公認会計士は企業のドクターといわれているけどどんな仕事?その具体的な業務と税理士との違いについて

公認会計士の仕事は、日本の経済を影で支える監査業務を主に行ないます。そのため活躍する場も多く、不況に左右されない仕事です。また、資格があれば女性でも長く活躍できる場があります。今回は数字の面から支える企業のドクターでもある、公認会計士の仕事内容やキャリアパスについて紹介します。

公認会計士の仕事とは

公認会計士は企業のドクターのような存在です。公認会計士の主な業務には、監査業務と税務業務があります。それ以外にもアドバイザリー業務などを行ないながら、企業が健全な状態で経済活動を行なうサポートをします。

公認会計士の主な仕事内容とは

  • 監査業務
  • 監査業務は、公認会計士の資格を持っている人しか行えない業務です。企業の財務諸表が適正に作成されているかをチェックします。財務諸表とは、企業の財務状況を証明するための書類です。この内容を参考に、投資家はこの企業に投資するかを決め、銀行は融資するかの判断をします。そのため、財務諸表に粉飾決算などの嘘があれば、正しい判断ができません。

    そこで、第三者機関である公認会計士はこの財務諸表は適正に作成されているかチェックし、適正だと判断した場合にお墨付きを与えます。このお墨付きにより、投資家や銀行は安心して企業に投資することができます。このように、公認会計士が行なう監査業務は経済活動がスムーズに行われるために必要な業務です。

  • 税務業務
  • 税務業務とは、税務署に提出する税務書類の作成、節税のアドバイスなどの業務です。税理士の独占業務ですが、公認会計士は税理士としても登録できるため、税務業務も公認会計士の主な業務です。

  • アドバイザリー業務
  • 公認会計士は企業財務のプロです。アドバイザリー業務はこれらの専門知識を使い、企業の抱える課題やニーズに対して解決策を提案、実行していく業務です。監査業務と比べ、さらに幅広い知識だけでなく戦略立案力や論理的思考力など、専門知識以外の様々な能力が要求されます。

  • その他の業務
  • 上記以外にも公認会計士の業務には、株式上場(IPO)を支援する業務や、中央省庁・地方自治体・独立行政法人・学校法人・公益法人等のパブリック・セクターに対する業務、社内の業務を適切に運営管理するためのルールや、環境のことを創る内部統制業務などがあります。

米国公認会計士との違い

日本の公認会計士の資格は、日本の企業(日本で働く外資系企業も含む)のみに通用する資格です。それに比べて米国公認会計士の資格は国際的認知度が高く、オーストラリア、カナダ、メキシコなどでも活かすことができ、シンガポールへのライセンスの転換のハードルも低いです。

また、日本でも米系企業で働く際に有利になることもあります。日本の公認会計士の資格は、合格できる人数を制限していますが、米国公認会計士は難易度は低いため、英語力さえあればそれほど難しい資格ではありません。

日本に比べるとアメリカは、公認会計士の人数が多く競争が激しいです。そのため米国公認会計士の場合は、米国公認会計士資格とは別にロースクールに通い、弁護士資格取得をして税務弁護士として仕事をするなど、他の公認会計士と差別化して活躍する人が多くいます。

将来、海外移住などの考えているのであれば、米国公認会計士取得は転職に有利な可能性が高いです。しかし、日本国内で仕事を続けるのであれば、日本の公認会計士資格だけで十分でしょう。

「税理士」と「公認会計士」の違いが知りたい!

「税理士」になるには、国家資格の税理士試験に合格して関連する分野での年以上の実務経験後、日本税理士連合会に税理士として登録手続きが必要です。また弁護士や、公認会計士でも日本税理士連合会に税理士として登録すれば、税理士の独占業務の税務業務をすることができます。

「税理士」の主な業務は、納税者に代わって税務申告を行う税務代理、税務書類の作成提出の代行、税務に関する相談業務です。税理士は相談者側に立って税務に関する依頼を引き受ける専門家です。

「公認会計士」は、監査業務が主な業務のため中立的な立場で監査業務を行う専門家です。このように「税理士」と「公認会計士」は似ているようで大きく違います。

公認会計士になる方法

公認会計士になるための一般的ルート

公認会計士は、公認会計士試験に合格し、国家資格を取得しなければいけません。公認会計士試験には特に受験資格がないため、誰でも受験することができます。一次、二次試験後実務経験を積み、最後の三次試験に合格して資格を取得できます。そのため、司法試験に続いて難易度の高い国家資格と言われています。

≪公認会計士の関門3つ≫

  1. 公認会計士になる
  2. 毎年行われる一次試験と二次試験に合格することです。二次試験に合格すると公認会計士補になります。公認会計士補なることで公認会計士と名乗ることはできませんが、監査法人などに就職することができます。

  3. 実務経験を積む
  4. 公認会計士補として監査法人など、実務経験を2年以上積みます。

  5. 日本公認会計士協会が行う修了考査(筆記試験)
  6. 修了考査に合格後公認会計士として登録します。そこから公認会計士と名乗って仕事をすることができます。

公認会計士資格試験について

このように公認会計士の資格は試験でなく実務経験も必要な資格です。次は具体的な試験の内容などについて見ていきましょう。

  • 試験の難易度や合格率
  • 公認会計士の資格は司法試験に続いで難しい国家資格です。過去5年の出願者数や合格者数は下記の通りです。

    ■H27年 出願者数:10180名、合格者数:1051名、合格率:10.3%
    ■H26年 出願者数:10870名、合格者数:1102名、合格率:10.1%
    ■H25年 出願者数:13324名、合格者数:1178名、合格率: 8.9%
    ■H24年 出願者数:17894名、合格者数:1345名、合格率: 7.5%
    ■H23年 出願者数:23151名、合格者数:1511名、合格率: 6.5%

    ここ最近は出願者数の減少により、合格率が二桁台を推移しています。また合格者数の減少や、世代交代などの理由により2014年くらいから人材不足が続いているため、今が狙い目かしれません。

資格試験の概要

公認会計士試験は短答式試験の一次試験、論文式の二次試験、実務経験後の修了考査に合格しなければいけません。では、次に各試験の内容に関して詳しくみていきましょう。

  • 1次試験の内容
  • 公認会計士になるために必要な専門知識に関して幅広く出題されます。論文試験を受験するにあたり、体系的に知識を習得できているかをテストします。必須科目が「財務関係論」「管理会計論」「監査論」「租税法」「企業法」の5科目です。選択科目が「経営学」「経済学」「民放」「統計学」で、その中から1科目を選択して受験します。

    短答式試験は年に2回あり、どちらかに合格すれば毎年8月にある論文式試験に進むことができます。そのため、短答式試験の合格で受験を免除される期間は2年間です。また科目ごとに合格基準点があります。論文試験を視野に入れて受験計画を作る必要があります。

  • 2次試験の内容
  • 公認会計士としての必要な専門知識を体系的に理解していることを前提に、思考力、判断力、応用能力、論述力があるかを判断するための試験です。論述試験では財務関係論」「管理会計論」は会計学として合わせて出題されます。

  • 3次試験の内容
  • 1次試験と2次試験の合格者は公認会計士補という肩書きで監査法人などに勤務し、一定の実務経験と修了考査に合格して初めて公認会計士として登録できます。この修了考査は3次試験と言われています。こちらの試験は合格率が70~80%と言われているため、きちんと取り組めさえすれば問題ないでしょう。

公認会計士を目指す時に気になること

  • 受験資格や年齢制限
  • 公認会計士試験には、受験資格や年齢制限がないため誰でも受験可能です。高校卒業後受験する方も入れば、財務経理部出身で40代から目指す方もいます。受験者の平均年齢26歳前後、合格者数の平均年齢も同じように26歳前後のため受験生のメインは大学生と若いビジネスマンです。

  • 勉強時間や費用
  • 公認会計士試験は幅広い知識が求められるため、予備校に通いながら勉強する人が多いです。勉強期間はゼロから初めて2年~3年で合格する人が多く、勉強にかかる費用は大手のTACや大原の場合は2年コースで70万円前後です。これ以外にも模試の費用や参考書などの費用が必要です。

  • 働きながらでも勉強は可能か?
  • 公認会計士の最初の関門である筆記試験に合格するまでの標準勉強時間は、3,000時間とも5,000時間とも言われています。短期間で取得できる資格ではないため、多くの受験者が大学や大学院に通いながら、もしくは仕事をしながら夕方以降、時間や週末を勉強時間に当てて試験合格を目指しています。

他の公認会計士との差別化のために持っておくと優位な資格

公認会計士の資格だけでも十分ですが、公認会計士の仕事は意外とどんな仕事しているのかわかりづらいです。そこで公認会計士の業務の中でもこの業務に関して得意であることをアピールし、他の公認会計士と差別化を図るために持っておくと優位な資格を紹介します。

弁護士や不動産鑑定士など、難関資格を複数持っている人材が少ないため、市場価値が上がります。また、個人のお客様を相手にするなら税理士やFPの資格、中小企業を相手にするなら中小企業診断士などを持っていおくと、あなたの得意分野が伝わりやすく他の公認会計士との差別化ができます。

公認会計士のキャリアアップや年収

ファーストキャリアの選び方

公認会計士の業務範囲は監査・税務・アドバイザリー業務・株式公開支援業務など幅広く、公認会計士の知識を生かすことができる業務も幅広くあります。そのため、合格後の選択肢は無限です。資格を取得した時点では、公認会計士としての実務経験がほとんどありません。

公認会計士としてどの業務をメインにしていくかを決めるために、ファーストキャリアは監査法人に就職するといいでしょう。資格取得後、監査法人以外に就職した人は毎年合格者の5%前後いるといわれていますが、その半分の人が再度監査法人に転職しているというデータもあるため、ファーストキャリアはまず監査法人に就職して公認会計士として一人前になることを目指すといいでしょう。

公認会計士の働き方

公認会会計士として一人前になった後には、どんな選択肢があるのか見ていきましょう。

  • 監査法人のパートナーになる
  • 監査法人のパートナーは監査法人の共同経営者です。監査法人は公認会計士が共同で出資した法人のため、役員と株主を兼務してパートナーという立場があります。監査法人では、

    スタッフ(3年程度)

    シニアスタッフ(5年程度)

    マネージャー(5年程度)

    シニアマネージャー(5年程度)

    パートナー

    シニアパートナー

    という過程で昇進していきます。早い人で15年くらいでパートナーになることが可能です。パートナーは共同経営者になるためマネージメントや経営に参画することができます。

  • 独立開業する
  • 独立開業する場合は、監査法人か、会計事務所のどちらかにするか選択します。監査法人は公認会計士が5名以上の在籍が必須条件のため、開業のハードルが高いです。まずは、会計事務所を開業する人が多いです。

    個人の会計事務所の場合は監査法人とは異なり、クライアントは個人事業主が中心のため、税務業務とアドバイザリー業務が主な業務です。そのため監査法人に比べると、監査業務は少ないです。

  • コンサルティングファームに就職する
  • 財務諸表が読める公認会計士は、コンサルティングファームで重宝されます。そのため、セカンドキャリアとしてコンサルティングファームを選択する人も多いです。コンサルティングファームには戦略系、財務専門、事業再生専門、会計やIT専門と様々な分野があります。特に公認会計士の知識や経験を生かすことができるのが会計、財務、事業再生の分野です。

    コンサルティングファームは、トップファームになればなるほどコンサルタント同士の競争が激しいです。生き残るためには公認会計士としての知識や経験だけでなく、戦略立案力・コミュニケーション力・交渉力・プレゼンテーション能力など、様々な能力が求められます。

  • 金融機関に就職する
  • 商業銀行・証券会社・投資銀行・ファンドなどの金融機関でプロとして活躍する道です。金融機関に就職した場合は、企業価値を評価算定するバリュエーション業務や、企業の財務状況を調査するデューデリジェンス業務などの分野で活躍することが可能です。

  • ベンチャー企業に就職する
  • 公認会計士としてベンチャー企業に就職する場合は、IPO(株式公開)業務、ベンチャーキャピタルでの業務などをメインに行います。組織内会計士として働くため最終的な目標は最高財務責任者(CFO)でしょう。

    企業のCFOは、経営戦略の立案・事業計画を達成するための財務戦略・M&A戦略など、多岐に渡る業務の全ての責任を持つ立場です。公認会計士であれば、これの業務に関する知識をすでに持っているため目指すことは可能です。

公認会計士の平均年収や雇用状況

公認会計士の平均年収は、平成27年度厚生労働省賃金統計調査よると926万円です。公認会計士を抱える四大会計事務所や会計事務所の年収は下記の通りです。

  • あずさ監査法人 平均年収800万円
  • 新日本有限責任監査法人 平均年収809万円
  • デロイトトーマツ 平均年収は550万円~1300万円
  • pwc(プライスウォーターハウスクーパース) 平均年収800万円
  • gcaサヴィアン 平均年収1,244万円

一般的に大企業で、都心部の方が年収が高い傾向にあります。また独立開業の場合は、個人の裁量により年収が変わりますが、独立して会計事務所を開いた場合は、成功すれば公認会計士の平均年収としては2,000万ぐらいまで稼ぐことが可能です。

国の施策で2018年までに、公認会計士を3万人まで増やす計画があります。それにより、公認会計士資格取得者同士で競争が激しくなる可能性が高いです。今後は他の公認会計士との差別化を図る必要が出てくるでしょう。

結婚後、育児をしながら働き続けることはできる?

公認会計士の仕事は資格を持っている人しかできない仕事です。資格さえあれば待遇や仕事内容において男女差別されることはなく、また再就職もしやすいです。また、家事や育児と両立するために、会計事務所を開業することも選択肢に入れることができるため、女性にとっては長く仕事ができる仕事です。

公認会計士の仕事の魅力や大変なこと

仕事の魅力ややりがい

  • 多くの企業が健全に活動できるように支えることができる
  • 公認会計士の仕事のメインは監査業務です。企業の財務諸表から企業の財務状況を判断します。公認会計士は財務諸表から赤字であると判断した場合は、その企業の経営状況を健全にするためのアドバイザリー業務を行うこともあります。企業のドクターとして多く企業が健全に活動できるように支えるサポートができます。

  • キャリアの選択肢が幅広い
  • 公認会計士の仕事は、企業活動をしている組織ならどこででも必要になる知識のため、大企業から中小企業や、ベンチャー企業でも仕事をすることができます。また、自分で監査法人や会計事務所を開業することもできます。自分のライフスタイルや働き方に合わせて働く場所や働き方を選択することができるため、キャリアの選択肢が幅広いです。

  • クライアントの反応を身近に感じることができる
  • 監査業務から企業の利益を生み出すことはできませんが、監査の過程で会社のビジネスや管理体制のことを知ることができます。それ以外にも企業の財務状況から適切なアドバイスをすることができます。そのため、アドバイスの結果経営状況が改善すればクライアントから感謝されるでしょう。

公認会計士の仕事の大変なこと

  • 決算期などは激務が強いられる
  • 会計法人の公認会計士は、一人で複数のクライアント企業を抱えます。複数の企業の監査に関する膨大な数の書類をチェックしなければいけません。一つの企業が終われば、次の企業と仕事がつづきます。特に決算期はここに拍車がかかり、激務になるといわれています

  • 常に第三者の立場から独立性を保つ必要がある
  • 監査業務の目的は、第三者機関として企業の財務諸表が適切に作成されているかどうかをチェック、プロとして適切に作成されているか判断し、お墨付きを与える仕事です。そのため監査を行なう企業に対しては、深く入り込まずに中立的な立場を保つ必要があります。

  • 多くのクライアントの経営に関わるため責任が大きい
  • 監査業務から企業のトップクラスしか知らないような情報を知ることになります。その情報に基づいてアドバイザリー業務を行なう場合などは、あなたのアドバイスが企業の命運を握ることもあり、多くの企業の経営に関わるため責任やプレッシャーが大きいです。

公認会計士に求められる適正やスキル

勉強が好きで、学ぶ意欲が高い

公認会計士試験に合格したからといって、そこで勉強が終わりではありません。そこから公認会計士としての勉強が始まるといっても過言ではありません。会計に関することだけでなく、クライアント企業の業界のこと、経営に関するアドバイスをするのであれば、経営に関することなど、常に学び続ける必要があるため、勉強が好きで、学ぶ意欲がある人が向いています。

数字に強くて、細かい作業が得意

公認会計士の仕事は、毎日が数字との戦いです。監査業務は企業が提出して財務資料に目を通し、その数字が正しいかどうか徹底的にチェックしなければいけません。そのため数字に強くて細い作業が得意な人が向いています。

正義感が強く、ダメなことはダメときちんと伝えることができる

監査は、企業が作成した財務書類に誤りがないかどうかを見極める仕事です。場合によっては、企業に対して厳しいことを言うときもあります。この時に毅然として「ダメなものをダメ」と伝えることができる強い正義感が必要です。

激務に耐えることができる体力

監査法人に勤務している場合は、取引先企業を訪問しなければならないため、出張が続くこともあります。このような状況の中で会計士の仕事は、企業が作成した財務書類に誤りがないかどうかを見極めなければなりません。

公認会計士の財務諸表に対する判断によっては、会社の経営を大きな影響を与えるため間違いが許されない仕事です。そのためどんな状況であっても、万全なコンディションで仕事ができるための体力が求めれらます。

企業のドクターとして、日本の経済を守る仕事

公認会計士が監査業務によって企業財務諸表が適切に作成されているかチェックしているため、投資家は安心して投資できます。また、銀行も安心して企業に融資を行なうことができます。企業が資金を調達し、経済活動を行なうには公認会計士の監査業務が欠かせません。

公認会計士は企業のドクターとして企業の健康を守り、日本の経済を守る仕事です。男性と同じように女性にも活躍できる場がある仕事です。もし興味があれば、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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