産後のママは出産の疲れが残っている状態で育児しないといけないため、へとへとになっているでしょう。そのうえ、妊娠のむくみが産後も改善されず、体重もなかなか戻らないとなったら悩みが尽きませんよね。今回は、産後に体重が減りにくいのはむくみのせいかのか、むくみの原因と対処法を詳しくご紹介します。
産後のむくみとむくみやすい場所とは
早速ですが、産後のむくみについて解説していきます。まず、むくみとはどのような症状なのか、産後にむくみやすい場所はどこかについて知っていきましょう。
むくみとは
むくみとは、様々な要因で静脈やリンパの流れが滞り、細胞と細胞の間に余分な水分として溜まることで起きる症状です。
血液の「血しょう成分(血液の液体部分)」は、栄養や酸素を全身に送る働きを持っています。この血しょう成分が動脈を通り栄養や酸素を届け、細胞で使われて不要になった老廃物などを回収し、静脈やリンパ管を通って心臓に戻ります。しかし、静脈の働きが悪くなるとリンパに送られるはずの血しょう成分が滞り、水分や老廃物がうまく排出されずむくみという症状が出るのです。
むくみを確認するときは、足のすねの骨の上を指で10秒ほど押し続けてみてください。指を離して5秒たっても指の跡が残っていれば、むくんでいることになります。
むくみやすい場所
むくみは水分が溜まりやすい部分に起こりやすいです。それは、指で押すとすぐ骨を感じる場所や皮膚をつまむと皮がすぐ持ち上がる場所です。
むくみやすい場所の代表的なところとして知られているのは、足ではないでしょうか。朝はちょうどよかった靴が夕方にきつく感じるようになる、ふくらはぎがパンパンになっていて驚いたというママは多いのでは?
また、手の指もむくみやすい場所ですよね。妊娠してむくみを感じるようになり、指輪ができなくなったママもいるでしょう。また、瞼もむくみやすい場所のひとつです。目がはれぼったく感じることがあるのは、瞼がむくんでいるからなのですね。
むくみは体重増加の原因なの?
私たちの身体の大半は水分でできているのはよく知られていることです。むくみは、血液やリンパ液が上手く循環せずに滞ってしまうことで起きます。体内の余分な水分が増えることで引き起こされるのがむくみということは、余分な水分が排出されれば体重も減ることになります。
産後、むくみが原因で体重が増えたと感じたときは、そのむくみを解消するのが大切ということですね。そして、産後のむくみはいくつかの原因があるので、それらを理解して対処していくことが必要になってきます。
産後にむくみやすい原因
むくみとはどのようなものかが分かったところで、産後にむくみやすいのはどのような原因があるか解説していきます。
出産で血液の量が急激に減るから
妊娠中の身体は、赤ちゃんに栄養を与えるために妊娠前と比べると血液量が多くなります。血液が増えてくるのは妊娠12週頃からで、出産が近づくと血液量は妊娠前の4~5割も増えているのです。
しかし、血液の成分の白血球や赤血球は妊娠前と変わらず、増えるのは「血しょう成分」という水分を多く含む成分のみ増えます。そのため、妊娠中は身体の水分量が増えるためむくみやすくなるのです。
そして、出産の際に大量の出血とさらに子宮内の羊水も排出されるため、ママの身体は水分不足になります。
また、産後は身体の水分が急激に減ってしまっているのに授乳が始まるので、身体は水分をため込もうとします。こうしたことで、産後もむくみやすくなってしまうのです。
このような産後のむくみは、産褥期と言われる産後6~8週間後には徐々におさまっていきます。
ホルモンバランスの変化が起きるから
妊娠中は、赤ちゃんを育てるためにエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが大量に分泌されます。そして、産後はそれらのホルモンの分泌は急激に減り、母乳を作り出すためにプロラクチンという女性ホルモンが分泌されるようになります。
このようなホルモンバランスの乱れは、自律神経を不安定にさせます。それにより血流が悪くなるため、むくみの原因となるのです。
睡眠不足や疲れにより自律神経が乱れるから
産後は赤ちゃんのお世話で夜中も何度も起きなければならないため、常に睡眠不足です。そして、出産の疲れや育児でストレスも溜まり、自律神経が乱れがちになっています。自律神経が乱れると血液の流れが悪くなり代謝が悪くなります。
そして、代謝が悪くなることで血流が滞り、体内の余分は老廃物や水分がうまく排出されなくなるため、むくみを引き起こします。疲れもむくみの原因となるのですね。
授乳で同じ姿勢でいる時間が増えるから
産後は授乳が始まりますが、慣れないうちは肩に力が入ってしまうなど、授乳するだけでぐったり疲れてしまいます。また、同じ姿勢でいる時間が長くなり、血行が悪くなることもむくみの原因になります。
赤ちゃんの月齢が低いときは、1日に10回以上も授乳が必要ですからママは疲れてしまいますよね。疲れや血行不良がむくみの原因になるため、授乳のときは赤ちゃんを抱えなくてすむよう、クッションの上に赤ちゃんを乗せるなど工夫すると良いですよ。
運動不足により基礎代謝が低下するから
妊娠すると運動量が減りますが、産後も1ヶ月は自宅で身体を休めて外に出ることがほとんどありません。そのあとも赤ちゃんのお世話が中心になるため、運動不足になりがちです。
運動量が減り、基礎代謝が上がらないと血の巡りが悪くなり、それがむくみの原因になるため、産後はむくみが起きやすくなります。
心配な産後のむくみ
これまでご紹介した産後のむくみについては、妊娠や出産による身体の変化によるものが原因でした。そのため、そのむくみは身体の回復に伴い、改善していくためさほど心配することはありません。
しかし、なかにはむくみの原因が病気である場合があるため、以下の場合は病院へ行くようにしてください。
妊娠高血圧症候群の疑い
妊娠中に「妊娠高血圧症候群」と診断されている場合は注意が必要です。妊娠高血圧症候群とは、妊娠中に一昔前は「妊娠中毒症」と呼ばれていた症状で、高血圧や尿たんぱくが出る病気のことです。
妊娠高血圧症候群は、むくみを引き起こし、ひどくなると痙攣をおこしたり、赤ちゃんの成長に影響を与えたりすることがあります。そして、症状が重い人は産後も妊娠高血圧症候群の症状が続き、血圧が下がらないことがあるのです。
深部静脈血栓症の疑い
むくみを引き起こす病気には、深部静脈に血の塊ができてしまう「深部静脈血栓症」があります。
深部静脈血栓症は、足の静脈に血栓が詰まってふくらはぎや太ももが赤黒く腫れる症状が見られます。ひどくなると、血栓がはがれて血流に乗って全身を巡り肺の血管に到達します。そして、それが呼吸困難や動悸などを引き起こし、最悪の場合は命に関わる怖い病気です。
産後、ふくらはぎのむくみがひどく、赤黒く腫れてくることがあったら、すぐに病院で診察を受けるようにしましょう。
産後のむくみを感じたときの対処法
産後のむくみを感じたらどのように対処したら良いのでしょうか。いくつかの方法をご紹介するので、試してみてください。
適度に運動する
適度な運動は血液やリンパの流れを良くするため、体内の余分な水分や老廃物の排出をサポートします。しかし、産後間もなくは出産で身体が疲れているため、激しい運動は避けなければなりません。産後すぐできる「産褥体操」は足首を上下するなどの簡単な動きをする体操なので、入院中から行えますよ。
また、産後の1ヶ月健診で問題がなかったら、血行を良くする骨盤矯正体操や産後ヨガなどを行い、むくみ改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
適度な運動はむくみ改善はもちろん、ストレス解消にもなるため、産後のママにはおすすめです。
水をこまめに摂る
産後のむくみの原因のところでご紹介したように、出産や授乳で水分が不足します。そのため、体内で水分を溜め込もうとしてむくみやすくなるのです。
むくみにくくするためには、水分を一気に摂るのではなく、こまめに摂ることがポイントです。そして、冷たいものは身体を冷やしてしまい、ますますむくみやすくなるので、常温やぬるま湯の飲み物を摂るようにしましょう。
減塩の食事を心がける
塩分が多い食事を摂っていると、体内の塩分濃度が高くなってしまいます。そうすると、身体は体内の塩分濃度を下げようとして水分を溜め込めこもうとするため、むくみがひどくなることがあります。
良い母乳を作るためにも、普段から食事は塩分を控えるようにするように心がけましょう。
カリウムを摂るようにする
むくみを改善するためには、体内の余分な塩分を汗や尿として排出する作用がある「カリウム」が含まれる食品を摂ると良いでしょう。カリウムが含まれている食品は、ひじき、わかめ、ホウレンソウ、アボカド、納豆などです。
また、大豆やごぼうなどに含まれる「サポニン」という成分にも、余分な塩分を体外へ排出する働きがあります。
むくみがひどいときは、カリウムやサポニンが含まれている食品を食べるようにすると良いですよ。
寝るときに足を高くする
横になるとき、クッションや丸めたタオルなどに足を乗せると血流が良くなるため、むくみが改善されることがあります。このとき、足が心臓の高さより上になるよう、床から10~15cmほど上げるようにします。
足を高くして寝ると、むくみの改善のほか、血流が良くなり足の疲れやだるさの解消効果も期待できます。疲れが取れることでよく眠れるようになりますから、産後の疲れがたまっているママにおすすめですよ。
足湯をして血行を良くする
むくみの原因に、血行不良があります。授乳で長時間同じ姿勢でいることや、産後の骨盤の歪みなどで筋肉が硬くなると、血の巡りが悪くなります。
血の巡りが悪くなると体内の老廃物や余分な水分が体外へ排出されにくくなってしまうため、むくみを引き起こしことになるのです。
産後のむくみを防ぐためには、「足湯」がおすすめです。足湯なら、赤ちゃんが寝ているときに簡単にできますし、湯船に浸かることできないママでもできますよ。産後1ヶ月健診で問題がなければ、湯船に浸かることができるようになりますから、それまでは足湯で血行を良くしてむくみを解消してくださいね。
リンパマッサージを行う
リンパマッサージは、むくみの原因であるリンパの滞りを解消し、体内の老廃物を排出することでむくみを解消するのに有効な方法です。
リンパマッサージは、お風呂から上がったときなど、身体が温まっているときに行うとより効果アップが期待できます。
1.足の裏を両手で包み込むように持ち、親指を使って全体を10秒ほど押す。
2.次に、足の甲を両手で持ち、親指で全体をまんべんなく10秒ほど押す。
3.1と2を左右10秒ずつ行う。
4.足の指を付け根から指先まで1本ずつ引っ張るようにマッサージする。各指を秒ずつ行う。
5.足首から膝の裏のリンパ節まで左右の手で交互にさすりながら揉み上げる。左右15秒ずつ行う。
6.太ももの内側を膝から足の付け根まで手で交互にさすりながら揉み上げる。太ももの外側も同様に行う。左右15秒ずつ。
むくみ改善の着圧ソックスを使用する
市販されているむくみを改善する「着圧ソックス」は、履いているだけで血行が良くなるため、育児や家事に忙しいママにおすすめです。
着圧ソックスは、足首・ふくらはぎ・太ももとそれぞれ効果的な圧力でかけてくれます。着圧ソックスには、就寝中に履くものや外に履いて行けるデザインのものなど、様々なものがあります。
目的やむくみが気になる場所に合わせて選ぶと良いですよ。
ストレッチをする
ストレッチは、血流を良くすることができるため、産後のむくみにおすすめです。産後間もないときは、身体に負担がない動きのストレッチを行うようにしましょう。
簡単で産後の身体に負担が少ないストレッチを以下にご紹介します。
1.仰向けに横になり、手足を少し広げて力を抜いて大きく深呼吸する。
2.この状態で頭の上に手を伸ばし、足はかかとを押すように伸ばす。
3.足の下にクッションやバスタオルを折ったものを入れ、足を少し高くして足首をゆっくり上下に動かす。
4.仰向けになり、両手足を天井に向けてあげ、手足をブラブラ振る。
外出できるようになったら散歩する
産後1ヶ月健診で問題がなかったら外出が可能になります。産後は赤ちゃんのお世話があるため、激しい運動はできません。家の中でできる骨盤矯正体操やストレッチなどがおすすめですが、外出できるようになったら赤ちゃんとお散歩してみてはいかがでしょうか。
外に出て少し歩くと運動不足解消になるうえに、日頃のストレスが解消され、気分転換にもなるためおすすめです。
ただし、赤ちゃんとご自身の体調が良いときに無理のない範囲で歩くようにしてくださいね。
産後のむくみは身体を休めることも大切です!
産後のむくみについて解説しましたが、当てはまる原因はありましたか?多くの場合、産後のむくみはマッサージや食事の見直しなどで改善されます。
そして、産後のむくみは身体を労り、休息をとることでおさまっていくものがほとんどです。育児や家事で忙しいところでしょうが、たまにはパパに赤ちゃんのお世話をお願いして、ゆっくり足湯やお散歩などをしてストレス解消することも大切ですよ。