【医師監修】B型肝炎とは?感染経路や検査方法を知って未然に予防しよう

血液感染や母子感染などによって感染するB型肝炎。B型肝炎は、ニュースでも大きな話題になったことがありますので、名前は有名なのではないでしょうか。B型肝炎にかかると、肝硬変や肝細胞癌などにつながり、肝不全で亡くなることもある恐ろしい病気です。感染経路や検査方法、予防方法を知って正しい対策を行うことが必要です。

B型肝炎とは?

B型肝炎は、B型肝炎ウイルスというウイルスに感染することによって発症する病気です。ウイルス性肝炎のひとつに数えられています。肝炎ウイルスには8種類あり、B型肝炎ウイルスはその1つです。肝炎そのものは、肝炎ウイルス以外のウイルスでも発祥することがあります。非経口感染で、特に血液感染が指摘されています。

肝炎は重い病気になりやすいので、自治体や厚生労働省が肝炎ウイルス検査を推奨しています。感染症法と呼ばれる「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」において、五類感染症に指定されていて、病院などで発見された場合、報告が義務化されています。

同じ分類の中には、日本脳炎をはじめとした急性脳炎や、脳が萎縮して全身が意思とは関係ない動きをするようになったり、認知賞のような症状が出てしまう、クロイツフェルト・ヤコブ病などがあることから、重い病気であることがわかります。

B型肝炎ウイルスとは?

B型肝炎ウイルスは、ヘパドナウイルス科オルソヘパドナウイルス属のウイルスです。Hepatitis B Virusの頭文字をとってHBVと省略されることがあります。B型肝炎ウイルスの歴史は古く、8200万年前の鳥類の感染や、1210万年前の哺乳類の感染などが報告されています。人間に関しては、1883年にドイツで最初に報告されてから研究が進められ、現在では、肝炎との関係が明らかになっています。

B型肝炎ウイルスの直径は、約42ナノメートルです。通常の熱殺菌ではB型肝炎ウイルスを除去することはできません。どのくらい熱に強いかというと、通常のウイルスでは死滅するとされている10分程度の加熱処理をしても、ウイルスや感染する力が残っているほどです。B型肝炎ウイルスは遺伝子配列がある程度わかっているため、遺伝子配列の違いで遺伝子型と亜型に分類されます。

B型肝炎の感染経路は?

B型肝炎のウイルスは、血液を通じて感染します。感染経路は、垂直感染と水平感染に分けられることが多いです。垂直感染とは主に母子感染をさします。

B型肝炎ウイルスの歴史は古いですが、母子感染することが確認されたのは、1971年頃と言われています。母親がB型肝炎になっている、もしくはB型肝炎ウイルスを持った状態(キャリア)である場合、その母親から生まれてくる子供は、生まれながらにしてB型肝炎ウイルスに感染した状態になっています。

子供はそのまま大きくなることもありますが、大人になってから肝炎を発症してしまう可能性が考えられます。水平感染とは、外からの感染を言います。注射や輸血、臓器移植などの医療行為のほかに、性行為でも感染します。

B型肝炎に感染するとどうなるの?

B型肝炎ウイルスに感染すると、どのような病気になることが考えられるのでしょうか。一度感染してしまうと、感染した当初は症状が出ないことがほとんどです。また、感染予防を行わない限り、特に母子間においてはずっと感染し続ける持続感染となる点がポイントです。一度かかると消えないB型肝炎ウイルスが肝臓に起こす、4つの病気についてご紹介します。

急性B型肝炎

急性B型肝炎は、2週間から6週間潜伏期間を経て発病します。高熱が続き、嘔吐などの症状が出るようになります。肝臓が悪いときによく出てくる黄疸は、この時点では出てきません。黄疸が出るのは、発病してから、かなりの時間が過ぎ、悪化してくると出てきます。早期に治療することで、1~2か月で治りますが、治療を行っていない場合は、慢性B型肝炎になることがあります。

慢性B型肝炎

慢性B型肝炎は、急性B型肝炎から移行、もしくは、母子感染で生まれ持ってきた場合、幼児期にB型肝炎を発症した場合などは慢性B型肝炎になりやすいとされています。自覚症状があまりないので気がつくのが遅れる傾向にあります。女性より男性のほうが多くかかると言われています。慢性B型肝炎の場合、進行すると肝硬変や肝細胞癌になるリスクが高まります。

肝硬変

肝硬変は、肝臓の障害によって肝臓の細胞が死んでいき、その結果、肝臓が硬く変化してしまう病気です。肝硬変で死んでしまった肝臓の細胞は再生されないため、その部分の機能は失われます。また、肝細胞癌を併発することがあります。B型肝炎以外には、アルコールが原因のものや、胆管炎が原因になる場合があります。近年ではメタボリックシンドロームの人のように、脂肪の多い人の中に、肝臓に脂肪がついて起こる場合があります。

肝細胞癌

肝細胞癌は、肝細胞できる悪性腫瘍のことです。B型肝炎とC型肝炎から発症する人が多いのが特徴です。肝硬変を起こした場合は、肝細胞癌へのリスクが高くなるといわれていますが、他の肝炎と異なり、B型肝炎は、肝硬変になる前に肝細胞癌になることがあります。肝細胞癌は、見た目で兆候が出ないため、肝機能不全になった際に出る症状で発覚することが多く、その段階では肝機能がかなり働かなくなっている場合が高いです。また、肝硬変と違い、悪性腫瘍のため、周辺の臓器への転移もありますので、注意が必要です。

B型肝炎の検査方法

B型肝炎は複数の検査方法を組み合わせて行い判断されます。こちらでは、よく利用される検査方法をご紹介していきます。

問診

問診ではB型肝炎ウイルスへの感染原因を確認されます。輸血の経験や、過去の集団予防接種だけではなく、異性関係を聞かれることもあります。母子感染が疑われる場合は、出生時に母親が感染していなかったかを確認されたりします。

血液検査

血液検査でかなり情報を得ることができるようになりました。血液検査で得られる情報はウイルスの情報だけではなく、肝障害、肝機能、肝線維化 、癌の腫瘍マーカーなど、病状の進行状態を含みます。

画像検査

画像検査は主にレントゲンなどの診断です。画像に残りますので、後に比較することが可能です。画像検査にはいくつかの種類がありますのでご紹介します。

■腹部超音波検査
肝臓を超音波検査で確認すると、肋骨が障害となって影ができてしまうことがあります。そのため、腹部超音波検査で検査する際は、3ヶ所、または4ヶ所の地違う度から検査を行います。角度を変えて確認することで、死角を作らず、悪いところを見落とさないようにするためです。

■CT
X線による検査です。造影剤を使用して検査が行われます。肝臓を検査するときと、肺などを検査するときでは検査条件が違うので、同時に確認することはできません。これは、フィルムに焼き付ける際、どこをメインにするかで、撮影条件が変わってしまうためです。

■EOB・MRI
MRIは磁力を利用した検査です。MRIを撮影するときは造影剤を利用しますが、従来のガドリニウム造影剤では、肝臓が機能をしていない部分については取り込まれないため画像で区別するのが困難でした。2008年1月25日に、その弱点を克服した「EOB・プリモビスト注シリンジ」という造影剤が肝臓、肝細胞の撮影に特化したものとして発売されました。この造影剤では、正常な肝臓と、肝細胞癌を明確に区別して撮影できるように開発されているため、肝臓の撮影には多用されるようになりました。

病理組織検査

病理組織検査とは、病気の原因などを特定するために、組織を取り出し、さらに取り出したものを顕微鏡などを使ってさらに細かい検査を行うことです。その細かい検査を元に、本当にその病気だったのか、どのようなウイルスに感染していて、どのような治療が有効なのかなどを調べることもあります。肝臓に関しては主に3種類の検査があります。

■肝生検
肝生検は、おなかに針を刺して肝臓の組織や細胞の一部を取り出し、検査する方法です。超音波検査の機械で肝臓の位置を見ながら、もしくは、顕微鏡を利用して針を刺します。

■肝機能検査
肝機能検査のほとんどは血液検査だけでわかります。肝臓や胆管に以上があると、肝臓内の物質が血液に混ざるため、その物質の種類と量をみることで、肝臓の機能を知ることができるためです。血液検査結果の数値には、基準値がたくさんありますので、その基準値内におさまっているかどうか、もしくはクリアしているかどうかを見ていくことで問題がないかをチェックすることになります。

■B型肝炎ウイルス検査
B型肝炎ウイルス検査では、HBs抗原と呼ばれるたんぱく質の量を見ることで判定を行います。まず、HBs抗原をチェックし、もし感染の可能性がある陽性反応が出た場合は、さらに詳細の検査を行うことになります。

B型肝炎の治療方法は?

B型肝炎の治療方法としてあげられるのは主に2つです。ウイルスに対して働きかける抗ウイルス療法と、肝臓を守ることで進行しないようにする肝庇護療法です。ここではひとつずつご紹介していきます。

抗ウイルス療法

抗ウイルス療法はウイルスに対して働きかける薬を投与して治療する方法です。他のウイルスよりも、遺伝子の変異が少ないため、同じワクチンを長期にわたって使用することが可能ですが、副作用が出ることもあります。主に使われている抗ウイルス療法2種類をご紹介します。

■インターフェロン
インターフェロンは、抗ウイルス薬として増殖を抑制するために利用されます。他にも抗がん剤として用いられることがあります。
B型肝炎におけるインターフェロンの治療は副作用を伴います。それに加えて、必ずしも効果があるとは限りませんので、治療を行いながら効果が有るかどうかを確認する必要があります。投与の時期は初期、中期、後期で分けられますが、時期によって副作用の症状が異なります。また、検査の値が異常値になることもあります。副作用の症状によって、対処方法が異なりますので、医師と相談の上で、副作用への対処を行いながら投与をすることになります。

■核酸アナログ製剤
B型肝炎ウイルスの増殖を抑える内服薬です。副作用はインターフェロンより少ないとされています。ただし、核酸アナログ製剤で対応する場合は、何年にもわたって長期間服用を継続する必要が出てきます。他のウイルスよりも長期間使って効果はあるものの、薬に耐性のあるウイルスが今後出てこないとも限りません。

肝庇護療法

肝庇護療法はB型肝炎ウイルスに対して薬を投与するわけではなく、肝臓を保護することによって、治療を進める方法です。B型肝炎による炎症を抑えることで、肝細胞癌や肝硬変になるのを予防していく方法です。ここでも薬が利用されますが、インターフェロンのように強力であったり、核酸アナログ製剤のように長期間同じくすりを飲むものではありません。また、中には治療薬と併用できるものもあるため、病気の進行状況や体質にあった治療法のひとつとして考えるといいでしょう。肝庇護療法で利用される薬は、注射や飲み薬になります。
飲み薬の中には漢方薬もありますので、医師と相談してみましょう。

B型肝炎の予防方法は?

感染しないためには、予防が大切です。ここでは予防方法について説明していきます。母子感染の予防には、ワクチンの接種が有効とされています。妊娠前のに感染がわかった場合は対応が可能ですが、妊娠した場合、母親の治療を行うことは困難です。

そのため、妊娠してから発覚した場合、子供への感染自体は予防できないので、治療は生まれてすぐの乳児に行います。ひとつ目の方法は、B型肝炎ワクチンを生まれた直後と生後一ヵ月後と生後六ヵ月後の計三回受けさせる方法です。ふたつ目の方法は、抗HBV免疫グロブリン(HBIG)という、B型肝炎ウイルスを攻撃する抗体の濃度が濃い薬の摂取を行う方法です。子供にワクチンを接種することで、子供からの母子感染の予防や、発症リスクを減らすことにつながるのです。

医療関係者は色々な病気の人に接する機会が多く、その中にB型肝炎ウイルスを持っている人がいる可能性があるので、実習が始まる前からB型肝炎ワクチンの摂取をすることが労働安全衛生法で義務付けられています。また、海外へ渡航する人も、渡航する国や仕事によって、ワクチンの摂取対象になります。具体的には、北米、北・西ヨーロッパ、オセアニア以外への長期渡航で、血液を触る可能性のある人となりますが、ワクチンを複数回打つ可能性があるので、渡航が決まったら医療機関や検疫所で相談して摂取しましょう。

厚生労働省検疫所のサイトには新しい情報が随時公開されていますので、海外に行く際には参考になるでしょう。その他、性行為における感染は、コンドームを着用するだけでも予防につながります。色々な予防方法がありますが、ワクチンや製剤の投与が一番の予防になります。

B型肝炎の給付金って何?

日本では過去に予防接種の注射を使い回ししたことによって感染したことが問題になりました。現在、B型肝炎ウイルスを保有している人の30%は、幼児期の集団予防接種が原因と言われています。そして、予防接種で感染した人たちが、危険性を知りながら使い回しを容認していた国を相手に、集団訴訟を起こしました。長い裁判の末、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法というものが施行されました。

それによって、対象期間内に受けたの集団予防接種などで、B型肝炎ウイルスに感染した方、および、その方から母子感染した方、そして、感染者の相続人が給付の対象になります。裁判所による和解手続きによって、給付の対象者の認定が行われます。その認定を受けるためには、国に対して損害賠償を求める訴訟を一度起こす必要があります。認められると特定の支給額が支払われ、訴訟手当金および、検査費用、医療費なども支払われます。認定後に病状が悪化した場合は、給付金との差分が支給される場合があります。手続きや必要な書類がわかりにくいため、弁護士に依頼して請求するケースもたくさんあります。

医療のことではなく、こちらは法律のことなので、相談先は法律の専門家になります。もちろん、感染した理由が異なっていたり、別の経路から感染した場合の母子感染においてなどは給付の対象外です。そのほか、肝炎医療費助成制度という制度があります。給付金とは異なりますが、長期間、治療にかかり、さらに医療費が高額となるため、制度を利用することで治療費の軽減が見込めます。インターフェロン治療や核酸アナログ製剤治療には、医療費の助成が行われています。

原則として、受給できるのは1回1年以内とされていますが、条件によっては助成期間の延長が可能になりました。また、治療の効果が高いと認められた場合、2回目の利用が認められることもあります。制度を利用する場合、都道府県への申請が必要なので、住んでいる都道府県に問い合わせてみるといいでしょう。

徹底した予防と対策を

B型肝炎にはかからないのが一番です。予防できる限りの予防法を実践しましょう。B型肝炎にかかってしまっても、治療を進める方法が増えています。母子感染などを予防するための薬などもありますので、利用できる場合は利用しましょう。B型肝炎そのものが強いウイルスのため、薬を利用すると副作用が出る場合や、長期間利用しなければならない場合があります。B型肝炎の医療費は高額になります。長く治療にかかる上、薬も高額です。利用できる制度は利用して、費用の負担を軽減するようにしましょう。

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