パワハラとはどんなことをいうの?厚生労働省が掲げる職場でのパワハラ6選と定義を知って対策を取ろう

会社内で上司が部下を叱っているという場面を見たことがあるでしょうか。その場合、聞いている方も「叱られても仕方ないな」と思える場合と、叱り方に違和感を覚えて「言い過ぎじゃない?」と感じる場合がありませんか?もしも言い過ぎだと感じたら、それはパワハラかもしれません。

パワハラとはどんなもの?

パワハラの定義 どんな行動がパワハラというの?

パワハラとは、「パワーハラスメント」の略で、「Power=力」+「harassment(威嚇的な態度)」となります。大抵の場合、「職場で起きる嫌がらせ」として使われます。パワハラは、上司が部下に対して行うというケースを想像しがちですが、同僚同士の場合や部下から上司に対して行われるケースもあります。同じ職場で働く人に対して、業務の適性な範囲を超え、身体的・精神的に苦痛を与えるという行為を「パワハラ」と言います。

パワハラで注意するべきポイント

受け取る側がどう感じるか

パワハラでは、注意すべきポイントがあります。それは、パワハラを受けた側が「不愉快に感じたら」パワハラになるということです。何気なくふざけたつもりで発した言葉が相手をひどく傷つけたとしたら、パワハラ行為となるのです。

子ども同士のいじめでも、いじめる側は「そんなつもりはなかった。冗談のつもりだった。」という場合がありますが、いじめられた側が自分はいじめられていると感じたら、その行為がいじめになるのです。それと同じですね。受け取り方次第で、冗談となるかパワハラとなるかなのです。

被害者・加害者の認識の差

上の項でも述べたように、加害者側にパワハラをしている意識がなくても、やっている行為がパワハラに当たる場合があります。被害者は相手の行為を「相手の性格が怒りっぽい。相手を見下してバカにしているからだ」と思うのに対して、加害者は「相手の仕事に対する意欲の低さや遅さでつい怒鳴ってしまった」「仕事ができないからそれを指摘して、指導しているだけだ」と、お互いに自分は間違っていないと感じているのです。

パワハラとセクハラの違い

パワハラと似たような言葉で「セクハラ」という言葉がありますが、セクハラは「性的な嫌がらせ」をするというものです。また、似た言葉に「モラハラ」がありますが、モラハラとはモラルハラスメントといい、暴力を伴わない言葉や態度で精神的に苦痛を与える嫌がらせをすることです。

これってもしかしてマタハラ?と心当たりのある方はこちらの記事も読んでも見てください!マタハラは女性に対する3大ハラスメントの1つ!実際にあった事例や嫌がらせが起こってしまう原因

厚生労働省が掲げる職場でのパワーハラスメント6類型

身体的な攻撃をする

丸めたポスターなどで頭を叩く、殴る蹴るなどの暴力を受ける。物を投げられる、座っている時に椅子を蹴られたなど、直接的ではない暴力もこれに当たります。

精神的な攻撃をする

必要以上に長時間に渡り叱責する、同僚がいる前に罵倒される、仕事とは直接関係ない言葉で傷つける、しつこく前にあったことを持ち出して責める。

人間関係からの切り離しをする

一人だけ会議に出席させない、会社の忘年会などに呼ばない、部署の皆で会話をしている時にいないものとして扱われる。

過大な要求をする

一人でこなすには多すぎる仕事をやらされる、やり方が分からない仕事を押し付ける、その日に終わらないほどの量の仕事をやるように言われて毎日残業しなければならなくなる。

過小な要求をする

できる仕事をさせてもらえず1日中草むしりをさせられた、故意に簡単な仕事だけをするように言われる。

個の侵害をする

交際している人のことをしつこく聞いてくる、家族の悪口を言う、休日の予定を詳しく言うように迫る、出身校についてなどの情報を無理やり聞こうとする。

パワハラを受けていると感じている人の対策

パワハラを受けていると思ったらここをチェックしよう

自分がパワハラを受けていると感じたら、厚生労働省が作ったチェック表を見てみてください。

⇒厚生労働省「どんなパワハラかチェック

パワハラにあったらどうすればいい?

気持ちを楽にするためにできることをする

パワハラをされている側は、はじめのうちは自分が仕事ができないから言われてるのだろう、仕事ができない自分が悪いのだ、と感じるかもしれません。しかし、だんだんとこれは言い過ぎではないか、でもどうにかして分かってもらいたい。など、相手の理解を得ようと悩むでしょう。

しかし、相手は「上か下か」でしか物事を見ません。何か反論しようとしても余計に怒らせるだけです。歩み寄ろうと努力しても伝わる相手ではないのです。分かり合おうとする努力はやめましょう。

そして、パワハラの被害を軽減させるためには、相手が望む行動をとるといいと言われています。演技でもいいので、言われたことに反論したり言い訳などせず、自分のために言ってくださってありがとうございます、というような態度をとることでパワハラの標的にされなくなるという場合があります。悔しいし、自分に嘘をつくのは本意ではないでしょうが、自分を守るための方法の一つです。

何があったかを記録する

もしも裁判を起こすことになったり、労災申請をすることになった場合に、パワハラを受けていたという証拠があることが重要になります。以下のポイントを抑えて、記録を残して起きましょう。

■パワハラの発言を録音
ワハラの発言をスマホのボイスレコーダー機能を使うなどして録音しておきましょう。言葉遣いや声の大きさ、恫喝するような言い方であったなど、実際に聞くことでパワハラであると断定しやすいのです。

■メールは写真は画像で保存しておく
パワハラされた内容のメールは日時や発信者が分かるように写真や画像キャプチャで保存しておきましょう。無理やり押し付けられた仕事の書類や指示のメモ書きなどがあったら、書類の写真を撮り、メモは捨てずに取っておきましょう。

■被害の内容をノートに書き留めておく
パワハラを受けたらその内容を詳細に記録しておきましょう。日時と詳しい内容、言われた言葉やどんな気持ちになったかと書いておくのは、被害を受けたことを証明するために重要なことです。

■病院ヘ通院したらその証拠も残す
もしも相手が投げたものが当たってケガをしたり、パワハラが原因で精神的な病気になり通院していたら、通院の記録を残しておきましょう。診断書をもらっておくことも大切です。

信頼できる人に相談する

パワハラのことを相談する際は、相談する相手をしっかり見極めましょう。信頼できる人ではないと余計に悪化する場合があります。口が軽い相手だったり、人に取り入るのが上手い相手だったりした場合、自分の立場が危うくなってしまうという場合があるからです。

信頼できる人に相談することで、パワハラをしている本人が自分の行為に気づく場合があります。協力が得られる場合は、まわりの人に助けてもらいましょう。

社内の相談窓口に相談する

社内に社員向けの相談窓口がある場合は、そこに相談してみるのも一つの方法です。会社を辞めずに解決するために、どのような形で解決できるかを掛け合ってみましょう。もしかしたら部署の異動など、今の環境を変えてくれるかもしれません。

社外の相談窓口に相談する

会社に相談窓口がない、または相談しにくいという場合は外部の窓口に相談しましょう。全国にある労働局・労働基準監督署には相談コーナーがあり、無料で相談を受けることができます。電話でも相談できるので、このようなところを利用してみるのもいいでしょう。

相談窓口の案内はこちら

パワハラを指摘された人が気をつけるべきこと

パワハラをする人の心理とはどんなものなの?

  • 自分は正しいと考えている
  • 常に善悪、上下で物事を判断し位置づけようとする
  • 自分の存在を否定されるのが怖い
  • 自分は常に人の上位に立っていたい

このように挙げてみると、実はパワハラをする人は物事を捉え方が狭く、自分に自信が無いのだとわかります。自信がないからこそ、他人の評価をいつも気にしていて、相手がミスをしたら「部下の教育ができていないからだ」と上司に言われるのではないか、などと感じるのです。

そして、「お前がミスをすると俺が上司に怒られる」と相手を攻撃するのです。懐の大きい上司でしたら「ミスは自分がカバーするから大丈夫だ。」と言ってくれるのではないでしょうか。

他人にパワハラを指摘されたらどうする?

パワハラをする人は自分の性格を見つめ、正すのはプライドが許さないという人が多いでしょう。しかし、それでは自分自身のキャリアをダメにしてしまう可能性があります。会社はパワハラをするような人を昇進させようとは思わないでしょうし、信頼してもらえないでしょう。もしも裁判沙汰にでもなったら、会社の名前に傷がつきます。

もし、誰かから「あなたがやっていることはパワハラです。」と指摘されたら、落ち着いて考えてみてください。いじめてやろうと思って言っていないとしても、相手がどう感じるのかまわりからはどう見えているのか、考えてみましょう。自分が新入社員の時はこうだったのに、なんで今の若者は同じようにできないのだ、できないやつが悪い。そう思っているのでしょうが、果たしてそうなのでしょうか。人間にはいろいろな性格の人がいます。受け取り方もさまざまなのです。

じゃあ甘やかしていいのか?そうではありません。「指導」と「叱責」は似ているようで違うということを常に心に留めておくようにしましょう。

パワハラの裁判例を見よう

部下が上司に対して行なったパワハラ

パワハラは、上司が部下に行うものだけではないという事例です。上司の処遇に不満を持った部下が、親会社の労働組合に上司が不正をしているとのビラを送りましたが、その大半は事実ではありませんでした。しかし、上司は会社から事実確認のために呼び出され問い正されました。上司は処分されませんでしたが、始末書を提出させられてそれまで勤めていた店長職を解かれました。

部下は自分の契約更新の際に、再度親会社の上層部にビラを送りつけ、上司は結果的に職場を追われ、親会社直営のレストランで研修するように命じました。上司はその後行方不明になり、自殺してしまいました。このように、中間管理職の場合、部下と会社との間に悩むことがあります。部下の一方的な恨みから、精神的に追いつめられた悲しいケースです。

厚生労働省 裁判例を見てみよう【第4回】

先輩が後輩に対して行なったパワハラ

病院で働いていたXは、准看護師をしながら看護師になるために勉強を続けていました。この病院には男性の准看護師が5人いて、職場は「先輩の言うことは絶対だ」という風潮がありました。一番上の先輩Aが一番下の後輩Xに対して行なった行為は、ひどいもので3年にも渡りました。

病院の社員旅行でAに無理やり酒を一気飲みさせ、急性アルコール中毒にさせたり、忘年会で「あの時に死ねばよかったのに」などの発言をする。私用で出かけるのに車で送迎させる、などの行為を行なっていました。Aは自殺してしまい両親が病院とAを訴えました。裁判所は社員旅行や忘年会などでXがAにしていた行為を病院側も把握していたはずなのに、いじめからAを保護する措置を講じなかったとして、Aと病院に対して賠償金を支払うことを命じました。

厚生労働省 裁判例を見てみよう【第3回】

同僚が一人の女性を集団でいじめた陰湿なパワハラ

ある会社内で同僚のDが中心になり、Xの悪口を言ったり嫌がらせをしたり、陰湿ないじめが始まりました。部内で男性(課長)から飛び蹴りの真似や、顔すれすれに殴る真似をされた際、部長もそばにいて見ていたが注意しませんでした。Xは耐えきれず上司に相談しましたが、上司はXに相談された以降、何の対応もせずDらと話すこともしませんでした。

Dらが行なっていたことは仕事上のトラブルとは言えない、陰湿な「いじめ」であります。Xが「不安障害、うつ状態」になったのは、Dらの執拗な常軌を逸したいじめと、相談したにも関わらず何の対応もしなかった会社に原因があるとされました。Xは精神的な病気は会社のせいだとして、労災の療養補償給付を求めました。

厚生労働省 裁判例を見てみよう【第51回】

パワハラが原因で退職を考えている人へ

パワハラが原因で退職を考えている人がいたら、我慢しないでください。まわりの協力を得られるようでしたら、助けてもらいましょう。会社側は、社内でそのようなことがあったら改善しなければいけない義務があります。部署の異動などができないか相談してみてはいかがでしょうか。社内の人に話せなければ、行政の機関に相談してみましょう。

そして、どうしても我慢できなくなったら退職を考えてもいいのではないでしょうか。退職の理由は「自己都合」ではなく、「会社都合」にしてもらいましょう。そのほうが失業保険の給付が早く、退職金も会社都合のほうが多くもらえる可能性があります。退職が会社都合である証拠として、パワハラを受けていた証拠の写真やノートが役立ちます。

一人で我慢しないで、自分を守るためにも、まずは一歩踏み出す勇気が大事です。

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