ビルメンテナンスは楽な仕事って本当なの?その気になる仕事内容と取得しておきたい7つの資格とは

ビルメンテナンス業は、「楽な仕事ランキング」に入っている職業の一つです。しかし、本当にビルメンテナンスは楽な仕事なのでしょうか。イメージだけが先行し、ビルメンテナンスに就職・転職してしまい、気づいた時には「遅かった」ということがないようにしたいですよね。今回は、ビルメンテナンス業の詳しい仕事内容や資格について調べてみました。

ビルメンテナンスとは

主にビルや工場、多くの人々が利用している商業施設などの建物を維持するために点検や修繕などを行い、管理するとても重要な役割を担う仕事です。近年人気を集めているビルメンテナンスの詳しい仕事内容は、どのようなものなのでしょうか。

ビルメンテナンスの主な仕事内容

ビルメンテナンスの仕事は、建物を利用する人々に安全で快適に過ごしてもらうため、4つに分担して業務を行なっています。

  • 環境衛生管理業務
  • ビル管理法に定められた環境基準を維持するため、ビルの内部や周辺を清掃し清潔に保ち、ゴミの分別や害獣・害虫駆除などを行います。温度や湿度の空気環境、飲料水の水質管理、貯水槽の清掃、排水槽の清掃や点検も行い排水環境を整えます。

  • 設備管理業務
  • 機械により維持されているビルが多いため、異常がないか点検し、もし異常が見つかれば早期発見・早期対応します。空調管理(空調の清掃、温度管理)、電気設備管理(電圧・電流・電力計の確認、変電装置の操作)、ボイラー管理(ボイラーの監視など)機会設備管理(エスカレーター・エレベーター、自動ドアの保守点検)、建物内の点検(建物内の設備故障や破損の確認)など、設備管理業務はビル内の設備全般の保守点検と管理を行います。しかし、電気設備管理とボイラー管理を行うには資格が必要となります。

  • 保安警備業務
  • 災害や事件・事故などを防ぐための警備や巡回、消防設備の点検、駐車場の管理業務などを行います。大型のビルに関しては警備員を雇用しているため、ビルメンテナンス業務に警備が加わることは、ほぼありません。

  • マネジメント業務
  • ビルに清掃業者を外注する場合、業者との打ち合わせをしたり、建物をメンテナンスする際(清掃などで一時的に使用不可になる場合)のテナントへの交渉、テナントやお客様からのクレーム対応もマネジメント業務の1つであり、クレーム内容により各担当業務へ連絡します。

ビル管理法(正式名称「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」)で定められている特定建築物に関しては、定期的に点検をすることが義務付けられています。

参考:e-Gov 建築物における衛生的環境の確保に関する法律

ビルメンテナンスの気になる年収

働き方や所属する会社により変動はありますが、平均300~500万円程です。ビルメンテナンスの仕事は、残業手当や夜勤手当、宿直手当など基本給に手当がプラスされることが多く、月給に変動があるのも特徴です。ビルメンテナンスの仕事内容には、国家資格を有するものがあります。資格を取得することにより年収が高くなる傾向にあります。

未経験でも働くことができるの?

未経験でも働くことは可能です。未経験から実務経験を積むことで給料も上がりますが、さらにステップアップするためには、資格を取得するといいでしょう。

ビルメンテナンスに必要な資格とは

ビルメンテナンスの仕事は資格がなくても行うことはできますが、無資格では仕事内容に制限があります。しかし、資格を取得をすることで昇給や昇格につながります。

取得しやすい代表的な4つの資格

受験資格に制限がなく、難易度もそれほど高くありません。これからビルメンテナンスの仕事に就きたいと希望している人は、取得しておくことをおすすめします。

  • 第2種電気工事士
  • 電気技術者試験センターにて行う筆記試験と技能試験を合格することにより取得できます。安定器の交換作業やコンセント工事は火災や停電の恐れがあり、事故発生の可能性もあるので、第2種電気工事士の資格を取得していないと行えないと法律で定められています。

    参考:e-Gov 電気工事士法

  • 第3種冷凍機械責任者
  • 冷凍機械責任者とは「高圧ガス製造保安責任者」の資格区分であり、国家資格の1つです。冷凍機械に関わる高圧ガスを製造する施設での保安業務を行う資格です。高圧ガス保安協会にて学科試験を行う方法と、講習会を受け、学科の一部が免除になる講習会検定試験があります。第1種、第2種、第3種とあり、ビルメンテナンスの仕事では100トン未満の保安を行うことができる第3種を取得することをおすすめします。高圧ガスとは高圧ガス保安法で定められているガスのことです。

    参考:e-Gov 高圧ガス保安法

  • 危険物取扱者乙種4類
  • 消防試験研究センターにて行われている試験を合格することにより取得できます。取得種類により取り扱いできる危険物は異なります。ビルメンテナンスの仕事ではガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類などの引火性液体を取り扱える第4類取得をおすすめします。

  • 2級ボイラー技士
  • 安全衛生技術試験協会が行うボイラー設備管理をする際に必要な資格です。特急、1級、2級とあり、ビルメンテナンスの仕事では全種類のボイラーを扱うことができ、受験資格の規定がない2級の資格を取得することで業務を行えます。資格取得には、公益財団法人安全技術試験協会が実施している国家試験を受験する方法と認定校での職業訓練を受ける方法の2つあります。

■国家試験
月に1~2回行われており、2級の試験には実技はなく学科試験のみとなり合格率の高い資格

■職業訓練
2級ボイラー技士コースを受講し講座を修了することにより、無試験で資格取得が可能

難易度が高い3つの上位資格

下記3つの資格は取得することが難しいですが、取得しておくことで資格手当がつく会社も多く、ビルメンテナンスへの就職や転職が大変有利になります。

  • 建築物環境衛生管理主任技術者(ビル管理技術者、ビル管理士)
  • 厚生労働省管轄の国家資格です。ビルメンテナンスの仕事をする上で、最も有利になる資格です。ビル管理法では、特定建築物には建築物環境衛生管理主任技術者資格保持者を必ず選任することを義務付けられています。資格を取得することにより、ビルメンテナンスの現場責任者になることができます。特定建築物が増える中、ますます需要が高くなる資格の1つです。

    建築物環境衛生管理主任技術者を取得するためには、2年以上のビルメンテナンスの実務経験を受験資格とする国家試験を受けるか、日本建築衛生管理教育センターの開催する講習会を受講するかの2つの方法があります。講習会は101時間を2週間程かけて行います。また受講料も高額のため負担が大きくなります。

  • 第3種電気主任技術者(電験3種)
  • 経済産業省管轄の国家資格です。電気主任技術者の資格は第1種、第2種、第3種とありますが、ビルメンテナンスの仕事では第3種の資格取得で可能な業務内容です。資格を取得するためには国家試験を受験する方法と、経済産業省の認定を受ける方法の2種類あります。

    ■国家試験を受験する
    国家試験を受験するための資格は特にありませんが、簡単に合格できる試験ではないので事前の準備は万全にしておきましょう。

    ■経済産業省から認定を受ける
    経済産業省から認定を受けるためには、工業高校や高専、大学の電気工学系学科を卒業していることと規定の単位を取得していること、500ボルト以上の電気工作物に関わる実務実験を必要としており、認定制度での資格取得は非常に少ない傾向にあります。

  • エネルギー管理士
  • 熱管理士と電気管理士の2種類あります。ビルメンテナンスの仕事では、電気管理士を取得することをおすすめします。資格取得には省エネルギーセンターが行う試験を受験する方法と、3年以上のエネルギー使用に関する実務経験をし、認定研修を受ける方法の2つあります。合格率が低い試験で、簡単ではありません。しかし、電気主任技術者の資格取得後の受験だと比較的合格しやすい傾向にあります。
    ビルメンテナンスの仕事においてエネルギー管理士の資格を発揮する場所はそれほどありませんが、資格を取得していることにより知識があることを証明することができます。

ビルメンテナンス会社を選ぶポイントは?

ビルの数だけメンテナンスが必要になる仕事なので、ビルメンテナンスの会社も多く存在します。では、どのように会社を選べばいいのでしょうか。会社選びのポイントを紹介します。

ビルメンテナンス会社は大きく分けて2種類ある

ビルメンテナンス会社には、系列系と独立系の2種類あります。では、系列系と独立系の違いは何でしょうか。自分にあった系列の会社を選ぶことで、長く務めることができるでしょう。

  • ビルメンテナンス専門の系列系
  • ビルメンテナンスを行うための会社です。主に、ビルを所有している規模の大きい会社が設立しています。給料面や福利厚生がしっかりしている傾向にありますが、実務経験や資格を取得していることを条件とする会社が多くみられます。

  • 未経験者の採用率が比較的高い独立系
  • 系列系の下請けをすることが多く、給料や待遇も系列系より劣る傾向にありますが、未経験や資格が無くても採用する会社が多くあります。ビルメンテナンスの経験を積むために独立系のビルメンテナンス会社で勉強し、系列系へ転職するのもおすすめです。

こんな会社は気をつけよう

ビルメンテナンスのイメージから楽な仕事と思われてしまいますが、会社選びを怠るとブラック企業に入社してしまうこともあります。では、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。

  • 現場見学をさせてくれない
  • 入社予定の社員には現場を見学させる決まりがあります。しかし、頑なに現場見学を断る会社は注意が必要です。劣悪な環境のビルであったり、無資格でありながら、資格を有する仕事をさせられていたり。問題が起きる前に、現場見学をさせてくれない会社には入社しないことをおすすめします。

  • 勤務表を見せてくれない
  • 勤務表に関しても、入社予定の社員には開示する義務があります。勤務表を見ることで勤務体制が判ります。夜勤などもある仕事なので疑問点があったら質問し、オーバーワークになっていないかなど、細かくしっかり確認しましょう。

求人はたくさんあるの?

ビルメンテナンスの求人は都市部の方が多い傾向にありますが、全体的に求人が多いとは言えない業界です。1社に絞ってエントリーするのではなく、自分の条件にあった数社を選び、エントリーをする方が効率的でしょう。転職の場合は、転職サイトや転職エージェントに登録し、たくさんの情報を得ることをおすすめします。

女性でもビルメンテナンスの仕事に就けるの?

女性の割合がまだまだ少ない業界です。しかし、女性向けの商品が多い商業ビルや子どもが多く利用するビル、ホテル、旅館、女子寮など、女性ならではの視点で考え、細かなところまで気づける女性目線でのビルメンテナンスを希望している会社は少なくありません。

ビルメンテナンスは将来的にも需要のある仕事

人々が利用している建物には、必ずビルメンテナンスが必要になります。建物を長く使用するためにも、行き届いたメンテナンスは必要不可欠です。使いやすい環境作りや、衛生面など徹底的なビルの管理ができる、ビルのプロフェッショナルであるメンテナンス会社を必要とするビルオーナーは多くいます。新しいビルがたくさん増える中、ビルメンテナンスの仕事はなくなることはありません。幅広い年代が活躍できるビルメンテナンスの今後は、スキルや実績も現状よりさらに高く求められることでしょう。

0