風疹(ふうしん)を予防して妊婦さんと赤ちゃんを感染から守る!予防接種で抗体をつけよう

風疹といえば子どもがかかる病気と認識している人も多いのではないでしょうか。しかし平成24年~平成25年の風疹大流行では患者の8割が大人でした。その内の3/4は20代~40代の男性です。大人の、それも成人男性には風疹の抗体がなかったのか、予防接種は受けていたのか見ていきましょう。また風疹といえば、お腹の赤ちゃんが感染すると障害を起こす可能性がある病気です。妊娠中の女性と生まれてくる赤ちゃんに風疹を感染させないための予防法も見ていきましょう。

風疹とは

風疹とは風疹ウイルスによっておこる感染症で、急性のウイルス性発疹症です。その感染力は強く、インフルエンザの2~4倍といわれます。その症状は比較的軽症で予後は良好な疾病です。感染しても症状が出ない不顕性感染も15~30%あります。しかし稀に合併症を起こしたり、妊婦の感染によって生まれてくる赤ちゃんに影響を及ぼしたりすることもありますので注意が必要な疾患です。

風疹の感染経路、潜伏期間、症状

主に飛沫感染で伝播されます。感染者との会話、咳、くしゃみで飛散した唾に含まれる風疹ウイルスを吸入することで感染します。発症の前後1週間ほど感染力があります。感染してから症状が表れるまで2~3週間の潜伏期間があります。その後、以下の症状が表れます。

  • 発熱
    軽度の場合が多く、2~3日で解熱。小児では発熱がない例も多い。
  • 発疹
    細かく、淡い紅色のぶつぶつが顔に出た後、全身へ広がる。発疹による色素沈着はあまりみられない。2~3日で消失する。
  • リンパ節の腫れ
    耳の後ろ、後頭部の圧迫痛を生じ全身のリンパ節(首やわきの下、足の付け根など)の腫れがみられる。

合併症として、急性脳炎が4,000人~6,000人に1人ほど、血小板減少性紫斑病が3,000人~5,000人に1人ほどの割合で特に女性にみられます。

大人と子ども、風疹の症状に違いはある?

風疹は子どもの場合は比較的軽症なことが多いですが、思春期以降の大人がかかった場合には、39℃以上の発熱や発疹が長引いたり、関節炎を起こしたりするなど、子どもの場合より重症になることがあります。妊婦がかかった場合は特に注意が必要です。妊娠初期にかかった場合、胎児に感染し生まれてくる赤ちゃんに障害が出る可能性があります。

風疹にかかってしまったら

風疹の治療薬はありませんので、症状に合わせた対症療法となります。

いつから学校や職場へ行ける?

風疹は学校保健安全法において「発疹が消失するまで出席停止。ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではない。」と定められています。一般企業においては風疹にかかった場合に出勤停止の制度はありませんが、周りに感染を広げないよう自宅待機を心がけましょう。

参考文献:学校感染症とその出席停止期間(PDF)|創価学園

風疹は妊婦さん、特に妊娠初期20週までの女性は要注意

生まれてくる赤ちゃんに障害や影響が出る?

風疹に免疫がない妊娠初期の妊婦が風疹に感染した場合、母子感染により胎児が風疹ウイルスに感染して、出生児に先天性風疹症候群を引き起こすことがあります。平成24年~平成25年は風疹が大流行しました。患者数は14,000人を超え、平成26年10月までに45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断されました。

参考文献:風しんについて|厚生労働省

先天性風疹症候群(CRS)とは

妊娠16週以内に風疹ウイルスが母子感染することで起きる、赤ちゃんの先天性障害の総称です。3大症状として先天性心疾患、難聴、白内障があります。他にも緑内障、網膜症などの目の障害、心臓奇形、神経学的異常、脾臓腫大、肝炎、骨の異常、血小板減少性紫斑病、等があります。

生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群にかかる確率は?

厚生労働省によると、妊娠1ヶ月(0~3週)で50%以上、2ヶ月(4~7週)で35%、3ヶ月(8~11週)で18%、4ヶ月(12~15週)で8%程度。妊娠初期と呼ばれているこの期間に妊婦が風疹に感染すると、生まれてくる赤ちゃんに障害が出る可能性が高まり、初期であればあるほど確率も高くなります。

参考文献:先天性風しん症候群|厚生労働省

妊娠中にできる風疹感染予防

妊婦はワクチン接種ができません。母親のワクチン接種による胎児へのウイルス感染を防ぐためです。以下の方法で風疹を予防しましょう。

妊娠初期に受けた風疹抗体価検査の結果を確認しよう

妊娠4~12週に受ける風疹の抗体有無を調べる血液検査です。検査結果が、HI抗体価8倍未満で抗体無し、HI抗体価16倍以下(EIA価8未満)で抗体が不十分だった場合、特に妊娠初期は風疹に感染しないように注意が必要です。風疹ウイルスは飛沫感染するため、人混みを避ける、マスクを着用する、手洗いうがいをするなどの予防策は効果があります。

夫やパートナーの予防が大切

平成24~平成25年の風疹の大流行の際、妊娠中の女性が風疹に感染したルートをが検証したところ、1番多かったのは夫、2番目が同僚でした。このことから、夫や家族が職場などから家庭内に風疹ウイルスを持ち込まないようにすることが大切です。風疹ワクチンの接種を済ませているか、罹患経験があるか定かでない時は抗体検査を受けると良いでしょう。

また、抗体の有無が分からないままワクチン接種をしても問題ありません。妊娠中は風疹のワクチン接種ができないので、夫や家族がワクチン接種をして風疹から妊婦さんと赤ちゃんを守りましょう。

妊娠中に風疹にかかった可能性がある、どうしたら良い?

かかりつけの病院を受診しましょう。その際に他の妊娠女性との接触を避けるために、予め電話などで風疹の可能性を伝えておきましょう。母親の風疹感染の有無は血液検査で診断ができます。母親が風疹感染したからといって胎児に感染するとは限りません。胎児感染の検査もありますが、医師とよく相談しましょう。

風疹の抗体について知りたい

予防接種歴から抗体の有無を予想する

予防接種制度は何度か変容をしており、接種の機会が年代によって異なるため、ワクチン接種を受けておらず抗体を持っていない、または抗体が不十分な年代があります。平成24年~25年の大流行の際の患者の多くはこの年代にあたります。予防接種制度の変容とともに見ていきましょう。

  • 昭和37年4月1日以前生まれの人は、風疹の予防接種がなかったので、多くの男女が自然感染し風疹の抗体を持っている人が多いです。
  • 要注意の男性40代、50代
  • 昭和37年4月2日以降~昭和54年4月1日以前生まれの男性は抗体を持っていない人が多いです。予防接種は女子中学生の集団接種のみだったためです。

  • 要注意の男女30代、40代
  • 昭和54年4月2日以降~昭和62年10月1日以前生まれの男女は抗体を持っていない人が多いです。中学生の頃に医療機関での個別接種がありました。学校での集団接種ではなかったので、接種率が低かったためです。

  • 要確認の男女20代、30代
  • 昭和62年10月2日以降~平成2年4月1日生まれの男女は要確認です。幼児期に予防接種が1回だけありました。接種忘れの人や1回接種のため抗体が弱い人などがいます。

風疹感染歴があっても抗体が十分でないことがある

感染症は1度自然に感染すれば、2度と感染しないとされてきました。しかし近年、高齢化や様々な疾病の治療により免疫が低下して再感染する可能性があります。また、本人は風疹にかかったと思っていても、実際は麻疹(はしか)やリンゴ病などの症状が似た他の疾病だったという例も少なくありません。

抗体検査で抗体の有無をより確実に

免疫はワクチン接種1回で約10年、自然感染で40~50年有効といわれます。しかしこれも個人差があるようです。予防接種歴や自然感染歴があったとしても、免疫の有無を確実に知るために抗体検査を受けることは大変有効だと言えるでしょう。

風疹の抗体検査を受ける

抗体検査とは

抗体検査は採取した血液から、風疹の抗体価を測定します。主にHI法とEIA法が使用されています。

HI法の抗体価

  • 8倍未満…免疫の保有無し
  • 8倍・16倍…免疫はあるが、感染予防には不十分
  • 32倍以上…感染予防に十分な免疫を保有している

EIA法の抗体価

  • 陰性…免疫の保有無し
  • 陽性(8.0未満)…免疫はあるが、感染予防には不十分
  • 陽性(8.0以上)…感染予防に十分な免疫を保有している

免疫の保有無し、又は不十分な場合にはワクチン接種が推奨されます。

抗体検査はどこで受ける?費用は?

予防接種率を高め、特に赤ちゃんの先天性風疹症候群を予防するために、各自治体の多くは無料で抗体検査を実施しています。但し、妊娠を予定している女性やそのパートナーなど対象者に該当していることが条件であったり、実施状況が各自治体ごとに異なりますので、問い合わせて確認が必要です。

抗体検査の受検者の約26%が免疫不十分

ある自治体では、平成26年4月~平成29年2月までに検査を受けた12,077人(女性7,555人、男性4,522人)のうち、免疫が不十分で風疹の予防接種を推奨された人が受検者の約26%(3,110人)もいました。

風疹予防はワクチン接種が最も有効

風疹ワクチン接種の効果

平成2年4月2日~現在まで、予防接種は2回の定期接種を受けることが推奨されています。1回の接種では十分な抗体が作られない確率が5%ほどあります。そのため2回の接種を受けることで確実に抗体を作るようにします。1回目は1歳~2歳、2回目は小学校入学前の1年間です。一般的には麻疹風疹混合ワクチン(MR)となります。風疹の単独ワクチン接種も認められていますので、医師に相談して接種しましょう。

風疹ワクチン接種の副反応

風疹ワクチン接種による主な副反応には発疹、じんましん、紅斑、かゆみ、発熱、リンパ節の腫れ、関節痛などがあります。どれも数日で落ち着きます。まれにアナフィラキシー様症状、脳炎脳症(100万~150万人に1人以下)、急性血小板減少性紫斑病(100万人に1人)があります。

妊娠中、又は妊娠を予定している女性の風疹ワクチン接種

妊娠初期の女性が風疹感染すると生まれてくる赤ちゃんに障害が出る可能性があるため、妊娠する前に予防接種で感染予防することが大切です。

妊婦さんのワクチン接種はできません

風疹ワクチンは風疹ウイルスを弱毒化した生ワクチンです。ワクチン接種した母親の胎盤を通して胎児へウイルスが感染する可能性があるため、妊娠中のワクチン接種はできません。

妊娠を予定している女性のワクチン接種の時期

接種前の1ヶ月間と接種後の2ヶ月間は妊娠しないようにする必要があります。接種時期と妊娠の時期が重なってしまうと、風疹ウイルスが胎児へ感染する可能性があるためです。

大人は風疹のワクチン接種をどこで受ける?費用は?

自治体で助成を受ける

各自治体の多くは抗体検査とワクチン接種の公費負担や助成を行っています。但し、妊娠を予定している女性やそのパートナーなど対象者に該当していることが条件であることや、実施状況が各自治体ごとに異なりますので、問い合わせて確認が必要です。

医療機関にて接種する

上記の対象者に該当していない人は、医療機関にて接種を受けます。風疹ワクチン単体では4,000円~8000円、麻疹風疹混合ワクチンでは8,000~12,000円と医療機関によってバラつきがありますので、問い合わせて確認して下さい。

海外へ渡航する前に

平成24年~平成25年の風疹大流行のきっかけは、平成23年のアジアでの風疹大流行の際の渡航者によって風疹ウイルスが日本国内に持ち込まれたと言われています。海外の風疹が流行している地域へ渡航する人は予め予防接種を済めせておくと良いでしょう。厚生労働省検疫所ホームページにて情報を得ることができます。

参照:FORTH|厚生労働省検疫所

風疹から妊婦さんと赤ちゃんを守るためには

赤ちゃんを風疹感染による先天性風疹症候群から守るためには、ワクチン接種が最も有効な予防策です。子どもは2度の定期接種が行われていますが、大人は各個人が意識してワクチン接種を行う必要があります。

赤ちゃんだけでなく、大人も風疹にかかれば発疹や発熱でつらいものです。仕事をしばらく休まなければならないリスクもあります。現在は自治体で抗体検査やワクチン接種の助成など行っていますので、ぜひ活用しましょう。年代性別を超えて、風疹予防することが大切なようです。

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