妊娠・子育て

【医師監修】排卵痛のタイミングはいつ?症状・原因・対処法や、妊娠との関係について

排卵にともない起こるとされる排卵痛ですが、排卵痛はなぜ起こるのでしょうか。また、排卵痛で排卵のタイミングがわかるものなのでしょうか。排卵痛の詳しい症状や原因、排卵痛を緩和させるための対処法などを解説します。

【医師監修】排卵痛のタイミングはいつ?症状・原因・対処法や、妊娠との関係について

2017年08月18日更新

中村容子 先生 (産婦人科医)

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排卵期に起こる下腹部痛や腰痛を排卵痛と言います。生理痛と同じく痛みの感じ方には個人差があり、ひどく痛む人もいればほとんど感じない人もいます。排卵の時期をより詳しく分けると「排卵前」「排卵日」「排卵後」となりますが、この3つの時期に誰もが痛みを感じるわけではなく、排卵前にしか痛みを感じない人もいれば、排卵後に痛みを感じる人、排卵期を通してまったく痛みを感じない人などさまざまです。では、排卵痛はどのように起こるのかを考えていきましょう。

[1]排卵痛ってどんなもの?

排卵痛の明確な定義はありませんが、主に「排卵時に放出される卵胞液と少量の出血が、腹膜を刺激する痛み」と考えられます。排卵時には、腹腔内に放出された少量の出血と卵胞液が腹膜を刺激し、この刺激を痛みとして感じることがあります。この場合の排卵痛は、排卵直後から生じるものをさします。この痛みを、『(狭義の)排卵痛』とします。でも実際には、排卵前に痛みを感じる方もいますし、排卵後に痛みが長く続く方もいます。これらの痛みを『(広義の)排卵痛』とします。

では、どのような原因が考えられるのでしょうか。実際の排卵までの流れを参考にしながら考えてみましょう。

排卵の仕組み

卵巣の中にある卵子が成長し、卵巣の外に放出されることを排卵といいます。卵子は胎児期、母親のおなかの中にいる間に作られます。卵子数は、妊娠20週ぐらいに一番多くなり、約700万個と考えられています。出生前に早くも減少し始め、出生時には約200万個になります。卵子は作られたあと長期間活動を停止していますが、思春期が来ると、だんだんと活動を再開します。ただし、すべての卵が一度に活動を開始するのではなく、順番に活動を再開していきます。卵子は、卵を育てる細胞や袋に囲まれています。この袋を卵胞といいます。活動を再開するとだんだんと卵胞内に液体がたまってきます。月経が始まる頃に数mm程度の大きさに成長している卵胞の中の卵子は、その月経周期に発育して排卵する可能性があります。それらのうち数個の卵胞が、さらに発育していきますが、最終的に成熟し排卵するのは、月経周期ごとに通常1つです。残りの卵胞は発育を止めてしまい(閉鎖卵胞といいます)命を終えます。初め700万個あった卵子のうち、実際に排卵するのは、だいたい年に12個、仮に40年間排卵するとしても約480個です。


排卵直前の卵胞の大きさは2cm程度です。卵胞が十分発育すると、排卵を命令する刺激が出ます。すると、卵が成熟(細胞分裂の準備をして、受精能力を持つようになる)し始め、その間に卵胞では卵巣の表面に近い部分が薄くなり、その反対側の卵胞の壁の部分は収縮し、卵巣の表面の方向へ圧力をかけます。このような変化と同時に、卵細胞を取り囲んで卵を育てていた細胞が、卵ごと壁から離れて、卵胞内に浮遊するようになります。そして排卵の刺激が出て約36時間後には卵巣表面に裂け目ができてそこから排卵が起こるのです。詳しい説明は省きますが、卵胞の壁が薄くなったり破れたりする反応は、炎症が起こる時に生じる反応と似ています。
卵巣表面に裂け目ができるとき、少量の出血を伴います。また、排卵と同時に炎症物質を含んだ卵胞液がおなかの中(腹腔内)に放出されます。このときの出血と卵胞液が、腹膜を刺激し腹膜の痛みを感じることが、『(狭義の)排卵痛』の原因です。

では、『(広義の)排卵痛』とは何でしょう。
実際には、排卵前にも痛みを訴える方がいます。卵巣には痛覚がないとされ、卵胞が大きくなること自体では痛みは感じないようです。実際、卵巣がんが卵巣内で成長してもそれだけでは痛みは感じません。ですが、卵巣は腹膜と靭帯と呼ばれる組織でつながっていますので、卵巣が大きくなれば、腹膜が引っ張られる力が大きくなり、このことが原因で痛みを感じる可能性があります。また、排卵前に生じる炎症反応を痛みとして感じる可能性もあります。排卵後には卵巣に黄体が形成されます。黄体が形成されることで大きくなった卵巣が、腹膜を引っ張ることで痛みを感じる可能性が考えられます。
おそらくこれらが、排卵期周囲の『(広義の)排卵痛』の原因でしょう。

産後に排卵痛が起こることもある

これまで排卵痛を感じなかった人が、出産をきっかけに産後から排卵痛を感じるようになるケースがあります。正確な原因はわかりませんが、推測できることはあります。分娩時には子宮から多量に出血します。この出血の一部は卵管を通っておなかの中に入ります。これが刺激となり、おなかの中に炎症や癒着などが起こり、排卵痛を感じやすくなった可能性があります。

[2]排卵痛と排卵時の症状


排卵痛や排卵時にみられる症状はいくつかあり、人によって現れる症状は異なります。また、症状の強さにも個人差があります。ここでは、比較的よくある症状をご紹介します。

下腹部の痛み

卵巣付近の腹膜の痛みは、下腹部の痛みとなります。また、卵巣は左右にあるため、右側もしくは左側だけが痛むケースもありますし、いつも真ん中が痛いというケースもあります。痛みは、チクチクとした軽いものからズキズキひどく痛むものまで人によってさまざまです。

腰痛や足の付け根の痛み

何らかの原因により、腹膜のどこかに刺激に対して弱い部分があると、痛みを感じやすい場合があります。場所によっては腰の痛みや足の付け根の痛みとして認識されることがあります。

頭痛

生理後から排卵日にかけて、女性の体内では卵胞ホルモン(エストロゲン)というホルモンの分泌量が増加します。卵胞ホルモンは、排卵後にもしも受精が成立した場合、受精卵が子宮内膜に着床しやすいよう子宮の環境を整えてくれる作用をもちますが、そのほかに血管を拡張させる働きもあります。脳の血管が拡張されると、頭痛が起きることがあります。

排卵期出血

痛みではありませんが、排卵の時期に一時的に性器出血がみられる場合があります。これは排卵の時期に一時的に卵胞ホルモンが減少することが原因で、特に心配する出血ではありませんが、長く続くときは婦人科を受診してください。

月経痛との違い

排卵痛は主に腹膜が感じる痛みですが、月経痛は子宮収縮に伴う痛みです。生理が始まるとプロスタグランジンという、子宮や腸管、そして血管を収縮させる作用のある物質が増加します。プロスタグランジンが子宮を収縮させ、子宮内膜や月経血を体外に押し出そうとします。この物質が過剰分泌されると、子宮の収縮が強くなってしまい、下腹部の痛みが強くなることがあります。また、同時に血管の収縮も強くなるため、冷え、吐き気などの症状が引き起こされることがあります。

[3]排卵痛の対処法


排卵痛は、病気というわけではなく、基本的には心配のないものですが、なかには動くのもつらいほど症状がひどく出る人もいます。排卵痛がひどいときにはどのように対処すればよいのでしょうか。

▼冷えの改善、食生活の改善、ストレスの緩和
これらの目的は、生活習慣を改善することで排卵痛を抑えようとするものですが、子宮の血流、卵胞の発育、中枢神経を介しての痛み(頭痛)などにも効果的と考えられます。しかし、腹膜刺激の痛みにすぐに効果があるものではありません。痛みがひどければ、薬を使うことも考えましょう。

▼薬の服用

  • イブやロキソニン
  • 生活改善でも排卵痛がよくならない場合は市販薬を試してみるのもひとつの方法です。排卵痛には、イブプロフェンロキソプロフェンといった消炎鎮痛効果をもつ成分が含まれているものが有効です。ただし、これまで薬でアレルギーを起こしたことのある方や妊娠の可能性がある方は自己判断での市販薬の使用はおすすめできません。市販薬を使用する前に婦人科を受診し相談してみましょう。

  • ピルの服用
  • ピルは婦人科で処方される薬です。排卵痛は病気ではないので、1~2日の軽い痛みであれば基本的には受診の必要はありませんが、つらい痛みが毎月ある、痛みが3日以上続く、といったときは受診してみましょう。低用量ピルは経口避妊薬とも呼ばれ、排卵を抑制する作用をもつ薬です。ピル服用中は排卵が抑制されますので、排卵痛はなくなると考えられます。低用量ピルは、月経痛にも効果的です。月経痛がひどい場合は、月経痛に対して保険適応の薬剤がありますので、婦人科を受診し相談することをおすすめします。

      [4]排卵痛と妊娠の関係


      妊娠を希望していて、いつも排卵前に痛みを感じると思っている人の中には、痛みを感じる時期が機会を持つタイミング、と考えている方がいるかもしれませんが、実際には排卵時に痛みを感じている場合、痛みを感じた後に機会をもつよりも痛みを感じる前に機会を持つほうが妊娠の確率が高まるかもしれません。やはり、排卵期を予測したいのであれば、排卵痛のみで排卵時期を判断するのではなく、基礎体温や排卵検査薬を利用する方がよいでしょう。避妊目的であれば、排卵期のセックスを避けるだけでなくコンドームやピルなどの避妊法も併用してください。

      妊娠の可能性を高めるには

      上でも説明した通り、排卵痛の有無だけで妊娠しやすい時期の判断はできません。基礎体温や排卵チェッカーでおおまかに予測することはできます。

      • 基礎体温をつける
      • 基礎体温とは、人間が何も活動していない状態で測った体温のことです。計測する際は、朝目覚めてすぐ、起き上がる前の横になった状態で計測します。基礎体温は、女性ホルモン(黄体ホルモン)の分泌によって、上昇するため、基礎体温が低いか高いかで女性ホルモン(黄体ホルモン)の分泌状態が予測でき、今が排卵期なのか生理前なのかがおおまかにわかります。
        基礎体温でわかることは、自分の排卵しやすい日が月経のだいたい何日目か、ということです。その周期の排卵日を基礎体温で正確に予測することは困難です。ですから、排卵検査薬を併用するとわかりやすくなります。

      • 排卵検査薬を使う
      • 妊娠検査薬のように、尿をかけて排卵日を予測する「排卵検査薬」というものもあります。排卵時には黄体ホルモンが分泌されますが、その分泌を促進する「黄体形成ホルモン」というホルモンは排卵前に一気に分泌されます。そこで、黄体形成ホルモンの量を感知し、排卵を1日前から予測するのが排卵検査薬です。排卵検査薬はドラッグストアやインターネット通販で購入できます。

      [5]排卵痛がひどい場合


      排卵痛と思っていた症状がひどくなってきた…そんなときは、何らかのトラブルや病気の可能性があります。

      卵巣出血

      排卵の際、卵胞が大きくなり、卵巣表面を押し破るように卵胞の中の卵子が外に出て行きます。そのとき卵巣表面近くの血管が切れ、出血することがあります。この出血自体はしばしば起こっていることだと考えられますが、稀になかなか出血が止まらずに、お腹の中に溜まるくらいの出血が起こることがあります。これが排卵の時期の卵巣出血です。卵巣出血の原因としては排卵時よりも、黄体が形成されるときに起こる卵巣出血のほうが多いとされています。このとき出血が卵巣内だけにおこれば、出血性黄体嚢胞と呼ばれます。卵巣出血は、出血量が多いと排卵痛のチクチクした腹痛とは異なる急激な下腹部痛が起き、人によっては嘔吐や下痢をともないます。さらに、非常に出血量が多い場合は、出血性ショック状態になるなど命に関わることがあり、まれに止血のための手術が必要な場合があります。重症化を防ぐためにも早期の受診・治療が大切です。

      病気の可能性

      • 子宮内膜症
      • 子宮内膜症とは、本来であれば子宮の内側にある子宮内膜に似た組織が、子宮以外の場所にできてしまう病気です。子宮の内側にある子宮内膜は剥がれ落ちて生理として外に排出されますが、子宮以外の場所(卵巣や腹膜など)にできてしまった子宮内膜に似た組織は剥がれ落ちても排出されず、その場所にとどまって炎症を引き起こし、痛みの原因となります。

      • 子宮~卵管の炎症
      • 子宮と卵管は腟を通して外とつながっているため細菌も入り込みやすくなります。原因菌としては、クラミジアや淋菌、大腸菌が多く、淋菌・大腸菌などの細菌感染では、通常ひどい痛みを伴います。細菌感染でも軽い炎症の場合や、クラミジアの感染では自分ではわからないうちに、腹膜に炎症を起こし、おなかの中に癒着を引き起こすことがあります。

      [6]排卵痛はあくまで目安、ひどいときは受診を

      排卵痛と思われる症状が起こると、妊活中の女性は「今がチャンス!」と考えるかもしれません。しかし、排卵痛の症状があるからといって、それが確実な排卵のサインになるわけではありません。排卵時期を把握したければ基礎体温や排卵チェッカーなどを取り入れたり、さらに正確に排卵時期を知るためには、専門施設を受診して排卵時期を把握したりすることをおすすめします。また、痛みの症状が強い場合は、排卵でなく別の要因によって痛みが生じている可能性があります。不妊につながる病気の可能性もあるため、症状がひどいときは我慢せずに婦人科を受診しましょう。

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