?原因や症状・治療法について

18トリソミー(エドワーズ症候群)と呼ばれる、染色体異常による先天性疾患をご存知でしょうか?ダウン症に次いで発症率の高い染色体異常とされています。18トリソミー(エドワーズ症候群)に関して、染色体異常になってしまう原因や診断方法、18トリソミー(エドワーズ症候群)による症状、予防や治療法などあるのかをご紹介します。

18トリソミー(エドワーズ症候群)って?

 生物の体はたくさんの細胞から出来ています。細胞のひとつひとつには細胞核があり、その中には染色体が2本1組になって入っています。染色体の中には遺伝情報がまとめられていて、染色体の数は生物によって異なり、人は23対46本の染色体があります。
このうち、22対44本が「常染色体」、1対2本が「性染色体」と呼ばれています。性染色体は性別を決める役割があります。常染色体は大きいものから順に1番から22番までの番号がつけられています。

 染色体の数や形が変わってしまうことを「染色体異常」といい、18トリソミーも染色体異常によって発症する先天性疾患のひとつです。18番目の染色体が1本多い、3本1組のトリソミー(三染色体性)となってしまうことから18トリソミー、または18トリソミー症候群と呼ばれています。1960年にイギリスのジョン・エドワーズにより報告されたことからエドワーズ症候群とも呼ばれています。
 他にも21番目の染色体が1本多い「21トリソミー(ダウン症候群)」や13番目の染色体が1本多い「13トリソミー(パトー症候群)」などがあります。

原因はまだはっきりわかっていない!

 18トリソミーを含め、染色体異常が起こってしまう原因は現在でもはっきりとしたことは分かっていませんが、出産する年齢が上がるにつれて染色体異常の発生率も上がる傾向にあるとされています。そのため、卵子や精子の老化が、染色体異常に関係しているのではないかと考えられています。

発症率や出生率は?

 18トリソミーの発症率は6,000人に1人だと言われていて、高齢出産になるほど発症する確率もあがるとされています。18トリソミーの場合、流産になる可能性も高く、8,000人に1人が生まれてくると言われています。

いつわかる?診断方法

 胎児の染色体異常は、妊娠中に出生前診断をすることで分かることがあります。出生前診断には超音波検査や母体血清マーカーテスト、NIPT(新型出生前診断)などがあります。

  • 超音波検査
  • 内臓や手足に異常がないか、首のうしろにむくみがないかなど形成異常の有無を調べます。超音波検査で形成異常が見られなかったからといって、染色体異常がないとは限りません。

  • 母体血清マーカーテスト
  • 妊婦さんの血液を少量採取し、血液中の成分の濃度を調べることで、お腹の赤ちゃんに染色体異常がないかを調べる検査です。この検査では「染色体異常がある」と確定することは出来ず、発症しているかどうかを確率として知ることができます。

  • NIPT(新型出生前診断)
  • 母体血清マーカーテストと同様に妊婦さんの血液を採取して行いますが、母体血清マーカーテストよりも精度が高いとされています。NIPT(新型出生前診断)は受けられる病院が限られていたり、自由診療のため費用が高額になる場合があります。

 子宮から羊水を採取する「羊水検査」、絨毛(胎盤から子宮壁に伸びる突起)を採取する「絨毛検査」といった確定検査もあります。これらの検査はどちらも診断時にお腹に針を刺すので、母体を傷付けて稀に流産してしまう可能性があります。
 出生後では18トリソミーの身体的特徴が現れていないかを見て診断され、染色体検査で確定されます。

18トリソミー(エドワーズ症候群)の症状

 18トリソミーではどんな症状があるのか、身体的特徴や疾患などについて説明します。

身体的特徴や疾患

 18トリソミーの身体的特徴として、顎が小さく、耳が通常よりも低い位置にあり(耳介低位)、耳の形が変形している場合があります。両目の間が離れていたり、頭が小さく後頭部は突き出していたり、首が短かかったりなどの特徴も見られることがあります。また、指が他の指に重なる握り方をしたり、小指がうまく曲がらないといった特徴もあります。
 18トリソミーの場合、子宮内での発育が遅いので、身長も体重も小さい状態で赤ちゃんが生まれます。また、先天性の心疾患である心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存など、心臓に疾患があったり、臓器異常を抱えていることが多いとされています。

妊娠中や出生後はどうなる?

 胎児が18トリソミーの場合、妊娠中から胎動が弱い、羊水が多い、胎盤が小さい、子宮内での発育が遅いなどの症状が見られます。
 18トリソミーは自然流産となってしまう場合が多く、無事に生まれても生後2ヶ月までに半数の赤ちゃんが亡くなり、1歳の誕生日まで生きられる確率は10%未満とされています。男の子の方が流産となる場合が多く、生まれてくるのは女の子の方が多いとされています。成長に伴って精神遅滞が見られることも多くあります。

≪18トリソミーを題材にした作品≫
 18トリソミーに限らず、赤ちゃんが何かしらの障害や病気と診断された場合、お父さんやお母さんは戸惑ったり、不安に思ってしまうのではないでしょうか。
 障害や病気に関して調べることで不安が解消されたり、実際に同じ症状の子がどのような生活を送ることが出来るのか分かることで、落ち着いて受け入れることが出来たりすることがあります。18トリソミーを題材にした作品がいくつかあるのでご紹介します。

  • 「いのちはプレゼント ぼくは18トリソミー」わたなべえいこ著  汐文社
  •  18トリソミーの男の子の誕生から退院までのお話が絵本になっています。体験に基づいた看病の様子など知ることが出来ます。「命をくれてありがとう ぼくは18トリソミー」(誕生から2歳までのお話)、「いのちをつないで ぼくは18トリソミー」(5歳までのお話)もあります。

     4組の夫婦のドキュメンタリー映画です。18トリソミーの男の子とそのご両親が出演されています。第2作の「ずっと、いっしょ」 にも出演されています。どちらもレンタルや販売はされておらず、上映会で見ることが出来ます。また、図書館向けのDVDが販売されているので、図書館にあれば図書館で貸出出来ることもあります。

 

予防や治療方法はある?

 18トリソミーは染色体異常による先天性疾患です。高齢での妊娠の場合は染色体異常が起こってしまう確率は上がるとされているので、赤ちゃんが18トリソミーをはじめとした染色体異常による先天性疾患にかかってしまう可能性はあります。しかし、はっきりとした原因も分かっておらず、何かに気を付けたからといって予防できるものでもありません。赤ちゃんが18トリソミーだからといって、自分を責めたりすることのないようにしましょう。
 
18トリソミーは治療方法は確立されていない遺伝子疾患です。完全に治ることはないので、様々な症状に対する対象療法が中心となります。最近では積極的に治療をする病院も出てきたので、以前よりも赤ちゃんが長く生きられることもあるようです。 

誰のせいでもない18トリソミー(エドワーズ症候群)

 染色体異常によって発症する、先天性疾患のひとつである18トリソミーは原因もはっきりと分かっておらず、予防できるものでもありません。高齢での妊娠は18トリソミーを含め、染色体異常の発症確率が上がります。染色体異常は出生前診断で診断出来ることもあります。出生前診断の結果によっては不安になってしまうこともありますが、本やインターネットで調べたり、18トリソミーを題材にした作品を見たりすることで知識が深まり、不安が小さくなる場合もあります。また、診断結果は一人で抱え込まず、夫婦や家族で受け止めるようにしましょう。

 18トリソミーは自然流産となる場合も多く、無事に生まれても1歳の誕生日を迎えられる赤ちゃんも多くはありません。妊娠中期までに見つかった場合は妊娠を継続するかどうか、判断が必要なことがあります。医師にもよく相談し、お腹の中の赤ちゃんや今後のことを夫婦でしっかりと考え、悔いのないように選択しましょう。

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