雇用保険って毎月の給与から天引きされてる?その給付の種類と手続きの仕方について

社会保険や雇用保険、厚生年金などなど…働いていると、聞いたことはあるけれど、深くは知らない保険の種類を耳にすることがあります。給料明細を見た時に雇用保険というものが引かれているけど、どういう保険のことを言うのだろうか?など、実はあまり知らないでいることが多いのではないでしょうか。ここではそんな人に分かりやすく、雇用保険に焦点を当てて解説したいと思います。

雇用保険とはどんなもの?

雇用保険の内容

雇用保険とは、労働者が何らかの理由で職を失った時に、再就職までの生活を安定させて就職活動を行えるように支援する制度です。雇用主は従業員を一人でも雇ったら、従業員を雇用保険に加入させる義務があります。つまり、人を雇っている会社は全て、雇用保険の適用事業所となるのです。雇用保険は社会保険の中に含まれます。

社会保険とは、日本の社会保障制度の一つです。国民の生活を病気やケガ、事故や失業、老後に備え設けられました。社会保険には「健康保険」「年金保険」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」の5つがあり、労災保険と雇用保険を合わせて「労働保険」と呼びます。

保険料の支払い・保険料率

  • 雇用保険の支払い
  • 雇用保険の保険料は、会社と労働者が折半して支払います。保険料は労働者の毎月の給与から引かれ、会社分と合わせて納付します。支払いは原則として1年に1度、前年分をまとめて申告・納付することになっています。この場合、労災保険と合わせて支払いますが、労災保険は全額会社が負担し、労働者は保険料を負担しません。

  • 保険料率
  • 雇用保険料率は、会社と労働者が費用を半分ずつ負担する失業等給付の利率に、会社が負担する雇用保険二事業の料率を加え、計算されます。平成29年度の保険料率は以下を参考にしてください。

⇒厚生労働省:雇用保険料率

雇用保険の加入条件

  • 雇用保険に年齢制限はあるのか
  • これまで、雇用保険の加入については年齢制限がありました。なぜなら、65歳からは年金の受給が始まる年齢であるため、労働者ではないとみなされていたのです。実際に年金を受給しているかいないかに関わらず、65歳以上の人は雇用保険での保護の対象ではないと判断されていました。しかし、平成29年1月1日以降、新たに65歳以上の労働者を雇用した場合、雇用保険の対象となることが決まりました。

    参考元:厚生労働省

  • パートタイマー・アルバイトの加入
  • 正社員は無条件に雇用保険への加入が義務となっていますが、パートタイマー・アルバイトなどの非正規雇用労働者でも一定の基準を満たしている場合は、雇用保険へ加入しなければなりません。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上である
  2. この場合は契約書上で、1週間に20時間以上働く場合に適用します。もしも何かの理由で20時間に満たない週があっても、ほとんどの週は20時間以上であれば雇用保険に加入となります。

  3. 雇用契約期間が31日以上である
  4. 雇用期間が31日以上であることが条件となります。契約で、はじめは31日以内だったのが、途中で31日以上に変更になった場合でも、31日以上と決まった時点で雇用の条件に当てはまります。

  5. 雇用保険の適用事業所に雇用されていること
  6. 雇用保険は労働者を1名でも雇っていたら加入しなければなりませんが、例外があります。「労働者が常時5名未満の農林水産事業」については雇用保険が任意になります。

雇用保険被保険証とは

雇用保険被保険証とは、厚生労働省が発行している雇用保険に加入しているという証明です。1人1枚のみの発行で、一人ずつ違う被保険者番号が記載されており、その人の専用の番号になります。この雇用保険被保険証は、通常働いている時は会社で保管されていて、退職すると本人に戻されます。

雇用保険被保険証は、ハローワークで失業保険の手続きをするときに必要な書類です。退職しても同じものを使うので、紛失しないように注意しましょう。転職した際は、年金手帳と一緒に新しい会社へ提出すると会社が年金と雇用保険の手続きをしてくれます。

雇用保険被保険者資格取得届とは

雇用主は労働者を雇ったら、翌月の10日までに管轄のハローワークまで「雇用保険被保険者資格取得届」という書類を提出しなければなりません。この書類は労働者が雇用保険に加入するときに必要です。

雇用保険資格喪失届

  • 労働者が離職または死亡した場合の手続き
  • 労働者が退職した、または死亡した場合に雇用保険から脱退するための手続きをしなければなりません。その時に必要になるのが「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」です。提出先はハローワークに出向くか郵送、またはオンラインによる届出もできます。

    提出期限は退職日の翌日から10日以内です。「雇用保険被保険者離職証明書」は、退職した人が失業手当を受け取る際に必要な書類なので、早めに手続きを済ませるようにしなければいけません。

雇用保険の給付

雇用保険は離職した人の再就職を支援し、雇用を促進するのが目的であるため、再就職の意思がなければ給付されない仕組みになっています。雇用保険でもらえる給付は4種類あります。

求職者給付

  • 基本手当
  • 再就職のための支援、雇用の促進のために失業した人に支給される手当です。

  • 技能習得手当
  • 公共職業訓練を受ける人に支給される手当のことです。

  • 寄宿手当
  • 公共職業訓練を受けるために扶養家族と離れ、別居して訓練を受ける人に支給されます。

  • 傷病手当
  • 受給資格者が離職してからハローワークに行き求職の申し込みをした後、15日以上続けて傷病のために職業に就けない場合に支給されます。傷病のために求職活動ができない人の生活を安定させるためです。

就職促進給付

この給付は求職活動中の人や再就職した労働者を支援するためのものです。

  • 再就職手当
  • 基本手当の受給者が安定した職業に就いた場合に、基本手当の支給残日数に応じて支給されます。一定の要件があるため、当てはまらない場合は支給されません。

  • 就業促進定着手当
  • 再就職手当を受けた人が引き続いてその職場に6ヶ月以上雇用され、そこで支払われた賃金の1日分が離職前の賃金に比べて低下している時に「就業促進定着手当」の給付を受けられます。

  • 業手当
  • 基本手当の受給資格者が再就職手当の支給対象以外の常用雇用等以外の形態で仕事に就いた場合に、一定の要件に該当する場合に支給があります。

  • 常用就職支度手当
  • 高年齢であったり障害などのため、就職が困難である人が職に就いた場合に一定の要件に該当すると支給があります。

  • 移転費
  • 就職や公共職業訓練のために住居を移転する必要がある場合に支給されます。

  • 広域就職活動費
  • 基本手当の受給資格者がハローワークの紹介で広範囲の地域を訪問して就職活動を行わなければならない時に、交通費お呼び宿泊費が支給されます。

ハローワーク 手当支給についての規定

教育訓練給付

労働者のキャリア形成のための教育訓練を支援するための給付です。教育訓練受講費の一部を支給し、雇用の安定と再就職の促進を目的としています。

雇用継続給付

雇用継続給付とは、雇用の継続が困難なことが起きた時、雇用を継続させるため労働者を支援するための給付です。

  • 高齢者雇用継続給付
  • この給付は、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上である60歳以上65歳未満の一般被保険者が、60歳以降の賃金が60歳の時に比べ、75%未満になった場合にその賃金減を補うために給付されます。

  • 育児休業給付
  • 育児休業給付とは被保険者が満1歳または1歳2ヶ月未満の子どもを養育するために、育児休業を取得する場合に支援する給付金です。

  • 介護休業給付
  • 家族を介護するために仕事を休んだ被保険者へ支援する給付です。

雇用保険給付の手続き

雇用保険給付手続きに必要なもの

雇用保険の給付には以下の書類が必要です。

  • 雇用保険被保険者離職票:退職した時に会社からもらう必要があります
  • 個人番号確認書類:マイナンバーカード、通知カード、個人番号が記載されている住民票か住民票記載事項証明書のいずれか
  • 運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書、写真付きの資格証明書など
  • 上記のものが無かった場合は公的医療保険の被保険者証、児童手当扶養手当証書などのうち2種類
  • 写真2枚(正面を向いている上半身のもの)
  • 印鑑
  • 本人名義の銀行かゆうちょの預金通帳かキャッシュカード

雇用保険給付の手順

  • 受給資格の決定
  • 必要な物を持参してハローワークへ行きます。その日に受給資格があるかどうかを判断されます。資格があった場合は「雇用保険受給資格者のしおり」が渡され、受給説明会の日時が知らされます。

  • 初回説明会
  • 指定された日時の説明会には必ず出席しなければなりません。印鑑と筆記用具、雇用保険受給資格者のしおりを持参し、説明会の内容をしっかり理解しましょう。当日、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が渡されます。そして第1回目の「失業認定日」の日程を知らされます。

  • 失業認定日
  • 基本手当の支給を受けるためには原則として4週に1度、失業認定を受ける必要があります。これは、失業状態にあることの確認のためです。指定された日時に管轄のハローワークへ行って、就職活動の内容を「失業認定申告書」に記入し「雇用保険受給資格証」とともに提出します。認定日から次の認定日まで、最低2回以上の求職活動をしていることが必要です。自己都合での退職の場合、待機期間満了後の3ヶ月は基本手当が支給されませんが、この期間とその直後の期間は3回以上の求職活動実績が必要です。

  • 受給
  • 失業認定日から通常5営業日に指定した口座に基本手当が振り込まれます。再就職まで求職活動をし、決まらなかったら認定日にハローワークへ行きます。基本手当を受けられる期間は離職の翌日から1年間です。受給日数は退職理由や雇用保険に加入していた年数、年齢によって異なります。

退職理由で給付時期が変わる?

雇用保険の目的は、やむを得ない理由で失業してしまった労働者を再就職するまで支援するというものです。そのため、退職理由によって基本手当の給付期間や時期が変わってきます。退職理由には大きく分けて2つの理由があります。自分の都合で退職する「自己退職」と、会社の都合でやむを得なく退職せざるを得なかった「会社都合退職」です。

  • 自己都合退職
  • 自己退職の場合は、年齢に関係なく給付日数は在職中の雇用保険の加入年数によって決まってきます。ただし、自己退職の場合、3ヶ月の給付制限期間が設けられるので、その期間は受け取ることができません。被保険者期間が1年以上10年未満の場合90日、10年以上20年未満の場合は120日、20年以上の場合は150日の給付日数となります。

  • 会社都合退職
  • 会社の倒産や解雇などの会社都合により離職を余儀なくされた場合、労働者の意思に反して退職せざるを得ないということから自己都合退職とは変わってきます。会社都合退職の場合は、年齢によって支給日数が変わってきます。

    被保険者期間が1年以上5年未満の場合、30歳未満で90日、30~35歳で120日、35歳以上45歳未満で150日、45歳以上60歳未満で180日、60歳以上65歳未満で150日となっています。また、会社都合で退職となった場合は「特定受給資格者」といい、自己都合退職のような3ヶ月の待期期間はありません。

パート・アルバイトでも雇用保険は加入できるの?

フリーター・主婦の場合

雇用保険はパートタイマー・アルバイトで働いている人でも加入できることができます。パートタイマー・アルバイトとして働く人は雇用保険に加入すると「短時間労働被保険者」となります。正社員の場合は「一般被保険者」です。

パートタイマー・アルバイトで働く人が「短時間労働被保険者」として雇用保険の被保険者になる場合は、次の条件を満たしていなければなりません。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満である
  2. 1年以上引き続き雇用される見込みまたは予定がある
  3. 労働条件が雇用契約書か雇用通知に明記されている

なお、週に30時間以上の勤務があって2.3の条件を満たしている場合は、正社員と同じ一般被保険者となります。

学生の場合

学生について、雇用保険に加入が必要なのでしょうか。学校教育法第1条で規定されている「昼間学校へ行っている学生」については、雇用保険上の労働者とは認められないため、雇用保険には加入できません。雇用保険は安定した職に就いている者が対象である一方、学生の本分は学業であるため、学生がアルバイトをした場合は、臨時的な仕事をしているとみなされるのです。

もしもアルバイトを辞めたとしても学生に専念する状態になるわけで、雇用保険法上での労働者として認められません。これは昼間学生についてで、定時制高校や通信制の教育を受けている学生は継続的に雇用されているため、雇用保険の被保険者の要件に当てはまれば雇用保険に加入となります。

ただし、昼間学生でも卒業前に就職をし、卒業後もそのまま同じところで働く予定がある卒業証明書を有している者、休学中の者は被保険者となる場合があります。

雇用保険を正しく知ろう

パートタイマー・アルバイトとして働いていた場合でも、条件によっては雇用保険に加入できます。雇用保険はもしもの時に私達を助けてくれる制度です。再就職するまでの期間、雇用保険に加入していれば安心して求職活動を行うことができるのです。どのような働き方をしていれば雇用保険に加入できるのか、知っておかなければ損をしてしまうことがあるので気を付けましょう。

参考元:厚生労働省
参考元:PM Network

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