「学芸員」という仕事を耳にしたことがある人はどのくらいいるでしょうか?職業名は知っていても、実際にこの学芸員がどのようなことを行っているのかを詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。そこで、今回は日本の文化を守るうえで大事な役割でもある「学芸員」の仕事と、どうたら学芸員になることができるかについて、詳しく説明します。
学芸員とは
学芸員を一言で説明すると、「博物館で働く人」です。ただし、ただ働く人ではありません。詳しく説明していきます。
博物館で働くには
基本的に、学芸員の勤務先は博物館です。なお、博物館と一言でいっても、その種類は様々です。総合博物館や科学博物館、歴史博物館、美術館、史料館、動物園、水族館、植物園など、いろいろな分野に分かれています。
学芸員として働くには、文部科学省が所管する学芸員の国家資格を取得する必要があります。また、働く場所にあわせて、歴史や芸術・民俗・産業・自然科学などの専門知識を持つことを求められるのです。
学芸員の具体的な仕事内容
仕事内容は、大きく分けて5つあります。
作品や資料の収集・整理
博物館に展示する作品や資料を収集するのも、学芸員の仕事のひとつです。どのような作品や資料を展示するかということは、その博物館の特徴を作るものであり、集客にも繋がるので、非常に重要な仕事です。
作品や資料の保管・保存
博物館で取り扱う資料や作品の中には、古いものも数多く含まれています。古いものは特に取り扱いに注意が必要なものも多く、日が当たらない方が良いのか?最適な温度や湿度はどのくらいであるのか?など、適切な保存方法は、専門家でなければ分かりません。
より長い期間、より良い状態で保存できるようにすることも、学芸員の大切な仕事のひとつです。
資料の調査・研究活動
資料や作品の調査や研究も行います。どういった由来のものであるのか、どのような価値があるのかなどを調べて、研究し、資料や論文作りも行っていきます。この調査・研究活動により、作品や資料の価値が認められることもあるので、非常にやりがいがある仕事でもありますね。
展示会やイベント・ワークショップなどの企画・運営
展示会やイベントの開催が決まると、様々な業務が発生します。何ヶ月も前から、広報や交渉事にも携わります。そして、資料や作品の展示レイアウトを決めるのはもちろんのこと、展示作品の運搬作業やどのような解説用の備品を準備するか、どのようにお客さんに紹介するかなどについても考えなければなりません。
特に、展示のレイアウトは光や湿度によって作品や資料が劣化してしまうおそれもあるので、細心の注意が必要なのです。
教育普及活動
学校での授業やイベントを通して、資料や作品の紹介を大勢の人の前でするのも仕事のひとつです。また、学校以外にも、老若男女問わず様々な人に向けて話をする機会もあるので、その場にあわせた分かりやすい説明や、人を惹きつけるための話力も求められます。
給料の相場
実際には、勤務先を運営する母体により給料は大きく左右されるので、一概にいくらとは言えませんが、一般的な会社員の平均年収と同じ程度であることが多いといわれています。
公立の施設に勤務する場合は公務員になるので、自治体の給与体系に応じた給与となります。一方、財団や私立の施設に勤務する場合は、それぞれの所属先によって全く異なり、年齢や経験、能力にも左右されます。
有名博物館の館長クラスになると、年収1,000万円を超えることもあるようですが、それはごく少数です。専門性の高さや業務内容の幅広さを踏まえると、場合によっては給与は低めだと感じる人もいるかもしれません。
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出典:リクルートエージェント
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学芸員として就職するための方法3つ
学芸員として働くためには、国家資格取得が必要です。なお、「学芸員補」という、博物館業務に携わっている職員や学芸員のサポートをする仕事であれば、国家資格がなくても働くことは可能です。
では、学芸員の国家資格を取得するための、3つの方法をご紹介します。
「博物館に関する科目」の単位を修得し、学士を得る
大学で「博物館に関する科目の単位」を修得し、卒業時に学士の学位を得ることで、学芸員の資格も同時に得ることができます。
なお、「博物館に関する科目の単位」には、生涯学習概論や博物館概論、博物館経営論、博物館資料論、博物館資料保存論、博物館展示論、博物館教育論、博物館情報・メディア論、博物館実習があります。
「博物館に関する科目」の単位を修得し、学芸員補実務経験3年以上
大学を2年以上修了している場合、先ほど説明したの「博物館に関する科目」を含めて62単位以上を修得して、かつ3年間以上学芸員補として働くことで、学芸員の国家資格が授与されます。
学芸員資格認定試験に合格する
試験を受けて認定を受けることで、学芸員の国家資格を得ることができる方法です。難易度として比較すると、先ほどの2つの方法よりも高めではあります。しかし、社会人としてセカンドキャリアに学芸員の取得を目指す場合には、受験資格に当てはまるのであればこちらを利用するのも良いでしょう。
「学芸員資格認定試験」とは
大学に通わなくても学芸員になれる方法は存在します。「学芸員資格認定試験」は、合格することで国家資格である学芸員を取得することができるのです。そして、この認定試験には、2種類の方法がありますよ。
試験認定
これは、受験者が学芸員になるために必要な知識・学力・経験をしっかりと持っているのかどうかを確かめるための筆記試験です。4つのうちのいずれかに当てはまることです。
- 学士の学位を持っていること
- 大学に2年以上在学して、「博物館に関する科目」を含め62単位を修了し、2年以上学芸員補として勤務していること
- 教員普通免許状を持ち、2年以上教員の職に就いていること
- 4年以上、学芸員補として勤務していること
審査認定
受験者が学芸員になるために必要な知識・学力・経験をしっかりと持っているのかを確かめるための書類審査と面接があります。書類審査では、博物館に関する「学識」及び「業績」があるかを見るため、博物館に関する著書、論文、報告、展示、講演、その他の実務経験等を確認します。
なお、この審査を受けるためには4つのうちのいずれかに当てはまることが必要です。
- 修士もしくは博士の学位を持ち、2年以上学芸員補として勤務していること
- 大学において博物館に関する科目の教授・助教授・講師として2年以上従事し、2年以上学芸員補として勤務していること
- 都道府県の教育委員会からの推薦があること
- その他、文部大臣が上記と同等以上の資格を持っていると認められること
■学士の学位を持ち、4年以上学芸員補として勤務していること。
■大学に2年以上在学して「博物館に関する科目」を含め62単位を修了し、6年以上学芸員補として勤務していること。
■大学入学資格があり、8年以上学芸員補として勤務していること。
■11年以上、学芸員補として勤務していること。
以上のいずれかに当てはまること
採用倍率はどれくらい?
文部科学省が公表している平成29年度の「学芸員資格認定試験」の結果は、試験認定は92人中69人が合格、審査認定は54人中21人が合格です。ただし、資格を取得すれば必ず学芸員として働けるというわけではありません。資格を取得して初めて、採用試験を受けることができるようになるだけです。
残念ながら、現状は学芸員の資格取得者数に対して採用人数が非常に少ないため、就職するのはかなり難しいといわれており、一般的には就職倍率は50~100倍です。募集人数が少ないのもそうですが、専門色が強いこともあり、離職率が少なく離職による空きが出ないために募集がかからない、というところも多くあります。
学芸員は社会人からでもなれる?
学芸員の資格は、社会人からでも取得することはできます。ただし、その資格を取得するためには、先ほどご紹介した方法での国家資格の取得が必要になります。社会人であることを考えると、大学に通い指定の科目を修得するために仕事を辞めるということは、なかなか現実的ではありません。
また、指定科目を過去に修得していたとしても、2年以上の学芸員補としての勤務を両立するのも難しいでしょう。
そこで、社会人からでも学芸員を目指す方法としておすすめなのが、大学の通信教育にて必要な科目を修得して、学芸員の資格の取得を目指す方法です。WEBだけで修得できるところもあれば、一部通学などいろいろなカリキュラムのところがあるので、ご自身に最適なものを見つけるのが良いでしょう。
学芸員に求められる資質って?
学芸員は専門性の高い調査や研究を行いながら、教育普及活動なども行う必要があります。絵画や動植物、遺跡など自分の専門とする分野に対する深い知識を持つことはもちろんのこと、強い好奇心や興味を持ち続けることが求められます。
一方で、イベントやワークショップなどの企画・運営をすることも業務のひとつであるので、広い視野を持つことと多くの人に興味をもってもらえるような展示物を選ぶための力も重要になります。
そして、扱う作品や資料の中には非常に貴重なものも多数あるので、丁寧さも求めらる仕事です。
学芸員の資格はセカンドキャリアの候補にもなる!
学芸員になる1番の近道は指定の科目を修得できる大学を卒業することではありますが、社会人になってからでも取得は可能な資格でもあります。学芸員としての博物館への就職は狭き門とはいわれていますが、とても大切な仕事であり、やりがいを大いに感じることができる仕事でもあります。
この分野に興味があり深く追求していくことが好きな方には、セカンドキャリアとしてもおすすめです。ぜひ、ご自身のセカンドキャリアの候補のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか?