パンはコンビニやスーパーでは必ず手にすることができ、毎朝パンを食べている人も多いくらい私たちの生活には欠かせません。様々な年代に愛され、最近ではパンフェスなど大規模なイベントが開催されるほどパンが好きな人は多いですよね。そこで今回はパンを作る仕事である、パン職人という職業について調べてみました。
パン職人は過酷?仕事内容と一日の流れ
パン職人というと朝が早く、きついイメージがあるかもしれません。具体的にはどんなことを仕事としているのか、1日の流れとともに見ていきましょう。
パン職人の具体的な仕事内容
パン職人という仕事はどこも同じではなく、個人のパン屋さん、ホテル、チェーン店、工場など就職先によって仕事内容も異なります。ここでは個人で経営しているパン屋さんを例としてご紹介します。
- パンの仕込み・製造
- 新製品の開発
パンを作る仕事ですから、仕込みと製造が主な業務になります。粉から生地を作り、発酵させ、成形してからオーブンで焼いて仕上げるという工程です。それを1日に何回も行わなければなりません。こねる作業や立ちっぱなしになる作業なので体力を使います。また、店の開店に合わせて商品を完成させなければならないため、朝も早いです。
主力商品を目当てに来店するお客さんだけ、という特殊な場合を除き、新製品の開発はお店の経営にも関わってくる大事な仕事です。いち早く流行などを取り入れ新製品に生かすことができないと、飽きられてしまうことがあります。毎回同じ商品では選ぶワクワク感なども薄れてしまいますよね。製品の開発はお店の閉店後か休日にすることになるので、必然的に勤務時間が長くなりがちです。
パン職人の一日と勤務時間
ご紹介するのは午前8時に開店するパン屋さんの1日になります。パン工場やホテルなど、人が多くいるところになると完全シフト制になっているところが多いので、あくまで一例になります。
<午前4~5時 出勤~パンの製造>
前日に仕込んでおいた生地を成形し、店のオープンまでにある程度の商品数を焼き上げる必要があります。どの製品から焼き上げるか、段取りを決めて手際よく作業をこなしていきます。
<午前8時 お店の開店>
焼きたてのパンは人気なので、オープン前から店の外で待っているお客さんもいるかもしれません。すぐ手に取れるように開店に合わせて商品を陳列しておきます。
<午前10時 掃除や休憩>
ランチタイムは一番忙しい時間です。それより前か後に時間をずらして休憩をとります。お昼に合わせた仕込みもひと段落している頃なので、厨房の清掃なども軽く行います。
<午後1時 ひたすらパンの製造>
ランチタイムは飛ぶように商品が売れるため、補充するためこまめにパンを焼く必要があります。生地を作り、成形し、焼き上げる。同じ作業の繰り返しです。
<午後4時 休憩>
客足をみながらパンを焼き、こまめに休憩をとります。パン作りは体力を消耗するため無理は禁物です。
<午後7時 閉店>
翌朝の仕込み、店内や調理器具の掃除、レジも兼任しているならレジ締めなど閉店作業を行います。必要であれば新製品の開発をはじめます。
パン職人の気になる待遇面
労働面ではきつい条件が多いパン職人ですが、それに見合う待遇なのか気になりますよね。給料をはじめ待遇をみていきましょう。
パン職人の給料・年収
開業した場合は人気によって左右されてしまうため、こちらのデータは民間で働くパン職人の年収です。パン職人は年収400万円以下が全体の75%を占めています。
アルバイトだと月収10万円前後、正社員であれば20万円前後、経験者は30万円前後と、仕事のハードさに比べると決して高いわけではありません。
パン職人の休日
続いて休日ですが、一般的にパン屋さんは土日も営業していることが多いです。そのため、土日に休みは取れません。長期休暇も取りづらいと言えます。シフト制になっている工場のような勤務先であれば、土日休みや長期休暇も取れることがあります。
パン職人になるにはどうしたらいい?
パン職人になるためのルートはいくつかあります。国家資格や免許などが必要ではないため、それほど難易度が高いわけではありません。
専門学校や栄養・調理コースのある大学や短大に行く
まず、パンのプロフェッショナルになるための学校に通う選択肢があります。カリキュラムがきちんと組まれているため、卒業する頃には技術を習得することができます。また、専門学校や短大、大学などではパン職人に活かせる資格が取得できたり、学校側がホテルや大手チェーン店などと提携している場合があり、就職先を紹介してもらえる場合もあります。
求人からパン屋さんに就職・アルバイトで修業する
未経験からの正社員は難しいためアルバイトから経験を積み、正規雇用を目指すことになります。いつも求人が出ているわけではないため、働きたい店の求人が出るまで待たなければならないことも。また、時給からのスタートになるので給料は安いです。
開業支援サービスを利用していきなり独立
趣味でパン作りをしていて周囲にも評判がいいという人は、いきなり独立することもできます。やる気があればすぐに開業できますが、何からはじめていいかわからない場合は開業支援サービスを利用する方法もあります。
オーブンなどの調理器具は高価なものが多く多額の開業資金が必要になるため、銀行から借入を考えた時は事業計画書などが必要です。開業支援サービスを利用すれば事業計画書の作成などを行ってくれるので手間が省けます。開業後の人材派遣を行ってくれる会社もあるので開業した後も安心なところを選ぶといいですね。
パン職人の就職場所・求人情報
パン職人として修行を積みたい意欲はあっても、就職先があるか不安ですよね。どのようなところで働けるのか見ていきましょう。
パン職人が活躍できる場所
独学で勉強していく場合を除き、パン職人として働くことは経験や技術を培っていくためには必要です。4つの活躍できる場所をご紹介します。
- 個人のパン屋さん
- ベーカリーチェーン
- 製菓・製パンメーカー
- ホテルやレストラン
住宅地や商店街などで見かける小規模なパン屋さんです。個人で運営しているため人数が少なく、その分1人1人の負担が大きくなりますが、お客さんとの距離が近いという特徴があります。憧れているパン屋さんなら、そこで技術を磨くことができるため下積み時代からやりがいを感じられます。
全国展開の大手チェーン店、地域のチェーン店など規模によって違いますが、製品の品質を保つため作業が限定されているところが多いです。生地は工場で作られ、それが店舗に冷凍搬入されます。すでに生地ができていて、焼くだけというチェーン店もあるためスキルを磨きたいと思う人は入る前に確認しましょう。
大手チェーン店同様、大量生産の必要がある製菓・製パンメーカーの仕事です。製品にばらつきが出ないように作業が自動化されていて、手作業は少なくなります。スーパーやコンビニなどでいつも見かけるパンを製造することになります。
ホテルやレストランは生地は機械、成形から先は手作業のところが多いです。生地を作らなくてもいいとは言え、体力は必要です。また、成形担当、焼き担当、仕上げ担当など、担当があらかじめ決まっていて作業の効率化を図っている場合もあります。
パン職人の求人状況
大手チェーン店やメーカーは一定の人数を毎年募集していますが、個人のパン屋さんだと毎年必ず募集があるとは限りません。働きたい店が運良く求人を出しているとは限らず、なければ他の店を探すしかありません。また、多くの店では経験者のみを採用しているため、未経験から仕事を探すとなると相当の覚悟が必要になります。
パン職人になるなら取得しておきたい資格
パン職人に資格は必要?
結論から言うと、パン職人になるのに特に資格は必要ありません。パンに関する資格は、個人の技術を証明する証として取っておくと有利になるもの、就職先によっては技能手当の対象になるものもあります。
役立つ!パン職人におすすめの資格
パン職人が持っていると就職、転職時にアピールできる資格をご紹介します。
- パン製造技能士
- パンアドバイザー
- パンコーディネーター
- パンシェルジュ
- パンマイスター
数あるパンに関する資格の中で唯一の国家資格になります。試験は学科および実技試験があり、特級、1級、2級と分かれています。受験資格も必要になるため、合格するためには技術の他に経験が必要になります。
受験資格は、特級は1級合格後5年以上の実務経験がある人。1級は2級合格後2年以上の実務経験がある人。2級は2年以上の実務経験、または専門学校など指定学科の卒業している人。2級を取得していない場合は7年以上の実務経験で受験資格が与えられます。パン製造技能士の最上級である特級に合格するためには、少なくとも実務経験が7年以上必要になります。
日本野菜ソムリエ協会の講座を受講後、検定試験に合格して取得します。パンを売る側ではなく「パンを食べる人」全ての人を対象にした資格で、パンに関する知識やパンの楽しさや魅力を社会に幅広く伝えることを目的としています。
日本で初めて「パンを作る側」ではなく「パンを食べる側」からパンに関する適切なアドバイスや提案ができる資格として発足されました。日本パンコーディネーター協会が主催する講座を受講し、検定試験に合格すると取得できます。
パンシェルジュとは、パンのコンシェルジュという意味であり、パンの案内人・相談役として幅広い知識を持つ、パンが好きな人のための資格です。3級、2級、1級と、より深く知識を深めていくことができます。
民間の資格はパンを食べる側からのものが多いですが、こちらは「パンを作る側」からの、本格的なパン作りの基礎知識や技術を証明するための資格です。全118種類のレシピ、自家製酵母パンの作り方や開業のノウハウまでも学ぶことができます。忙しい人でも学びやすい通信講座で受講することができます。
パン職人に向いている人の特徴
パン職人について見ていきましたが、自分に向いているのか不安な人も多いかと思います。勤務時間が長く、覚悟がいると言われるとなおさらですよね。では、パン職人に向いている人はどんな人なのでしょうか?興味がある方は当てはまるかチェックしてみてくださいね。
パンが好き
何よりもまず、パンが好きであることが前提です。パンへの情熱がないとパンを作る仕事へのやりがいは感じられません。新製品を開発する時は、自分が食べる側の視点で試行錯誤しなければいけません。パンを食べること、作ること、その両方が好きである必要があります。
体力に自信がある
パンを作るためには重い粉袋を持ったり、立ちっぱなしであったり重労働です。やる気があっても体力に自信がなければ続きません。
人の笑顔が好き
パン職人になるということは、他の人にパンを食べてもらうということです。人の笑顔が好きであればぴったりですね。特にそうは思わなければ個人の趣味で楽しむ範囲でいいのかなと思います。
食べてくれた人が「おいしい!」と言ってくれて、またあなたが作ったパンを食べたいと言ってくれる喜びを感じられる人が向いています。
やりがいを感じられる
パン職人はパンを作り、パンを食べてくれた人を笑顔にする職業です。やりがいを感じられると、様々なパンを作りたくなり、パンを作ることが楽しくなると思います。上記3つを全て満たしていれば、自ずとやりがいは感じられるはずです。
女性のパン職人
パン屋さんでは女性の姿も見られます。立ち寄ったパン屋さんに女性のパン職人がいると親しみやすい雰囲気がありますね。長時間勤務で肉体労働ということもあり、働きにくいと思う人もいるかもしれませんが、パン屋さんへ通う客層は女性の方が多いため、女性の視点でパンを作ることも必要です。
体力勝負にはなりますが、結婚後もパート勤務に切り替えて時間を短縮し、育児をしながらでも無理なく働くことも可能です。また、自宅でパン教室を開いたり、小規模なパン屋さんを営むこともできますね。
パン職人への道は険しいけどやりがいのある仕事
いかがでしたか?パン職人について見ていきました。朝は早く、長時間勤務で重労働、おまけに所得もそれほど多くないキツイことだらけの仕事という印象を受けたと思います。ですが、パンへの情熱がある人にとっては大変やりがいがある仕事です。毎日パンのことを考えて、新製品を考えるのが楽しい!という人は目指してみてはいかがですか。飛び込む勇気がないなら、アルバイトからはじめてみるのもオススメです。