普段働いているときに、自分の月収や年収は意識していると思いますが、「生涯年収」を意識したことはありますか?生きていくなかで自分たちはどのくらい稼げるのでしょうか。生涯年収は人によって違いますが、男女や学歴、雇用形態によっても変わってきます。今回は、生涯年収について解説していきます。
生涯年収について考える
生涯年収とは
生涯年収とは、一人の人が生涯に渡って受け取る賃金のことを言います。生涯年収は「生涯賃金」ということもあります。一般的に新卒から定年までに得る収入のことを言いますが、その中には月収の他に賞与や退職金なども含まれます。人によっては賞与がない会社に勤めていたり、月収も個人個人違うので、生涯年収も一人ひとり違います。働き方も多種多様で、正社員として働く人がいたりアルバイトで生活をしている人もいます。雇用形態でも生涯年収は異なります。
サラリーマンの平均年収
生涯年収を知っていく前に、会社員の平均年収を見てみましょう。厚生労働省の「平成28年 賃金構造基本統計調査」によると、正社員として働く人の年収は全年齢の男女の平均は304万円です。
業種別生涯年収ランキングを見よう
業種別の生涯年収ランキング
株式会社日本創発グループが発表した「有価証券報告書」をもとに、業種別の生涯年収を見てみます。上場企業3,000社以上の業種別のランキング第1位は、「海運業」で生涯年収は約3億円です。海運業とは、船舶による造船や海上輸送などを行う産業のことを言います。日本郵船や商船三井など、高収入を得られる会社が揃っているため生涯年収が第1位となりました。第2位は「鉱業」です。その生涯年収は2億9,000万円です。第3位は保険業と続きます。
上場企業の生涯年収ランキング
株式会社日本創発グループが発表した「有価証券報告書」をもとに、上場企業3,000社以上ある会社の推定生涯年収は、平均で2億1,984万7,869円、上場企業最高生涯年収は8億694万1,853円、上場企業最低生涯年収は2,246万3,786円でした。
上場企業の生涯年収ランキングの第1位は「GCA株式会社」です。この会社はM&A、アドバイサリー業務を行っています。平均年収は2,000万円を超える起業です。第2位は「M&Aキャピタルパートナーズ」、第3位「キーエンス」、第4位「日本商業開発」、第5位「ファナック」と続きます。その後は常連の企業が顔を揃えています。「三菱商事」「伊藤忠商事」「東京海上ホールディングス」「三井物産」「電通」などです。
勤続年数で生涯年収は変わるの?
勤続年収で見る正規雇用労働者の生涯年収
日本は「終身雇用制度」という、新卒から定年まで働く人が多いことで有名です。正社員として働く場合は、何もなければ定年まで働くことができる安定した働き方です。このような働き方をする人は、世界でも多くいます。収入については、勤続年収が増えるほど比例して収入が上がっていきます。この傾向は性別を問わず見られます。
2016年の国税庁「民間給与実態統計調査」を参照に見てみると、勤続年数が増えれば収入が多くなっていきます。これは、男女に関係なく見られる傾向です。ただし、正社員に限っての数字になります。正社員は、このように安定して年収が上がっていくことが分かります。
勤続年収で見る非正規雇用労働者の生涯年収
東洋経済オンラインが、一人の人が新卒で会社に入って定年まで働いた生涯年収を調査しました。その結果、正社員として働いた場合の生涯年収は、平均2億1,765万円だったことが分かりました。一方、非正規雇用として38年間(22歳から60歳まで)働いた場合、その生涯年収は5,700万円でした。正社員とそれ以外の雇用形態で働いた場合、生涯年収の差は「1億6,000万円」にもなることがわかります。
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の生涯年収の差について
上で述べたように、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の生涯年収には大きな差があります。ここまで収入に差が出てしまうのはどうしてなのでしょうか。
- 賞与の差
まず一つ目に、賞与がもらえるかどうかで収入の差が出てきます。正社員だからといって必ず賞与が支給されるか、といったらそうではない場合もあります。会社によって額の差はあるものの、賞与が支給される場合が多いです。しかし、正社員ではないと賞与が支給されない場合が多いのです。この差は大きく生涯年収に影響します。
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の生涯年収以外の差
- 退職金の差
- 老齢年金の差
生涯年収とは、年収だけではなく退職金も含まれます。退職金制度は法律で決まっているわけではないので、会社によってはその制度がない会社もありますが、退職金がある会社に勤めていると生涯年収に差が出ます。非正規雇用労働者は退職金がもらえないことがほとんですが、厚生労働省の調査では大学卒の人が定年した場合、退職金の平均支給額は2,280万円です。この額を正社員の生涯年収に加えると、2億円近くも差が出てしまいます。
正社員として働く場合、だいたいの会社は「社会保険」と「厚生年金保険」に加入します。この保険料は給与から引かれますが、社会保険・厚生年金は会社が半額を負担してくれます。厚生年金を支払うことで、65歳になると老齢厚生年金がもらえます。もしも、夫が会社員で40年間社会保険・国民年金を支払った場合、老齢年金がもらえるようになった時に夫婦で貰える額は月額10万円ほど違ってきます。85歳まで夫婦で年金をもらうとしたら年間で120万円、20年間もらうとしたら2,400万円も差が出てしまいます。
男女別の生涯年収について
2016年の「賃金構造基本統計調査」を見てみると、男女別の賃金のカーブが男性は年齢が上がっていくとともに賃金も上がっていくことが分かります。それに比べて、女性は年収が300万円を超えずに年齢が上がっても賃金カーブはほとんど変わりません。女性の年収が一番高くなるのは、50歳~54歳のときですがそれでも300万円を超えず、269万5,000円です。男性は50歳~54歳で425万7,000円がピークですので、その差は150万円以上にもなります。
こうしてみると、生涯年収を考えると大きな差が出るのは明確です。このような差が出る原因は、女性の働き方にあると思われます。正社員として就職しても、結婚や出産のため会社を辞めることが多く、子育てをしながら働く場合は正規雇用ではなくパートタイムなどで働く場合が多くなる傾向にあるためです。前の項で述べましたが、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の生涯年収は様々な要素で差が出てしまいます。また、会社で「管理職」として働く女性の割合が低いというのも主な要因になります。
学歴別の生涯年収について
学歴別平均年収 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
高校卒 | 288万1,000円 | 208万3,000円 |
高専・短大卒 | 306万3,000円 | 255万6,000円 |
大学・大学院卒 | 399万7,000円 | 288万7,000円 |
学歴別生涯年収 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
高校卒 | 2億5,000万円 | 1億9,000万円 |
高専・短大卒 | 2億5,000万円 | 2億円 |
大学・大学院卒 | 2億8,000万円 | 2億4,000万円 |
この結果から見ると、学歴で生涯年収が変わってくるのが分かります。高校卒と高専・短大卒の生涯年収には差はないものの、大学卒になると男性で3,000万円、女性では4,000万円の差が出ます。
参考:厚生労働省 賃金構造基本統計調査
参考:ユースフル 労働統計2016
生涯年収を上げるために
生涯年収を色々な面から見てきましたが、雇用形態や性別、学歴の差で生涯年収が変わってくることが分かりました。生涯年収を上げるためには、大学を卒業して正社員で働くことが一番いい方法だという結果が出ています。これからの働き方を考える場合、どうしたら生涯年収を上げることができるのか、選択肢は色々ありますので考えてみてはいかがでしょうか。