【医師監修】生理の異常・不順の原因とチェック方法!役に立つ治療法と予防法を紹介

1カ月に何回も生理がきた、2カ月以上生理がこない、生理の量が多いなど、ストレスの多い現代女性の多くが抱えている「生理の異常・不順」。この異常は、実はあなたの体から発せられる“SOS”なのです。女性にとって生理は人生の半分付き合っていくもの大切なものです。生理の異常・不順の原因や治療法、対策をまとめました。

生理の異常・不順とは?

そもそも生理って?

将来、子どもを産むために女性の体で起こる準備のことです。正しくは月経といいますが、ここでは「生理」という言葉を使用しますね。

そもそも生理は、子宮の中で厚くなった子宮内膜が月に1回はがれ、体外に排出される現象のことです。月に1回、子宮の中で赤ちゃんのためのベッドメイキングと掃除が繰り返し行われているようなものと想像してみてください。生理が始まって(初潮といいます)から終わる(閉経といいます)まで、排卵と生理を繰り返します。このサイクルのことを「生理周期」と呼びます。この生理周期が不規則になることを生理不順といいます。
そのほかの生理の異常としては、生理の量が極端に多かったり極端に少なかったり、生理の持続期間が長かったり様々です。

正常な生理

多くの女性は、平均12~13歳で初めて生理を迎えます。生理周期は25~38日が正常とされていますが、生理周期は人によって違います。自分の生理周期を正しく知ることも大切です。カレンダーに生理が始まった日、終わった日をチェックしていくと、自分の生理周期を確認することができます。今は便利なアプリがたくさん出ていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

生理がこないのはなぜ?

生理が遅れる理由としては、妊娠以外にこのようなものが考えられます。思い当たるものがあれば、ご自身の生活を少し見直してみましょう。

  • 精神的なストレス
  • 不規則な生活
  • 無理なダイエット
  • 肥満
  • 偏った食事
  • 睡眠不足
  • 運動不足
  • 甲状腺ホルモンの異常
  • 下垂体腫瘍
  • 子宮卵巣の異常
  • 内服薬の影響

どのぐらい生理がこなかったら生理不順なの?

自分の生理周期を把握し、生理予定日からおよそ1週間以上変動があり、この状態が3カ月以上続くと生理不順だと考えられます。

生理不順の種類とは?

「生理不順」といっても、一体どのような状態を指すのか、皆さんはご存知ですか?
2013年の調査では、生理不順の経験者は79.3%、女性5人のうち4人は生理不順を経験したことがあるといいます。では、生理不順とはどのような症状を指すのでしょうか。

生理周期が短い頻発月経

頻発月経とは、生理周期が24日以内で同じ月に複数回生理が起こることをいいます。ホルモンの分泌が安定しない思春期や更年期に多くみられるものですが、原因としては無排卵(生理があっても排卵がおこっていない状態)、黄体機能不全(排卵後、卵巣において形成される黄体の機能が悪く、生理周期が短くなる状態)が考えられます。

生理周期が長い稀希発月経

生理周期が39日以上と長く、年に数回しか生理が起こらないことをいいます。卵胞の成熟が途中で止まり、排卵していないことが考えられます。また、卵巣や下垂体(ホルモンを分泌する器官)の病気も考えられます。心配な場合は、産婦人科を受診しましょう。

続発性無月経

過去に自然に生理がきていた人が,3カ月以上生理が来ない場合を続発性無月経といいます。
ホルモンの異常や下垂体腫瘍の場合もありますので必ず産婦人科を受診しましょう.

その他の生理の異常

生理が2日以内に終わる過短月経

出血が2日以内に終わり、出血量が少ない「過少月経」をともなうことが多く、基礎体温や出血量、エコー検査などで総合に判断されます。

生理が8日以上続く過長月経

生理が終わらず、8日以上続く場合を指します。
少量の出血の場合は問題のないことが多いですが、普段の月経の様な出血が8日以上続く場合は貧血を引き起こします。原因が子宮や卵巣にある場合もありますので、この状態が毎月続くようであれば、早めに産婦人科を受診しましょう。

経血量が極端に少ない過少月経

この場合、発症の多くは排卵をともなわない周期であったり、子宮内膜の異常や感染などが引き金になることがあります。10代の女性であれば、年齢の影響もありますが、月経が以前より明らかに短く、何周期も続いた時は産婦人科を受診しましょう。

経血量が極端に多く生理痛も多い過多月経

生理の出血がレバーのように塊となって出てくる場合を指します。毎月のように多量に出血となると鉄欠乏性貧血に陥る心配もあります。また、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜増殖症が原因になっているケースも考えられます。

40代以降にみられる生理不順

女性の多くは50歳頃に閉経を迎えます。45~55歳ぐらいが更年期にあたり、少しずつ女性ホルモンが減り始め、排卵障害とともに不定期に出血がおこることがあります。多くの場合は更年期にさしかかるとホルモンのバランスが不安定になり生じるものと考えられます。

このような症状が続いたら、更年期による生理不順が始まっている可能性が考えられます。

  • のぼせ、ほてり、汗をかきやすい
  • 手足が冷える
  • 動悸がする
  • イライラや不眠、頭痛
  • 腹痛、関節痛、肩こり
  • 吐き気や食欲不振
  • 皮膚が乾燥し、かゆみがでてくる
  • 性交痛がある

生理不順だと思っていたら実は癌や病気による不正出血であった、ということもあるので、月経周期や期間・量が気になったら自分だけで判断せずにできるだけ早く産婦人科を受診しましょう。

生理の異常・不順の原因は?

病気

生理というものは女性ホルモンが大きく関係しています。子宮や卵巣、下垂体の異常で、生理の異常・不順をきたしている場合もあります。

主な病気としては

  • 卵巣機能不全(卵巣の機能が低下し、卵胞の成長が悪くなったり排卵が遅れたりする状態)
  • 無排卵(生理があっても排卵されていない状態)
  • 子宮筋腫(子宮下にできる良性の腫瘍)
  • 下垂体腫瘍(ホルモンの分泌が異常になることがある)
  • などが挙げられます。

身体的/精神的なストレス

仕事や子育て、新しい環境への戸惑い、人間関係などで肉体的疲労や精神的なストレスが原因となり生理不順を引き起こします。まずは自分自身がストレスを感じていることを自覚し、スポーツをしたりストレスを発散させることも大切です。

痩せすぎ/太りすぎ

「どうしても痩せたい」と思い、食事の量を制限したり過激なダイエットを続けると栄養失調状態になり、ひどい場合には生理が止まってしまうこともあります。これは高校生頃の年代に多く見られ、若い頃の過度なダイエットによる無月経は深刻になってきています。
具体的には、短期間で20%以上の体重を喪失すると排卵等の働きを停止させるといわれています。ダイエットに限らず、女性アスリートにも多くみられる現象ですが、適切な治療を受けずに無月経な状態を放っておくと、閉経してしまうこともあります。一度閉経してしまうと治療しても再び生理がくることはありません。

不規則な生活

若い女性に多いのが、深夜まで残業の日々が続いたり、仕事の関係で昼夜逆転した生活が続くと、体や心のストレスにつながり、体に悪影響を及ぼします。

生理の異常・不順の治療法と予防法は?ピルっていいの?

「治療法」

薬(ピル・カウフマン療法)

よく聞く「ピル」というと避妊が目的の薬だと思われがちですが、生理不順やホルモンバランスの乱れ等女性特有の症状はピルで改善できる場合もあります。日本ではまだまだピルに対するマイナスイメージが強いようですが、最近では、低用量ピルを使い薬で月経を起こす方法も増えてきました。もちろん、メリットデメリットはありますので医師に相談のうえ、処方してもらってください。

また、初めて聞く方もいるかと思いますが、「カウフマン療法」という方法もあります。内服薬や注射でホルモン剤を投与し、通常の生理周期と同じホルモンバランスに整えることが可能です。約半年継続すると体が正常な生理周期を覚えて、自然に排卵が起こるようにする目的で行います。

漢方薬

ホルモンがある程度保たれている場合は、ホルモン剤を使用するのではなく、体を温めたり、血液の流れを良くするために漢方薬を使います。
さまざまな漢方がありますので、自分の症状に効果のある漢方を選んでください。

ここでは生理不順の改善に期待できる漢方を3つ紹介します。

  • 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
  • 多くの人が処方されているのが、こちらの漢方。血を増やしてくれるので貧血傾向の人にお勧めです。

  • 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
  • 血行を良くし、下半身に熱をめぐらせます。顔がのぼせたり下半身の冷えがつらい方にお勧めです。

  • 桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
  • 血行を良くし、生理前や生理中に起こりがちな症状を緩和します。また、生理痛にも効果が期待できます。
    ただし、漢方は即効性のあるものではなく、まずは2週間程度飲んでみることが大切です。

サプリ

一口にサプリといってもさまざまな種類があります。自分の体で起こっている症状を把握し、その症状の改善に合うサプリを摂取しましょう。ここでは生理不順の改善を助けてくれるサプリを3つ紹介します。

  • 生姜サプリ
  • 生理不順の大きな原因となっている、体の冷え対策に有効なサプリです。生姜には血管を拡張して血行の巡りを改善してくれる成分が含まれており、体の内側から冷えを改善してくれます。

  • 鉄分サプリ
  • 貧血の症状に効果のある鉄分サプリですが、女性の3人に1人は鉄分不足だといわれています。なかなか普段の食生活で摂取が難しい場合もありますので、この鉄分サプリを有効に活用してください。

  • 葉酸サプリ
  • 葉酸とは、葉野菜やレバーなどの含まれる水溶性のビタミンB群のことです。貧血を改善する効果があります。妊娠前に服用すると胎児の神経障害のリスクを減らすことができるので、妊娠を希望する場合は、ぜひ摂取してみてください。

ツボ

子宮につながりのあるツボ押しを行うと、子宮の働きを整えたり、ストレスが解消されたり、血流がアップします。ツボを指圧するときは、入浴中もしくはお風呂上りが効果的です。呼吸を意識しながらゆっくりと息を吐きながら押し、吸いながら離すことがポイントになります。
このとき、強くしすぎないように気をつけてください。ツボを強く押すからといって効果が上がるわけではありません。自分が気持ちよく感じられるぐらいの強さで押してください。

病院を受診しよう

一番安心するのは、病院を受診し原因を知ることですよね。その際、問診でよく聞かれるのはこのような項目です。

生理に関すること

  • 初潮の時期
  • 直近の生理開始日やその期間、生理周期
  • 生理の際の出血量や月経痛があるかないか
  • 生理不順がいつから起こっているのか、どんな内容か
  • 生活面に関すること

  • 性交渉の経験の有無
  • 妊娠、出産の経験
  • 喫煙をしているか(1日の喫煙本数)
  • アルコール摂取量
  • 現在治療している病気があるかないか
  • 過去に病気をしたことがあるか
  • 血のつながっている家族で大きな病気をした人がいないか

受診する前に、予めメモをしておくとスムーズに話が進むと思います。もし、2カ月~3カ月の基礎体温表があるのなら、それも一緒にもっていきましょう。

「予防法」

基礎体温をチェックしよう

まずは、今日からできる「基礎体温を測る」方法です。これが自分の体の状態、また子宮の状態を把握するためにはとても大切なことなのです。
基礎体温を測ることで、生理不順や病気の予測、妊娠しやすい時期の予測や生理の予測、排卵をしているかなど把握することが可能になります。ただし、1週間だけ測っても意味はありません。2~3カ月間は測りましょう。

よく「基礎体温」という言葉を耳にすることがあると思います。いつ測るの?どうやったらいいの?実は基礎体温を測るにはルールがあるのです。

準備するもの
基礎体温を測るには、通常の体温計ではなく、基礎体温計が必要です。低温期と高温期で0.3~0.5度の違いしかないため、小数点第一位までしか表示できない通常の体温計では正確に記録することができません。小数点第2位まで表示できる夫人体温計を使用しましょう。

  • 朝目覚めたら、寝ているまま体温計を口にくわえて安静にしている状態で測る必要があるため、朝起きた後にベットに横になったまま測りましょう。
  • また、体温は脇で測ることが多いと思いますが、より正確な体温を測るために口内で測りましょう

  • 毎日同じ時間に測ります。仕事の都合等で同じ時間に測れなかった場合は、後日確認できるようメモを取っておいてください。
  • 以上のルールを守り、実行してみてください。そして、測るときには必ず基礎体温表をつけていきましょう。

規則正しい生活を心がけよう

まずは自分自身の体を整えましょう。不規則な生活が続くと知らないうちにストレスがたまった状態になり、ホルモンが正常に分泌されなくなります。

ホルモンの分泌に有効に働く栄養素

  • ビタミンB6
  • →レバー、まぐろ、かつおに多く含まれ、たんぱく質の代謝に不可欠なもの。女性ホルモンの分泌を促し、ホルモンバランスを整えます。
      ≪オススメ食品≫にんにく・レバー・まぐろ・かつお・鮭

  • ビタミンC
  • →果物、野菜に多く含まれ、鉄の週休を高め、コラーゲンの合成に必要な栄養です。またストレスを軽減する働きもあります。
      ≪オススメ食品≫ピーマン・ゆず・パセリ・レモン・柿・キウイフルーツ

  • ビタミンE
  • →植物油や種実類、魚介類に多く含まれ、血液循環を改善、血行促進により体を温めてくれます。しかしサプリメントによる過剰摂取は出血傾向が上昇しますので注意が必要です。
      ≪オススメ食品≫あんこうのきも・いくら・たらこ・モロヘイヤ・大根の葉

  • 亜鉛
  • →牡蠣、牛肉に多く含まれ、女性ホルモンの活動に必要な甲状腺ホルモンの受容体としての働きを担う
      ≪オススメ食品≫生牡蠣・豚肉レバー・牛肉・たまご・ローストビーフ

  • 鉄分
  • →レバー、赤身の肉、大豆や海藻に多く含まれ、鉄分不足による冷え性の改善
      ≪オススメ食品≫レバー・豆みそ・あゆ・しじみ・いわし・米みそ・納豆

  • パントテン酸
  • →レバー・納豆・鶏肉に多く含まれ、副腎皮質ホルモンの合成促進によるストレスの緩和
      ≪オススメ食品≫レバー・はつ・たまご・納豆・たらこ・鶏ささみ・うなぎ

このように、多くの食品には私たちの体を助けてくれる大切な栄養素がたくさん含まれています。全てを摂取するのはなかなか難しいですが、少しずつ意識して食卓に取り入れてみてください。また、もっと手軽なものが「青汁」です。青汁には、大切な栄養素が全て含まれており、栄養素を摂取できるのはもちろんのこと、青汁には身体を温める効果も期待できます。

リラックスできるアロマオイル

疲れた体を癒すアイテムとして、最近人気なのはアロマテラピーです。
実は、アロマオイルに使用されるエッセンシャルオイルの中には、女性ホルモンの分泌を促したり、ホルモンバランスを整えてくれる効果があります。仕事に追われ、日々忙しい生活を送る中で、アロマに癒される時間が精神を癒すと同時に、体の中にあるホルモンまで影響を与えてくれます。
薬に頼るのもいいけど、副作用が心配というあなた。アロマオイルでご自身の体を癒してあげてください。

  • クラリセージ
  • 匂い:ナッツのようなほのかな甘みを含んだ香り
    効果:生理を促す作用があるといわれており、生理不順を改善する効果も期待できますが、流産の可能性を高めてしまうので、分娩・妊娠中の使用は禁止されています。

  • ゼラニウム
  • 匂い:ローズ+ハーブ系のすっきりする香り
    効果:ストレスを和らげ、ホルモンバランスを整えてくれる

  • ローズ
  • 匂い:ローズ
    効果:女性のためのエッセンシャルオイルといわれ、ホルモンバランスや身体のリズムを整えてくれる

  • フェンネル
  • 匂い:甘さとスパイシーさをもつフローラルな香り
    効果:体内で女性ホルモンと同じような働きをして、生理不順を改善してくれる

    いろんなアロマオイルをブレンドするのも効果がありますが、まずは1種類から試してみてはいかがでしょうか。あなたの好きな香りでリラックスした時間を過ごしてみてください。

心配になったら迷わず産婦人科へ行こう

ここまで生理の異常・不順に関してお話してきました。「もしかしたら病気かもしれない…」と少しでも不安を抱えているのなら、産婦人科を受診してみましょう。
妊娠してもいないのに、産婦人科に行くことは勇気がいりますよね。でももし、大きな病気だったとしたら「どうしてもっと早く受診しなかったんだろう」と後悔することになります。そうならないためにも、勇気を出して産婦人科の先生とお話してください。そうすることで、自分自身が安心感を得られることにもなりますし、治療が必要だった場合は早急に適切な処置が可能となります。

女性は今はあなただけの体でも、将来赤ちゃんを育てるための体でもあります。自分の体とよく向き合って、最善の選択をしてくださいね。

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