【医師監修】子どもの思春期、親はどうしたらいいの?~心身の変化と親子関係の変化について~

【医師監修】子どもの思春期、親はどうしたらいいの?~心身の変化と親子関係の変化について~

福田敬子 先生

幼い時は無邪気にパパ・ママを頼っていた子どもも、成長するにつれて色々なことで悩み、自立しようともがきます。大人への通過点である思春期は、心身ともにとてもデリケートな時期です。今回は「思春期とは何か?」という視点から、よくある悩みや対処法についてまとめました。

医学的に見た思春期

思春期の定義

思春期について、広辞苑にはこう記載されています。
「第二次性徴があらわれ、生殖可能となる時期。11~12歳から16~17歳までくらいの時期。春季(色情)発動期。」
医学的には、身体が生殖機能を獲得するまでめまぐるしく変化する時期のことを指します。男の子は精巣が3ml~4ml以上になったとき、女の子は乳房がふくらみはじめたときを思春期の始まりとします。この時期に急激に身長が伸びることも大きな特徴です。

思春期はいつまで続く?

思春期の始まりや現れ方には個人差がありますが、だいだい18歳くらいで落ち着くことが多いようです。親も子も、悩みが強いほど「この苦しさはいつになったら終わるのか…」という気持ちが強くなるものですが、特効薬のような解決策はなく「いつかは終わる」「数年で終わる」という気持ちで乗り越えるしかないようです。

思春期早発症とは

第二次性徴の発現が、平均より2~3年早く始まってしまうことを思春期早発症と言います。男の子は9歳より前に精巣が発達してくる場合、女の子は7歳6カ月より前に乳房が発達してくる場合がこれにあたります。最初のうちは気がつきにくいこともありますが、身体の発育が十分でないうちに思春期がはじまると以下のような問題が起こります。

  • 身体が大きく変化するため「自分は病気ではないか」「自分は他の子と違う」と本人が思い悩むケースがある
  • 見た目の変化を他の子にからかわれるなど、人付き合いが難しくなる
  • 生殖機能の成熟とともに身長の伸びが止まるため、身長が低いうちに思春期がはじまると、最終的に低身長のまま大人になってしまう
  • 性ホルモンをつかさどる脳や副腎などの腫瘍が発症の原因である場合、早期に発見して治療を行わないと生死にかかわる

特に女の子の発症が多く、男の子の3倍~5倍といわれていますが、身体に異常がみられず原因不明のこともあります。また男の子が発症した場合、大きな病気が隠れていることも多いとのことです。いずれにしても、子どもが違和感を訴えるなどして発症が疑われるときは、早めに専門医の診察を受けてください。

思春期外来とは

思春期の子どもは心身共にとても不安定です。体調不良になっても、抑うつ症状が出ても、投薬治療だけでは根本的な解決にならないこともあります。そんな子どもたちに対して、医師が時間をかけてその子に合ったケアをしてくれるのが思春期外来です。投薬に加えてカウンセリングを行ったり、時には教育的な指導をしたりと、思春期の子どもや親が抱える諸問題に人間力で向き合っていくのが特徴です。

起立性調節障害(朝起きられない)・ADHD(じっとしていられないといった発達障害)・摂食障害(拒食症や過食症)などの「病気」から、不登校・家庭内暴力・リストカットなどの「問題行動」まで、取り扱う問題はさまざまです。
思春期外来がある病院は限られていますが、インターネット検索で調べることができます。お近くの病院で見つかれば、受診してみるのもよいでしょう。ただし医師にとっても多大な時間とエネルギーを費やすため、現状ではあまり多くの患者を受け入れることが難しいようです。

気になるからだの変化


子どもが大人になっていく過程で、男の子は男性らしく、女の子は女性らしく身体が変化していきます。また身長も急激に伸びますが、生殖機能の成熟が落ちつくころには止まります。身体の特徴的な変化は以下の通りです。

男の子の場合

  • 体毛(ひげ、わき毛など)が生える
  • 性毛が生える
  • 筋肉質でがっしりとした体形になる
  • 声変わりする
  • 喉仏が大きくなる
  • 性器が発達する
  • 射精が起きる

女の子の場合

  • 乳房が発達する
  • 体毛(わき毛)が生える
  • 性毛が生える
  • 初経(月経)が始まる
  • 脂肪が増え、体つきが丸みをおびてくる

ニキビ、肌荒れ…思春期に多い肌の悩み

思春期の悩みの中で、最も多いのがニキビです。他人の目が気になり、自分の見た目やファッションにも気を遣いだす時期ですので、肌の悩みは深刻です。
成長ホルモンや性ホルモンの影響で皮脂の分泌が盛んになると、毛穴が詰まって「思春期ニキビ」を引き起こします。健康的な食事・適度な睡眠などの規則正しい生活を心がけ、肌を清潔に保つことでニキビを予防することはできますが、洗いすぎはかえって肌を傷めてしまうので要注意です。ニキビ用の洗顔料や化粧品も市販されていますが、あまりに肌荒れが気になる場合は皮膚科で診察してもらうことをおすすめします。
アトピー性皮膚炎を起こしやすい体質の場合、思春期になって悪化したり、頸部や顔にまで広がったりと思春期特有の症状が出ることもあります。アトピー性皮膚炎の原因は人によって違うため、自分の症状の経過を整理したうえで皮膚科を受診するようにしましょう。

思春期の心理


身体には急激な変化が起こっているのに、精神面の成長が追いつかない…思春期の子どもの心理状態は非常に不安定です。異性への興味が湧く時期でもあり、人からどう見られているかを細かく気にするようになります。

立場の変化と心身の変化

異性の目が気になる、自分が友達からどう思われているか気になるなど、思春期に入ると「自分」と「他人」との関係性について考えることが多くなります。自分の中にもう一人の自分がいるような感覚があり、自分を客観的に捉え始めます。親に対しても反抗的な態度をとるようになり、自分を一人前の大人として認めてほしいと考えるようになります。しかし現実的には自分ひとりで出来ることは少なく、イライラしやすいのが特徴です。
この頃は子どもを取り巻く環境にも大きな変化があります。小学校から中学校・高校になるにつれて成績の重要性が高まりますし 、子どもらしさよりも大人(男性・女性)としての判断を求められるようになります。また異性にモテるか、経済的に豊かであるかなど、さまざまな要素で自分と他人との違いを感じます。そのため思春期の子どもは、自分を磨くために多大なエネルギーを注いだり、劣等感に悩んだりすることが多くなります。ただでさえ心身ともにアンバランスな状態のなか、環境の変化についていけずに精神疾患を発症するケースも珍しくありません。

思春期と謎の言動

大人になった今から思えば、あれは何だったのだろう?と思えるようなことですが、思春期の子どもは毎日色々なことを考えています。学生としても未成年としても制約が多い中で、また知識も経験も少ない中で、なんとか自分のアイデンティティを確立させようと試行錯誤しているのです。「人とは違う、個性的な自分」を求めるものの何をしていいかわからず、服装や言動が不自然になることがあります。反対に、周囲から浮かないようにと空気を読みすぎて、何も出来なくなってしまうこともあります。魔法などの特殊能力に憧れたり、「病み」をアピールしたりなど、大人には理解しがたい言動が多く見られるのもこの時期の特徴です。大人から見れば危なっかしいですが、思春期の失敗は後で取り返せるものがほとんどなので「人を傷つけない」など基本的なこと以外は注意する必要もないでしょう。

男の子の思春期に戸惑う母親は多い!?


幼いころは「ママ!ママ!」と抱っこをせがんで甘えてきた息子が、思春期になったとたんに無口になったりぶっきらぼうになったり…あまりの変化に、親が戸惑うことも珍しくありません。親として「自分の接し方が悪かったのか?」と深く思い悩んでしまうケースもあります。

何を聞いても「別に…」

以前は学校のことや友達のことをなんでも話してくれた息子が、突然「うるさい」「別に…」としか言わなくなることがあります。親目線では大変心配になりますが、無愛想な態度を口うるさく叱ったり、何があったのかを必要以上に問い詰めたりすることは逆効果です。思春期の子どもは身体や環境の変化に対応するのに精一杯で余裕がなく、今の自分の状態を言葉で細かく表現することができません。特に男の子は女の子のような多彩な表現方法を持たないため、押し黙ったり暴れたりすることが多くなります。
子どもにとって大切なものが親の価値観にそぐわない場合、子どもが「好き」を貫くのは簡単なことではありません。「親が自分の気持ちをわかってくれている」と感じれば子どもは安心しますが、くだらないと批判されたり、話を聞いてくれないと感じた場合には一層心を閉ざしてしまいます。

親はどうしたらいいの?

思春期の子どもは、心身のめまぐるしい変化に振り回されているだけです。その子が突然、別人に変わってしまったわけではありません。本人は不器用ながらも、親から離れて一人前の男性になるため必死に頑張っているのです。親としては淋しい気持ちもあるでしょうが、必要以上に声をかけず、少し離れた場所から温かい目で見守ってあげて下さい。思春期が終わる頃には態度も落ち着いてくることが多いようです。

女の子の親にはまた違う大変さがある

女の子の場合、月経の始まりとともに母親から身体の大切さを学ぶことはとても重要です。望まぬ妊娠、性感染症などのリスクはもちろん、異性を意識した過度なダイエットの危険性や婦人科系の病気の怖さについても話す必要があります。基礎体温を付けて自分の生理周期を把握したり、定期的に婦人科検診を受けたりなど、母親がアドバイスできることはたくさんありますので、きめ細かいコミュニケーションをとるよう心がけてください。
思春期の女の子は父親に極端な嫌悪感を抱くものですが、母親に対しては友達のように接することも多いです。ただし母と娘の距離が近すぎると、母親の価値観が絶対となり娘の自立が妨げられる場合がありますので、親子が別人格であることをしっかり認識する必要があります。

思春期は成長の証!大きな心で見守ろう

いかがでしたか?「まだ子ども」だと思っていた我が子が急に大人びていくと、親は心配になったり、寂しさや不安を感じることもあります。しかし子ども自身もまた、自分の変化に戸惑いながら懸命に自立しようとしているのです。わが子を信じ、ブレない姿勢で見守ってあげて下さい。子どもの思春期は、親にとっても子離れの時期です。生き生きとした背中を子どもに見せることで「安心して大人になっていいよ」というメッセージを伝えてあげましょう。

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