介護福祉士の活躍する場が広がっている!国家資格を取得するための方法やできる医療行為について

高齢化に伴い、介護の場が広がってきています。家族だけで介護をすることが難しくなってきた人へ介護サービスを提供する「介護福祉士」という仕事があります。介護職には色々な種類がある中で、介護福祉士という仕事はどのような仕事をする人なのでしょうか。資格の取得方法、仕事内容について詳しく解説していきます。

介護福祉士の仕事内容や年収は?

介護福祉士は、介護を必要としている人の生活を知識や技術を持ってサポートする仕事です。ホームヘルパーや老人介護施設で働くことが多く、主に食事や入浴、排泄の介護などの日常生活のサポートを行ないます。また、介護をしている家族の相談に乗ったり、アドバイスをしたりすることもあります。介護福祉士の業務は大きく分けて4つあります。

介護福祉士の仕事内容

  • 身体の介護
  • 利用者によって身体のどこが不自由なのか異なります。相手がどのようなことを望んでいるかを理解し、考えながら介護をします。食事、入浴、排泄などの生活のサポートの他に、ベッドから車椅子へ移動する時や歩行の補助をします。

  • 生活の援助
  • 介護を必要とする人の生活援助をするのも介護福祉士の大切な仕事です。食事や洗濯、掃除、日々の買い物などをします。利用者の方と一緒にやりながら補佐をする場合と、代わりにほとんどをやる場合と、どこまでサポートするか人によって変わります。

    利用者によって家事の手順や方法が違いますので、よく話を聞いて利用者が気持ちよく生活できるようにするのは大切なことです。

  • 相談・アドバイス
  • 介護を受ける方のご家族の相談に乗ることも大事な仕事です。介護福祉士が持っている知識はこのような時に発揮されます。ご家族は介護について悩んでいる場合が多いため、介護福祉士が相談に乗ってアドバイスすることで、気持ち的にも救われることがあります。

    介護職についてや身体の支え方など、実際に見ていただいて教えることもあります。介護をするご家族の悩みや気持ちに寄り添うのも介護福祉士の仕事です。

  • 社会活動支援
  • 要介護者は自分から外へ出て行くのが難しく孤立しがちです。そうならないように地域の人達と交流できる、サークル活動への参加をサポートする仕事もあります。外出が困難な方には外出支援を行ないます。こうした支援が利用者の生活の張り合いになり、生きがいになることがあります。

介護福祉士の年収・休日

  • 介護福祉士の給料
  • 介護福祉士の給料は、事業所や雇用形態、役職によって異なりますが、正規雇用の介護福祉士の平均月収は15~17万円程度で、年収は250~400万円程です。施設で働く場合は夜勤があり、日曜や祝日出勤の当番もあります。

    心身ともに大変な仕事であるにも関わらず、他の業種と比べて高い給料であるとは言い難いのが現実です。この給料に資格手当が付く場合や、休日手当や夜勤手当がついてくるので、手取りは16~18万円ほどが平均になります。

    給料は特別にいいわけではありませんが、介護の業界は人手不足のため、転職する際に比較的すぐに就職先が見つかるという利点があります。経験者であれば教育の必要がほとんどなくすぐに戦力になってもらえるため、採用してもらえる確立は高くなります。パートタイマー・アルバイトの募集も多くあるため、正社員でなく扶養範囲で働きたい主婦などには都合がいい時間を選べます。

  • 介護福祉士の勤務時間
  • 介護施設などでは介護を必要とする人のために、24時間体制で介護福祉士が常勤しています。そのため、日勤と夜勤のシフト制勤務が一般的で、土日祝日もシフト制で勤務します。日勤の場合は、朝から夕方までの勤務をします。朝出勤して、夜勤の人からの引き継ぎを受けて勤務スタートです。夜勤の場合は、夕方から勤務スタートで朝までの勤務となります。日勤の人との連携を上手く取って仕事をします。介護の他に事務作業も多く、時には残業をすることもあります。

    在宅介護をする仕事の場合(訪問介護やデイサービス)夜勤はなく、日勤の仕事になります。デイサービスは利用者の方の家に車で迎えに行ったり、施設内では入浴介護をしたりします。

    ヘルパーの場合は朝から夕方まで、何件か回ることもあります。お宅にお邪魔するので、夜中までというわけにはいかないため、基本的には夕方までの勤務です。

  • 介護福祉士の休日
  • 介護を必要とする人は土日祝日関係ないため、介護福祉士の休みはシフト制でスタッフが順番で休みを取る所がほとんどです。勤務先によって、夏季休暇などを長めに取れるというところもありますが、人手不足の職場ではそれも難しいようです。

介護福祉士に向いている人

  • 人と接することが好き
  • 介護福祉士の仕事は常に人と接する仕事です。人と接することが苦手という人には難しいかもしれません。介護を要する人の中には、認知症のために怒りっぽくなる人もいます。時には怒鳴られたりすることもあり、人と接することが好きでも辛く感じることは多々あります。

    そうなった時に、一人でいろいろ溜め込んでストレスを抱えてしまうようなタイプの人だと参ってしまうことがあります。上手にストレスを発散させることができ、気持ちの切り替えができる人は介護福祉士に向いているといえるでしょう。

  • 思いやりが持てる
  • 介護福祉士の仕事で大事なのは、相手がどのような気持ちでどうしてほしいかを汲み取ることができるということです。人の話に耳を傾けて思いやりを持って接することができる人は介護の仕事に向いているといえます。

    また、介護をする場合に大切なことは忍耐力です。介護を受ける人とのコミュニケーションや動作はゆっくりであったり、言葉が聞き取れなかったり要領を得ない場合もあります。それを忍耐強く待つことや、聞くことが必要なのです。

  • 体力に自信がある
  • 介護には体力が必要です。ベッドの上での体位変換や入浴の際にも人を抱えます。一日に何人もの介護をする場合は体力を消耗します。腰や身体全体に負担がかかるため心身ともに丈夫な人、体力がある人でないと厳しい仕事です。

介護福祉士のやりがい

  • 人を支えることができる
  • 介護福祉士の仕事は人を介助する仕事です。人の役に立ちたいと考えて介護福祉士になった人は、自分が介助することで誰かが笑顔になったり、元気になる姿を見ることがやりがいに繋がります。

    体力的に大変なこともたくさんありますが、介護にあたった人から「ありがとう」と声をかけていただいたり、自分が役に立ったと感じられることで日々の仕事を頑張れるのです。また、介護を始めたときは元気がなかった方が、介護を通じて外へ出られるようになり、徐々に明るさを取り戻していく姿を見られるのは嬉しいものです。

介護福祉士の大変さ

  • 仕事に見合った給料がもらえない
  • 介護福祉士の仕事は思った以上に大変です。しかし、日々の仕事の中でやりがいを見つけたり、楽しいと感じられたりすることもあります。大変さに見合った給料がもらえればいいのですが、手当などをもらったとしても一人暮らしの人にとっては厳しい額です。

    男性などは介護福祉士だけの給料では家族を養えないと、ダブルワークをしたり転職をする人もいます。管理職になれば給料は上がりますが、そのためには長い期間をかけて勉強をしたり、研修に参加しないとなりません。

  • 生活が不規則
  • 施設によっては24時間体制で業務があります。早番と遅番をスタッフみんなで順番にこなしていかなければならず、生活は不規則になります。仮眠が取れるとはいえ、夜勤をしていたら疲れが取れるほどの睡眠が取れるはずもなく、体調を崩してしまう人もいます。

    また、介護を必要としている人のために土日祝日も交代で仕事をしなければなりません。休みはシフト制で希望を出すこともできますが、土日出勤になることも多いのが現状です。デイサービスや訪問看護の場合は朝から夕方までの勤務ですが、デイサービスの場合は朝早く利用者の方を迎えに行くことがあるので、早朝出勤する場合があります。

介護福祉士の国家資格を取得する方法

指定養成施設を卒業する

  • 福祉系の学部がある4年生大学
  • 介護福祉士を養成する4年制の大学で福祉や介護福祉学をしっかり学ぶ方法があります。4年制の大学の特徴として、介護福祉士の養成過程を学びながら幅広い知識を学べるという点があります。

    4年生大学ではゼミに入り、卒業論文を完成させるために一つのテーマを深く掘り下げます。そして、中には介護福祉士養成施設として指定されている大学があり、そこで学ぶと同時に「社会福祉士」の勉強ができるため、卒業後の進路の幅が広がります。

  • 福祉系の学部がある短期大学
  • 福祉系の短期大学では養成期間は2年です。内容が学校により異なりますが、短期大学の特徴は介護や福祉以外の教養科目が学べるという点です。短期大学は専門学校に比べると、図書館や体育館などの施設が充実しているという面もあります。夏休みに実習があるなど、現場を経験できる学校が多いのも特徴の一つです。

  • 福祉系の専門学校
  • 福祉系の専門学校はだいたいが2年制です。短期大学と異なる点は、中には教養科目を除いて介護や福祉に力を入れて学ぶという学校もあるところです。大学や短期大学に比べて、現場で役立つ内容を集中的に学びます。

3年以上の実務経験を経て国家試験を受ける

介護福祉士の国家試験を受けるための受験資格を得るには、大学や専門学校へ行かず高校を卒業してから「実務経験を3年以上積む」ことと、「福祉系高校を卒業する」方法があります。

  • 高校を卒業してから3年以上の実務経験を積んだ場合の国家試験(以下のどれかを選ぶ)
  1. 筆記試験・実務試験を受験
  2. 介護技術講習を受けて筆記試験を受験する(実技試験は免除される)
  3. 実務者研修を受けて筆記試験を受験する(実技試験は免除される)

福祉系の高校を卒業して国家試験を受ける

  • 福祉系の高校を卒業した場合の国家試験
  1. 平成20年度以前の入学者は、筆記試験・実技試験を受験する
  2. 平成21年度以降の入学者は、筆記試験を受験する(実技試験は免除される)
  3. 特例高校等の平成21度以降の入学者は、実務経験を9ヶ月以上積んだ上で筆記試験と実技試験を受験する。または介護技術講習を受けて筆記試験を受験する(実技試験は免除される)

知っておきたい国家試験の詳細

介護福祉士とは、名称独占資格です。介護の仕事をする人のことを「ホームペルパー」や「ケアワーカー」などと呼ぶこともありますが、介護福祉士の場合は資格取得者しかこの名称を使用することができません。

介護をする仕事に「ホームヘルパー」がありますが、この資格は公的認定資格です。これに対して介護福祉士は国家資格です。介護福祉士の試験のほうが難しく、資格試験を取得するためにも特別な勉強が必要なため、年数を要します。試験の受験資格を取るために何年もの勉強をするため、それだけ知識も広く深いので就職や給料の面ではホームヘルパーよりも優遇される事が多いのです。

介護福祉士国家試験の合格率

第29回介護福祉士国家試験の合格率は72.1%で、その前年に行なった試験の合格率が57.9%でしたので、その年によって合格率はだいぶ変わります。試験は筆記試験と実技試験の2通りがありますが、合格基準は両方共問題の総得点の60%程度が基準になっています。筆記試験は試験科目が10科目あって全て60%正解でないといけません。

介護福祉士国家試験受験料

介護福祉士の国家試験は1年に一回あり、筆記試験と実技試験は違う日にあります。試験勉強は早めに始めることをおすすめします。介護福祉士の国家試験対策の問題集が秋頃に発売になるので、購入して使って勉強しておきましょう。試験の受験料は年によって変わりますので、申込の時に確認しましょう。

申込については公益財団法人 社会福祉振興・試験センターから

介護福祉士国家試験の変更点

今まで、厚生労働省指定の介護福祉養成施設(大学や専門学校)を卒業した人には、国家試験を受けなくても介護福祉士の国家資格が与えられました。しかし、2022年からはこの制度がなくなり、介護施設養成施設卒業者でも国家試験を受験しなければならなくなるという見通しになっています。これに伴い、移行期間である2017年度から2021年度までの卒業生も卒業時に国家試験の受験資格が与えられるようになりました。

しかし、この時期の人達は国家試験を受けなくても、受けて不合格であっても卒業後の5年間は介護福祉士として認定されます。この5年の間に国家試験に合格するか、続けて介護の仕事をしていれば6年目以降も介護福祉士として働けます。

また、高校を卒業して3年以上実務経験を積んだ場合、以下のうちいずれかを選ぶことができていました。

  1. 筆記試験・実務試験を受験
  2. 介護技術講習を受けて筆記試験を受験する(実技試験は免除される)
  3. 実務者研修を受けて筆記試験を受験する(実技試験は免除される)

しかし、社会福祉士及び介護福祉法の改正で平成28年度第29回介護福祉士国家試験から、受験資格が「実務経験が3年以上である」に加えて「事務武者研修修了者」に変更となりました。

介護福祉士と医療ケア

介護福祉士がどこまで医療行為をしていいかということですが、都道府県が行う研修を受けて医師や看護師との連携を取りご家族の同意があればできる医療行為が増えました。

介護福祉士ができる医療行為

  • 腋下、外耳道で体温を測定する
  • 新生児以外で入院を必要としない者に対し、動脈血酸素飽和度を測定するためのパルスオキシメーターを装着する
  • 自動血圧測定器での血圧測定
  • 軽微な傷(切り傷ややけど傷等)のカーゼ交換
  • 専門的な管理が必要でない場合の爪切りなどの爪の手入れ
  • 重度な歯周病などがない場合の口腔手入れ
  • 耳垢の除去
  • 市販の浣腸器を用いての浣腸
  • 自己導尿の補助
  • 経鼻経管栄養(2016年1月以降の介護福祉士国家試験合格者)
  • 喀痰吸引(2016年1月以降の介護福祉士国家試験合格者)
  • ストマ装置のパウチにたまった排泄物の処理

介護福祉士がやってはいけない医療行為

  • 摘便
  • 胃ろうの処置
  • 血糖値の測定
  • インシュリン注射
  • 血圧測定
  • 吸入の処置
  • 点滴の管理
  • 褥瘡部位での軟膏の塗布等

介護福祉士の将来性

近年日本では高齢化が進み、家の中だけでの介護が難しくなってきています。2000年の介護保険制度により多くの民間事業者が介護サービスを提供しています。こうした中で介護福祉士のが活躍する場は多くなり、広がってきています。介護の仕事の中に「看護」が必要となってきていることから、介護福祉士の教育を見直しカリキュラムの変更が行われています。

これから介護の場が多くなっていく一方で、介護の現場で働く人は常に足らないという状況です。今後、介護福祉士がどこまでの医療行為をしていくかも課題になってくるのではないでしょうか。

参考元:社会福祉法人 全国社会福祉協議会

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