【医師監修】子どもの下痢をどうにかしたい!下痢の種類や症状・対処方法について

子供が体調を崩して、病院で説明するとき、下痢していると伝えることはありませんか?
実は、ひとくちに下痢といっても、下痢にも色々な種類があることはあまり知られていません。病院で下痢の特徴を伝えられると、病気をより早く見つけるヒントになるかもしれません。今回は下痢の種類と病気との関係に注目していきます。

下痢とは

健康なときに出ている便よりも、やわらかく、あまり形が残らない、もしくは液状になって出てきているものを言います。原因は、内臓の消化器官に異常がある場合や、ウイルスが入ってしまってそのウイルスを除去するための体の反応の場合など色々です。

日本では、下痢をしたくらいで命を落とすことはないと考えられますが、発展途上国では、乳幼児の主な死亡要因のひとつとしてあげられています。下痢は対応を間違えると、乳幼児にとっては命にかかわることもあるという認識は持っておいたほうがいいでしょう。通常の便は水分や栄養素を腸で吸収して残ったものが排出されたものですが、下痢の場合には多くの水分が吸収されないまま体の外に出てきてしまいます。

ただ、生まれたばかりの赤ちゃんは母乳かミルクしか飲まないため皆、下痢のような泥状便で、その状態の便が赤ちゃんにとっては普通です。通常、水っぽく、黄色い液体のなかに薄い黄色からおうどいろ、もしくは緑色のつぶつぶがある便が多く見られます。この便は離乳食を開始するまで続きます。

下痢にはどんな種類があるの?

下痢にはたくさんの種類がある?熱や嘔吐は?どんな症状が起こるの?

下痢は急性と慢性に分けることができます。また、その中でもいくつかの分類があります。
ここではそれぞれの特徴についてご紹介します。

急性下痢

急性下痢は、非感染性のものと、感染性のものがあります。症状によって対処法が異なりますので、ご説明していきます。

非感染性下痢
非感染性下痢は、冷えや、暴飲暴食、吸収されにくいものを食べたり飲んだりしたことにより起きたり、食べ物に対するアレルギー反応で起きます。冷えの場合はお腹をあたため、食べすぎ、飲みすぎに関しては、食べる量やものに注意することで下痢を起こさないようにすることが可能です。

食べ過ぎてはいなくても、キシリトールやソルビトールといった一般的に良く使われている人工甘味料も下痢の原因になることがあります。あめやガムなどのお菓子や、炭酸飲料、ハムやかまぼこなどの食品にも入っていますので、注意が必要です。これらは腸内で吸収されにくく、腸の中に水を多く含む作用があり、便中の水分が多くなり、下痢を引き起こします。

また学童期以降になってくると精神的なストレスや不規則な生活が原因でも下痢になることがあります。まずはそれがストレスや不規則な生活によるものか一度診察してもらい、何か他の病気が隠れていないかを確認した上でやはりストレスによるものが疑われた場合は、気持ちがリラックス出来るような薬や下痢止めを使うこともあります。

早寝早起きをし、生活リズムを整え、食生活を改善することでも良くなることもありますが、気をつけなければいけないのは食物アレルギーによる下痢です。例えばミルクアレルギーの場合、ミルクをあまり飲まない、飲ませても下痢をし体重が増えて来ない、下だけでなく吐く、便に血が混じるなどの症状がでることがあります。この場合はかかりつけの小児科を受診するようにしましょう。

感染性下痢
感染性下痢は、ウイルスや細菌に感染したことによって起こるものです。感染性の下痢のほとんどがウィルスによるものです。

細菌性の場合は、食中毒である可能性もあります。保育園、幼稚園、学校での流行はないか、2-3日前から直前まで何を食べたか、周りで同じような症状の人がいないかを確認をすることが大切です。

感染性の下痢の場合は、感染性胃腸炎という診断になることがほとんどです。海外で感染することもあるため、渡航歴がある場合は必ず医師に伝えるようにしましょう。感染性胃腸炎の場合は、ウイルスを排出しようとする体の防衛機能なので、下痢以外にも嘔吐や発熱などを伴うことが多いです。

下痢止めを利用するとウィルスが体内にいる期間が長引くため、かえって治りが遅くなる可能性があります。医師の指示がなければ下痢止めは使用しないようにしましょう。

慢性下痢

下痢の症状が3週間以上続く、もしくは、再発を繰り返す状態の場合は、慢性下痢と診断されます。子供の場合考えなくてはいけない原因は、大きく二つあります。

一つ目は感染性胃腸炎後の遷延する下痢です。感染性胃腸炎を起こすと、一時的に腸の粘膜があれ、ただれることがあります。またウィルスによっては腸内に1ヶ月程度留まることがあります。この場合、本人は元気なのに下痢だけが何となく続くということがあります。乳児の場合は、感染によって一時的な乳糖不耐症といってミルクを受け付けない状態になることがあります。その場合ミルクを分解してあげる薬を飲むことで改善します。

いずれにしても本人が元気で食欲もあり、下痢はあっても一日2−3回程度で日常生活に支障がなければまず問題はありません。

二つ目は、食物アレルギーの場合です。食物アレルギーがあると下痢が続き、ひどくなると下痢に血液が混じることもあります。症状はそのアレルギーが疑われるものを食べてから、早ければすぐ、もしくは1時間以内くらいに下痢だけでなく嘔吐もみられたり、顔や体にじんましんがでたり、かゆみがでたりという症状がでます。

ただ遅発性アレルギーといって、食べた翌日にでるものもあるため、何が原因かわかりにくいこともあります。もし食物アレルギーが疑わしければ、何を食べたか記載する「お食事日記」を付けられると良いと思います。

下痢が続いて心配なときはかかりつけの小児科を受診するように致しましょう。

水分不足による脱水症状に注意

下痢にはたくさんの種類がある?熱や嘔吐は?どんな症状が起こるの?

下痢はたくさんの水分を体から出してしまいます。その中には塩分やカリウムなどの電解質も多く含まれています。

子供の場合大人に比べて体の中の水分量が多く、体の水分調節機能も未熟であるため脱水症状になってしまうことがあります。

脱水症状にならないように、水分を与える際の注意点をご説明します。特に急性下痢で感染症が疑われる場合に、以下のように水分を与えると良いでしょう。

自宅で対処する場合

水分が足りないからといって、そして本人が飲みたいからといっていきなりたくさんの水やお茶を飲ませてはいけません。特に冷たい水は、内臓を刺激して、下痢の促進につながってしまいます。

水分を与える場合は、経口補水液を与えると良いでしょう。ドラッグストアではまず購入することができます。ただ購入出来なかった場合、経口補水液はおうちでも作ることができます。
500mlの水にお塩1.5gにお砂糖20gを入れて混ぜれば完成です。冷たいお水で溶けにくければ、一度沸かしてから溶かした方がよいかもしれません。さらにレモン汁を大さじ一杯程度加えることにより、クエン酸がプラスされ、飲みやすくなり、吸収もさらに良くなる効果も期待出来ます。

この経口補水液を冷たくないものを少しずつ与えるようにしましょう。与える量の目安としては、どの程度の下痢をしているかにもよりますが、おおむね幼児であれば300mlから500ml程度、学童であれば500mlから1000ml程度と考えられます。

水分が取れており、後述する脱水を疑わせるような症状がなければ、1−2日程度食欲がなく食べられていなくても心配しなくても大丈夫です。食欲が出てきても 一気に与えず、まずは消化に良いものから少しずつ、徐々に食べる量を増やしていきましょう。

下痢の時に与えて良い食事、控えた方が良い食事に関してはまた後で説明します。

病院で対処する場合

飲み物を飲めなくなってしまい脱水が疑われるときは、点滴を使う必要があります。点滴は脱水を改善することが目的です。また子供の場合、脱水だけでなく低血糖になっていることもあるので、その場合は点滴から糖分を補給します。

脱水を疑う症状はどんなとき?

では、どんな症状があれば脱水を疑わなければいけないのでしょうか。

  • おむつを替えようとみてみても6時間以上おしっこがでていない
  • おしっこがでていても色が濃く、少ない
  • ぼーっとしていて、寝てばかりいる
  • 肌がかさかさしており、唇も乾燥している
  • 泣いても涙がでない
  • 泣き方がよわい
  • 目がくぼんできた

これらは脱水が疑われるので、すぐに病院を受診するようにしましょう。

下痢と吐き気が一緒に来るのはどんなとき?

吐き気(嘔吐)と下痢が一緒に来る症状を総称して、嘔吐下痢症と呼ばれます。ウイルスや細菌が原因の場合や、食中毒などの場合があります。ここでも一番怖いのは脱水症状です。特に嘔吐を伴っている場合は、飲ませても吐いてしまいますので嘔吐した直後口をゆすぐのは良いですが、飲ませないようにしましょう。

吐かない状態が少なくとも1−2時間続いたことを確認した後、まずはペットボトルキャップ一杯程度、ごく少量から水分摂取を始めてみて、飲んだ後15分程度吐かないことを確認出来たら、その倍量を飲ませる、また15分後に吐かなければまたその倍量、と少しずつ段階を踏んで飲む水分量を増やしていきましょう。

もし吐いた場合は、また1時間おやすみをして、最初から仕切り直します。このとき飲ませる水分は先ほどお話ししたように経口補水液が好ましいです。

この一般的な嘔吐下痢症の場合は、嘔吐は1日程度でおさまることがほとんどです。しかし、嘔吐が止まらない、嘔吐物が緑色をしている、歩けないほどにお腹が痛い、前述したような脱水症状が疑われる場合は、かならず病院を受診しましょう。

下痢のときの食事について

下痢にはたくさんの種類がある?熱や嘔吐は?どんな症状が起こるの?

【与えて良いもの】

  • 炭水化物
  • ごはん うどん 

  • カリウムを含むもの
  • りんご バナナ フルーツ ブルーベリー 

  • 根菜類
  • にんじん カボチャ 大根

◆おすすめのメニュー 

おかゆ+すりおろしたリンゴ大さじ1+すりおろした人参大さじ1を混ぜ、電子レンジで3分ほど加熱して混ぜる。(塩をひとつまみ混ぜてもOK)冷めたら与える。

食欲がでてきたら、柔らかくゆでたカボチャをスプーンでつぶしたものを別に与える。更に食べられそうであれば、そこに火を通したお豆腐を加えたり、固ゆで卵の黄身をだけ崩して入れたり、白身の魚や鶏のささみをゆでて細かくして混ぜる。おかゆが苦手な場合、ゆでたうどんを短く切って与えても良いでしょう。

【控えた方がよいもの】

  • 刺激物
  • カレーなど香辛料を多く含む食べ物(カレーは脂質も多いです)・にんにくやショウガなど

  • 脂肪を多く含むもの
  • お菓子・ケーキ類・揚げ物・豚バラ肉や牛肉・マヨネーズなど

  • フルーツ類
  • イチゴ・柑橘類(オレンジやみかんなど)さくらんぼや桃(含まれる糖が消化しにくいため)

  • 乳製品
  • 牛乳やヨーグルト

  • 食物繊維を多く含むもの
  • キノコ類・ごぼうやさつまいもなど

乳製品は、下痢が始まってすぐの場合は控えた方が良いでしょう。しかし、ヨーグルトや乳酸菌飲料などには腸内環境を整える作用があるため、急性期を過ぎ、元気だけれど下痢症状のみ継続している場合は、それらを食べることで下痢を改善する効果が期待できます。

下痢に血が混ざっていたときは

下痢に血が混ざっている場合、色は主に二種類になります。それは赤色(血便)と、赤黒色(タール便)です。

血便は大腸などの消化管の出血で起こり、その色は肛門から近いほうが明るく、赤に近い色になります。赤黒便(タール便)は胃で出血している場合、血液が胃酸の影響で便が黒くなるため、黒い炭のような便になります。

この黒い便はイカスミを使った食事を食べたときや、鉄剤を飲んでいるときでも起こります。赤い便(血便)の原因が痔だと明らかであればその治療を行えばよいのですが、原因がはっきりしない場合は内臓の場合はどの部分に出血があるのか、原因が何なのかを早期に特定する必要があります。

幼児の血便は痔であることが多いですが、学童期以降は腸の病気のサインであることもあるため、病院に行き、原因を明らかにされる必要があります。

血便で問題のないものとして、母乳栄養の赤ちゃんの場合、便のうえに血が混じることがあります。母乳中の乳糖が腸の中で酸性になり、それによって粘膜が刺激され、便の上に点状の赤い粘液のようなものが付着したり、便の表面に線状につくことがあります。機嫌良く母乳の飲みも良く体重も順調に増えているようであれば、まず心配はいりません。

気になるようであれば、その便を携帯などで写真に撮り、小児科を受診した際に医師に確認してもらいましょう。

もし機嫌が悪く、母乳も飲まず、便がイチゴジャムのような便になったり、顔色が悪くなるようであれば、すぐに病院を受診するようにしましょう。

【下痢のときに処方される薬について】

  • 整腸剤
  • 整腸剤は腸内環境を整えるもののため下痢を止める効果はありません。ただ整腸剤に含まれる乳酸が、感染によって生じたアンモニアの産生や吸収を抑える効果は期待出来ます。

  • 下痢止め
  • 下痢が出ている原因によって使用を考慮します。子供の場合、急性胃腸炎にともなう下痢のことが多く、また副作用により不利益があることが多いため、基本的には使用しません。

    腸管蠕動抑制薬は、神経に働きかけて腸の動きをゆっくりにすることで、下痢を止めるものです。しかしゆっくりにしすぎて、腹痛が悪化したり、イレウスといって動きが止まってしまったり、ウィルスや細菌が体内に停滞することがあるため、通常は使用しません。

    吸着薬は、ウィルスだけでなく体に必要な栄養素も吸着してしまうため、あまり使用しません。下痢止めは医師の指導のもと、やむを得ない場合にのみ使用するようにしましょう。

下痢の予防方法

下痢にはたくさんの種類がある?熱や嘔吐は?どんな症状が起こるの?

ウイルスや菌が原因の場合は、感染予防をすることで下痢の予防につながります。

非感染性の場合、生活リズムを整えたり、食生活を見直したり、また、薄着をしたり、おなかを出して寝ないなど、体を冷やさないようにしたりすることで改善することもあります。

また日頃からプロバイオディクスと言われるヨーグ ルトや乳酸菌飲料を摂取することによって、腸内環境が整い、胃腸炎にかかりにくい 状態を作ることができます。

内臓からのシグナルを見逃すな!心配ならすぐに病院に行こう

小児の下痢の多くの原因は急性胃腸炎に伴うものです。脱水症状に気をつけながら、適切な水分摂取、お食事をとるようにしましょう。

長く続く下痢は内臓からのシグナルです。そこに病気が隠れているかもしれません。日頃から便の状態は観察するようにしましょう。心配なときは、おむつを使用している子の場合は、おむつ自体を持って行くか写真を撮って、病院を受診すると良いでしょう。

規則正しい生活をし、食生活を整え、プロバイオティクスと言われるヨーグルトや乳酸菌飲料を日頃から摂取することにより、下痢を防ぐことができます。

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