「小学校英語指導者」は英語が好きで、「子どもに教える」ことにも興味がある人に向いている資格です。どのような資格で、取得後どのように生かせるかを解説します。英語の勉強にブランクありの人、すでに先生の人、英語関係の仕事から違うキャリアオプションを探している人にとっては検討の価値がある資格です。
取得したい人気語学系資格!「小学校英語指導者資格」とは
英語指導をめぐる動き
文部科学省
文部科学省では小学校における新学習指導要領を全面的に実施しており、第5・第6学年における年間35単位時間の「外国語活動」が必修になりました。
この動きを受けて全国の小学校高学年では、これまで以上に外国語に触れ、言語や文化への体験を通して理解を深めることが推奨されるようになりました。
音声を中心に、積極的に意志疎通を図る“コミュニケーション能力の育成”が真剣に取り組まれています。
参考サイト:小学校外国語活動サイト|文部科学省
特定非営利活動法人 J-SHINE(小学校英語指導者認定協議会)
J-SHINE(小学校英語指導者認定協議会)は、小学校での英語教育の普及・発展を支援するNPOです。小学校教育現場へ良質な指導者を安定供給するために、英語教育指導者の資格認定を行なっています。
認定資格は、「小学校英語準認定指導者」「小学校英語指導者」「小学校英語指導者⁺(プラス)」「小学校英語上級指導者」「小学校英語上級指導者⁺(プラス)」「小学校英語指導者育成トレーナー」資格です。
参考サイト:J-SHINE 特定非営利活動法人 小学校英語指導者認定協議会
どんな資格?
小学校英語準認定指導者
小学校英語準認定指導者は、「小学校英語指導者としての資格認定を受けるには指導経験時間が足りないが、指導者としての知識など一定の技能と知識があると認められた者」です。
この資格を取得後、指導時間が50時間を超えると小学校英語指導者の正資格になります。
小学校英語指導者
「小学校英語指導者」は、小学校での英語活動・英語教育を行うための知識と技能を持ち、児童英語教育指導者として十分な能力があるとされる資格で、 J-SHINE 認定のすべての資格の基本となります。
小学校英語指導者⁺(プラス)
「小学校英語指導者⁺(プラス)」は、小学校での英語活動・英語教育を行うための知識と技能を持ち、指導経験50時間以上とCEFR B2以上がある人に認められる資格です。
CEFR (Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment:外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠)は、2001年に欧州評議会により発表されました。
6段階の評価において、CEFR B2は自立した言語使用者とされ、「自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。
母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流暢かつ自然である。幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができるレベルとされています。
小学校英語上級指導者
「小学校英語上級指導者」は、小学校英語指導者の資格を取得後、指導時間数が200時間を超え、小学校長(教育委員会)から認められた優れた指導者としてJ-SHINEが認定する資格です。
小学校英語上級指導者⁺(プラス)
「小学校英語上級指導者⁺(プラス)」は、「小学校英語指導者準資格」もしくは「小学校英語指導者資格」を取得後、小学校での指導時間数が200時間を超え、小学校長(教育委員会)から推薦を受け、さらに英語力がCEFR B2以上の資格です。
小学校英語指導者育成トレーナー
「小学校英語指導者育成トレーナー」は、英語指導者育成講座を企画立案し、指導者を指導する者としての知識・技能などの能力を備えていることを認定する資格です。
J-SHINEが主催する資格検定の試験に合格することで資格が付与されます。指導者資格や上級資格とあわせて所持する必要はありません。
どうやって取得するの?
「小学校英語指導者資格」取得を目指す人は、J-SHINE の認定を受けた登録団体の指導者養成講座を修了し、「小学校英語指導者」としての推薦を受ける必要があります。
まず、研修を受ける団体を決め、それぞれの研修・認定コース修了時に資格認定の手続きに従い、指導者認定審査料と合わせて申請します。 研修・認定コース修了のほか、次の 2 点を満たしていることが必要です。
- 指導時間50時間以上の実施経験がある。
- 英語で授業が行える。
「小学校英語指導者」資格認定講座には、通学と通信教育のコースがあります。集中型の通学コースの方が、短期間で修了できる可能性がありますが、自分のライフスタイルに合わせて、無理のない方法を選ぶことをお勧めします。
オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどの国で短期留学で取得を目指すプログラムもあります。
通学コース
Aliveアライブインターナショナルプリスクール アライブイングリッシュスクール
出典:Alive
英会話イーオン
出典:英会話イーオン
mpi松香フォニックス
出典:mpi松香フォニックス
通信講座
アルク
出典:アルク
Teyl-JAPAN
出典:Teyl-JAPAN
短期留学
International House Sydney:オーストラリア
Career Up:オーストラリア
出典:Career Up
International House Vancouver:カナダ
出典:International House Vancouver
Auckland English Academy:ニュージーランド
取得後に広がる!活躍の機会
どんな仕事ができるの?
資格を取得して、ワークライフバランスを充実させている2人の事例を紹介します。
- Aさんのキャリアパス—小学校で英語指導
Aさんは39歳。大学は都内の英語英文学科に進み、William Shakespeareに関する卒論を書くほど、英語が好きでした。卒後は出版社で編集の仕事に就き、2年で退職しました。英語を使う仕事がしたくなったとき、子育てをしながら一念発起して英語の勉強を再開し、通信講座で半年ほどかけて小学校英語指導者の資格を取得しました。
子供を預けてできる、週2回ほどのアルバイトを探していたとき、卒業した小学校でネイティブ講師の授業の補助をする日本人講師として働かないかと誘われ、採用されることになりました。
週2回、時給2,000円、授業の前後の書類作成や準備と合わせて、1日4時間ほどです。
Aさんはベテランのネイティブ講師をサポートしながら、実践を重ね、一年後には自分で授業を担当するようになりました。授業シラバスを作ることも頼まれ、やりがいを感じています。
Aさんのような小学校の英語講師の場合、多くは非常勤の勤務となります。時給相場としては1,000円~3,000円程度です。
小学校で英語を教える仕事に就ける人は多くはないため、Aさんは幸運だったと感じています。Aさんは卒業生でしたが、学校から個人に直接依頼されることがあるようです。
- Bさんのキャリアパス—キッズイングリッシュスクール開設
Bさんは48歳。外国語教育学部を卒業後、航空会社勤務を経て主婦になりました。家事の傍ら、15年ほど家庭教師として英語を教えてきました。小学校低学年から大学受験まで一人の生徒さんを長く引き受けることもあれば、自閉症の子どもに手取り足取り教えることもありました。
Bさんは、英語は「書く」「聞く」「話す」「匂う」「触れる」の五感を使って習得することが効果的だと考えます。Bさんにとって小学校英語指導者資格は、これまで自分が行ってきたことが間違っていなかった、と自信を持たせてくれるものでした。
資格取得後は、より安定した収入を得るために大手スクールの提携パートナー教室を開くことにしました。会社の専属スタッフがいるので集客の心配はなく、開講コースも一緒に決めています。
Bさんの英語スクールでは、1年目の生徒数は週4日で20人ほどでした。スクールを運営しながら、クラス、コマ数を増やし、生徒数を徐々に増やしていきました。
2年目の生徒数は35人、収入は8万円から15万円になりました。生徒さんの半数は英語にそれほど興味がない子どもたちなので、飽きさせず、楽しませるには創意工夫が必要です。
Bさんのように、教えることが大好きで、苦にならない人は、この資格をばねにして飛躍できるでしょう。
小学校英語指導者資格「メリット」と「デメリット」
メリット
レッスン・授業が上手になった
小学校英語指導者資格は、指導者のプロです。児童心理やアクティビティーの知識を学ぶことにより、持ちネタが豊富になれば、レッスンの質が自然に向上します。
マニュアル通りだったレッスン構成に抑揚がつき、「こういう時は、こうする」対応の引き出しが増え、自信と余裕が生まれます。問題児や親御さんへの説明もこれまでより円滑になり、人気講師として評価を得ることでしょう。
子ども英会話スクール・英語教室・塾講師として採用されやすい
英語力と子供に英語を教える指導力は別の物です。小学校英語指導者資格は、指導者としての専門性を持っているという点でアピールになります。小学校や幼稚園の非常勤講師、イベントのピンチヒッター、個人教室の時間講師としてなど、働き方の選択肢は増え、自分に合った働き方を決められます。
英語教室を開設できる
自宅などで、英語教室・スクールを開くことができます。小学校英語指導者資格を絶対条件に掲げている場合と、明確にはしていないけれども同等の能力が期待される場合があります。
小学校で英語を教えることができる
日本の小学校では、非常勤講師として英語指導に携わることができるようになります。すでに小学校で指導している方は、授業内容の改善、プログラムの提案をする機会を得て、教育計画立案の一役を担うでしょう。
地域や学校によって異なりますが、小学校指導英会話講師の資格を持っていることを採用条件にしているところ、無資格者よりも高い時給を提示しているところがあります。
資格取得後、希望者は自分の情報をJ-SHINEのウェブサイトに公開することができます。これにより、県や市の教育委員会、公立小学校の担当者の目に留まり、興味のある学校などとマッチングする可能性が広がります。
自分のこどもに英語を教えられるようになる
将来の子育てに活用したいという20代、30代のOLさんが多くいます。子どもが喜び、家族のコミュニケーションが深められます。
社内・地域の英語教育の役に立つ
小学校英語指導者資格を通して、実践的なプレゼンテーション力、コーチング力を養いたいという男性サラリーマンの方がいます。退職後、地域に貢献したいというお父さんも後押ししてくれるでしょう。幅広い年齢の方がユニークな応用をしています。
生涯学習・再学習のきっかけになる
英語をもう一度やってみたい!という生涯学習・再学習のきっかけとなっているようです。頑張れば達成可能である資格取得という明確な目標があることによって強いモチベーションが維持されます。同じ志を持つ仲間と出会い、楽しく英語の学習が続けられます。
デメリット
デメリットという表現には語弊があるかもしれませんが、「英語指導者としての資格は他にも多くあり、『小学校英語指導者』資格が英語指導の最高峰にあるわけではない」ということは念頭に置く必要があります。
例えば、TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)やTECSOL(Teaching English to Children Speakers of Other Languages)という資格があります。
この資格は、英語を母国語としない学習者に対して、英語を指導する国際資格として幅広く認知されています。TESOLは成人が対象で、指導する対象者の年齢が12歳以下であるのがTECSOLです。
これらは、世界標準の英語の教授方法や、文法・発音の指導方法などを専門的に修得することにより得られる資格といえます。
日本語を母国語とする者でも、英語を母国語としない学習者に英語を教えることができるようになります。つまり、日本人ではない学習者を対象に英語を教えたい、というのが夢や目標である場合は、TESOLやTECSOLの取得を目指すことも一案かもしれません。
各種資格の優劣ではなく、どこまでを目指すか、どんな人を対象にして、どこで仕事をするのかによって、必要な資格が変わってきます。そして、何よりも、取得後のモチベーション維持と自分自身の英語能力ブラッシュアップをどうやって行うかが、今後の英語指導の質とそこから得られるcareer fulfillment に大きく関わってきます。
英語指導に携わる熱意に溢れる皆様が、志の高い言語指導のプロでいつづけることを心より応援します。
- TESOL/TECSOL関連団体 tesol international association
- 一般社団法人日本TESOL協会
- Australian Council of TESOL Associations
- tesolanz
児童英語指導のお勧め書籍
『子ども英語指導ハンドブック』Mary Slattery and Jane Willis
Mary Slatteryは、自身がアイルランド語と英語を通して母親の教育を受け、外国語としての英語(English as a Foreign Language)教育に貢献してきたエキスパートです。
この本には、子どもに英語を教える先生へのアドバイスや指導法が丁寧に書かれています。レッスン中に使える指示表現、すぐに実践できるゲーム例が紹介されています。付属CDには発音練習も収録されています。
『外国語活動の授業づくり 学級担任の実践から学ぶ基本の指導技術』 直山 木綿子
京都市立中学校で勤務後、京都市教育委員会学校指導課程指導主事などを経て、文部科学省初等中等教育局教育課程課・国際教育課外国語教育推進室教科調査官などとして活躍される著者により監修された本です。“Hi,friends”完全対応で、目標・ポイント、授業の流れを分かりやすくイラストで示し、板書、活動のポイントを解説しています。
すべてのLessonで使える学習カードが付いています。
『子どもに英語を習わせる親が知っておきたいこと』高取しづか
日本語を母国語とする子どもは、日本語で「ことばによるコミュニケーション力」を育てることが重要です。それは英語を習得するための近道になります。親子でできる、話すときに必要な「自分のことばで伝える」トレーニングを紹介します。度胸力、考える力、応答力などをどのように伸ばすか、ヒントになります。
アメリカの小学校では絵本で英語を教えている 英語が話せない子どものための英語習得プログラム ガイデッド・リーディング編 リーパー・すみ子
アメリカの小学校で20年間、図書館司書としてリテラシー教育に携わってきた著者が、英語の絵本を使ったGuided Readingの指導について詳しく解説した本です。
Guided Readingとは、英語が読めない子どもたちを「読めるように導いていく」リーディング指導法のことで、スペイン語を母語とする移民が多く住むニューメキシコ州で、子どもたちが英語を自律的に読めるよう実践された方法です。
この本では、有名で人気のある英語の絵本を取り上げ、指導例を紹介しています。Guided Readingに適した英語絵本が挙げられ、指導で使える教材も付いています。
「小学校英語指導者」資格を取得して“好き”をキャリアのステップアップにする!
英語ができる人はたくさんいます。そのような競争の激しい分野で、好きなことを仕事にして評価されることは、とても大変なことです。もし、「子どもに教える」ことが好きで、「教えることのプロになる」ことに興味があれば、「小学校英語指導者」資格取得で、キャリアのオプションが増えることは間違いありません。
英語教育の強化を目指し、小学校では2020年度には小学校3年生から授業に英語が加わることが決まりました。そこで注目されているのが、子どもたちに英語を教える「児童英語教師」です。「児童英語教師」とはどんな仕事内容で、なるために必要な資格がある[…]