【医師監修】基礎体温で妊娠・排卵日が分かるの?医師が教える基礎体温でできること・分かることとは

妊活中の女性、または妊活をしたことがある女性は「基礎体温」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。基礎体温は、妊活をするうえでの指標になるだけでなく、心身の不調を発見する際のヒントにもなります。女性にとって役立つことの多い基礎体温について、基本的な知識から測り方、グラフのつけ方まで詳しく解説します。

基礎体温ってどんなもの?

女性ならぜひ身につけておきたい基礎体温の知識。まずは、基礎体温の基本を解説します。

基礎体温とは

基礎体温とは、人間が生きる上で必要なエネルギーのうち最小限しか消費していない状態のときの体温を言います。簡単に言えば、ほとんど動いていないときの体温、つまり寝ている時の体温です。人間は、ちょっとした動作や感情でも体温が上がってしまいます。そのため、基礎体温を測る際は、朝目覚めて起き上がる前の状態で測るのが一般的です。

基礎体温の高温期と低温期

通常、基礎体温は排卵日を境に体温が低くなる低温期と体温が高くなる高温期に分かれます。生理開始から低温期に入り、基礎体温が低い状態が続いたあと、排卵が起こり、その後高温期となります。そして、体温が高い高温期から急にがくっと体温が下がると、生理が始まります。これが1か月のサイクルとなります。

このように排卵や生理が基礎体温に反映されるため、基礎体温を毎日測り記録することで排卵日や次の生理時期を予測できるのです。

ちなみに、基礎体温の平均値は低温期が36.5度前後、高温期が36.7~37度前後となっています。

基礎体温と4つの期間

先ほど基礎体温は高温期と低温期に分かれるとご説明しましたが、より詳しく解説すると、基礎体温には1か月(1回の生理周期)の間で4つの期間があります。生理のある女性はこの4つの期間が繰り返され、毎月生理が起こります。

月経期
生理開始日からの生理が終わるまでのおよそ3~7日間を月経期と言います。生理時は黄体ホルモン(プロゲステロン)というホルモン分泌量が一気に低下します。この黄体ホルモンには体温を上げる作用があるため、黄体ホルモンの分泌が減ることで生理開始からの月経期は基礎体温が低い状態となります。つまり、低温期に含まれます。

卵胞期
生理終わり後から排卵が起きるまでの期間が卵胞期で、およそ6~7日間になります。生理の終わり頃になると、卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌され始めます。卵胞ホルモンの働きによって子宮内膜が厚くなり、着床の準備態勢となるのです。卵胞期の間も基礎体温が低い状態が続きます。

排卵期
卵巣から卵子が放出されることを排卵と言いますが、その排卵が起きるのが排卵期です。排卵期の期間はおよそ5日間。卵胞期のあとに排卵期に入り排卵が起こると黄体ホルモンが分泌されるようになります。

「月経期」の部分でも解説したように、黄体ホルモンには体温を上げる作用があります。そのため、排卵した日(排卵日)付近から基礎体温が上がる高温期に入っていきます。

黄体期
排卵期に分泌された黄体ホルモンは、着床に向けて子宮内膜を厚くします。これが黄体期で、期間はおよそ14日間ほどです。

排卵で放出された卵子が精子と出会い、着床して妊娠が成立すると、さらに身体を妊娠に備えたものにするために黄体ホルモンの分泌量は増加します。そのため、基礎体温が高い状態(高温期)が続きます。

卵子が着床せずに妊娠に至らなければ、黄体ホルモンの分泌量が低下し、基礎体温が下がります。と、同時に着床に備えて厚くなっていた子宮内膜は不要となり、剥がれ落ちて血とともに排出されて生理が始まります。

基礎体温を測ってみよう

基礎体温は測り方を少し間違えただけでも正確な数値が出なくなってしまいます。正しい測り方を知っておきましょう。

基礎体温で妊娠・排卵日がわかる?基礎体温の見方・測り方

基礎体温の測り方

基礎体温は体を動かしていない状態のときの体温。基礎体温を測るときは、朝目覚めてから体を起こさず、横になったままの状態で測ります。体温計は一般の体温計でなく小数点2ケタまで表示される婦人体温計を使用してください。

朝、起き上がらずすぐに測れるように、毎日枕元に婦人体温計を置いて寝るようにするとよいでしょう。目が覚めたら横になったままで婦人体温計の先端を舌の裏側に差し込み計測します。体温計がずれないように指で支えましょう。

基礎体温を測る際の注意点

身体の状態を正しく知るには、毎日決まった時間に計測するのが理想です。かっちり同じ時間は難しいとしても、なるべく一定の時刻に測るようにしましょう。

計測中に動くと体温は上がってしまい正しい基礎体温が測れなくなるので、計測中は安静に。もし計測を忘れて一度起き上がってしまったり動いてしまったりした場合は、再び30分程度横になってから測れば大丈夫です。

朝は忙しくて測るのが難しいという人は夜の計測でもOK。ただし、この場合も毎日一定の時刻に、30分ほど安静にしてから計測してください。基礎体温の変化のリズムをきちんと把握するには、少なくても3か月は基礎体温を計測し記録しましょう。

基礎体温グラフのつけ方・見方

計測した基礎体温は毎日記録し、基礎体温グラフをつくります。基礎体温グラフとは、毎日測る基礎体温を記録し折れ線グラフにしたもの。グラフ化することで低温期と高温期がわかりやすくなります。基礎体温を記録する基礎体温表はインターネットでダウンロードできます。

基礎体温表をつけ始めるときは、生理開始日から始めるとわかりやすいです。基礎体温表の生理周期をメモする欄があるので、生理開始日に「1」と記載し、翌日から「2」「3」…とつけていきます。縦軸に計測数値が書かれているので、その日の相当する数値部分に印をつけ、線で印をつないでいきます。その日の体調やおりものの状態、生理が開始・終了した日などはその旨も備考欄に記載しましょう。

こうして生理の1周期分をグラフ化したとき、正常な状態であれば、グラフが低温期と高温期の2層を描きます。生理開始日からつけた場合、月の前半は基礎体温が低い日が多く(低温期)、後半は高い日が続く(高温期)状態となります。逆に、グラフが2層にならない場合、妊娠やホルモン分泌の異常などの可能性が出てきます。

基礎体温でできること・わかること

基礎体温を毎日計測しグラフ化することで、身体のサイクルや不調、変化を予測することができます。具体的に、基礎体温がどのような状態のときにどのような予測ができるのか、以下で詳しく解説します。

基礎体温で妊娠・排卵日がわかる?基礎体温の見方・測り方

次の生理時期を予測できる

基礎体温グラフを数か月継続してつけてみて、毎回グラフが低温期と高温期の2層になる人は生理周期が整っていると考えられ、次の生理をおおまかに予測することができます。

生理周期が整っている人の場合、高温期は14日前後で毎回ほぼ一定。そのため、今日から基礎体温が高くなった(高温期に入った)としたら、およそ14日後に生理がくると予測できるのです。

体調の変化を予測できる

女性の体調は女性ホルモンに左右されやすく、生理周期のどの期間にいるかでも体調が異なる場合があります。一般的に、生理直後の卵胞期(低温期)は1か月の中でも体調が良好な時期。体だけでなく気分もすっきりして快適なことが多いです。

逆に体調が悪くなりやすいのが生理前の黄体期(高温期)。肌が荒れやむくみが出やすかったり、気分もイライラしたりと心身ともに不調になりやすく、症状がひどいとPMS(生理前症候群)と診断されることもあります。

このように4つの期間で体調が変化するため、今自分がどの期間にいるかで、何日後に体調が悪くなるか、良くなるかの予測が立てられるというわけです。

妊娠しやすい時期を予測できる

妊娠は、卵巣から放出された卵子と精子が受精し着床することで成立します。ただし、卵子の生命力は1日程度しかないため、卵子が排出される排卵日前後は妊娠しやすい時期とされています。基礎体温で言うと、排卵日は最も基礎体温が下がる日とされています。

生理開始日からの低温期が10日~14日ほど続き、さらに基礎体温が下がった日があれば、排卵日と考えられます。ただし、人によっては基礎体温が最も下がった日から1~2日後が排卵日となることもあります。

いずれにしろ、基礎体温だけで確実に排卵日がわかるわけではないため、あくまで目安として考えましょう。避妊している方の場合は基礎体温だけで妊娠しやすい日・しにくい日を判断せず、コンドームやピルなどの避妊法を併用してください。

排卵が正常かの確認ができる

女性ホルモンのひとつである黄体ホルモンには体温を上げる作用があります。この黄体ホルモンの分泌量の変化により基礎体温が上下し、グラフが高温期と低温期の2層になります。

この黄体ホルモンは排卵が起きることで分泌されるため、もし、基礎体温に温度差が見られず高温期と低温期の差がはっきりしない場合、黄体ホルモンが作用していないと考えられ、排卵がされていない可能性が出てきます。

生理があっても排卵がされていない状態は「無排卵月経」と言い、当然妊娠にも影響が出ます。無排卵月経が疑われる場合は、たとえ現時点で妊活中でなくても一度婦人科を受診することをおすすめします。

妊娠の可能性がわかる(基礎体温が高い状態が16日以上続く)

排卵が行われても妊娠しなかった場合、体温を上げる作用をもつ黄体ホルモンの分泌量が低下し低温期に入りますが、妊娠が成立すると黄体ホルモンが分泌され続けるため体温が高い状態が継続します。

妊娠がないときの高温期は14日間前後ですから、高温期が16日以上続き生理も来ない場合は妊娠の可能性が高いと考えられます。

流産の可能性がわかる(基礎体温が高い状態が続いたあと低くなる)

基礎体温が高い高温期が21日以上続いたあとに出血が見られたときは流産を起こしかけている「切迫流産」の可能性があります。すぐに婦人科を受診しましょう。

また、妊娠4か月目以降でずっと高温期が継続していたのに体温が下がってきたときは流産の可能性が出てきます。この場合も、婦人科を受診してください。

更年期の早期発見

女性は50歳前後で生理が永久的に終わりとなる「閉経」を迎えます。閉経を挟んだ前後10年間は「更年期」と呼ばれ、さまざまな不調が起こりやすくなります。

更年期が近くなると、基礎体温は低温期の期間が短くなって、短い周期で生理が来るようになります。その後、高温期が短くなったり高温期が無くなってたりすることも。

基礎体温を記録していれば、各期間の長さの変化から更年期が近づいていることを早期に発見でき、心の準備や対策ができます。

基礎体温がガタガタになる原因とは

女性ホルモンの分泌が正常であれば、基礎体温グラフは高温期と低温期の2層を描きます。逆から考えると、基礎体温グラフが2層にならずガタガタになっている場合、女性ホルモンの分泌になんらかの異常があると考えられます。

女性ホルモンに影響を与え基礎体温を乱してしまう原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

基礎体温で妊娠・排卵日がわかる?基礎体温の見方・測り方

ストレスの影響

女性ホルモンは脳の視床下部という部分からの指令によって分泌されるのですが、この視床下部は自律神経をコントロールする器官でもあります。ストレスを受けると自律神経が不調をきたし、その影響を受けて女性ホルモンの分泌バランスが崩れてしまうことがあります。

病気の可能性

女性ホルモンの分泌に異常が起こる病気もあります。

毎日の基礎体温の上がり下がりが激しく高温期と低温期の差がはっきりしない場合に考えられる病気には、卵巣が正常に機能しなくなる「卵巣機能不全」、卵子のもとである卵胞が発育せず排卵が起きにくくなる「多嚢胞性卵巣症候群」、排卵を抑制する作用をもつプロラクチンというホルモンが過剰に分泌される「高プロラクチン血症」などがあります。

また、高温期の期間が短い場合や高温期の期間中一時的に体温が下がったりする場合は、黄体ホルモンを分泌する黄体が正常に機能しない「黄体機能不全」の可能性もあります。

いずれの病気も妊娠に影響するもの。妊活中の方はもちろん、今は妊娠を考えていない方も将来不妊になる可能性があるため、病気が疑われるようであれば早めに婦人科を受診しましょう。

基礎体温の不安定を改善するには

女性の体は大変デリケートで、基礎体温もちょっとしたことで影響を受けます。一時的に基礎体温が不安定になっても、次の周期で正常に戻っていればそれほど心配いりません。2か月以上不安定が続くようであれば一度婦人科を受診して相談してみましょう。

婦人科で診察を受け、病気などの器質的な原因が見つかれば、その病気の治療・改善が必要になります。定期的に通院しきちんと治療を受けましょう。

器質的な原因が見つからない場合は、生活習慣に問題がある可能性も。基礎体温は、ストレス以外にも睡眠不足や不規則な食生活が影響して乱れてしまうことがあります。忙しい中でもできる限り睡眠時間を確保し、バランスのよい食事を心がけましょう。

また、身体が冷えると、卵胞ホルモンを分泌させる卵巣の機能が低下してホルモンバランスが乱れやすくなります。冷たい食べ物を食べ過ぎない、半身浴で温めるなどして身体を冷やさないことも大切です。

まとめ~基礎体温は健康のバロメーター

基礎体温というと、妊娠を目指す女性のお役立ちツールというイメージが強いですが、基礎体温のちょっとした変化が婦人科系の病気や体調不良の早期発見につながることもあります。

まさに健康のバロメーターとも言える基礎体温ですが、正しく計測・記録できていなければ意味がありません。基礎体温は正しい計測方法で測り、毎日記録をつけましょう。

気になることがあれば、基礎体温表を持参して婦人科を受診し医師に相談してください。

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