介護保険制度という名前はよく聞くけれど、実際いつからどのようなサービスを受けられるのかはわからない…という方は、いらっしゃいませんか?介護保険について、調べておかないといけないことはたくさんあります。今後いざという時に困らないように、介護保険の仕組みや利用方法について知っておきましょう。
介護保険制度ってなに?
介護保険とは
高齢者の割合が急増する一方で、核家族化や少子高齢化により家族だけで介護をするのが難しくなっています。そこで、家族中心の介護ではなく社会全体で支えていき、介護する側もされる側も安心して生活できる社会を目指そう、という趣旨のもと誕生した制度が介護保険制度です。1997年に介護保険法が制定され、2000年に施行されました。
介護保険は、身の回りのお世話をするだけではなく、利用者のできることが増えるようサポートする「自立支援」、利用者がどこで誰に介護されたいかなどを自由に選択していくことで総合的にサービスを受けられる「利用者本位」、保険料に応じたいろいろなサービスを受けることができる「社会保険方式」、この3つの柱から成り立っています。
介護保険の仕組みが知りたい!
介護保険制度の財源は、国・市区町村の公費を50%、残りの50%を保険料で賄い運営しています。保険料は、40歳になった月から支払い義務が発生し、その後一生払い続けることになります。この制度のもと、実際に支払う介護サービスの負担額を1割程度におさえ、介護が必要になった時の段階に合わせてさまざまなサービスを受けることができます。
要支援・要介護の認定区分について
どのような介護がどの程度必要なのかを判定するため、要支援・要介護の認定区分が設けられています。この区分は、介護を必要とするレベルによって、要支援1~2と要介護1~5の7つの区分に分かれています。この区分によって、受けられるサービスや支給限度額が変わるのです。レベルについては、厚生労働省によって定められているので、確認してみましょう。
参考:厚生労働省
介護保険料は何歳から支払うの?
第1号被保険者とは
第1号被保険者とは、65歳以上の人をいいます。65歳になると市から納入通知書が届いたり、年金からの天引きされたりして支払います。第1号被保険者は、要介護あるいは要支援状態と認定されると、原因にかかわらず介護保険のサービスを受けることができるのです。
第2号被保険者とは
第2号被保険者とは、40歳から64歳の人のことをいいます。40歳になった時、加入している医療保険の中に介護保険料が加算されています。保険料は、加入している保険ごとに異なるので確認してみましょう。
第2号被保険者は、基本的に介護保険制度を利用することができません。しかし、介護保険法で定められている16の「特定疾病」が原因で介護が必要であるとなった場合、介護保険のサービスを利用することができます。厚生労働省が定めている16の特定疾病は下記の通りです。
- がん末期
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護保険サービスを利用するにはどうしたらいい?
市区町村窓口に申し込む
申請できるのは、本人またはその家族です。ケアマネージャー、介護保険施設、地域包括支援センター、居宅介護支援事業者の職員が代行をすることも可能です。まずは、市区町村の窓口で要介護認定を受けましょう。要介護認定を受けると、市区町村の調査員が自宅などを訪問して心身の状態を確認するために調査を行なったり、自分のかかりつけ医が主治医意見書を作成したりします。
その後、調査結果および主治医意見書がコンピューターに入力され、全国一律の方法で要介護認定の一次判定が行なわれるのです。二次判定も、一次判定の結果と主治医意見書に基づいて、行なわれます。その判定結果に基づき要介護認定し、原則30日以内に申請者に通知をします。
実際に介護サービスを利用する場合、介護サービス計画書(ケアプラン)を作成する必要があります。「要支援1~2」の場合は地域包括支援センターへ、「要介護1」以上の場合はケアマネージャーのいる居宅介護支援事業者へ依頼をしましょう。依頼をされた居宅支援専門員は、本人や家族の希望を十分配慮しながら、どのサービスをどのように利用するのか介護サービス計画書を作成します。その計画書に基づき、さまざまなサービスを利用開始することができるようになるのです。
利用する際の注意点は?
申請する際、窓口では「要介護・要支援認定申請書」と「介護保険被保険者証」に加えて、個人番号を示す書類と、身元確認ができる書類が必要になります。本人や家族以外が申請する場合、申請者の印鑑が必要です。また、第2号被保険者の場合は「健康保険被保険者証」が必要になりますので、それぞれ用意しておきましょう。
また入院中の場合、介護保険制度の申請はできますが、使用することはできませんのでご注意ください。複数の保険制度を同時に使えないという規則があるためです。退院してからすぐに介護保険制度を使いたいという人は、申請だけ行なっておくとよいでしょう。
どんなサービスが受けられるの?
サービスが受けられる3つの場所
- 居宅サービス
居宅サービスというのは、利用者の自宅へホームへルパーなどが訪問して、介護サービスを行なうことを指します。居宅サービスは「通所サービス」「訪問サービス」「短期入所サービス」と、3つに分かれています。
■訪問サービス
訪問サービスは「ホームヘルプ」とも言われており、介護福祉士やホームヘルパーが利用者の家を訪問します。訪問介護・訪問看護・訪問入浴介護・居宅療養管理指導・訪問リハビリテーションがあります。
■通所サービス
日中、利用者を自宅からデイサービスセンターまで送迎する「通所介護(デイサービス)」、同じく日中に医療的なケアやリハビリテーションができる施設に送迎する「通所リハビリテーション(デイケア)」があります。
■短期入所サービス
「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」があり、いずれも「ショートステイ」と呼ばれています。どちらも、利用者を数日~2週間ほど預かり、介護サービスを提供していきます。
- 施設サービス
施設への入所を希望する場合は、施設サービスが受けられます。施設サービスには「介護老人保健施設サービス」「介護老人福祉施設サービス」「介護療養型医療施設サービス」の3つがあります。
■介護老人福祉施設サービス
原則要介護3以上の利用者に限り、受けられるサービスです。日常生活の介助やリハビリテーションを通じて、自立した生活が送れるよう対応します。長期間入所することが可能です。
■介護老人保健施設サービス
医療管理下で介護やリハビリテーションを受けることができます。こちらは在宅復帰を前提としたサービスなので、3ヶ月で退所することが原則です。
■介護療養型医療施設サービス
長期の治療を必要とする要介護者のためのサービスですが、介護老人保健施設への転換により、2018年3月に廃止が予定されています。
- 地域密着型サービス
地域密着型サービスとは、居宅サービスと施設サービスの間をとったようなサービスです。介護が必要になっても、住み慣れた場所で継続して生活できるよう、地域ぐるみで支援をする仕組みになっています。ただし、原則として住民票がある人しか利用することができません。地域密着型サービスには「訪問・通所型サービス」「認知症対応型サービス」「施設・特定施設型サービス」があります。
介護保険の費用は?
介護保険の支給限度額内であれば、負担額は費用の1割で利用ができます。支給の額は、認定区分によって異なります。ただし、区分支給限度額を超える費用は、全額負担しなければなりません。また、市区町村によって区分支給限度額が異なる場合があります。
介護保険制度を慌てず利用するために
介護生活は、ある日突然やってくるかもしれません。急に介護が必要になったとしても慌てず対応できるように、日ごろから備えておきましょう。まず、日常的に健康管理しておくことが大事です。年齢を重ねると、体の変化が少なからずあります。その変化の状態を書き留めておくと、予兆にいち早く気が付くことができるでしょう。また、アレルギーや持病なども、家族みんなで共有しておくとよいですね。お薬手帳に詳しく記載しておくと、わかりやすいです。
次に、かかりつけの医療機関や緊急時の搬送先など、相談できる窓口をリストアップしておきましょう。いざという時にアドバイスを受けることができます。また、親戚や友人などの交友関係もまとめておくとよいでしょう。日常生活の様子を聞くことができたり、介護にも協力してもらえるかもしれません。また、介護はお金が必要になります。お金に対する見通しも立てておきましょう。認知症になった場合、資産管理ができなくなる可能性があります。通帳や印鑑などの大事なものはまとめておいて、できれば家族と共有しておくといいでしょう。
一番大切なのは、介護について家族みんなで話をしておくことです。デリケートな話題ですが、本人の希望がわかれば、どのような環境を望んでいるのか尊重しやすくなります。もし介護を受けるとしたら場所はどこがよいか、誰に介護してもらいたいかなど、新聞やテレビの情報をきっかけに家族みんなで話せるとよいですね。近年は、自治体によってサービスなども多様化していますので、お住まいの自治体はどのようなサービスが受けれるのか、また民間のサービスにはどのようなものがあるのか、日ごろから情報を集めておくと役に立つことがあります。あらかじめ調べておくことで、必要な介護のサービスを十分に受けることができるでしょう。