【医師監修】子供が熱中症になったらどうする?症状と知っておきたい対策・応急処置方法

毎年夏が近づくと、熱中症という言葉がよく聞こえてきます。実は、子供のほうが大人より熱中症になりやすいと言われています。自分の子供や他人の子供が熱中症になったときに正しく対処できるよう、今のうちに熱中症予防や対策法などの知識を深めておきましょう。

子供が熱中症になりやすい理由とは?

気温が高くなってくると、同時に熱中症になるリスクも高くなってきます。大人も気をつけなければいけませんが、それよりも気をつけなければいけないのが子供です。実は、大人よりも子供のほうが熱中症になりやすいと言われています。その理由は一体なぜでしょうか。

大人より子供のほうが熱中症になりやすい?

子供は大人と違って体の機能が発達しきっていません。したがって、汗をかく機能も十分に発達しきっていないと言われています。子供はよく汗をかきますが、これは熱が体にこもらないようにするためにたくさんかいているのです。

なので、蒸し暑い場所などにいると汗をかいても体内に熱がこもりやすくなってしまいます。そのため大人よりも子供のほうが熱中症になりやすいのです。特に、自分で歩けない乳幼児などは自分で歩ける子供より更にリスクが高まります。自分で暑さを訴えたり、水を飲んだりすることができませんから、保護者はより気をつけなければいけません。

子供の熱中症は自覚症状がない?

そんな熱中症ですが、乳幼児以外の子供でも熱中症になっていることを自覚できない子供は多いと言われます。ただなんとなく熱っぽいとか、なんとなくだるいという感覚しかないからなのかもしれません。そのまま放っておくと、重症化してしまうケースも出てきてしまいます。

子供の熱中症を見抜くためには、やはり保護者がしっかりと気をつけてあげなければなりません。子供がつらそうにしていたら、適切な対応ができるようにしておくことも大切です。気づいたらぐったりしていて、重症化していたという可能性も考えられますので、子供に熱中症のサインが出ていたら、見逃さないようにしたいところです。

子供の熱中症の症状とは?


子供の熱中症を見抜くためには、まず熱中症がどのような症状なのか知っておく必要があります。子供の不調を見逃さないためにも、一度おさらいしておきましょう。

熱中症の症状は風邪に似ている?

熱中症は、熱が出ます。必ず発熱するわけではありませんが、場合によっては40度の高熱がでることもあります。しかし、夏風邪と勘違いしてしまう人も少なくありません。そもそも、風邪で高熱が出るのはウイルスを退治しようと免疫が働いているからです。一方、熱中症によって起こる発熱は体温が下がらないために引き起こります。

前述したように、熱中症は場合によって熱が40度を超えることもあります。熱中症によって起こる発熱はかなり重症化しているサインでもあります。はじめは、平熱や微熱程度で始まることもありますが、汗が流れ出てしまったために一気に熱が上がってしまうのです。この状態は命を落としかねないほど危険な状態ですので、速やかに救急車を呼び、体を冷やすようにします。首筋や脇の下などに太い血管が通っているので、その部分を氷などで重点的に冷やすようにしましょう。意識があるようでしたら、スポーツドリンクなどを飲ませるようにして下さい。

熱中症による発熱がある時に、解熱剤を使うのは危険です。解熱剤は感染症の際の熱を下げる効果はありますが、熱中症による発熱を下げる力はありません。薬を飲ませたから大丈夫だと思い込まないようにしましょう。

熱中症の5つの症状

熱中症になると、様々な症状がでます。もし、子供に下記のような症状が出たときは、まず熱中症を疑ってみてください。熱中症には大きく分けて4つの段階があります。熱失神→熱痙攣(けいれん)→熱疲労→熱射病の順番に重症化していきます。しかし、必ずこの順番で発症するわけではありませんので、なるべく初期の段階で気づくようにしたいところです。

特に熱中症の中では代表的な症状をまとめてみました。症状が重くなればなるほど見られる症状もありますので、なるべく初期の段階で対処するようにしましょう。

  • 嘔吐
  • 熱中症になると、吐き気や嘔吐などが起こります。これは、体の中にある消化器官の血液の量が減ってしまうからです。吐き気や嘔吐が現れた時、同時に脱水症状が起こっていることも多いです。かなり危険な状態になる一歩手前ですので、早急に処置をすることが大切です。

  • 頭痛
  • 頭痛は、脳の血液が減っていることが原因で引き起こります。頭痛の他に、全身のけだるさなども起こります。また、吐き気や嘔吐などの症状が一緒にでることもありますので、危険な状態です。

  • 腹痛
  • 腹痛は、腹筋がけいれんすることで引き起こります。体内にある水分の量が少なくなると、筋肉にけいれんが起こります。腹痛はこのメカニズムと同じです。また、腹痛と一緒に下痢が起こることもあります。下痢が一緒に起こると、かなり重症化しています。内臓に異常をきたしているので、水分補給をしたり体を冷やしてみたりして症状が回復しなければ病院へ連れて行くようにします。

  • 発熱
  • 熱中症では40度以上の高熱が見られることがあります。この状態はかなり危険で、熱射病と呼ばれる重度の状態です。意識障害が引き起こるケースもありますので、速やかに病院へ連れて行くようにします。

  • めまい
  • 熱失神と呼ばれる、熱中症の初期段階で起こる症状です。これは、脳の血液の量が減ってしまうことによって引き起こります。めまいやたちくらみが起きたら、無理せずに休ませてあげることが大切です。速やかに涼しいところに連れていき、水分補給をさせましょう。

様子がおかしいのであればまずは医療機関へ

小さな子供は、自分が熱中症であることを自覚できませんから、なんとなく体調が悪いことを訴えます。上にあげた症状の他にも、赤ら顔や汗の量、喉の渇きなどにも症状は見られます。子供の体調不良の前後に、炎天下の中で遊んでいたり、水分をあまり飲んでいなかったりしていないか思い出してみてください。

乳幼児の場合だと、授乳を嫌がることもあるようです。その場合だと、水分補給ができません。少しでも熱中症に当てはまる症状が見られたら、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。

子供が熱中症になりやすいケースとは?

子供が熱中症になりやすい場所と聞くと、真っ先に屋外を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、屋外にかぎらず室内でも熱中症が起きることはあります。エアコンが効いているから大丈夫!と過信せず、子供の体調を気遣ってあげるようにしたほうがいいでしょう。
クーラーが効いている部屋は確かに涼しく、熱中症にはなりづらいのですが、一歩暑いところへ出た時の気温の差に体がうまく対応できず、熱中症になってしまうそうです。特に、浴室キッチントイレなどが熱中症になりやすい場所として知られています。室内は盲点だった人も多いはず。熱が溜まりそうな場所を予め確認しておき、風通しをよくしておくと防ぐことができます。

スポーツやバーベキューなど外で行う遊びの場

外で行うスポーツはたくさんあります。サッカーに野球などをするには天気のいい日に限ります。また、バーベキューなどのイベントも外で行うのにもってこいでしょう。しかし、楽しい反面、危険はつきものです。テンションが上がっているとなかなか異変には気づかないもの。特に蒸し暑い日などは子供の体調面を気遣ってあげるようにしてあげましょう。自分が楽しむことも大切ですが、それ以上に子供を気にかけてあげることが大切でしょう。

海やプールなど水の中

暑い日に海やプールに入るのは気持ちがいいことです。他のスポーツと比べて水の中なので、熱中症になりにくそうなイメージがありますが、大人でも死亡事故が起きるくらい危険な場所でもあります。水の水温が高いと、体温が下がりにくくなり熱中症を引き起こしてしまいます。特に、近年は夜になっても気温が高いため、水の温度が下がりにくくなっているのも一つの原因だそうです。水の中=冷たくて気持ちいいという認識は近年間違ってきているのかもしれません。もし、遊びに行った先の海やプールの水温がぬるかった場合はこまめに休憩を取るのがベストです。

体育や運動会、部活などの学校行事

暑い時期に屋外で行われる体育や運動会。実はかなり熱中症になるリスクが潜んでいます。特に応援する子供は炎天下の中で待機させられることも多いです。なるべく水分補給させることや帽子をかぶらせてあげることが大切でしょう。

また、室内外問わず行われる部活なども夏場は注意が必要です。特に体育館などの屋内で行われる部活は注意しましょう。また、運動部以外の文化部も、エアコンのない蒸し暑い部屋で長時間活動するのは危険です。こまめに休憩や水分補給をするように指導しましょう。また、通学路を歩く際も気温の変化で体調を崩しかねませんので、帽子をかぶせたり日陰を通らせたりすることを教えるようにしましょう。

蒸し暑い部屋や車内

クーラーが効いていない部屋は、熱中症になりやすい場所でもあります。自分でクーラーのリモコンが入れられる年齢ならまだしも、自分ではなにもできない乳児や幼児をそのままにするのは避けましょう。また、クーラーの効いていない車内に子供を残しておくのも危険です。車内が40度を超える可能性もあるからです。短時間だから…という気持ちが事故につながってしまいます。車内に置き去りにするのは絶対にやめましょう。

外遊びをしている時

活発な子供だと、気温の高い日でもへっちゃらで遊び回るでしょう。一昔前だと微笑ましい光景でしたが、最近は気温が上昇しているため、むやみに外出させるのは危険です。特に、道路などアスファルトの地面は熱を反射させる作用があるので、長く居続けると熱中症になりかねません。暑い日は屋内で遊ばせたり、長居しないように注意したりする必要があります。

ベビーカーでの移動中

自分で歩けない乳幼児は、ベビーカーでの移動が主です。実はベビーカー、大人よりも地面に近いところにいるため、大人が感じているよりも気温が高い可能性があります。地面からの熱の照り返しもあるため、真夏日にベビーカーで乳幼児を連れ歩くのはあまりおすすめできません。

どうしても外出する用事があるのであれば、なるべく日陰を通ったり短時間だけ行動したりするようにしましょう。ひさしもつけてあげるとより効果的です。乳幼児は、まだ言葉をうまく話すことができません。いつもと様子が違うのであれば、体調を気遣ってあげてください。

子供が熱中症になった時の応急処置方法とは?

子供の熱中症は決して他人事ではなく、誰にでも起こりうる症状です。もし、自分の子供や知り合いの子供が目の前で熱中症になってしまったら、応急処置をしてあげなければなりません。しかし、適当に行ってしまうと効果が出るものも出なくなってしまいます。今一度正しい応急処置の方法を学んでおきましょう。

クーラーなどが効いている涼しい場所に移動させる

熱中症と思わしき症状が現れたなら、速やかに風通しのいい場所やクーラーの効いている部屋へ移動させます。そして、熱がこもってしまうので着ている衣服を脱がせます。脱がせられないときは、なるべく緩めるようにします。そして、首筋や足の付根、脇の下などに氷や保冷剤で冷やします。冷やすことによって、体温を下げることができます。また、うちわや扇子などで仰ぐのも効果的です。

水分と塩分を補給させる

熱中症は、体の温度が上がってしまったために起こってしまいます。症状が進むと、大量の汗が吹き出ますので、失われた水分を補うためにも水分補給をさせましょう。そのままにしてしまうと、脱水症状を起こしかねないからです。また、汗には塩分も含まれています。できれば水分補給はただの水やお茶ではなく、水分と塩分が同時に補給できるスポーツドリンクが好ましいです。

しかし、吐き気や嘔吐があるとき、意識障害が起きているときは胃腸の機能が低下してしまっているので、無理に水分補給させるのはよくありません。医療機関で点滴などをしてもらうのが最適でしょう。

重度の場合は救急車で病院へ

熱中症は、症状が重症になっていくに連れて、命を落としかねないほど深刻な状況になってしまいます。話しかけても意識がなかったり、高熱が出たりしたときは医療機関を受診するか、救急車を呼んで病院へ搬送しましょう。

病院ではとにかく体を冷やすために冷却療法という処置が行われます。また、失われた水分や塩分を補うために点滴が行われます。たかが熱中症…と甘く見ずに専門医に任せましょう。

子供の熱中症の予防と対策方法とは?


毎年、夏場になると熱中症に関する番組やニュースが流れます。自分では気をつけていたつもりだけど、子供が熱中症になってしまった…というケースもあるかもしれません。辛い思いをさせないためにも、子供が熱中症にならないための対策と予防法を知っておくべきです。

水分補給をこまめにする

熱中症は、体温が下げられなくなってしまうために起こってしまいます。暑いところに行かないのが一番ですが、生活上そんなわけにもいきませんよね。ですので、まず大前提として水分補給はこまめに行いましょう。体内に水があれば、汗として流れ出てきます。汗をかくことで、体温が下がりますから、熱中症になるリスクも下げられます。

ただし、ジュースは糖分がたくさん入っていますし、水分補給するための飲み物としてはあまりおすすめできません。甘い飲み物を好むのであれば、ポカリやアクエリアスといったスポーツドリンクがおすすめですが、スポーツドリンクも糖分を含むことには変わらず、糖分過多にならないように気をつけ、水で薄めたり水と交互に飲んだりと工夫が必要です。
また、最近はノンカフェインが重視されているため、麦茶を好んで飲む人も増えているようです。実のところ、緑茶などカフェインを多く含む飲み物は利尿作用があるため、体内の水分を排出してしまいます。また、ミネラルを含んでおり、糖分も含まれていないので糖分のとりすぎも防げます。保育園や幼稚園、学校などでスポーツドリンクが禁止されているのであれば、麦茶を持っていくことをおすすめします。

また、遊びに行かせるときはいつでも水分補給ができるように飲料水の入った水筒を持って行かせるようにしましょう。

エアコンなどで室内の温度を下げる

屋内で遊ばせるのであれば扇風機やエアコンで温度と湿度を快適にコントロールしましょう。高い湿度はかいた汗の蒸発を妨げ、体温が下がりにくくなる原因となるため、湿度の調整が鍵になります。
しかし、先程も言ったように屋内でも熱中症になるリスクはあります。一室を閉め切って涼しくするのもいいですが、他の場所も熱がこもらないようにするべきです。特にお風呂やトイレなどは熱がこもりやすいので窓を開けるようにしてみましょう。

食事をする

熱中症は、体が弱っているときにも起こりやすい症状です。気温が高いと食事をしにくくなったり、寝付きが悪くなったりするかもしれませんが、この習慣が長引いてしまうと危険です。できるだけ3食きっちり食べさせ、早めに寝かしつけるようにします。また、熱中症予防に効果的だといわれる食材を積極的に調理してみましょう。体の免疫力を高めてくれる食材や、ビタミンをたくさん摂取できる食材が好ましいです。

涼しい服装をする

TPOという言葉があるように、季節によってふさわしい服装は決まっています。夏場なら、半袖や半ズボンがふさわしいでしょう。熱がこもらないような服装をするべきです。また、通気性がいいような材質の服を着たり、汗を吸ってくれる肌着を着用したりするのもおすすめです。

外出する際は、日差しから守るために帽子などを着用しましょう。とても小さなことですが、涼しい服装をすることを守るだけで熱中症から子供を守ることができます。子供の服を買うときは、デザインだけでなく生地や機能性にもこだわってみましょう。

子供だけを車内に残さない

子供を車内に残したまま外出し、死亡してしまったという痛ましい事件は年間で何件も起きています。ほんの短時間だし、よく寝ているから…という気持ちが子供を苦しめる原因になりかねません。車内はクーラーがついているから大丈夫!と思う人もいるかもしれませんが、クーラーは室内を乾燥させます。

車内は狭い空間ですから、脱水症状になりかねません。特に、体が小さくて未発達の乳幼児は熱中症になりかねません。クーラーがついているからと安心せず、必ず子供を連れて外に出るようにしましょう。

日頃から暑い場所になれさせておく

エアコンの冷たい風に当たりすぎていると、今度は体が弱くなってしまう弊害が起きてしまいます。涼しい部屋に居続けると、体の機能が正常に働くなる可能性もありますので、気温が高すぎない日や、朝夕の涼しい時間帯に外に出るという方法も取り入れてみましょう。無理させすぎるのも、無理をさせなさすぎるのも危険ということです。



参考サイト:熱中症ゼロへ東京都こども医療ガイド全日本病院協会

子供を熱中症にさせないために気をつけよう

子供は大人よりも熱中症になるリスクが高いことがわかりました。適切な対策や症状を知っておくことで、なにかあっても対応することができます。また、熱中症になった次の日は、回復しても体力が落ちてしまっているので、無理をさせないようにしましょう。暑い夏は熱中症に気をつけて乗り切りましょう。

0