【医師監修】腹痛や嘔吐に発熱‥子どものインフルエンザの種類や症状、予防について

歴史的にはかなり古くから流行をしていたと言われていますが、未だに毎年流行するのがインフルエンザです。インフルエンザにはさまざまな種類があります。種類によって色々な症状も出てきます。ここでは色々なインフルエンザの種類や症状、治療法、予防方法を取り上げていきます。

インフルエンザとは?

インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症です。古代エジプト時代から、このような感染症があったという記録が残っているくらい、古くから存在していたとされる病気です。

ただし、古い時代においては感染症の病原菌を特定する術がなかったため、記録に残っている症状から、インフルエンザの流行が疑われているというのが正しいようです。

さまざまな国の記録に、インフルエンザに似た症状のはやり病に対する記述がありますが、インフルエンザが、ウイルスによる感染症だと特定されたのは1900年代に入ってからでした。

その後、ウイルスに対する研究が進み、種類が特定されたり、ワクチンが開発されたりして、現在に至ります。

インフルエンザウイルスとは?

インフルエンザウイルスとは、オルトミクソウイルス科に属するウイルスの一種です。A型インフルエンザ、B型インフルエンザ 、C型インフルエンザ、いずれもここに属しています。A型、B型、C型には、抗原性の違い、病原的な違い、形態的な違い、遺伝子上の違いがあます。

また、A型に限っては、同じ型のものであっても、複数の亜型と株に分類されるため、多くの種類があることになります。

インフルエンザの種類

インフルエンザは大きく分けてA型、B型、C型に分類されます。ここでは、型別にご紹介していきます。

A型インフルエンザ

A型インフルエンザは、ヒトだけではなく、豚、馬、鳥などに感染します。このインフルエンザは、インフルエンザウイルスの中で最初に発見されたものです。また、一番流行しやすいウイルスとして知られているため、さまざまな研究が進められています。わかっているだけで、亜型には126種類以上あるとされています。

通常のウイルスのサイズは、直径80から120ナノミクロンとかなり小さいものですが、実験室で培養すると、光学顕微鏡で観察できる大きさになることもあります。このウイルスが体内に入って、気道上皮細胞(主にのどの粘膜)などにくっつくきます。くっついたウイルスは、そこから細胞の中に入っていきます。この段階で感染となり、そこで増殖をはじめます。

主にのどにくっついて広がったウイルスは、飛沫感染などで広がったり、ウイルスを含んだ水を介して広がったりするようになります。A型インフルエンザは突然変異が多く起こるウイルスです。突然変異したウイルスは、変異の仕方によって、ヒトがより感染しやすくなったり、免疫がないため重症化しやすくなったり、薬が効かなかったりすることがあります。

B型インフルエンザ

B型インフルエンザは、ヒトと、アザラシやオットセイなどに代表される鰭脚類のみに感染するインフルエンザです。B型インフルエンザは感染するとA型に似た症状が出るため区別が難しいとされています。しかし、A型とは構造が異なっているため、薬などは違うものが使われます。そして、B型インフルエンザにおいては、現在確認されているのは一種類だけとなっています。

A型インフルエンザよりも、種類や感染ルートが狭いため、大流行につながることは少ないです。また、症状もA型インフルエンザよりも軽くてすむ傾向にあります。突然変異なども確認されていないため、ワクチンを接種すれば、高い効果が得られると考えられています。

C型インフルエンザ

C型インフルエンザは、ヒト以外に、豚などに感染することが確認されています。A型とB型とは異なる構造で、B型と同じく、ウイルスは1種類のみでA型とB型より重度の症状が出ることは少ないです。ただし、年中感染の可能性があり、季節性はありません。そして、一度かかると免疫ができて、今後かかることがないと言われています。

たいていは6歳未満の時に一度感染しているため、大人になってから症状が出る人はまれです。他の病気では子供のときに感染するよりも、大人になってから感染したほうが病気が重くなることが多いですが、大人になってから感染しても、症状はほとんど変わらないのが特徴です。症状は、鼻かぜ程度、もしくはのどの痛みが出ることもありますが、非常に軽くてすみます。そして、あまり大規模な感染を引き起こすことはありません。

インフルエンザの症状は?

インフルエンザの症状は、普通の風邪と同じように、咳、鼻水、のどの痛みなどが現れます。これだけではなく、頭痛、発熱、関節痛、筋肉痛などの痛み、全身の倦怠感も出てきます。これらの症状は、急に現れます。大人でも辛い症状ばかりですが、高齢者がかかった場合は、肺炎を起こしやすく、子供がかかった場合は脳炎を起こしやすいので、特に注意しましょう。

また、感染力が強いので、短期間で多くの人に感染するという特徴があります。一番流行するのは、A型のインフルエンザです。12月から3月くらいがピークとされていますが、まれに4月などに感染者が多いと、学校の開始とともに広がり、長い期間流行することがあります。流行に関する情報は厚生労働省の公式サイトなどでも告知されていますので、年度ごとの情報が必要な場合は適宜確認するといいでしょう。

インフルエンザの症状が出たときは?

インフルエンザかも?という症状が出た場合は、病院へ行きましょう。インフルエンザ菌が原因の場合、市販の薬ではなかなか効果を得ることができません。できるだけ早く、インフルエンザの治療薬を投与する方が、予後もよく、早く治すことができます。また、マスクをして、回りを感染させないように注意しましょう。

自宅では、睡眠と水分をたくさんとるようにしましょう。睡眠をとることは体力を維持することにつながります。インフルエンザになると水分がたくさん失われます。その分を補給する必要があるのと、乾燥すると、免疫力が落ちるので、特にのどなどを潤して免疫力を維持する必要があるためです。

水が飲みにくいのであれば、スポーツ飲料やスープなどでも問題ありません。あとはカキ氷のような、細かい氷を口に含ませていく方法もあります。子供であれば、登園、登校をせず、大人であれば通勤をしないようにしましょう。特に、幼稚園、保育園、学校に関しては、学校保健安全施行規則(学校保健安全法)に基づいて、登園、登校、出席停止の措置がとられます。その間は安静にして早く直すよう、治療に専念しましょう。

インフルエンザに感染すると、異常行動を起こす子供がまれにいますので、自宅で療養する場合は、できるだけ目を離さないようにしましょう。

インフルエンザの治療法

インフルエンザに有効な治療方法は、抗インフルエンザウイルス薬を利用することです。ここでは、治療に使われることの多い、抗インフルエンザウイルス薬を中心にご紹介していきます。

インフルエンザの治療薬

インフルエンザの治療薬は複数存在しています。多くの薬がありますが、持病があったり、別の薬を利用していたり、妊婦さんで合ったりすると利用できない薬もあります。どの薬が処方されるかは医師の判断によって決定されるので、ここでは省略します。商品名のほうが有名なものが多いので、合わせて商品の名前もご紹介していきます。

■オセルタミビルリン酸塩

商品名「タミフル」として有名です。中華料理に使う、八角という香辛料から合成ができるものです。A型インフルエンザウイルスと、B型インフルエンザウイルスに有効とされていますが、C型インフルエンザには無効です。子供から大人まで利用しやすいカプセルの飲み薬、もしくは、シロップになっている飲み薬があるため、乳幼児から高齢者まで幅広く利用が可能です。世界ではインフルエンザ予防薬として利用している国もありますが、日本では予防薬としての処方は保険適応外となっています。

■ザナミビル水和物

商品名「リレンザ」として有名です。こちらは世界で初めて開発されたインフルエンザの治療薬です。A型インフルエンザウイルスと、B型インフルエンザウイルスに有効とされていますが、C型インフルエンザには無効です。発症後48時間以内に利用を開始すると、より効果があるとされています。ドライパウダーを吸引により投与するもので、飲み薬より即効性があるとされています。ただし、吸入器を使って吸い込むのが難しい人は利用が困難です。

■ペラミビル水和物

商品名「ラピアクタ」が有名です。主に点滴や注射で投与されます。A型インフルエンザウイルスと、B型インフルエンザウイルスに有効とされていますが、C型インフルエンザには無効です。医療機関で使われるもので、自宅療養で処方されることはありません。

■ラニナミビルオクタン酸エステル水和物

商品名「イナビル」として有名です。A型インフルエンザウイルスと、B型インフルエンザウイルスに有効とされていますが、C型インフルエンザには無効です。ザナミビル水和物(リレンザ)と同じように、吸入によって摂取しますが、リレンザが5日間吸入を続けるのに対し、こちらは1回の吸入のみで治療が終了します。そのため、医療機関でこの吸入を行うだけで、薬を飲む必要がないので、飲み忘れなどによる再発の防止が期待されています。

■アマンタジン塩酸塩

商品名「シンメトレル」が有名です。もともと、パーキンソン症候群や、脳梗塞の後遺症による活動の低下が見られた際に処方されます。近年インフルエンザにも効果があるということで、インフルエンザの際にも処方されるようになりました。この薬は、A型インフルエンザウイルスに有効とされていますが、B型インフルエンザウイルスと、C型インフルエンザには無効です。

もともと、ドーパミンの量を増やして、ドーパミンの働きを高める効果がある薬になります。それ以外に、体内でウイルスが増殖するのを抑える効果が認められ、症状が緩和することがわかり利用されるようになりました。有効性の高い薬が他にもありますので、他の薬が使えない場合に選択肢として出てくることがあります。

インフルエンザの予防方法

ここでは、できるだけインフルエンザにかからないように予防する方法をご紹介していきます。自分で気をつけることができることが多いので、ぜひ実践してみてください。

ワクチン接種

インフルエンザのワクチンを摂取しておくと、仮に感染した場合でも症状が軽くてすむと言われています。そのため、予防接種として、ワクチン接種を行う人は多くなっています。重症化すると、入院が必要になったり、死亡することもあるため、危険を回避するための対策となっているのです。ただし、ワクチンも万能ではありません。

あくまで、発病を阻止する効果があったり、発病した際の重症化に効果があるものです。体の中にウイルスが入らなくなる効果があるわけではありません。そのため、ワクチンを接種していれば、他の予防対策を行わなくても大丈夫ということにはなりません。ワクチンの効果は限定的なので、効果がなくなってから感染した場合は重症化することもあります。

また、インフルエンザを引き起こすウイルスはたくさんあるため、流行が予測されるウイルスを予測して、毎年違うワクチンの摂取を行っています。ワクチンは、複数のインフルエンザに効果があるように作られていますが、毎年摂取する必要があります。しかし、予測が外れて違うウイルスが流行したり、たまたま、違うウイルスに感染してしまった場合は、効果がないこともあります。デメリットよりも、メリットが大きいので、予防接種をする人が多いのが現状です。

飛沫感染対策

インフルエンザは飛沫感染が多いです。飛沫感染とは、咳やくしゃみなどで、口の中からウイルスを含んだ水滴が飛ぶことによって、それを浴びた人が感染するというものです。逆に言うと、それを浴びたり、体内に入れないようにすることが予防になります。

もし、自分が感染した場合は、必ずマスクなどをするようにしましょう。また、咳やくしゃみは人に向かってしない、マスクをしていないときはティッシュなどで予防し、もし手で拡散を防止した場合は、できるだけ早く手を洗うようにしましょう。

本当は感染している人がマスクで拡散を予防するのが有効ですが、感染している人にインフルエンザの症状がない場合、そのような対策をしていないことがあります。できるだけ体の中に入れないよう、感染していなくても、マスクをつけるなどして、予防するようにしましょう。

うがい・手洗い

うがい・手洗いをすることは、物理的にインフルエンザのウイルスを除去する一番の方法です。水で洗い流してしまえば菌はいなくなりますし、石鹸や消毒で殺菌することでウイルスを死滅させる効果もあります。

もし、ウイルスのついているところに触ってしまっていても、そこから体の中に入ってこなければ感染することはありません。また、自分がきれいにしていれば、拡散する心配もなくなります。うがいや手洗いは他の感染症や食中毒などの予防にもなります。インフルエンザ以外の時期でも継続しておくと、健康的な生活につながりますので、普段から実践しましょう。

適度な湿度の保持

空気が乾燥すると、乾燥に強いウイルスは感染力が強くなります。一方、ウイルス感染を防御する機能のある、のどや気管支の防御機能が低下します。そのため、ウイルスに感染しやすい状態になってしまうのです。ウイルスが感染しやすい環境にしないためには、加湿器などを利用して湿度を維持することが大切です。

だいたい、のどや気管支の免疫力が維持するために必要な湿度は、50%から60%と言われています。加湿器に湿度を維持する機能がついているのであれば、適度な湿度を維持できるよう設定しましょう。

栄養と休養をしっかりとる

健康のためには栄養と休養が大切です。どんなに予防対策を行っていても、体が疲れた状態では、予防効果が半減してしまいます。バランスの良い栄養のある食事をとり、よく寝るようにすれば健康を維持できます。

疲れている状態では、ウイルスに対する抵抗力が弱くなり、感染するだけではなく、感染してしまってからの治りも悪くなります。不規則で不健康な生活は、免疫力だけではなく、体力も奪っていきます。

日ごろから規則正しい生活をすることで、健康的な生活を送ることができ、インフルエンザの予防以外にも良い効果が見られます。疲れやすいなど、身体の不調がある場合は、規則正しい生活をするところから実践してはいかがでしょうか。

また、大人が偏った食生活をしていると、ご飯を一緒に食べている子供の食事も栄養が偏る傾向があります。生活面でも、大人が遅くまで起きていると、子供もそのような生活になりがちです。子供の栄養や休養は、大人が意識して取らせなければなりませんので、意識的にとらせるよう心がけましょう。

人混みにできるだけ行かない

人がたくさんいるところというのは、ウイルスを持っている人がいる可能性が高いため、できるだけ行かないようにすることが必要です。どうしても行く必要がある場合は、人混みの中にいる時間をできるだけ短くするようにしましょう。また、感染予防のためにマスクなどをすることも忘れてはいけません。子供がいると、お休みに遊園地など、人の多いところに足を運ぶことが増えがちです。

また、冬にはクリスマスやお正月のような行事も多く、この時期はインフルエンザが流行する時期とかぶっています。イベントが多いので、難しいかもしれませんが、他の予防策を行いつつ、たくさんの人がいれば、リスクがあるということを、頭の片隅において行動するといいでしょう。

パンデミックとインフルエンザ

パンデミックとは、広範囲に伝染病が広がった状態を言います。特定の地域だけではなく、国をまたいで世界的な大流行をした場合に使われます。インフルエンザは、このパンデミックを何度も引き起こしています。ここでは、パンデミックを引き起こしたインフルエンザについて紹介します。

スペインかぜ

1918年から1919年に大流行したインフルエンザです。引き起こしたウイルスは、A型インフルエンザウイルスのH1N1亜型であったといわれています。世界中で大流行して、当時の全世界の人口の25%から30%の人、約5億人が感染したといわれています。

感染した人のうち、死亡した人は10%から50%くらいいるといわれています。また、日本では、約2300人が感染し、約38万人が死亡したと、当時の内務省が発表しています。当時は抗生物質が発見されておらず、有効なワクチンもなかったため、予防や治療する術がなく、このような広がり方をしたと考えられています。このときの対策は、感染して症状が出ている人と、健康な人をできるだけ接触させないようにする、感染者を隔離する、感染者と接触できる人間を制限するなどでした。

感染者が出ていない一部の国では国境を閉鎖し、難を逃れた国もありますが、外交が盛んになっていたこともあり、世界中に広がったのでした。

アジアかぜ

1957年から1958年に大流行したインフルエンザです。引き起こしたウイルスは、A型インフルエンザウイルスのH2N2亜型であったといわれています。スペインかぜより、症状は軽度だったといわれています。スペインかぜが流行してから、研究が進み、この頃にはワクチンが開発されていました。発生源は中国で、1957年2月下旬に中国の狭い地域で流行し、3月には中国全土に広がります。

そして、4月中旬には香港、5月の中旬には、シンガポールと日本で確認されました。この頃に、世界保健機関(WHO)はパンデミック宣言を行い、当時新型だった、このウイルスのサンプルが世界中に配布され、世界中でワクチンの製造が開始されました。このウイルスは、暖かい国や日本では、ウイルスの感染者が確認されてから広がるのがかなり早かったのに対し、欧米諸国では、最初の感染者が確認されてから、1ヵ月半以上経ってから急速に広がったようで、広がり方のパターンやタイミングは国によって異なっていたようです。

このインフルエンザでの死亡者は、世界で約200万人とされています。主に学校に通う子供たちや、高齢者での感染が多く、死亡者は免疫力の低下している高齢者が多かったとされています。ワクチンは開発されたものの、各国内で利用するにも量が少なく、大量の製造ができなかったため、学級閉鎖が行われたり、集会やお祭りなど、人がたくさん集まる行事を中止することで対策が行われました。この頃の一番の予防は、感染者と接触させないことでした。
人が集まらないようにすることで、集団感染を予防するしかなかったのです。

香港かぜ

1968年から1969年に大流行したインフルエンザです。日本では、香港型などと呼ばれることが多いです。引き起こしたウイルスは、A型インフルエンザウイルスのH3N2亜型であったといわれています。アジアかぜの原因であるH2N2などが変化した、新型ウイルスとして広がりました。

通常では人から人への感染で広がっていきますが、このウイルスは、人から鳥や豚、鳥や豚から人への直接感染が起こるものに進化しているのが特徴です。この際のウイルスには、10年前のアジアかぜと共通した部分があり、アジアかぜの免疫効果が働いたため、高齢者を含め、免疫のある大人は大事に至らなかったのではないかと言われています。

感染経路もアジアかぜと共通点が多く、香港で発生した後、シンガポールなどでも感染が報告されて、アメリカ、ヨーロッパ、日本、アフリカなど、世界中に広がっていきました。しかし、鳥が媒介していた可能性があり、人の渡航制限を行っても、広がるのを食い止めることはできなかったといわれています。
このインフルエンザでの死亡者は、世界で約100万人とされています。

新型インフルエンザ

A型インフルエンザウイルスのH3N2亜型で発症したものをさすことが多いです。香港かぜで流行したH3N2亜型がさらに進化したものをさしています。H3N2亜型というウイルス自体は、すでに認識されていたものですが、もともと人から人には感染しないものでした。ところが、鳥や豚を介してしか感染することのなかった、H3N2亜型が人から人に感染するようになったため、新型として認識されることになったのです。

2011年、アメリカ合衆国のアイオワ州で豚や鳥と接触していない人が感染したことがきっかけで確認されました。その後感染例がいくつか確認されましたが、いずれも適切な処置、感染者の隔離を行ったことにより、感染が拡大することはありませんでしたが、今後注意が必要とされています。このインフルエンザは2009年に大流行したA型のH1N1亜型ウイルスの遺伝子を継承しているため、伝染力や感染力が高いと言われています。

しかし、現状で有効なワクチンがないため、A型インフルエンザウイルスのH3N2亜型が人から人への強い感染力を持って世界中に広がった場合、パンデミックにつながるといわれています。また、H3N2亜型は、まだ変異を続けていることも確認されており、今後も注意が必要とされています。

新型インフルエンザとは?

新型インフルエンザについては、日本の法律において明確な定義があります。定義の内容をまとめると、

  • もともと人から人に感染する能力がなかったウイルスが、人から人に観戦する能力を持ったもの
  • このウイルスに感染した場合、免疫がないため、生命の危険があったり、健康に大きな害のあるもの
  • 感染症として、全国的に広がる可能性があるもの
  • 感染症として急速に広がり、まん延する可能性があるもの

 
となります。これは、2003年に新型のA型インフルエンザウイルスH5N1亜型によって死亡する人が出たことがきっかけで整備された法律です。その後、2008年5月改正、2009年のパンデミックの際にもうまく機能しなかったことを受けて、2012年に改正と、事例に合わせて改正が繰り返されています。インフルエンザだけではなく、新型のウイルスへの危機管理意識が高まるきっかけになったのも、新型インフルエンザの出現によるものです。

新型インフルエンザの種類と症状

新型インフルエンザとして扱われることの多いインフルエンザは基本的にA型になります。一番亜種の多いA型は、一度亜型として命名されても、さらに進化を繰り返したりします。古くから存在する亜型であっても、ワクチンに耐性がついてしまっていたり、世界的な感染が確認されるようになってしまったものがあります。ここでは、代表的な3種類をご紹介します。

A型のH1N1亜型ウイルス

こちらは先ほどご紹介した「スペインかぜ」の原因となったウイルスです。スペインかぜの流行は1918年から1919年と古いです。この頃には、人から人にしか感染しなかったのですが、近年、鳥から人への感染が確認されるようになりました。さらに、そのように変異したことによって毒性も強くなってしまったようです。

そして、2009年から2010年、この変異したA型のH1N1亜型ウイルスが世界的に流行することになりました。ここでは、新型のH1N1亜型ウイルスに関する内容を中心にご説明していきます。

2009年に確認されたインフルエンザは「パンデミック2009H1N1」などと呼ばれています。このパンデミック2009H1N1は2009年4月に、メキシコで流行が始まったものです。その後、アメリカ合衆国の複数の州、そして世界中へと広がっていきました。2009年6月には世界保健機関(WHO)によって、パンデミックの宣言が行われています。

情報が発信された当初は、情報が錯綜し、メキシコでの感染者の死亡率が高いという情報が流れたことから、新型インフルエンザとして扱われ、感染者は強制的に入院させられることになっていました。その際、感染者が20歳以下の青少年ばかりで、免疫力の弱い、乳幼児や高齢者への感染がほとんど確認されなかった点は大変珍しいといえます。

現在は、このインフルエンザは新型ではなく、従来のインフルエンザと同じように、入院せずに治療が可能になりました。ワクチンも完成しているため、治療だけではなく、予防接種による予防もできるようになっています。

■症状
症状は重症か、軽症かによって大きく異なります。軽症の場合は、通常よりも風邪の症状が重たくなって現れることが多いです。重症の場合は、肺炎、肺気腫、呼吸不全、多臓器不全、脳症、心筋炎につながる症状が出たりします。

発症後48時間は、急激に重症化する恐れがあります。また、重症、軽症問わず、異常行動や呼吸停止などを引き起こす場合があります。この異常行動の代表例としてよくあげられるのは、高いところから飛び降りようとするというものです。

特に高層住宅に住んでいる場合、ベランダなどから急に飛び降りようとしたりします。ベランダから転落すると、大怪我につながり、時には死に至ることもありますので、特に注意が必要です。また、インフルエンザの兆候が見られた場合には、重症化する前に、早めに医療機関での受診をすることが大切です。

■治療法
このインフルエンザの主な治療法は、抗インフルエンザウイルス薬の投与です。これは世界保健機関(WHO)と、日本の厚生労働省の共通の方針です。抗インフルエンザウイルス薬として有名なものが「タミフル」と「リレンザ」になります。

この2つは、どちらもウイルスの増殖を抑制するための薬です。タミフルは飲み薬、リレンザは吸入薬となっています。

一時期、薬を処方された人が異常行動を起こしたことが話題となりましたが、これはインフルエンザが脳に障害を与えていることが原因で、薬のせいではありません。薬を利用してから効果が出るまでの48時間は、異常行動の症状が出やすい状態が続きます。

異常行動のほかにも、重い症状になると、呼吸が停止し、突然死につながることもありますので、これらを回避するためにも、感染した人から目を離さないようにする必要があります。また処方された薬は、5日間、症状が軽減されても使い続ける必要があるとされています。

年齢や持病のある人、妊婦、授乳中の女性かどうかなど、さまざまな条件によっても使い方が異なる薬がありますので、医師の指示に従って利用するようにしてください。

A型のH5N1亜型ウイルス

H5N1亜型ウイルスは、高病原性鳥インフルエンザの病原菌としても有名です。感染しにくい菌であるものの、大量にウイルスのいる環境にいたり、長期間接触していたりすると、感染することがあります。感染者の死亡率が60%から70%ときわめて高く、毒性が極めて強いとされています。

H5N1亜型ウイルスは熱に弱いため、鶏肉や鶏卵を食べる際はよく加熱することで、鳥からの感染はないとされています。今後、このウイルスが強力な毒性を持ったまま、より人から人への感染力を強めた場合、パンデミックを引き起こし、死者が増える可能性が高いという警告が出ています。

■症状
通常の症状は、発熱、咳、結膜炎、下痢、咽喉痛、筋肉痛、肺炎など、基本的に風邪の症状と変わりません。しかし、肺炎などは重症化しやすく、死に至るケースがあります。一方、このような症状が出る前に、下痢を伴う昏睡状態に陥った男児がいるなど、進行がかなり早い場合があります。

世界保健機関(WHO)によると、適切な治療を受けない場合の致死率は、60%と高い結果なっています。これは、ウイルスが、通常の風邪のように、のどの粘膜などだけに感染するわけではなく、全身の臓器に感染し、そこで増殖することが関係していると考えられています。

ウイルスが免疫システムに干渉して、免疫システムがうまく働かなくなることも原因で、最初にこのような場所に感染してしまうと、風邪とは違う症状が最初に出ることがあるのです。

■治療法
まだ、確実な治療法は存在していないのが現状です。ワクチンも開発されていますが、このウイルス自体がまだ変異や進化をしているため、開発されたワクチンが必ずしも有効とは限らないといわれています。そのため、ワクチンの使用は限定的で、予防接種で利用できるところまでには至っていません。

治療はタミフルやリレンザで行われます。感染後、タミフルを投与して、ウイルスの増殖を抑えるのが一番の治療となっています。また、動物実験においてはリレンザも有効とされているため、すでに承認されているリレンザは合わせて治療に使われることがあります。まだ、研究段階の部分が大きいため、今後、研究が進むことによって、より効果の高い治療方法が確立されることを期待するしかありません。まずは、予防することから考えていく必要があります。

A型のH7N9亜型ウイルス

現在、H7N9亜型ウイルスの人から人への感染は確認されていないとされていますが、人間への感染が中国本土で確認されています。データは少ないものの、死亡率は23%となっています。3週間で100人以上の感染者を出したウイルスで、感染のスピードが、他のウイルスよりも早い上に、人間はこのウイルスに免疫がまったくないため、感染した場合、重症化する可能性があるため、警戒されています。

また、他のインフルエンザとは違い、宿主がわかっていません。例えば、H5N1亜型ウイルスは「鳥インフルエンザ」と呼ばれる通り、宿主は「鳥」です。宿主がわかっていれば、その動物からの感染の予防をすることで、感染者を減らすことが可能です。しかし、このH7N9亜型ウイルスのように宿主がわかっていないと、対策をとることが難しくなります。

また、ウイルスの突然変異などによって、人から人への感染が可能なウイルスが蔓延するようになる可能性もあるため、予防対策が難しい状態はあまりよくありません。

■症状
高熱、鼻水、咳、息切れのほかに、重症の肺炎を起こしやすいようです。特に、呼吸不全による死亡例が多いようなので、呼吸器に以上が出ることが多いと考えられます。鶏肉や鶏卵は加熱すれば大丈夫といいましたが、人間が高熱を出したくらいの熱では、ウイルスが死滅することはありませんので注意が必要です。他にも二次感染や脳症などの合併症を引き起こす例が確認されています。通常のインフルエンザよりも死亡率が高いので、症状が出たらすぐに医療機関を受診しましょう。

■治療法
こちらのウイルスに関しても有効なワクチンは存在していません。ただし、他のインフルエンザ同様、抗インフルエンザ薬を使うことで、一定の効果が認められるため、感染した場合の治療には有効とされています。予防のためには、鳥から人への感染を予防する場合は、鶏肉や鶏卵をよく加熱して食べることが有効です。また、できるだけ鳥と接触しない環境で生活をすることが大切です。

特に、発生源である中国の鳥はもちろんのこと、死んでしまったり、元気のない野鳥も感染している可能性があるので注意が必要です。仕事や旅行などで、感染が確認された国へ行く場合は、渡航情報をしっかりと確認して、流行しているようであれば渡航しないことが大切です。どうしても、このような環境にさらされる場合は、手洗いなどをしっかりと行い、菌が体の中に入らないようにすることを徹底しましょう。

インフルエンザにかかる前に予防対策!

一度周りで広がると、かかる可能性が高くなるのがインフルエンザです。世界的に流行しやすいものなので、かかってしまう人が多いです。ウイルスがどんどん人間に感染しやすい形に変化していて、毒性の強いものもあるので注意が必要です。最近ではより効果の強い薬も出てきていますが、かからないのが一番です。インフルエンザの予防は風邪の予防と変わりません。できるだけ感染しないように予防対策をしっかりと行いましょう。

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