通訳の資格試験は英語だけじゃないって本当?出題内容と試験合格率について徹底解説

グローバリゼーション化が進んでいる中、国際舞台ならではの仕事の1つに「通訳士」があります。異国間における言葉の壁を解消できる通訳士は、世界で必要とされる職業であることに間違いありません。今回は通訳士を目指す上で知っておきたい国家資格、通訳案内士の試験内容・資格の全容について紹介します。

通訳士になるのに必要な資格とは

国家資格の通訳案内士

通訳士になる上で必要なスキルとは何でしょうか?通訳士の資格として、国家資格の通訳案内士があります。仕事上で通訳士に求められるスキルは、外国語が話せるということはもちろんのことですが、日本地理や文化、歴史、経済なども勉強しておかなければなりません。外国語だけを勉強すれば資格を取得できるのではなく、いろんな知識が必要なのです。

資格はなくても仕事はできる

通訳士になるために、必ず資格が必要というわけではありません。近年の外国人観光客の増加により、資格がなくても通訳士として仕事をすることができるようになりました。ただ、無資格通訳士が増えて通訳の質が落ちてしまうのではないかと懸念されているようです。通訳士としてしっかり働きたいと考えている人は、国家資格である通訳案内士を取得することをおすすめします。資格を持っている人の方が優遇され、通訳としての質が高いとみてもらえる可能性があるでしょう。

TOEIC

点数化されるTOEICの試験は、具体的にどれくらいの語学力があるのか知ることができます。また、TOEICの点数次第では、通訳案内士資格の英語の試験を免除することができます。免除対象になる条件点数は2つあります。

■リスニングとリーディングの合計が840点以上の人
■スピーキングで150点、ライティングの試験で160点以上

上記のいずれかが当てはまっているのであれば、外国語試験の免除が適用されます。通訳案内士資格の取得を目指す上で、必要とされる能力をTOEICの点数に置き換えることができます。通訳士を目指す人は、免除が適用される点数を目標に英語の勉強をすることがおすすめです。

専門学校や養成学校でも学べる

通訳士になる上で必要なスキルは、専門学校や養成学校でも学ぶ事ができます。通訳とは、通訳を必要とする人たちのコミュニケーションを円滑に進められるように手助けをすることが前提です。独学では培うことのできないスキルを、学校では友達や先生を通して学ぶことができます。学校で人を通して学ぶことは、通訳案内士の二次試験である口述試験の対策にもなります。また、学校やスクールによっては、自分の実力に合ったコースで受講することもできるようになっているため、誰でも通訳士に必要なスキルを学ぶことができるのです。

通訳案内士の国家資格内容とは

受験できる言語とは?

通訳案内士の科目である外国語の種類は、10カ国語です。英語、中国語、ドイツ語、韓国語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ロシア語、ポルトガル語、タイ語のいずれかを選ぶ形で受験することができるようになっています。資格の修得を目指す人は、自分の得意な語学で試験に挑むことができるのです。

一次試験と二次試験の違い

通訳案内士の試験は、一次試験と二次試験の2つに分かれています。それぞれの試験の概要は、一次試験がマーク式である筆記試験、二次試験が口述問題です。二次試験の口述問題は、実際に通訳する現場で必要とされる話術を基に、今持っているスキルがどのくらいなのかを試されることとなるでしょう。

受験者数はどれくらいいるの?

日本政府観光局の発表によると、平成29年度に通訳案内士の資格受験者数は10,560人となっており、前年の平成28年は11,307人、平成27年は10,975人となっています。また、平成27年度に関しては、前年度よりも50.5%以上もの受験者数の増加が見られたことから、2020年のオリンピックに先駆けて受験者数が増えていると言われています。外国語別で見ると、平成28年度は英語の受験者数が多く、これよりも半分を下回る受験者数で中国語、韓国語と続いています。英語に次いで中国語・韓国語が多いのは、近年の外国人観光客や韓流ブームが影響していると考えられます。

参考:JNTO 日本政府観光局

合格率はどれくらい?

平成28年度に行われた通訳案内士の合格率は、21.3%です。また、平成27年度に関しては19.3%という数字になっています。これを考察すると、およそ5人に1人が合格しているとわかります。一次試験の合格率が30%、二次試験に関しては70%程です。最後の関門とも言える二次試験よりも、一次試験の方が合格率が低くなっています。実際に外国語が話せることは大事なことですが、まずは一次試験の突破を目指した勉強をしっかり行いましょう。

受験資格は必要なのか?

通訳案内士に関しては、受験する際に必要な受験資格は特にありません。この資格には、試験の免除ができる制度があります。外国語を受験する際の科目選びが英語の人は、上述したTOEICの点数を上回ることで免除されるようになっています。

通訳案内士の出題内容とは?

外国語だけではない通訳案内士

通訳案内士を受験する際の科目数は4つです。外国語、日本地理・日本歴史、産業・経済、政治などを問う一般常識の4科目となります。これらは一次試験の内容となり、二次試験では応用力が試される口述試験が控えています。ここでは、対策が必要とされる一次試験の出題科目の試験内容について、それぞれ紹介していきます。

日本地理や歴史

国内の観光ガイドとして就職する場合、海外から来た観光客に日本の地理や歴史を伝えることができなければ、仕事をすることは難しいでしょう。試験のときだけではなく、就職後も地理や歴史、文化などの知識を使う場面が出てきます。試験の出題内容は、日本地理に関して地域性が問われる問題や、歴史的名所も含まれます。その中でも、日本歴史に関しては、中世以降の鎌倉時代から江戸時代の文化や歴史が出題される傾向が高くなっています。資格の修得後も必要とされるスキルであるため、しっかり勉強しておくようにしましょう。

経済や政治に関する一般常識

一般常識を問う科目は、観光業と結びついた問題が出題される傾向が高くなっています。例えば、外国人観光客数や日本の文化である歌舞伎などの工芸、世界遺産などを問う問題が多く出題されています。一般常識を学ぶことができる参考書は多くありますが、独学で学ぶのであれば通訳案内士に特化した一般常識や過去問が掲載された問題集で勉強するのがおすすめです。

外国語以外の免除制度

外国語以外の受験科目に関しても、免除制度があります。例えば、歴史能力検定2級以上の人であれば日本歴史が、旅行業務取扱管理者試験の合格者であれば日本地理が免除されるようになっています。また、大学入試のセンター試験において一定の点数以上を取っていた場合、通訳案内士の試験内容が免除されることも考えられます。地理受験であれば日本地理、日本史受験であれば日本歴史が免除されることになります。大学受験の際にセンター利用をした人は、通訳案内士の試験に合格しやすくなるでしょう。

資格取得の際に対策しておきたいこととは

受験する際に選ぶことになる外国語は、人によって筆記試験内容が異なります。しかし、その他の科目に関しては、どの外国語を選択しても共通の試験内容です。筆記試験に関しては、いずれもマーク式となっています。また、外国語以外の科目は、問題の内容がいずれも観光がテーマになっていることから、名所や史跡などの出題範囲が重なっている場合があります。

一つひとつ個別で暗記するのではなく、体系的に勉強することが各科目の点数を上げる際の効率的な勉強法です。一次試験の対策を行うことで二次試験で試されるスキルも培うことができますので、一次試験をメインに通訳案内士の対策を行うのがおすすめです。

通訳の3つ使い分けとは?

場面によって使い分ける必要のある通訳

通訳とは、通訳士含めた3人の当事者がいることが前提になります。しかし状況によっては、素早く通訳しなければならない場面や正確性を重要視する通訳が必要な場合があります。ここでは、場面毎によって必要となる通訳の種類について紹介します。

同時通訳と逐次通訳の違いとは

私たちに身近な通訳方法は、同時通訳と言われるものです。同時通訳とは、生中継されているアメリカの大統領演説は、中継を見ている世界中の国民でも話の内容が分かるように、それぞれの国の言語に吹き替えられています。一方で逐次通訳とは、アメリカの大統領が実際に演説しているところに区切りを付けてから翻訳されるため、話している人の言葉と通訳された言葉の両方を聞くことができます。通訳する側からすると、同時通訳の方が難しく、体力も使います。どんなに通訳が上手な人でも、15分おきに別の通訳士と交代しながら演説者の通訳を行うのが基本と言われています。

ウィスパリング通訳

ウィスパリングとは、日本語で囁きという意味になります。ウィスパリング通訳とは、聞き手の分からない言語を理解できる言語で耳元で囁くように通訳するのが特徴です。ビシネスで言えば会議やプレゼンテーションなどで使われる手法になっており、異国間を交えたグローバルな仕事の多い会社で必要とされます。

求められるのは語学力だけではない通訳士の仕事

国家資格である通訳案内士の試験内容から、語学力だけが通訳士に必要とされるスキルではないことが分かるかと思います。日本人以外の外国の人と交えた会話をスムーズに行ってくれるのが通訳士です。その国の文化や地理などを知っておくことが、読み手にとって理解しやすい言葉でしっかりと話せることが大切になります。通訳士として必要なスキルを学ぶことができる、国家資格である通訳案内士の修得を目指してみてはいかがでしょうか?

0