夫婦別姓のメリット・デメリットについて知りたい!子どもに与える影響、戸籍などの手続きについて

現在の民法のもとでは、結婚した際、男性、もしくは女性が必ず名字を改めて同じ名字を名乗らなくてはいけません。しかし近年では、女性の社会進出に伴い仕事をする女性が増えたため、名字が変わることで様々な問題が生じる場合が増えています。この流れにより「夫婦別姓」を求める声が多くなってきています。今回はそんな夫婦別姓の現状や問題などについて詳しく解説します。

日本と諸外国の氏名制度について

夫婦別姓を考えていく前に、まずは日本と諸外国の氏名制度についてご説明します。

日本での氏名制度の始まりとは?

日本ではそもそもどのように現在の夫婦の姓についての決まりが成り立っていったのでしょうか?夫婦の姓を同じとする風習が定着したのは、明治時代とされています。それまで一般の農民や町民には、姓の使用が認められていませんでした。

しかし明治3年、平民に氏名の使用が認められるようになります。明治8年には姓の使用が義務化され、その後妻が夫の名字を名乗る慣習が定着していきました。そして、昭和22年に成立した改正民法で、正式に夫婦が同じ姓を名乗ることが法として定まったのです。

夫婦別姓について詳しく知りたい

諸外国での夫婦の姓は?

諸外国では日本と同じように、夫婦は同じ姓なのでしょうか?2010年に政府が調査した結果、厳格に夫婦は同じ姓に統一しなくてはならないとしている国は、日本以外に見当たりませんでした。諸外国では、同姓か別姓か選択できたり、どちらの姓も結合したりなど、さまざまなかたちで姓を選択する事ができます。

中国や韓国では、夫婦別姓が基本となっており、結婚してもそれぞれの名字を名乗ります。また子どもの姓は両親どちらかの姓を選択できます。その他のアジア、東南アジア、中東、南北アメリカ、ヨーロッパ諸国においても、別姓や両方の姓をつなげるといったことを認める国がほとんどです。日本の氏名制度に対し、国連は「差別的だ、男女平等を確かなものとする為には女性は選択肢を持たなければいけない」として同姓廃止の勧告をしています。

夫婦別姓(選択的夫婦別氏制度)を詳しく説明

このような流れもあり、現在日本では夫婦別姓について導入が検討されています。

夫婦別姓(選択的夫婦別氏制度)とは?

夫婦別姓は、結婚した夫婦それぞれが自分の姓を名乗り、別姓でいる事も認めようというものです。夫婦別姓が導入されると、結婚した際にどちらかの名字に統一するか、各々の姓を名乗るかを選択できるようになります。

夫婦別姓ってなに

夫婦別姓を求める背景とは?

そもそもなぜ夫婦別姓を求める声が上がっているのでしょうか。これは女性の社会進出社会的な地位向上によるものが大きく関係しています。25~29歳における女性の就業率は、1975年には約40%でしたが、2011年には約70%と飛躍的に高くなりました。

現在では、女性でも就業する事はごく当たり前となり、家庭における共働きの世帯も増加しています。共働き世帯は、1980年には614万世帯でしたが、2010年には1012万世帯と増加し続けています。

このように、女性でも社会に出て働いている人が増えたため、結婚し名字が変わると様々な不都合や手間が発生するケースが多くなっています。
参考文献:内閣時男女共同参画局

名字変更の際に会社で強いられる手続き

  • 各種書類の届け出
  • 印鑑など会社で使用する持ち物の記名の変更
  • 社内外の関係者へ名前が変わったことを報告する

上記のことなどが手続きとして行うことです。また、結婚した際の氏名の変更ならともかく、離婚した際の氏名の変更は、精神的な負担になる事もあります。

夫婦別姓が求められる背景には、他にも下記のような理由が挙げられます。

  • 結婚したら女性が男性の家族の一員となる、嫁に行くという古来からの考え方に対する価値観の変化
  • 自分が自分でなくなるというようなアイデンティティーの喪失を避けたいという考えが増えた

 

夫婦別姓(選択的夫婦別氏制度)の現状

夫婦別姓は、現在も内閣府にて審議がされており、未だ日本では法律として定まっていません。平成13年には、選択的夫婦別氏制度についての世論調査が実施され、内閣府には男女共同参画会議と、その下に基本問題専門調査会が設置されました。実生活における夫婦同姓での問題点などについて体験や実例を国民から募集し審議の材料にしています。

現在でも、選択的夫婦別氏制度については改正には至っていないものの、積極的に審議されています。

夫婦別姓のメリットとは

夫婦別姓のメリットとは?

審議が続いている夫婦別姓ですが、夫婦別姓が法律で認められると、どのようなメリットがあるのでしょうか。下記は、夫婦別姓で考えられるメリットです。

  • 戸籍、免許証、銀行、パスポート、ハンコ、その他多々ある各種手続きが不要になる
  • 名字を変えることの多い女性が、会社で働きやすくなる
  • 夫との平等を感じる事ができ、家庭内での男女平等が進む
  • 自分の生まれ育った名前を変える事なく、自己喪失感を感じなくて良い

女性は結婚して名字を変える方がほとんどですよね。名字が変わることでさまざまな手続きを求められたりするのは煩わしいものです。また、仕事をしている方は、名字が変わることで周囲に報告しなくてはいけないのではないでしょうか。

夫婦別姓制度が認められると、このような負担がなくなり、女性がさらに社会で活躍できる環境が進むとされています。

夫婦別姓のデメリット、問題点とは?

夫婦別姓が法律で認められていない現状では、夫婦である為に受ける事ができる優遇措置やサービスを受けられないことがあります。また、別姓である為に家族の一体感が弱くなることや、子どもへの影響も懸念されます。現状の別姓を認められない中で事実婚として別姓とする場合には、別れる事も容易になってしまうことも懸念されます。

夫婦別姓とする方法

選択的夫婦別氏制度が成立していない現在、夫婦別姓としたい場合にはどのような方法があるのでしょうか?

夫婦別姓のデメリットとは

籍を入れずに事実婚をする

婚姻届は出さずに事実婚、あるいは内縁関係ということで一緒に生活する方法です。しかしこれは、婚姻届を出さない為にカップルが同棲している場合と変わらず、法的には夫婦として認められないため、公的な書類関係、行政サービスや各種サービス等でも夫婦としては認められずに受ける事はできません。

通称として旧姓を使用する

もう1つは婚姻届は提出し、戸籍上は同性で夫婦としての生活はするもの、旧姓は通称として使用する方法です。こちらも通称として夫婦別姓となりますが、公的な届け出や本人確認が必要な物に対しては、旧姓を使用する事はできません。

戸籍や相続はどうなる?夫婦別姓に関する制度や法律

現状では夫婦別姓としたい場合、事実婚(籍を入れずに生活する)を選び、夫婦それぞれが別の姓で生活するケースもあります。この場合、戸籍や相続についてはどのようになるのでしょうか?

夫婦別姓のメリット・デメリットを知ろう

事実婚をした場合の戸籍について

事実婚は、独身と同じ扱いとなります。そのため夫婦として同じ戸籍となる事がなく戸籍が変わる事もありません。

事実婚をした場合の相続について

通常同じ戸籍の夫婦のどちらかが死亡した場合、パートナーと子どもが法定相続人となり優先されますが、内縁関係であるパートナーは法定相続人とはならず、子どももしくは被相続人の親か兄弟がすべて相続することとなります。

内縁関係にある者が優先して相続する為には遺言による力が必要となりますが、この遺言にも法に定める要件を満たす必要があり手続き等が必要なため、しっかりとした確認や準備が必要となります。

夫婦別姓が周囲に与える影響は?

一体感がなくなる?夫婦別姓が家族や親へ与える影響とは?

婚姻しても、姓が別である事によって家族としての一体感がなくなる事も懸念されています。政府が行った世論調査によると、結婚しても夫婦別姓でいる事で家族の一体感は弱まると回答した方は、41.6%と約半数が夫婦別姓により家族の一体感が弱まるとしています。

しかしこれは、平成8年の同様の調査時と比べると一体感が弱まると回答した方の割合は46.5%から減少しており、今後さらに国民全体の意識が変わり、一体感について影響がなくなっていくかもしれません。

参考文献:内閣府 世論調査

夫婦別姓のメリットはどのくらいあるのか

夫婦別姓が子どもへ与える影響とは?

夫婦別姓による子どもへの影響についてはどうでしょうか?世論調査では、「夫婦別姓とする事により子どもへ好ましくない影響があると思う」と答えた方は66.0%という結果となり、やはり子どもへの影響を懸念する方が多いようです。

考えられる影響は、いじめや非行に走る事などが考えられますが、政府としては適切に広報活動を行う事や多様性を認める教育などによって、払拭できるものとしています。しかし、この点については夫婦や周囲の理解だけではなく子どもたちの感じ方も関わってくることなので、今後大きな課題になっていくことと思います。
参考文献:内閣府 世論調査

夫婦別姓に賛成?反対?みんなの意見は

選択的夫婦別氏制度に関する世論調査結果

現在も審議中の夫婦別姓。メリット・デメリット共にさまざまとあげられていますが、夫婦別姓に対する世間の意見はどのようなものが多いのでしょうか。政府やメディアが行った世論調査結果をみていきましょう。

夫婦別姓のメリット・デメリットについて教えて!

結婚する事により氏名が変わる事で仕事への影響があるか?

”何らかの不便がある”が41.9%、”不便は感じない”が52.9%となり半数近くの方が結婚での氏名変更によって仕事で不便が生じるとしています。特に30~39才の女性で不便を感じるとした方は58.2%にのぼり、過半数以上となっています。
参考文献:内閣府 世論調査

仕事で通称を使えば不便がなくなると思うか?

”通称を使えれば不便を感じなくて済む”が56.6%、”通称を使うだけでは不便は対処しきれない”が41.5%となりました。やはり通称だけでなく、法的にもしっかりとした別姓でなければいけないとの声も多くありました。
参考文献:内閣府 世論調査

現在の夫婦同姓が義務である為に、婚姻そのものが難しいと思うことがあるか?

”婚姻する事が難しくなる事がある”と回答した方は40.3%、”ない”とした方が53.3%でした。同じ名字になることが理由で、結婚するかしないかそのものについての判断にも重要な影響を与えていることがわかります。
参考文献:内閣府 世論調査

婚姻による氏名の変更についてどう感じるか?

”新しい人生が始まる喜びを感じる”・”相手と一体になった喜びを感じる”というポジティブな意見が69.6%でした。反対に、”違和感を感じる”が24.7%、”自己喪失感を持つ”が7.6%と、少なからず結婚して名前が変わる事に対してネガティブな意見もありました。
参考文献:内閣府 世論調査

夫婦別姓に賛成ですか?

3956件の回答数に対し、71.1%の2814件が賛成と回答しています。自ら別姓とするかはともかく、選択できるのはいい事だとする考えが多いようです。
参考文献:朝日新聞

これからの家族の形、平等で自由な夫婦関係のための選択

昨今、女性の就業率の上昇や社会的地位の向上、男女平等の観点やライフスタイルの多様化、家族の形への価値観の変化などから夫婦別姓を求める声も強くなっています。

しかし、現状の法では事実婚や通称を使うなどの手段でしか夫婦が別姓でいることを実現することはできません。まだまだクリアすべき問題や課題なども多く、今後も政府がどのように夫婦別姓について議論していくか注目されることでしょう。

0