日本人の有給消化率は世界最下位!2020年には労働基準法の改正で有給取得の義務化がされる?

自分の有給休暇があと何日か、気にしながら働いているという人はどのくらいいるのでしょうか。そして、有給休暇がもらえてもなかなか休めないという人もいる中で、どのくらいの人が有給休暇を取得できているのでしょうか。今回は「有給消化率」について解説していきます。

社会人なら知っておきたい!有給休暇の基本

有給休暇とは

有給休暇とは、法律で決められている労働者のためにある「有給」で「休暇」が取れるという制度です。有給休暇は雇用された日から継続して6ヶ月間勤務すると付与されます。6ヶ月の全労働日の8割以上の出勤が条件となります。

また、有給休暇は正社員だけではなく、パートタイマーやアルバイトでも付与されます。これにも条件があり、「週30時間以上の勤務、年に217日以上」の勤務をしている場合は正社員と同じ日数の有給休暇がもらえます。短時間勤務の場合でも定められた日数の有給休暇が付与されます。

有給休暇の付与日数

有給休暇は勤務してから6ヶ月継続して勤務していれば付与されますが、勤続年数や週に何日出勤してるのかなどによって取得できる日数は変わります。有給休暇の上限は法律で20日と定められています。この休暇の時効は2年間で、その年に取得できなかった休みの分は翌年に繰越ができます。そして次の年の有給休暇は40日になります。

有給消化率とは

有給消化率を上げるためにはどうしたらいいの?

有給消化率とは、年次有給休暇の消化割合のことを言います。

有給消化率の計算方法

有給消化率=(取得した日数÷1年に付与された有給休暇の日数)✕100と計算し、付与された有給休暇日数に前年の繰り越した有給休暇の日数は含めません。

例えば、1年に付与された有給休暇の日数が20日で、実際に取得した有給休暇が5日だった場合は、(5÷20)✕100=25ということで、この人の有給消化率は25%ということになります。

日本の有給休暇の平均取得率は最下位!?

では、実際に有給消化率はどのくらいなのでしょうか。厚生労働省が調査した「就労条件総合調査」によると、平成27年に日本の企業で働いている人が付与された有給休暇の平均は、一人18.1日でした。そして、有給取得率(有給消化率)の全体平均は48.7%でした。企業規模別に取得率を比べてみると、以下のようになります。

企業規模1,000人以上300~999人100~299人30~99人
有給取得率54.7%47.1%44.8%43.7%

この結果を見ると、企業規模が大きいほど有給消化率が高くなっています。規模が小さいほど(社員が少ないほど)有給休暇を取りにくいという結果が出ています。

●参照:厚生労働省「就労条件総合調査」

なぜ日本人は有給休暇をあまり取らないの?

有給消化率を上げるためにはどうしたらいいの?

日本で有給消化率が低い理由

旅行会社のエクスペディア・ジャパンが2016年の9月に、「有給休暇の国際比較調査」をインターネットを通じて行いました。対象は世界28ヶ国の18歳以上の有職者男女9,424名です。この結果、日本の有給消化率が世界で最下位になりました。それまで2014年、2015年と最下位だった韓国を3%下回る結果となったのです。

  • 休みが不足していると感じていない?
  • このように、日本は世界で一番有給消化率が低いというのに、日本人はほとんどの人が「休みが不足している」とは感じていないということが分かりました。その割合は約3割で世界一休みが足りないとは感じていないのです。それに反して、有給消化率が100%のスペインは有給休暇が30日もあるにもかかわらず、この支給日数に満足していないと答えた人は68%もいました。

  • 休みを取るのに罪悪感がある日本人
  • 日本人の約6割の人が有給休暇を取ることに「罪悪感がある」と答えています。これは世界で2番目に多いという結果です。第1位は韓国です。そして、休みを取りづらい理由のもう一つに「職場の環境」があります。その中でも「同僚が休んでいない」から休めないと考える人は世界で一番多いという結果が出ました。

  • 自分の有給休暇の日数を知らない人が多い
  • 日本人の約半数は自分の有給休暇の付与日数を知らないと答えています。これは第2位の韓国を2倍以上引き離しているという結果でした。

  • 仕事のことが頭から離れない日本人
  • 休みの日なのに、仕事のメールを「1日中」見てしまうと答えている日本人は22%で、韓国の次に多い結果となりました。日本人は昔から真面目で仕事熱心だと言われますが、この結果からも仕事が頭から離れない人が世界の国の人達から比べても多いのだとわかります。

政府が掲げる有給消化率70%とは

日本が有給消化率が世界の中で最も低いことが分かりましたが、ここ10年ほどは日本人の有給消化率は50%を切っています。休みを取ることに罪悪感を感じる、休暇中にも仕事のメールを気にしてしまう日本人は今後、有給消化率を上げることはできるのでしょうか。

政府は2020年までに有給消化率を70%にする、という目標を「第4次男女共同参画基本計画」の中で掲げています。そして、企業の義務として労働者が有給休暇を取得することを法案として出されています。年に10日以上の有給休暇を付与されている労働者が、年に5日以上の有給休暇を取得するのを会社の義務とするというものです。
この義務化は「労働基準法」の改正として検討されているため、企業側は今から有給休暇についての取り組みを始めておくことが大切です。

●参照:第4次男女共同参画基本計画/内閣府男女共同参画局

有給消化率を上げるためにはどうしたらいいの?

有給取得日数が高い企業ランキング

日本の企業の中で有給取得日数が高いのはどのような会社なのでしょうか。そんなランキングを東洋経済がCSR企業総覧 2017年版(雇用・人材活用編) の中で、「有給休暇を取得しやすい300社ランキング」として発表しています。

ランキングの1位は、ダイキン工業で20.1日です。2013年、2014年、2015年と毎年20日以上の有給休暇取得日数で、取得率は3年平均で94.7%でした。2位はソニーで19.8日でした。有給消化率は88.2%です。そして、3位はホンダで、19.3日で有給消化率は99.8%でこれは1位のダイキンよりも高い割合です。このように、1~3位まではメーカーが占めました。

このランキングの対象である970社のうちで、有給休暇取得日数が15日以上だったのは90位まででした。970社のうち、10%以下の会社しかありませんでした。有給休暇の取得に関しては土日祝日が休みの会社が多く、接客業などのサービス業はメーカーとは比べることができないという面もあります。

有給消化率を高くするには労働者の意識が大切

有給消化率を上げるためにはどうしたらいいの?

有給休暇を取ることに対して、罪悪感を感じるというのは同僚が休んでいないのに自分だけ休むのは申し訳ないと感じる人が多いということが分かりました。その他には職場によっては、人数の確保が難しいということもあるのではないでしょうか。本当は休みたいけれど、自分が休んだら他の人に迷惑をかけるという心理が働くのです。
少ない人数でシフト制で仕事をしているところならなおさら、自分が休むことによって誰かが自分の代わりに多く働かなければならない、という現状が有給休暇を取得しづらくさせているという原因の一つなのではないでしょうか。それを解決するためには「人材の確保」が必要になります。
今後、政府が掲げる「働き方改革」にも基づいて、企業側が積極的に労働者に有給休暇を取得することを促していくことが大切になります。義務として取得させるようになるでしょう。企業側は労働者に対してもっと有給休暇についての認識を深めさせる努力が必要になります。

有給休暇の意味、付与される資格、付与される日数、繰越についてなど知らない労働者も中にはいるでしょう。今まで以上に有給休暇について労働者が意識するような働きかけをすることで、有給消化率は少しずつ上がっていくのではないでしょうか。そのために企業側の努力が不可欠なのです。

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