妊娠・子育て

出生前診断で胎児の身体の状態がわかるって本当?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

出生前診断とは何を診断する検査か知っていますか?妊娠している状態で、赤ちゃんが先天性の病気や障害を持っているかどうかを事前に診断することです。近年、受診する人が増えていますが、「命の選択」や「倫理的な問題」も関わるため賛否両論に意見がわかれる診断でもあります。出生前診断の詳しい情報やメリットとデメリットについて紹介します。

出生前診断

2017年10月04日更新

Kaede (ホプラス編集部)

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[1]出生前診断とは?

まず、出生前診断の詳しい診断内容について解説します。

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

出生前診断を受ける目的

先ほど簡単に書いた通り、出生前診断とは生まれる前に赤ちゃんの先天的な病気や奇形、染色体の異常の有無を診断するための検査のことです。一般的な妊娠健診で異常の可能性がある場合や、希望があった場合に、より詳しい検査として行われることが多いです。

広い意味では、出生前診断とは妊娠中の子宮の状態をチェックする検査をすべて指すこともあります。

診断で判明する病名

出生前診断で、すべての病気や障害を発見できるわけではありません。この診断で生まれてくる前に診断可能なのは、「13トミソリー」「18トミソリー」「21トミソリー」といった染色体異常です。

お母さんの血液や羊水を採取し、それぞれ13番、18番、21番染色体の濃度分析を行うことで診断します。21番染色体が、通常2本のところ3本ある病気を「21トミソリー」といい、ダウン症候群のことを指します。

参考元:厚生労働省 第4章 出生前診断(母体血胎児染色体検査(NIPT))

[2]出生前診断の種類と費用

出生前診断には5つの検査方法があります。

超音波検査

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

<診断時期:妊娠11~13週 費用:約2~5万円>
赤ちゃんが順調に育っているか、臓器や骨格の発達に異常がないかなど、超音波を使って検査します。費用はあまりかからないものの、機能異常があるかどうかを診断することはできません。


母体血清マーカーテスト

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

<診断時期:妊娠15~21週 費用:約1~2万円>
お母さんの血液から、赤ちゃんの体由来のホルモン濃度を検査し、赤ちゃんが病気をもっている確率を診断します。検査方法は、トリプルマーカー検査とクワトロマーカー検査の2種類です。

異常が確認された(陽性だった)場合、さらに詳しい検査を希望するなら羊水検査を受ける必要があるため、17週までに検査することが推奨されています。


新型出生前診断(NIPT)

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

<診断時期:妊娠10~18週 費用:約20万円>
母体血清マーカーテストと同じ採血検査で、2013年に初めて日本でも認可されました。母体血清マーカーよりも精度が高く、80~90%の確率で先天性異常を診断することができます。検査結果が出るまでに約2週間かかり、陽性診断で、かつ、さらに詳しい検査を希望するならば羊水検査を受ける必要があります。

また、受診対象となるための条件が3つあります。

  1. 出産予定日時点で、お母さんが35歳以上
  2. お母さんもしくはお父さんが染色体異常である
  3. 過去に、13・18・21トミソリー症候群の赤ちゃんを妊娠・出産した経験がある


羊水検査

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

<診断時期:妊娠15~18週 費用:約12~15万円>
母体の腹部に長い針を刺して羊水を採取し、羊水に含まれる赤ちゃんの細胞などを分析します。母体血清マーカーやNIPTが、あくまでも確率を診断するにすぎないことに対し、羊水検査は確定診断として行われます。


絨毛検査

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

<診断時期:妊娠9~11週 費用:約15万円>
羊水検査と同様に、母体の腹部に長い針を刺して、赤ちゃんのへその緒から血液を採取します。13・18・21トミソリーなどの染色体異常の診断のほか、さまざまな遺伝病の有無を診断することができます。ただし、難しい手術なので、絨毛検査以外の選択肢がない場合のみに行われます。

参考元:イルイル


診断を受ける時期

出生前診断は、まずスクリーニング検査(超音波検査、母体血清マーカーテスト、NIPT)を受け、陽性が出た場合に確定診断(羊水検査、絨毛検査)を受けるという流れが一般的です。

スクリーニング検査のうち、最も時期が早い検査は超音波検査とNIPTで、妊娠初期(妊娠10~14週頃)に診断可能な検査です。妊娠中期(妊娠15~18週頃)の方に適しているスクリーニング検査は、母体血清マーカーテストです。

確定診断である羊水検査は、妊娠中期までに受ける必要があります。絨毛検査は、診断時期が羊水検査よりも早いです。時期の難しさの他に、手術の難しさや流産の確率の高さなどの理由から、確定診断の主流は羊水検査のようです。

[3]出生前診断を受ける人が増えている背景

新型出生前診断を導入

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

新型出生前診断(NIPT)は、2011年からアメリカで広まり始めました。日本に導入されたのは2013年です。血液検査で先天性異常の可能性を判断するNIPTは、従来の血清マーカーテストよりも精度が高く、母体への影響も少ない(わずか20cc程度の血液で診断可能)ため、導入されてから日本でも診断を受ける人が増えています。

この4年間でNIPTを受けた人は、2017年7月時点で4万4645人にのぼり、昨年より1200人増加しています。

参考記事:毎朝新聞

高齢出産の増加とリスク

出生前診断を受ける人が増えている大きな理由の1つが、高齢出産をする人が増えているからです。高齢出産について、詳しくご説明します。

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

  • 高齢出産とは初産が35歳以上
  • 日本産婦人科学会では、35歳以上で初めて妊娠・出産する人のことを「高年初産婦」と定義しています。初産以外のはっきりとした定義はありませんが、初産でも2回目以降の出産でも、およそ35歳が妊娠・出産におけるリスクが高まり始める時期の目安のようです。

    そのため、一般的に「高齢出産=35歳以上」と考えられています。

高齢出産の4つのリスク

  1. 卵子の老化が進み、妊娠しにくくなる
  2. 卵子のもととなる「原子卵胞」という特殊な細胞は、胎児のときにすべて作られ、出生後に数が増えるわけではありません。年齢を重ねるごとに、細胞分裂時の染色体異常といった卵子へのダメージが蓄積し、卵子の働きが弱くなってしまいます(=老化)。卵子の老化が進むと受精や着床が難しく、不妊率が上がります。

    25~29歳の不妊率が8.9%なのに対して、40~44歳だと28.9%と3.2倍もリスクが高くなることがわかっています。生活習慣の乱れや喫煙は卵子の老化を加速させるので、健康的な生活を心がけると良いでしょう。

  3. 染色体異常が起こりやすくなる
  4. 染色体異常の原因は様々ありますが、その1つが卵子や精子の老化だと言われています。出産の年齢が高くなればなるほど、染色体異常による病気の発症率が高まります。ダウン症の発症率は、出産時の妊婦さんの年齢が25歳なら約0.07%、30歳で約0.1%、40歳では約0.8%です。40歳での発症リスクは25歳の10倍以上にもなってしまいます。

  5. 流産や早産しやすくなる
  6. 妊娠初期に起こりやすい流産の主な原因は、赤ちゃんの染色体異常です。高齢出産だと、染色体異常が起こりやすくなることと併せて、流産の危険性も早まります。流産する確率は、平均が約15%なのに対して、35~39歳では20%以上、40歳以上では40%以上であり、リスクが高くなってしまします。

    早産の主な原因は、妊娠高血圧症候群や常位胎盤早期剥離などですが、これらも年齢を重ねるほど発症リスクが高くなってしまいます。

  7. 妊娠中、病気になりやすい
  8. 妊娠すると女性ホルモンの分泌量が変化し、自律神経のコントロールが難しくなります。つわりを始めとした様々な不調が、体調面や精神面でも現れてくるでしょう。高齢妊娠だとこれらの不調が及ぼす体へのダメージが大きく、結果として病気にかかりやすくなってしまします。

    特に、「妊娠高血圧症候群」と「妊娠糖尿病」はそれぞれ40歳以上、35歳以上になると発症リスクが高まるので注意しましょう。

参考元:厚生労働省
参考元:こそだてハック

  • 高齢出産者が多い社会的背景
  • 1985年に男女雇用機会均等法が制定されてから、女性の社会進出はかなり進んだといえるでしょう。それに伴い、結婚や出産する平均年齢は年々上昇しています。

    確かに近年、「逃げるは恥だが役に立つ」や「東京タラレバ娘」など、晩婚がテーマのドラマが増えて話題となったり、国や市町村が婚活に力を入れたりするようにもなってきました。いまの時代は、仕事・結婚・出産に対する価値観が40~50年前とは大きく変わってきたと言えるでしょう。

出生前診断を受診して中絶した人の割合

出生前診断を受けて、もし「陽性」と診断された場合どうしますか?この事実を知ったうえで出産するか、中絶するか、どちらかの選択を迫られることになります。

各地の病院がつくる研究チームがNIPTの受診データを集計した結果によると、NIPTで「陽性」判定を受け、その後の確定診断でも「陽性」とわかった場合、受診者の94%は人工妊娠中絶を選んでいます。

参考元:毎日新聞

[4]出生前診断のメリットとデメリット

出生前診断を受けるかどうかは、賛否両論意見が分かれるテーマです。

メリット

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

事前に先天性の病気の有無を知ることは、早めの準備や心づもりをすることができるというメリットがあります。陽性と診断されて生むことを選んだ場合、医師やカウンセラーの方に相談したり、障害について事前に情報収集したり、今後のお金の計画を立てたりするといったことに十分時間をかけることが出来ます。

妊婦さんの不安やイライラした感情は、ホルモンバランスの乱れとなって、お腹の赤ちゃんへ悪影響を及ぼしかねません。診断を受けて事実を知ることが、少しでも妊婦さんの不安を減らすことに繋がるのであれば、メリットだと言えるでしょう。

デメリット

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

  • 検査による母体への影響
  • 出生前診断の検査方法のうち、スクリーニング検査(超音波、血清マーカー、NIPT)は安全な検査方法です。しかしその後に続く確定検査(羊水検査、絨毛検査)は、妊婦さんのお腹に針を刺して羊水や細胞を採取する必要があり、この手術には多少のリスクが伴います。

    それは、検査後に出血や下腹部の痛みが起きることがあるからです。また、検査後に流産する可能性が約0.3%、検査が無事完了しても診断結果がでないという可能性が、約1.5%あると言われています。

  • すべての先天性異常を診断できるわけではない
  • 出生前診断では、すべての先天性の病気のことがわかるわけではありません。出生前診断でわかる主な病気は13トミソリー・18トミソリー・21トミソリーと特定の遺伝性疾患であり、数ある病気のほんの一部にすぎません。

    羊水検査を受けたところ、「陰性」判定だったので幸せな気持ちで無事出産したにも関わらず、子どもが2歳になったときに「自閉症」だと診断されたという方の体験談もあります。

参考元:出生前診断情報センター

[5]受けるかどうか迷っている方へ

「命の選択」という倫理的な問題

出生前診断で胎児の身体の状態がわかる?受ける目的とそのメリット・デメリットとは

子どもが2歳のときに「自閉症」だと診断された方の体験談では、情報や覚悟がないまま安易に出生前診断を受けた後悔の気持ちが書かれています。

【引用】
検査の当日、通されたのは出産間際の妊婦たちがいる部屋でした。陣痛で苦しんでいる人の声も聞こえました。そんな中で周りの妊婦たちと180度状況が違う自分が情けなくなり、ずっと泣いていました。優しい看護師さんが背中をさすってくれ「そんなに泣いていたらお腹の子どもに障るわよ」と慰めてくれました。

でも、医師は厳しくこう私に言いました。

「何をそんなに泣いているんですか!『障がい児だったらいらない』からこの検査を受けるんでしょ?どんな子どもでも産む覚悟ならばこの検査を受けないでしょ。泣いて悩んだって仕方がないでしょ!検査するのを止めますか?」と・・・
引用サイト:conobie 15年前に出生前診断を受けた私がいま、思うこと

その後、自閉症だとわかったのは子どもが生まれてからであり、子育てを放棄することはできません。けれど、生まれる前ならば授かった命を育てることを放棄しても良いのでしょうか。親が選択してもいいことなのでしょうか。

診断を受ける前、診断を受けた後に、多くの方がこの「命の選択」について悩まれているようです。

生後1ヶ月以内に死亡する確率が50%だといわれている「13トミソリー」の子を自宅で育てている方の体験談もあります。診断を受けないという選択をして、家族が一緒に過ごせることが何よりの幸せだという母・桂子さんの言葉が印象的でした。松永医師の出生前診断への辛辣な意見も書かれています。
興味のある人は、こちらの記事もぜひご覧ください。

➡≪新型出生前診断で問われる“命の選別”「13トリソミーの子」と家族に寄り添う医師、松永正訓さんに聞く≫

出生前診断に関する書籍3選

出生前診断を受けることが一概に良い・悪いとは言えませんが、悩んでいる方にとってはいつか決断しなくてはならないものです。そこで、出生前診断について役立つ確かな情報が多いオススメの本を、3冊をご紹介いたします。

  • 出生前診断(ちくま新書)
  • ■著者:西山深雪
    ■出版:筑摩書房
    ■初版:2015.3.4

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    出生前診断についての情報を客観的に提供することに注力した、教科書となるような本です。海外の研究結果や学会での意見など新しい情報が多く、様々な役立つ情報を知ることができるでしょう。


  • マンガ はじめての出生前診断
  • ■著者:中西恵里子
    ■出版:かもがわ出版
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    コミックエッセイなので読みやすい一冊です。とはいえ、出生前診断の体験者の方の苦悩、後悔や希望が浮き沈みする様子がリアルに描かれています。



[6]家族と赤ちゃんの人生のために後悔のない選択を

出生前診断にはメリットもデメリットもあります。正解があるわけではなく、人それぞれ幸せの形は違います。後悔のない選択となるように、検査を受ける前にぜひ家族や医師と相談をしたり体験者の方の話を聞いたりしましょう。

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