ホワイト500とは?認定基準や選ばれる3つのメリット

今年で4年目を迎えた健康経営優良法人認定制度、通称「ホワイト500」をご存知でしょうか?「初めて聞いた!」「聞いたことはあるけれど、よく分からない…」という方のために、今回はその概要をご説明します。

ホワイト500とは?

ホワイト500

ホワイト500は、東京証券取引所の上場企業から選出されます。従業員の健康を経営の観点から考慮し、労働基準法の遵守、健康診断やストレスチェックなどの福利厚生の充実度などに注目し、優れた健康経営をしている企業を選出、認定する制度です。

ホワイト500はどんな会社が選ばれる?

発足してから4年連続で選出されている大手企業に、花王、テルモ、TOTO、大和証券グループ本社、東京急行電鉄、SCSKが挙げられます。いずれも社員の満足度が高く、離職率も低い優良企業が選出されています

どんな所を見るの?認定基準とは?

認定基準は主に次の5つの項目です。その中でも選出に際する必須事項を、項目ごとにご紹介します。

経営理念

  • 健康企業を掲げる企業であることを社内外で発信していること。

社内外へ発信することにより、自社の社員による内部、株主や投資家による外部からの監視の目を増やす効果があることから、必須項目とされています。

組織体制

  • 健康づくり責任者が役員以上であること。
  • 健康保険者と連携していること。

会社の中で重要なポストにある人物を責任者に据えることで、重要な取り組みでことであることを社内に浸透させることが狙いです。また、保険者による外部の審査にクリアした組織体制である必要があります。

制度・施策実行

  • 産業医、または保健師が健康保持・増進の立案・検討に関与していること。
  • 50人以上の事業場におけるストレスチェックを実施していること。
  • 定期健診を実施していること。

評価・改善

  • 健康保持・増進を目的とした導入施策への効果検証を実施していること。
  • 健保等保険者による特定健康診査・特定保健指導の実施。

この項目では、「制度・施策実行」で実施された健診結果が第三者機関から見て良好であることと、保険者から指導を受けたことを、企業が実際に取り組んでいるかを評価します。なお、この指導には、消毒液の常備や加湿器の設置アドバイス、ストレスチェックの結果を受けての取り組みなども含まれています。

法令遵守・リスクマネジメント

  • 従業員の健康管理に関連する法令について重大な違反をしていないこと。

労働基準法に則って、違法な超過労働や危険な仕事を強制していないかなど厳しくチェックするための必須項目です。

申請方法

申請方法は以下のステップです。

  1. 健康経営度調査」に回答(9~10月)
  2. 経済産業省から送付される申請様式を記載し、保険者に提出
  3. 保険者と連名で日本健康会議健康経営優良法人認定委員会事務局へ提出
  4. 日本健康会議健康経営優良法人認定委員会による受理・審査
  5. 日本健康会議健康経営優良法人認定委員会による認定

ホワイト500に選ばれるメリット3つ

ホワイト500

従業員の健康と、安心して働ける職場環境作りを目的にした認定制度ですが、企業にとってもホワイト500に選出されるメリットがあります。

企業イメージのアップ

多くの企業にとって、株主や一般の消費者に向けた企業イメージは大切なものです。ホワイト500に選出されている企業、ということで健全でクリーンな企業として社内外へのアピールポイントとなります。消費者としても同じ価格、同じクオリティの商品なら企業イメージの良い物を選ぶのではないでしょうか。

こうしたイメージ戦略も業績アップに繋がる重要なポイントと言えます。現代社会はSNSなど個人の意見を発信する環境が身近に溢れています。それに伴い、会社情報の漏洩や、無責任で一方的なクレームによる風評被害など、企業にとっての新たなリスクが増えた、とも言えるのです。

福利厚生の充実した健康経営によって、社員に愛社精神を持ってもらうことは、こうしたリスクの予防策にもなります。また、成功している企業の多くが愛社精神を持った社員を多く雇用しています。会社を好きなら、人は自ずと会社のために良い仕事をする努力をします。まずは自社の社員に愛される会社を作ることが、成功するためには必要です。

優秀な人材の確保

リクルーティングに際しての大きなアピールポイントです。過労やパワハラ問題など、ブラック企業による事件、事故が社会問題になっています。また、その問題の多くは、人材不足に起因しているものが多いとされています。優秀な人材の確保、育成は多くの企業にとって重大な課題です。

新卒で採用された社員ひとりが研修を経て現場に出て、一人前になるまでにかかるコストは、最低でも初年度年収の約1.6倍といわれています。さらに、指導にあたる先輩社員や現場指導責任者の負担も含めると、より大きな額になるでしょう。

また、このようにお金と時間をかけてせっかく教育した新入社員が、職場の環境が悪いことなどを理由にすぐに辞めてしまうことは、良くあることです。そして、辞めたら新しい社員を雇えば良い、という考えは、指導に当たる現場の負担を増やし、更なる退職者を招くことに繋がります。

こういった負のループによる人材流出を防ぐためにも、有給休暇を取得しやすい環境や、福利厚生の充実は、とても重要です。短期的に見れば会社の負担になるかもしれませんが、長期的な目で見ると、コストパフォーマンスは悪くありません。

企業にとって、長く働きたくなるような職場の環境作りは、人材不足を解消するためにも取り組むべき大きな課題と言えるでしょう。ホワイト500に認定されている、ということは、就職活動中の人にとって、重要な志望動機につながります。優秀な人材を確保するためにも、職場環境は良い方が良いですよね。

インセンティブ

ホワイト500に認定されることで、企業は金融機関による低金利融資や、人材関連企業から人材確保に向けての支援を受けることができる、というメリットがあります。

経産省は、今後さらに民間企業と連携して、こうしたインセンティブの充実を進めていく方針を打ち出しています。このようなインセンティブを企業が社員に還元していくことで、職場環境をより良いものにしていくことが、今後の目標です。

こうした連携を多くの企業間で持つことで、企業同士の相互監督にも繋がり、さらに企業の信用度を上げる効果も期待されています。

ホワイト500に認定された企業の気になるその後

ホワイト500

実施から4年が経つホワイト500ですが、発足当初は「2020年までに認定企業500社」を目標にしていました。しかし、その目標は2017年にすでに達成され、今も認定企業の数は増えています。これは社会全体に、健康経営というものへの大切さが浸透していっていることを現わし、大変喜ばしいことと言えますね。

実施後のアンケート結果によると、ホワイト500認定企業の多くが「職場環境が良くなったと実感できる」と答えています。認定後、新卒の入社志望者数が増加した、との声も多く寄せられ、ホワイト500の効果は全体的に見て良好であると言えます。

その一方で、ホワイト500認定を受けたいがために、無理な納期や委託業務内容の拡大要求など、下請け企業にしわ寄せが行っている企業もある、との声も耳にします。

また、ホワイト500認定企業に務めている人からも、「残業が減った分収入も減った」「会社での残業が減って、持ち帰り残業が増えただけ」など、ホワイト500の意味を疑問視する意見があることも事実です。

これでは、健全な社会を目指す本来の目的の真逆となってしまいます。本当の意味で企業の健全化を目指すため、今後の課題もあるようです。

ホワイト500の案が出された当初、「そもそも会社とは、働く人を守るためにある労働基準法に則った経営で然るべきものなのに、なぜ認定制度が必要なのか?」と、その必要性を問う意見も寄せられました。

また、ホワイト企業を認定するよりも、ブラック企業を取り締まりペナルティを与える方が良いのではないか、との声も多くありました。この二つの意見は、今も多くの人から聞こえます。

二つとも率直な意見であり、働く人のリアルな感想と言えます。しかし、ブラック企業は組織ぐるみの隠蔽体質であることが多く、なかなか表に出てくることがないのが現状です。取り締まりを強化したくとも民間企業の実態をそこまでつまびらかにする法は現在なく、事件や事故が起こって表面化したものに対しての制裁しかできていません。

厚生労働省がブラック企業の取り締まりを強化し始めていますが、不確かな情報による「一方的な吊し上げ」になってしまうおそれを多くはらんでいます。

一度ブラック企業のイメージがついてしまった企業は、信頼の回復までに、とても時間が掛かります。また経済的損失も計り知れません。間違いだった、では済まされないことです。無実の企業を守るためにも、事実関係の調査や確固たる証拠集めなど、慎重にならざるを得ないのです。

こうした背景によって、現在ブラック企業に務めて悩んでいる、という方は、職場環境の抜本的な改善には時間がかかってしまいますが、諦めずに声を挙げましょう。あなたがアクションを起こすことで変わるきっかけになるかもしれません。我慢する必要はありません。ブラック企業に一番有効なのは、やはり内部告発なのです。

ホワイト500は、企業のポジティブな面にスポットライトを当てることで、企業の健康経営への意識向上をはかり、ブラック企業を減らしていくための認定制度でもあるのです。まだまだ課題は残りますが、健康で健全な会社経営を促進するため、企業に向けた働きかけの一役を担っていることは間違いありません。ブラック企業に対する特効薬、とはいきませんが、前向きに取り組んでいって欲しいです。

「健康経営優良法人認定制度」といわれると、難しそう、と構えてしまう方も多いかと思いますが、その構造や理念は、実はとてもシンプルです。「従業員の権利をきちんと守って、健康やストレスに気を使った経営をしましょう。きちんと守って、努力が認められると良いことがありますよ。」という、とても簡単で当たり前のことなのです。

この簡単で当たり前のことが、当たり前に出来る世の中にすることが、本当の意味で健全な社会と言えますね。

より良い職場環境を目指して

日本人の美徳のひとつに「勤勉で真面目である」ことが挙げられます。これ自体はとても良いことで、誇るべきですが、それが仇となってしまっていることが多いのも現代の社会です。過労死問題や職場のストレスが原因のうつ病などが、この最たるものです。

より良い生活や充実した人生のために働いているはずなのに、これでは本末転倒ですよね。

バブル時代には、「24時間働けますか?」というフレーズのCMが話題となり、大きな社会現象となりました。「モーレツ世代」と呼ばれるこの頃のサラリーマンは、寝る間を惜しんで働き、また、お金を使って遊び回っていました。働けば働いた分、大きな収入を得られていたのです。

しかし、そんな時代は長くは続かず、あっけなくバブル崩壊を迎えます。バブル期に抱えた莫大な負債のために、日本は一気に不景気になり、それが今もなお続いています。収入が減ったにも関わらず、モーレツ世代の精神だけが残り、苦しい労働環境を生んでいます。

ホワイト500は、働き方を見直すチャンスと言えます。人間らしい健康な生活が送れるためには、企業の努力はもちろんですが、そこで働く私たち自身の意識改革も必要なのです。

「なぜ日本人はバカンスをとらないのか」欧米諸国の人から見て、とても不思議なことだそうです。何が楽しくて働いているのか疑問に思うとの声をよく聞きます。指摘されると「家族を養うため」と答える人は多いのですが、それは日本だけでなく他の国でもそうではないでしょうか?

大切な家族を養うことはもちろん大切ですが、その家族と過ごす時間を取れていますか?シンプルに、あなたは今働くことで幸せですか?

ありふれた言葉ですが、自分を大切にして欲しいのです。身体の不調をきちんと労わることができる社会へ、家族の記念日や子供の運動会に、当たり前に休日が取れる社会へと変わっていくことが、自分たちだけではなく、これからの日本を担う子供たちのためにも大切なことです。

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