国民健康保険について、詳しいことはご存知ですか?どのような条件の人が加入して、いつ保険がきくのでしょうか。また、加入する時・辞めるときはどのような状況なのか、社会保険との違いは何なのかなど、詳細を解説していきます。
国民健康保険とはどういうもの?
国民健康保険とは
国民健康保険は、各市町村が運営している社会保障制度の一つです。国民健康保険に加入していると、ケガや病気などで治療を受けた際に保険料から医療費が支払われます。日本に住所がある人は全員、保険に加入しなければなりません。国民健康保険に加入が必要なのは、以下の条件に当てはまらない人です。
- 勤務先で社会保険などの保険に加入している人と扶養家族
- 船舶保険に加入している人と扶養家族
- 国民健康保険組合に加入している人と世帯家族
- 75歳以上の後期高齢者
- 生活保護受給者
国民健康保険が受けられる医療と受けられない医療がある
国民健康保険に加入しているからといって、病院にかかったもの全てに保険料が支払われるわけではありません。
- 国民健康保険がきくもの
■病院や診療所で診察を受けた時
診察を受けた場合は保険がききます。
■医療処置、手術を受けた時
処置や手術費用は保険がききます。
■ケガや病気に対しての薬や治療に関する材料が支給された場合
薬が出された場合や包帯や吸入の器具などは保険がききます。
■在宅での療養と看護費用
在宅で療養する場合や看護費用は保険がききます。
■入院費と看護費用
個室のベッド代や食事代などは自己負担です。
- 国民健康保険がきかないもの
■健康診断や人間ドック、予防接種
病気の治療ではないため保険適用外です。
■美容整形
美しくなりたいための美容整形は保険がききません。
■正常な分娩
正常分娩は病気ではないので対象外となりますが、帝王切開の場合は「異常分娩」とみなすため保険がききます。
■労災の対象になる仕事中のケガや病気
仕事中または通勤中のケガや病気は労災が適用されます。
■ケンカや泥酔によるケガや病気
ケンカや泥酔は本人の過ちによるもののため、場合によってはケンカなどでできたケガの治療費が制限される場合があります。
■歯の矯正など
インプラント治療や歯を白くするホワイトニングなどが適用外です。
国民保険料について
国民健康保険料の計算方法
保険料を納めるのは「世帯主」です。もしも、世帯主が自身の会社の社会保険に加入していたとしても、世帯の誰かが国民健康保険に加入していたら世帯主が保険料を支払うことになります。この保険料は各地方自治体ごとに算定するので、全国が同じ額ではありません。保険料は「医療分保険料」「介護分保険料(40歳以上65歳未満のみ支払う)」「後期高齢者支援金分保険料」の合計を支払うことになり、以下の4つの保険料区分により成り立っています。
■所得割保険料:各世帯の所得に応じ算定されます。(所得税×利率)
■資産割保険料:各世帯の資産に応じ算定されます。(固定資産税額×利率)
■均等割保険料:加入者一人あたりいくらで算定されます。(加入者の人数×均等割額)
■平均割保険料:一世帯あたりいくらで算定されます。
計算方法は、各市区村によって異なります。均等割・平均割は金額が市町村ごとに決められていますので、ホームページで確認可能です。住民税の通知書をもとに所得割を計算することができます。利率を確認して計算してみましょう。
- 所得割=(前年の総所得金額-33万円)×利率
国民健康保険の軽減措置について
国民健康保険には、国が定めている「軽減制度」という措置があります。
- 前年に比べ世帯の所得額が減った場合
減額の方法や割合は市町村によって異なりますが、前年度の世帯所得の水準・世帯内での国民健康保険加入者により減額割合が段階を踏んで軽減されるのが一般的です。その段階は7割・5割・2割です。
国民健康保険の減免制度
国民健康保険の減免制度は各市区町村が定めているものです。
- 会社都合での退職の場合保険料が減額される
退職が会社都合だった場合、「特定受給資格者」「特定理由離職者」には約7割の保険料の減額措置が適用します。また、以下の条件全てが当てはまることで、前年の給与所得が100分の30に軽減されますが、そのためには届け出が必要です。軽減の期間は離職した日が属する月から、退職した翌年末までです。もしも、任意継続保険を除き、他の健康保険に加入したら軽減措置はその時に終わります。
■離職日に65歳未満であること
■離職日が平成21年3月31日以降であること
■「特定理由離職者」または「特定受給資格者」として『雇用保険受給資格者証』を交付されている人
■『雇用保険受給資格者証』が交付されているという人で「特定理由離職者」または「特定受給資格者」の人のうち、特定の離職理由の番号が該当する人
- 天災などで財産に大きな被害を被った場合
- 貧困や病気によって保険料を納めるのが難しい場合
- 旧被保険者への軽減制度
地震や洪水などの天災によって、家や仕事場が壊れてしまい仕事ができなくなったり財産がなくなってしまった場合、または天災によって病気やケガをしてしまい収入を得ることができなくなった場合は、各市区町村に申請をすることで国民健康保険の保険料が減額、または免除される場合があります。
貧困によって生活保護などを受けている、またはそれと同じくらいの収入で生活をしていくのが困難である場合は、市区町村に申請することで保険料が減免または免除される場合があります。
社会保険を抜けて後期高齢者医療制度に移行した人、国民健康保険に加入する前まで扶養されていた人のことを「旧被扶養者」といいます。旧被扶養者で65歳以上の人は、申請をすることで保険料均等割額の5割の保険料になります。
国民健康保険を滞納したらどうなる?
国民健康保険の保険料を滞納したらどうなるのでしょうか。保険料は期日があります。期日内に納めるべきですが、特別な理由もなく納めなかったら国民健康保険から『督促状』が送られてきます。それでも納めないと、「短期被保険者証」という有効期間が短い保険証になってしまいます。そして、1年以上保険料を滞納すると医療機関にかかった時、医療費は全額自己負担になります。この場合、後日申請すると国民健康保険のほうから払い戻しがされます。
さらに1年半滞納して納めないと、保険の給付が一時的に差し止められます。それでも滞納を続けると、滞納額と払い戻しの分が相殺されてしまう場合があります。どうしても保険料を払うことが難しい場合は、支払いを先に延ばしたり分割で払うことができる制度もありますので、市区町村の管轄に相談するようにしましょう。
国民健康保険を安くする方法はあるの?
- 収入が少ないと保険料が少ない
- 同じ世帯で国民健康保険に加入する人が増えると保険料は増える
- 保険料の上限を考慮する
- 保険料の軽減措置や減免制度を使う
- 保険料が安い地域に引っ越す
国民健康保険の保険料は所得によって変わります。所得が低いと保険料が安くなります。確定申告をしっかり行うことで保険料が減ることや、減額される場合があります。
国民健康保険は均等割があるので、扶養の有無に関わらず世帯での加入者が多くなればその分保険料が増えてしまいます。社会保険などに入っている人の扶養になれる人がいたら、社会保険の扶養になることで保険料を安くすることができます。
国民健康保険の保険料には上限があります。収入がどれだけ多くても、家族の人数が多くても、保険料の上限は超えないのです。もしも、二世帯住宅で世帯を分けて保険料を支払っている場合は、世帯を同じにすることで保険料を節約できることがあります。
保険料を納めるのが厳しい人は、その理由によっては保険料が軽減されたり減額や免除になる場合があります。
簡単にできることではありませんが、これから引っ越しを考えていて国民健康保険の保険料を安くしたいと思う場合は、市区町村の保険料を調べて安い地域に住むという方法があります。
国民健康保険の加入と脱退について
加入とやめるときの手続きは14日以内に行いましょう。
国民健康保険に加入するとき(全ての場合、印鑑と個人番号が必要)
加入が必要なとき | 必要な書類 |
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他の市区町村から引っ越してきたとき | 転出証明書 |
勤務先の健康保険をやめたとき | 退職日が分かる離職票など |
子どもが生まれたとき | 母子健康手帳 |
家族の扶養でなくなったとき | 被扶養者でなくなった証明書 |
生活保護を受けなくなったとき | 保護廃止通知書 |
国民健康保険をやめるとき(全ての場合において印鑑と個人番号が必要)
やめる手続きが必要な場合 | 必要な書類 |
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他の市区町村へ引っ越すとき | 保険証のみ |
勤務先の健康保険に加入したとき | 国民健康保険の保険証と職場の保険の保険証 |
家族の健康保険の被保険者になったとき | 国民健康保険の保険証と職場の保険の保険証 |
国民健康保険加入者が死亡したとき | 国民健康保険の保険証 |
生活保護を受けることになったとき | 保護開始決定通知書 |
国民健康保険と社会保険の違いとは
国民健康保険と社会保険は全くの別もの?
国民健康保険 | 社会保険 | |
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加入条件 | 無職である・個人事業主・その他の保険に入っていない人 | 会社に勤務している人(正社員と4分の3以上働いている人) |
運営者 | 市区町村の国民健康保険窓口 | 各社会保険組合または協会けんぽ |
保険料 | 世帯単位、加入者の人数・年齢・収入によって変わり、全額自己負担 | 個人単位、年齢・収入によって変わり、保険料の半分は会社が負担する |
扶養 | 扶養者という概念なし | 扶養人数が増えても保険料は変わらないが、扶養家族が一定の収入を超えると加入できない |
年金 | 国民年金に加入する | 基本的に厚生年金保険とセット |
会社を辞めたら任意継続を検討する
会社の保険に加入していれば、退職の時に国民健康保険に加入するか、そのまま加入していた健康保険を続けるかを選択できます。それまで加入していた健康保険を続けることを「任意継続」と言います。任意継続をするためには「勤務先の健康保険に2ヶ月以上加入していた」ということが条件となります。
そして、退職の日の翌日よりら20日以内に手続きをする必要があります。手続きをすることで、2年間は同じ保険に加入することができます。勤務先で健康保険に加入していた時は、会社側が半額負担をしてくれていたのですが、退職してからもそのまま同じ健康保険に加入していた場合は、保険料の全額を自己負担しなければなりません。任意継続で健康保険に加入するか、国民健康保険に加入するか、どちらのほうが得なのかを検討しましょう。
国民健康保険のしくみを知ることは大切です
健康保険は「もしも」のために必要な制度です。保険料を支払うことは、安心して医療を受けるために必要になります。その中でも国民健康保険は、私たちが病気やケガをした時に多額な医療費を払うことがないよう、市区町村が一部を負担してくれる制度です。日本は国民がみんな健康保険に加入する必要があります。もしもの時にみんなで助け合おうという良い制度です。仕組みを理解し、安心のために保険料をしっかり納めましょう。