なぜ乗り物酔いをするのか~原因と対処方法を知っておこう~

乗り物酔いをする人は、遠足や修学旅行のバスがとても辛い思い出でしょう。まわりのお友達は楽しんでいるのに自分は乗り物酔いで楽しめない。そんな苦い思いをした人は、「何故乗り物酔いをするのだろう。何をしたら乗り物酔いをしなくなるのだろうか」と悩んだことでしょう。今回は何故乗り物酔いをするのか、予防する方法はあるのかをお話します。

乗り物酔いとは

乗り物酔いとは、乗り物に乗った際の揺れなどが原因で起こる症状です。医学的には「動揺病」や「加速度病」と言われ、疾患のひとつとされています。では、何故乗り物酔いが起こるのでしょうか。どういう状態になったら乗り物酔いになるのでしょうか。

乗り物酔いのメカニズム

乗り物酔い

乗り物酔いをするのに内耳が大きく関係しているということが分かったのは、つい最近のことです。

内耳にある三半規管の乱れ

耳の中にある「三半規管」は身体の平衡感覚を調整する働きをしています。乗り物に乗った時の不規則な揺れや過度の加速、減速の反復が三半規管へ刺激を与えます。その刺激が自律神経や平衡感覚の乱れを引き起こし、吐き気などの症状を引き起こします。

視覚への刺激

電車が停まっているのに、向かいに停まっていた電車が動き出した時、自分が乗っている電車が動いたと感じることがあります。乗り物に乗っていると、そのような目の錯覚を起こすことがあります。その目の錯覚と体に感じる情報のずれが乗り物酔いの原因にもなります。

嗅覚への刺激

車やバスに乗った時にニオイを不快に感じることが乗り物酔いの原因にもなります。ガソリンのニオイや排気ガスのニオイが気分を悪くする場合があります。また、車の中の独特なニオイが苦手だという人はそのニオイが乗り物酔いの原因になることがあります。

気持ちの問題

以前ひどい乗り物酔いを経験したことがある人は、乗り物に乗るという苦手意識から乗り物酔いをしてしまうという場合もあります。

乗り物に慣れていない場合

人は平衡感覚を経験で鍛えていきます。幼い頃から乗り物に乗り慣れていない場合は、三半規管が鍛えられないため乗り物酔いしやすくなります。

乗り物酔いの症状

乗り物酔い

乗り物酔いすると、どんな症状が起きるのでしょうか。乗り物酔いは段階を経てひどくなっていきます。

  • 初期症状

あくびが出る

乗り物酔いの初期症状のひとつです。生あくびのようなあくびが何度も出ます。あくびは血液の循環などが悪くなり、脳への酸素供給が減った時にそれを防ぐために脳から指令が出て出るものです。乗り物酔いをし始めたときのSOSのサインでもあります。

生唾が出る

自律神経の乱れから、生唾がでてくるようになります。これも乗り物酔いのサインです。

頭が重くなる

頭が重くなるのも、自律神経の乱れからきています。頭が重い、頭痛がする、目が痛くなるなどの症状が出始めることがあります。

  • 次の段階

吐き気が起こる

乗り物酔いの症状が進んでくると、吐き気に襲われるようになります。乗り物の不規則な揺れを内耳の中にある三半規管が異常なものと受取り、その異常な刺激を末梢神経(脳)して吐き気を引き起こします

顔面蒼白

乗り物酔いの症状に、顔面が蒼白になるという症状もあります。自律神経の乱れから、血液がうまく循環しなくなるためと考えられています

冷や汗が出てくる

冷や汗は、精神的なストレスがある時に出ます。乗り物酔いから来る様々な症状により、冷や汗が出ると考えられます。

手足が冷たくなる

自律神経の乱れにより、血液の循環が悪くなり、手足のほうまでうまく血液がまわらなくなると手足が冷たくなります。これも乗り物酔いの症状のひとつです。

  • 最終段階

嘔吐

乗り物酔いがひどくなると、最終的に嘔吐してしまいます。冷や汗が出始めたり、出て来るなどの初期症状が進み、平衡感覚を司る内耳の前庭系から異常な信号が嘔吐中枢を刺激することによって嘔吐が起こります。

症状は人によって差はありますが、代表的な症状が上記のものになります。乗り物酔いの初期症状が出てきたら無理せず乗り物を降りるなどしましょう

乗り物酔い対策方法

乗り物酔いは本当に辛いものです。明日、乗り物に乗らなければならない、という日は憂鬱になるくらいです。では、乗り物酔いをしないようにするために出来ることはあるのでしょうか。色々な方法がありますので、それをご紹介します。

十分に睡眠を取り、体調を整える

乗り物酔い

寝不足や疲れがたまったまま乗り物に乗ると、血圧が下がって自律神経が乱れやすくなってしまいます。自律神経が乱れていると、乗り物酔いしやすいので、前日はしっかり寝て体調を整えておきましょう。

乗り物の中で読書やゲームをしない

乗り物の中で読書をしたり、スマホを見ていると乗り物酔いしやすくなります。乗り物の不規則な揺れが三半規管を刺激し、目から入ってくる情報との違和感が乗り物酔いを引き起こすのです。

読書などをしていると、視線は一定の場所から動かないのに体は揺れを感じます。その違和感が乗り物酔いになってしまうのです。

また、読書をしていると、乗り物の揺れで字がちらつくのが乗り物酔いを助長するという説もあります。ですから、乗り物の中では読書やゲームをしないようにしましょう。

空腹・満腹の状態で乗り物に乗らない

乗り物に乗る前には、空腹でも満腹でもいけません。乗り物に乗る1時間ほど前に、消化の良いものを少し胃の中に入れておきましょう。

進行方向を見る

乗り物に乗る際は、あごを引いて頭をなるべく動かさず、進行方向を向いて座りましょう。また、カーブを曲がる時にカーブに合わせて体を傾けるのも効果的です。運転手が乗り物酔いしないのは、カーブに合わせて自分も体を傾けているからだと言われています。

車なら助手席、バスなら運転席の隣が揺れが少なく進行方向を見ることが出来る席です。

遠くの景色を見る

進行方向が見れない場合は、近くの景色ではなく遠くの景色を見るようにしましょう。

先にも記述しましたが、運転手が乗り物酔いをしないのは、自分が運転することで乗り物の揺れが予測できるからだと言われています。同乗者が乗り物酔いする場合は、視覚からの情報で乗り物の動きを予測できず、体の感覚と間にズレが生じるための混乱が原因なのです。

近くの景色を見ると、景色が流れて見え、視覚が混乱してしまいます。ですから、遠くの景色をゆったり見るほうがいいのです。

体をしめつける服を着ない

乗り物酔いしやすい人は、乗り物に乗る時はゆったりした服を着るようにしましょう。ベルトなどでお腹を圧迫した服はやめましょう。

サングラスをかける

乗り物酔い

乗り物酔いは目から入ってくる情報と、身体に感じる情報のずれから起こります。サングラスをかけることで視界を悪くし、情報のズレを最低限にすることができます。また、強い光が目を刺激することが乗り物酔いの原因にもなります

ですから、サングラスをかけて強い光から目を守ることで乗り物酔いの予防になります。

ガムを噛む

ガムを噛むことで唾液が出ます。唾液が出ることで耳官の働きがよくなり、三半規管を活発にしてくれます。また、ガムを噛むことで気が紛れるという要因もあり、乗り物酔いの予防になります。

チョコレートやキャンディを食べる

甘いものを食べると血糖値が上がります。血糖tがあがると脳が覚醒するので乗り物酔いしにくいと言われています。

眠る

眠れるようでしたら眠ってしまうのが一番です。目からの情報と身体に感じる揺れのズレから起こる乗り物酔いなので、眠ってしまえばその違和感を感じないですむということです。眠れない場合には目を閉じることで目からの情報を遮断できますので、目を閉じておくのもいいでしょう。

酔い止めの薬を飲む

酔い止めの薬には、嘔吐神経の刺激を抑える成分と自律神経の興奮を抑える成分が入っています。酔い止めの薬には眠くなる成分が入っているものがあります。これは乗り物の中でゆっくり休みたい人、眠ることで乗り物酔いを防ぐというものです。

反対に、眠くならない成分のものもあります。眠らず景色を楽しみたい、同乗者との会話を楽しみたいという人にオススメです。

酔い止めの薬は子供用のものもあります。服用するときは薬剤師や医師に相談してから飲ませるようにしましょう。

そして、酔い止めの薬は乗車する30~1時間前には飲むようにします。また、乗り物酔いしてしまってからでも効果がある薬もありますので、薬局に相談し、自分に合った薬を選んでみてはいかがでしょうか。

乗り物酔いしてしまった時の対処法

乗り物酔い

では、乗り物酔いしてしまった時にその症状を緩和するような方法はあるのでしょうか。

ツボを押す

乗る前にもオススメですし、酔ってしまってからできるのは、ツボを押すことです。酔い止めのツボは、手首にあります。手のひらの付け根に反対の手の薬指、中指、人差し指を当てます。手首から肘方向に指を当てて、人差し指がある辺りが「内関」というツボです。中央あたりを強めに押します。

外の空気を吸う

窓が開けられる状況だったら窓を開けて新鮮な空気を吸いましょう。新鮮な空気を吸うことで脳をリフレッシュする効果があります。

頭部を冷やす

目を閉じて頭や首を冷やすのもオススメです。気分が落ち着きますし、冷やすことで血管の膨張を抑え、頭痛を緩和させます。

衣服を緩める

乗り物酔いは胃を圧迫していると気分が悪くなることがあります。乗り物に乗る時はゆったりした服を着るのをオススメします。乗り物酔いしてしまったら、胸のボタンを一つ外してみる、ベルトを外しなどしましょう。

症状が重かったら我慢せず降りる

吐き気や頭痛がひどくなってきたら、我慢しないで乗り物から降りることが大事です。降りることができる状況でしたら降りましょう。無理してそのまま乗っていたら吐いてしまうことになりかねません。降りて外の空気を吸い、気分をリフレッシュさせることが一番です。

シートを倒す、または横になる

シートを倒して休みましょう。できるなら、窓を開けて新鮮な空気を吸い、目を閉じて眠ってしまいましょう。

氷をなめる

乗り物酔いをしたら氷をなめるといい、というのを以前テレビで紹介していました。医学的な根拠があるかわかりませんが、胃の不快感をスッキリさせるという効果はありますね。冷たいものを口に含むことで気分をリフレッシュする効果もあるのでしょう。

乗り物酔いをしなくなるために出来ること(三半規管を鍛える)

乗り物酔い

乗り物酔いしないようになるため、出来ることはあるのでしょうか。乗り物酔いは三半規管を鍛えることでしなくなると言われています。ここでは三半規管を鍛える方法をいくつかご紹介します。

前転を毎日する

布団の上などで前転や後転を一日10回ずつくらいします。乗り物酔いする人は、このような運動をすると気分が悪くなることがあるでしょう。最初のうちは一回すつでいいので、少しずつ回数を増やしていくようにしましょう。

四股を踏む

お相撲さんのように大きく足を振り四股を踏みます。左右に大きく揺れることで三半規管を鍛えるのです。

後ろ歩きをする

後ろ歩きをすることは、普段普通に前を向いて歩いている時とは、見える景色が違います。普段は見ない景色を見て身体の揺れを感じて歩くことで三半規管を鍛えることができます

この練習をする時は、家の中などで危なくない場所で行いましょう。

バランスボールに座る

テレビを観る時にバランスボールの上に座るだけでいいのです。バランスボールに座ることで身体のバランスを取らなければならず、三半規管を鍛えることができます。

片足立ちをする

片足立ちをすることでバランス感覚を養うことが出来ます。三半規管を鍛えてバランス感覚を身につけるのです。片足を上げて、膝と股関節を90度に曲げます。

その状態で30秒立ちます。その時に頭を左右に揺らします。これを繰り返すことで三半規管を鍛えることが出来ます。

回転椅子に座り回す

回転する椅子に座り、椅子をくるくる回すのです。左右どちらも回転させます。最初のうちは気分が悪くなってしまうのでゆっくりと回しましょう。慣れてきたら少しスピードをあげて回転数を増やします。

三半規管を鍛えて乗り物酔いを克服しよう!

乗り物酔いはつらいですよね。楽しいはずの旅行や遠足が、乗り物酔いをするという不安や緊張で楽しめなくなってしまいます。実は乗り物酔いは気分的なものもあると言われています。

以前ひどい乗り物酔いをしたことがある人は、また乗り物酔いしてしまうのではないかと自分を暗示にかけてしまうのです。そんな場合に、乗り物酔いしない方法を試して、「これをやったから酔わない」と自分を暗示にかけるのもひとつの方法です。

また、普段から三半規管を鍛えて、乗り物酔いなんて怖いくない!となるときっと旅行も楽しめるはずです。

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