【助産師監修】熱性けいれんの正しい対処法3つ!受診の目安や予防法・てんかんとの違いも解説

熱性けいれんは、子どもを持つ親御さんや子どもに関わる仕事をされてる方は、一度は聞いたことがある病気でしょう。熱性けいれんと聞くと恐ろしい病気のような感じもしますが、きちんとした対応をすれば、基本的にけいれん自体が命にかかわることはありません。そこで今回は、熱性けいれんとその対応方法について詳しくお話しします。

熱性けいれんとは

熱性けいれん

熱性けいれんは、2歳以下の子どもに起こりやすく、38℃以上の急な発熱とともに、けいれんを起こして意識を失う病気です。10人に1人程度の割合で起こすといわれており、親のどちらかが子どものときに熱性けいれんを起こしていると20~30%の確率で、両親ともに熱性けいれんの経験がある場合は40%以上の確率で起こすことがわかっています。

なぜ起こるの?

子どもにけいれんが起こるのは、幼く脳の発達が未熟であることが原因です。また一部、遺伝的な素質を持っている場合もあります。

どんな症状?

けいれんが起こると、両手足をピンと硬く伸ばしてガクガクと震わせます。けいれん中は意識がないため、反応はありません。黒目が上にあがって白目になり、人によっては唇が紫色のチアノーゼ症状が出る場合もあります。多くの場合は2~3分ほど、長くても5分以内にはけいれんがおさまります。

熱性けいれんが起こったときの対処法

熱性けいれん

熱性けいれんは急に起こるため、けいれんが起こったときの対処法を事前に知っておくことが大切です。その対処法を詳しく説明します。

落ち着いて子どもの様子を観察する

けいれんが起こると、あわててパニックになってしまいそうですが、一番大切なのは、落ち着いて子どもの様子を観察することです。

一昔前は、けいれんを起こすと舌を噛んでしまうといわれ、舌を噛まないよう口の中にタオルをつめることもありました。しかし、口にタオルを入れると窒息を起こしてしまったり、タオルを入れる際に子どもに噛まれて手が血だらけになったりするおそれがあります。

けいれん中に何もしないと言うのはもどかしい気もしますが、子どもの衣服がきついようなら緩めて、どんなふうにけいれんしたか、けいれん中の目の位置はどうだったかなど、しっかりと様子を観察することが重要です。

けいれんを起こしている時間を測る

けいれんを起こしている時間は、とても大切な情報です。けいれんを起こしている間は、実際には1分間でも、10分程度に思えるほど長く感じてしまいます。けいれんを起こしている時間は感覚で判断せず、落ち着いて時計を見て、正確に測るようにしましょう。

吐きそうになったら横を向かせる

意識を失ったまま上を向いて吐いてしまうと、窒息するリスクが高まります。吐きそうになったら顔を横に向けるようにしましょう。横に向けることで、横に吐き出せるようになります。

こんなとき時は病院を受診しよう

熱性けいれん

熱性けいれんの中には、自宅でそのまま様子を見ていて良い場合と、すぐに病院に連絡して受診をした方が良い場合があります。では、どのようなときに病院を受診すると良いのでしょうか。

  • けいれんが5分以上続くとき
  • 体の一部がけいれんしたり、けいれんに左右差があるとき
  • 初めてや生後6ヶ月以内のけいれん
  • 1日に2回以上けいれんを起こすとき
  • 体温が38℃以下でけいれんを起こしたとき
  • けいれんの後、意識が戻らなかったり手足が動かないとき

これらの症状が1つでもあるときは、複雑型けいれんであったり、けいれん重積症のおそれがあります。また、まれにてんかんの発作であったり、けいれんの後にてんかんを発症することもあります。そのため、このような症状が見られたら、まずは病院に連絡してください。

熱性けいれんを繰り返すときは

熱性けいれんを起こした子どもの約30%は、2回以上繰り返して起こすといわれています。逆に、1年間起こさなければ70%、2年間起こさなければ90%は、2回目のけいれんを起こしません。

熱性けいれんが1回だけの場合は予防しなくても問題ありませんが、繰り返して起こす場合は、予防した方が良いでしょう。その予防方法と注意点をお伝えします。

ダイアップで予防する

熱性けいれんを予防する薬に、「ダイアップ」と呼ばれる、有効成分にジアゼパムが入った座薬があるのを知っていますか?

熱性けいれんの多くは、急に熱が上がったときに起こります。そのため、ダイアップは熱が上がり始めた37.5℃を目安に使います。そして8時間後に38℃以上の熱があれば、もう1回使うと良いでしょう。

なお、投与の回数は、1日につき2回までにしておきましょう。ダイアップを使いすぎると、眠気やふらつきなどの副作用がみられるおそれがあります。

詳しくは添付文書製薬会社が発行する資料を確認し、医師の指示に従い、用法・用量を守って使ってくださいね。

投薬に関する注意点2つ

熱性けいれん

解熱剤とダイアップは一緒に使わない

ダイアップと解熱剤には、一緒に使うとお互いの作用を弱めてしまう可能性があります。そのため、熱が上がる前にダイアップを使用して、30分以上経ち、熱が上がった状態で解熱剤を使用すると良いでしょう。

なお、熱が上がる前に解熱剤を使用してもけいれんを防ぐことにはならないので、解熱剤の使用は最小限にとどめることをおすすめします。

発熱時に使わない方が良い薬がある

抗ヒスタミン剤(主に鼻水やかゆみの症状があるときに使われる薬)やテオフィリン(喘息の発作で使用される薬)を内服している場合は、熱性けいれんを起したときに長引かせてしまうおそれがあります。熱性けいれんを繰り返し起している子どもの場合、熱が出たら、これらの薬は一旦服用を中止にした方が良いでしょう。

熱性けいれんを起こした子どもは予防接種できるの?

熱性けいれん

熱性けいれんを起したことがある場合でも、予防接種は受けた方が良いといわれています。予防接種で予防できる病気は、予防しておきましょう。

けいれん発作を起こしてから2〜3ヶ月間は経過を観察して、問題ない場合に予防接種を行うことが推奨されていますが、計画通りに予防接種を行える場合もあります。熱性けいれんを起したことを医師に必ず伝えたうえで、予防接種を行うようにしましょう。

熱性けいれんとてんかんの違いとは?

熱性けいれんは、38℃以上の発熱によって大脳がけいれんを起こしてしまう状態です。それに対して、てんかんは大脳が何らかの原因によって傷ついてしまったために起こります。

そのため、てんかんの発作の場合は、以下のような特徴がみられることがあります。

  • 発熱を伴わずにけいれんする
  • けいれんが15分以上続く場合、けいれんに左右差がみられる
  • 体の一部分がけいれんするとき、目の向きや頭のむきに左右差がみられる

また、1日に何回もけいれんを起こす場合も、てんかんの可能性があります。てんかんは、脳波検査で「発作波」と呼ばれる異常波形が見られることが多いのが特徴です。

熱性けいれんが1回だけの場合は、基本的に脳波検査を行うことはありませんが、熱性けいれんを繰り返したり、てんかんの可能性が疑われたりする場合は脳波検査を行います。なお、熱性けいれんからてんかんに移行することもあるようです。

熱性けいれんと上手く付き合おう

子どもの熱が急に上がったときに起こりやすいのが熱性けいれんです。熱性けいれんについて知らないと、いざ起こったときにどう対処したら良いのかわからず、あわててしまうことでしょう。

まずは、熱性けいれんについて知ることがとても大切です。特に、子どもを持つ親御さんや子どもに関わる仕事をしている人は、熱性けいれんについての知識を深めておくことをおすすめします。そうすることで、熱性けいれんと上手く付き合うことができるでしょう。

0