労働基準法は働く者を守る法律!詳細内容をしっかりと理解して損のない働き方をしよう

労働基準法は働く者を守ってくれる法律です。しかし、労働基準法について知っている人はそう多くはないのではないでしょうか。知らずに働いていることで実は損をしていたということもあるのです。会社の規則ではなく法律で決まっている休暇など、労働者の権利として存在する休暇などもあります。ぜひ、この機会に労働基準法について学んでみましょう。

労働者の権利を守る労働基準法

労働基準法とは

1947年に制定された労働基準法は、使用者と労働者が結ぶ労働条件の最低基準を定めた法律です。そしてこの法律は、何度か改正されています。この労働基準法とは、労働者の保護を目的とした法律で労働条件の最低基準を定めています。会社はこの基準を守る必要があり、会社と労働者の間で締結された労働条件が最低基準に反し、最低条件を下回っている場合は全て無効になります。

そして、この労働条件の最低基準は日本の国内にある事業に適用されます。国籍も職種も問わないため、日本で外国籍の人が店を経営する場合でもその店の労働者に適用されます。

労働基準法改正について

  • 改正案概要

    労働基準法は幾度となく改正を繰り返してきていますが、2016年の臨時国会でも改正されることが予想されていました。その改正の中身は以下の通りです。

中小企業でも月に60時間超の残業は賃金割増50%以上に

平成年4月に施行された規定で、月の時間外労働が60時間を超える場合は50%以上の割増賃金を支払うこととなっていますが、中小企業ではこの適用に猶予措置が取られていました。この猶予が改正により終わることとなったのです。

長時間労働に対する助言指導強化

労働者の健康が確保されるように配慮するため、長時間労働に対しての助言指導を強化していく。

有給休暇取得の促進

労働者に付与された有給休暇が10日以上ある場合、そのうちの5日を会社が付与1年以内に時季を決めて強制的に取得させるというものです。ただし、労働者から時季を指定した場合や有給休暇の計画的付与を行っている場合は対象外となります。この改正案では1年の有給休暇が10日以上の人を対象としているので、10日よりも少ない場合は対象になりません。

フレックスタイム制の見直し

フレックスタイムとは、労働者が出退勤の時間を決めて1日8時間で週に40時間の制限を適用して働きます。今の労働基準法のフレックスタイム制では、1ヶ月を最大として、その中で週の労働時間を40時間になるようにし、それを超える場合は時間外手当を支払うというものです。改正案はこの精算期間の上限を、1ヶ月から3ヶ月に延長するというものです。

企画業務型裁量労働制の見直し

企画業務型裁量労働制の対象業務に「課題解決型提案営業」と「企画、立案、調査及び分析を活用し裁量的にPDCAを回す業務」が追加するとともに、対象者の健康を確保措置の充実や手続きの簡素化の見直しを行います。

高度プロフェッショナル制度の創設

職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)の労働者が高度の専門的知識が必要な業務に従事している場合に、健康確保措置を取ります。本人の同意や委員会の決議を得ることを条件として労働時間、休日、深夜の割増賃金などの規定を適用除外とします。また、制度の対象者の在社時間が一定時間を超える場合、事業主はその労働者に必ず医師による面接指導を受けさせなければなりません。

労働時間の改善取り組みを促進

企業単位での労働時間等の設定改善に関しての労使の取り組みを促進するために、企業全体を通じて設置する労働時間等設定改善企業委員会の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えられるようになります。

労働基準法改正見送りについて

これらの労働基準法改正案については、労働組合の全国組織・連合は合意を見送る方針だということを決めました。政府は改正案を成立したいが、野党などが反対しているということです。

労働時間の決まり

法定労働時間

使用者は労働者に、休憩時間を除いて1日に8時間、1週間に40時間以上超える労働をさせてはいけません。
労働基準法では、この法定労働時間を超えて労働させた場合、罰則があります。

もし、労働者に法定労働時間を超えて労働させる場合は、労働基準監督署に届け出をして(時間外、休日労働に関する協定:いわゆる36協定)法律で決められた割増賃金を支払う必要があります。

所定労働時間

所定労働時間は、法定労働時間内の範囲で労働者に設定する、雇用契約で決められた労働者が働く時間のことです。例えば、9時から18時まで働き、その間に休憩1時間を取るというように会社が定めた労働時間で、この場合の所定労働時間は8時間になります。所定労働時間は法定労働時間内で定めればいいので、労働者によって所定労働時間が違っても問題はありません。8時間を超えなければ7時間でも6時間でもいいのです。

休憩時間

雇用主は、労働者に休憩時間を与えなければならない義務があります。労働時間が6時間を超え、8時間以内の場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩時間を取らなければいけません。休憩時間は「労働から離れることを保障された自由な時間」です。

そのため、休憩時間は自由に外へ出ることができます。もしも、お客様が来社する予定があるので社内で休憩して欲しいと言われた場合、これは休憩時間にはなりません。お客様が来たら対応しなければならないので、手待ち時間として労働とみなされ、休憩時間は他に取らせる必要があります。

休日

労働基準法では、休日は1週間に最低1日以上設けなければいけません。または、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。休日には「法定休日」と「法定外休日」があります。法定休日とは、労働基準法で決められた最低限労働者に与えなければならない休日のことです。

もしも、法定休日に労働者が出勤する場合は、会社と労働者の協議によって決められる労使協定(36協定)によって契約を取り交わし、会社が勝手に決めることはできません。また、法定休日に出勤した場合は、35%の割増賃金を支払い、休日出勤の代わりに代休を与えなければなりません。休日とは丸1日、仕事に関わらないこととなるため、家に居て連絡が来るかもしれない状態では休日とはいいません。

時間外労働

時間外労働とは、法定労働時間外に労働をしていることで「残業」のことをいいます。給料が固定給だった場合は時間外の労働について、通常の25%の割増賃金を支払うことが決められています。
休日出勤の時に時間外労働した場合は、休日出勤の割増賃金と合わせて加算されます。

参考元:厚生労働省

休暇の種類について

年次有給休暇

年次有給休暇は会社が制定した休みのことではなく、労働基準法で制定された労働者の権利です。一定期間勤続した労働者に「心身の疲労を秋服してゆとりある生活を補償するために付与された休みのこと」で名前の通り、「有給」で休める休暇のことです。

働き始めてから6ヶ月経過し、その期間の8割以上を出勤していれば1年に10日の有給休暇が付与されます。また、1年経過した日に同じようにその1年の全労働日の8割を出勤していた場合は、1日増えて11日の有給休暇が付与されることになります。

産前産後休暇

出産を控えた女性、または産後の女性は事業主に申請することで休みが取れます。産前休業は、出産予定日の6週間前から請求することで取得できます。産前休業は本人からの申請がなければ取得できないので、本人が出産間際まで働きたいと願えば働くことができます。

産後休暇については、出産した翌日から8週間は働けません。本人が出産してすぐに働きたいとしても、事業主はこの期間に女性を働かせることはできません。ただし、産後6週間過ぎてから本人が働くことを希望し、医師が認めた場合は働くことができます。

育児休業

育児休業とは育児・介護休業法に基づき、子どもを養育する労働者が取得することができる休業のことをいいます。この育児休業は、法律で決められているので条件を満たしていて、申し出れば取得することができます。育児休業は子ども一人につき1回取得できます。条件は以下の通りです。

  • 同一事業主のもとで1年以上働いている
  • 子どもが1歳の誕生日以降も雇用されることが見込まれる
  • 期間雇用の場合、子どもが2歳になるまでの契約期間があること
  • 1週間のうち3日以上勤務していること

その他に知っておきたい労働基準法のポイント

労働条件の明示

雇用主が労働者を採用するときは、労働条件(雇用契約の期間、勤務地、仕事内容、労働時間、休憩時間、給料の額など)を書面で明示しなければなりません。もしも明示された労働条件が事実と異なった場合は、労働者はすぐに労働契約を解除することができます。

解雇の予告

労働基準法では、労働者が仕事が原因のケガや病気で会社を休んでいる期間・その後の30日間は解雇してはいけないと定めています。また、産前産後の休業をとっている労働者に関しても同じで、その期間とその後の30日間は解雇できません。

事業主が労働者に対して解雇をするときは、30日以上前に解雇を予告しなければなりません。または、平均賃金を支払った分だけ予告の日を短縮することができます。10日前に解雇の予告をするとしたら、20日分の平均賃金を払うのです。

賃金の支払い

賃金とは、給料、賞与、手当などの労働の対価として支払われているものを言います。賃金は最低賃金を下回らないよう、毎月1回決められた日に支払わなければなりません。もしも労働者、または労働者の収入で生活していた人が、病気や災害などの非常事態のため賃金が必要になった場合は、給与の支払日前でもそれまでに勤務した分の賃金を支払う必要があります。そして会社の都合で仕事を休ませた場合は賃金の60%を支払わないとなりません。

就業規則

10人以上の従業員を雇っている場合、会社は就業規則を作り労働基準監督署に届出ないとなりません。この就業規則は、労働基準法や労働規約に違反していないもので、必ず労働時間や賃金、退職に関することを記載することが定められています。

この就業規則を作成、変更をする際は従業員の代表に意見を聴くことが義務付けられていて、就業規則の届出の時には意見書を添付しなければなりません。そして会社は社員に対し、労働基準法や就業規則、労使協定について広く知らせなければなりません。

年少者の労働

中学生を労働させてはいけませんが、健康と福祉に関して有害ではなく労働が軽易な場合は、労働基準監督署の許可があれば修学時間外に使用することが認められています。また、演劇や映画の仕事には13歳以下の児童を使うことができます。

証明書

満18歳未満の年少者を働かせる場合は年少者の年齢証明書を、満13歳以上満15歳未満の児童を働かせる場合には勉強に差し支えないという証明書を学校長から貰う必要があります。それとともに、親権者の同意書も事業所に備え付けることが義務となっています。

未成年者の労働契約・労働契約の解除

親が未成年者に代わって労働契約を結ぶことは禁じられています。また、未成年者にとって不利な状況である場合は、雇用契約の解除を親や労働基準監督署が行うことができます。

年少者の深夜労働

午後10時から午前5時までの時間帯は、18歳未満の者を働かせてはいけません。ただし、16歳以上の男性の場合は交代制で働かせることについては認められています。

年少者の業務制限

満18歳未満の年少者を、鉱山などの坑内労働をさせることは禁じられています。また、危険な業務や重量物・毒劇物を取り扱う仕事や有毒ガス発散場所、高温の場所での仕事をさせることは禁じられています。

帰郷旅費の負担

18歳未満の年少者を解雇し、解雇から14日以内にその年少者が帰郷する時には会社に旅費を請求することができます。ただし、労働基準監督署からの認定を受けた場合は負担はしなくてもよいとなっています。

アルバイトでも労働基準法は適用します

労働基準法と聞くと、正社員ではないと適用しないのではないかと勘違いしている人は多いと思います。有給休暇というものがあるのは知っているが、アルバイトの自分には適用しない、関係がないものだと思っている人は取得することができるのに損をしているのです。

雇用形態に関わらず、給料をもらって働く人は法律のことを勉強しておくのが大切なのではないでしょうか。また、就業規則の項でも延べたように会社側も労働者に対して、就業規則や労働基準法について指導する義務があるのです。

参考元:労働基準法の労働時間

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