手話通訳士に向いている人はどんな特徴があるの?難易度が高いとされる試験合格率とは

テレビの選挙演説などで、手話を使って聴覚障害者障害者の方に向けて通訳をしている人を見たことはありませんか?会話を手話を使っての通訳する人のことを「手話通訳士」と言います。手話通訳士の資格はあるのでしょうか?今回は、手話通訳士について解説いたします。

手話通訳士の仕事内容とはどんなもの?

手話通訳士の仕事

手話通訳士の仕事は、「手話」を使って聴覚に障害がある人と手話が使えない人との会話を円滑に行う仕事です。手を使って言葉を見える形に変えて「通訳」します。聴覚に障害を持つ人が手話を使って相手に話しかけて思っていることを伝えようとしますが、手話を知らない人は何を伝えたいのか理解できません。その逆もあります。手話を知らない人が聴覚に障害がある人にそのため、手話通訳士が間に入って手話を使って通訳士します。

手話通訳士が活躍する場とはどんなところ?

手話通訳士が働く場所の一つは政権放送の通訳です。2009年には衆議院比例区選挙で、2011年には都道府県知事選の政見放送で手話通訳が取り入れられました。その他には、行政機関の窓口などに手話通訳士を置いているところもあります。裁判や警察の尋問、障害者支援施設などでも手話通訳士が活躍することもあります。福祉施設で働く場合は、手話通訳士の仕事だけではなく介護福祉士などの仕事と兼任する事が多いです。

手話通訳士の給料はどのくらい?

手話通訳士の仕事だけで生計を立てているという人は、ほんのわずかしかいません。手話通訳は手話教室などで身につけることができます。福祉関係の仕事をしながら手話を覚えて、それを役立てる人が多いのです。給料は場所や雇用形態によって異なりますが、時給は1,500円程の所が多く、福祉関連の施設で契約社員として働く場合は、月給は15万円程度です。

介護施設や福祉施設で働く場合、手話ができるということで採用に有利な場合はあるかもしれませんが、手話ができるからといって他の職員よりも収入が多くなるということはないことのほうが多いのが実情です。手話を覚えても専門的に仕事としてやっていくのは難しいものの、手話ができることで人の助けになることがあります。手話を覚えようとする人の多くは、手話で収入を得ようというよりも人の役に立ちたいという気持ちで覚える人が多いので、ボランティアで活躍できることに喜びを感じることでしょう。

手話通訳士に向いている人はどんな人?

相手の気持ちに寄り添える人

手話通訳士は手話を使う人と、手話を知らない人との間を取り持ってコミュニケーションを手助けする仕事です。手話を正しく使えることはもちろんですが、大事なのは人の気持ちに寄り添えることです。人は言葉を交わして会話をする時に、言葉にしないニュアンスなどを感じて会話をします。

言葉の発し方や、声のトーンなどを感じ取って相手が何を伝えたいのかを汲み取ります。しかし手話はそういうニュアンスを伝えることはできません。表情や手の動かし方などで微妙な感情を感じ取れると、人に寄り添っていられるのではないでしょうか。

  • 人を助けたい人
  • 手話を学ぼうとする人は、人の助けになりたいと思っている人です。人の助けになれることに喜びを感じられる人が手話を覚えたいと思います。自分が誰かの力になれることが嬉しいと感じられる人は手話通訳士に向いていると言えるでしょう。

  • 福祉関係の仕事に興味を持っている
  • 現在、日本では手話通訳士だけの仕事をして生計を立てているという人はほとんどいないため、福祉施設などで職員として働き、その知識を役立てています。そのため、福祉関係の仕事に興味があり人の助けになりたいと思える人が向いています。

手話通訳士になるためにはどうしたらいい?

手話を習得することが必要!

手話通訳士になるためには、まずは手話ができるようにならないといけません。手話はどこで学べるのでしょうか。

  • 福祉系の学校で学ぶ
  • 手話を学べる学校は、福祉系の大学や短期大学が挙げられます。大学では手話だけではなく、福祉に関する幅広い知識や、一般教養を学ぶことができます。手話通訳士専門で仕事をしていくことは難しく、福祉関係の仕事に就いて手話を役立てることが多いため、福祉の勉強を学ぶことはとてもいいことです。また、福祉系の専門学校もあります。専門学校は大学と比べると福祉の勉強を専門的に学ぶところです。

  • 民間のスクールで学ぶ
  • 手話は学校以外でも、民間のスクールや手話教室でも学べます。手話教室では、大学や専門学校で学べるような福祉に関する教養は学べませんが、手話をじっくり学べます。全く手話の知識がない人でも基礎から教えてもらうことができる教室が多いので、手話を覚えたい人はスクールを選んでもいいでしょう。スクールで手話を覚えたらボランティアとして、地域などで活動する人もいます。

    また、都道府県や市町村で手話の養成講座を開催しているところもあります。受講条件をクリアしていれば無料で受講ができる(テキスト代は必要なところもあります)ところもあるので、探してみるのもいいかもしれません。

手話通訳士の資格試験を受ける

  • 手話通訳士の試験の合格率
  • 「手話通訳士試験」は厚生労働省が認定する「手話通訳技能認定試験」のことです。手話通訳の資格はいくつかありますが、その中でも難易度は最も高いものです。年に1回実施される試験は、20歳以上の人なら誰でも受けることができます。試験は学科と実技の両方があり、合格するためには手話経験が3年以上ないと難しいとされています。

    過去の試験では、2014年10月に行われた試験は、受験数は956人で合格者は106人、合格率は11.1%でした。難易度が高い試験ですが、この資格に合格するには手話を使ってボランティアなどに関わり手話の知識が幅広くあるという証明になります。資格を種取得することで、手話に通じている人という証になります。

手話通訳士の募集について

手話通訳士としての募集はほとんどありません。手話を使える人として、役場や福祉施設などで働きながら、手話を必要とする人がいたら手話を使う働き方をしている場合が多いのです。役所などで一般の職員と同じ仕事をしています。民間の企業でも手話通訳士を募集している企業はほとんどありません。自治体のボランティアとして手話が使える人を登録して活躍することもできますので、せっかく覚えた手話を活用する場として登録するのもいいのではないでしょうか。

手話通訳士のやりがいと大変さはどんなものがあるの?

手話通訳士のやりがい

  • 社会に貢献できる
  • 聴覚に障害がある人が社会進出していくためには、人と会話ができることが必要です。しかし、手話が分かる人は少ないため手話通訳士の存在は欠かせないものです。手話で人とのコミュニケーションの助けができること、社会に貢献できることはやりがいになります。「人を助けたい」「困っている人の役に立ちたい」という想いを思っている人にとって、手話で人と人をつなげることは喜びを感じられることでしょう。

  • 人と触れ合って仕事ができる
  • 手話通訳士の仕事は、聴覚に障害がある人だけでなく、たくさんの人と触れ合いながら仕事ができます。自分の手話が人の役に立てる喜びはもちろん、手話通訳が人を結びつける助けになるのはやりがいを感じられるでしょう。また、手話を通して相手が伝えたい事が何かを察することができるようになってくることもあります。色々な人と触れ合って力になれることは手話通訳士の喜びとなるでしょう。

  • 覚えると一生のスキルになる
  • 手話通訳士としての仕事だけで生計を立てることは難しく、ほとんどの人が福祉関係の仕事をしながら手話を役立てているという現状です。しかし、手話ができる人は多くないため、就職活動の時に有利になることがあります。一度覚えると手話の知識は一生使えるものです。福祉の現場だけではなく、もしかしたら日常の場で役立てる機会があるかもしれません。

手話通訳士の大変さ

  • 人の気持ちを理解する難しさがある
  • 人と人との会話は、言葉だけでなく声の出し方や大きさ、表情などで相手が自分に何を伝えたいのか感じ取ったりします。しかし、手話だけではそのニュアンスを汲み取るのが難しいことがあります。聴覚に障害がある人の生活をどんなものなのか、背景もある程度理解して置く必要もあります。福祉に関する知識や理解も必要です。

  • 手や肩などを痛めることがある
  • 手話通訳士は、通訳中はずっと腕や手を動かしています。この動作はかなりの重労働で、腕や肩を痛めてしまう人もいます。ひどくなると腕を上げることができなくなってしまう人もいるほどです。

  • 手話通訳士の仕事だけで生計を立てるのは難しい
  • 手話通訳士の資格を取得しても、その仕事で生計を立てるのは今の日本では難しいのが現状です。手話通訳士の資格を取得している人の多くは、福祉施設で働きながら手話を役立てている働き方をしています。手話通訳士の資格を持っていることで、聴覚障害者の方が通う学校などで就職に有利になることがありますが、資格があるからといって収入が他の人と変わることはないようです。ボランティアで手話を生かす機会はありますので、仕事にはできなくとも取得した手話の知識を生かすことはできます。

これからの手話通訳士

手話通訳士としての仕事は、まだまだ社会的に認知されていない現状です。しかし、障害者が社会参加し、生活をしていく上で手話通訳士の存在は確かに必要です。役場や銀行などで手話が必要な場合もありますし、裁判や国会などの中継でも活躍できます。

近年では、パソコンなどを活用して文字で会話をしたり、スマートホンなどに話しかけるとそれを文字に変換してくれるアプリなどが出てきています。確かにそれは便利で、聴覚障害者の方をサポートするのに役立つものです。しかし、手話は「会話」としてその場ですぐに行える重要なツールですので、なくなることはないでしょう。社会的に手話通訳士の活躍の場がもっと広がればと願います。

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