私たちを癒してくれるペットですが、フードの質の向上や医療の進歩により昔よりも寿命が長くなってきています。ペットの高齢化が進み、寝たきりになるペットや痴呆症になるペットも増えてきて、ペットを介護する飼い主さんの負担も大きなものです。今回はペットの介護のプロ「動物介護士」の仕事について解説いたします。
動物介護士の仕事とはどんなもの?
動物介護士とは
高齢のペットは病気になったり、身体が弱って歩けなくなることもあります。また、人間と同じように痴呆症になるペットもいるのです。飼い主自身も高齢化によって、ペットの世話ができなくなる人も多くなってきています。そしてペットの介護に関して、知識があまりない人も多いため、正しい介護ができずに困っているケースも多いです。
平成25年9月に改正された動物愛護法では、飼い主がペットを最期まで看る責任があることを示しています。このことから、高齢のペットを介護する知識や老犬や老猫を預ける介護ホームが増えつつあります。動物介護士は、高齢のペットの介護・ケアを正しく持つ「ペット介護のプロ」なのです。
動物介護士の仕事内容
一般社団法人 ペットフード協会の平成29年全国犬猫飼育状態調査結果によると、犬の平均寿命は14.19歳、猫の平均寿命は15.33歳でした。ペットが長生きするようになってきている一方で、ペットの介護についての知識を持っていない飼い主が、これ以上飼えないが殺処分は避けたいという思いから、老犬や老猫を看取ることを目的にした介護ホームへペットを預けるケースが増えてきています。
ホームには獣医師がいて24時間体制でケアをする施設や、訪問看護のサービスも増えてきていて、充実したケアをしている施設もあります。動物介護士の仕事は、飼い主に代わって老犬や老猫の介護をすることです。給餌や排泄物の介助、散歩・遊びや足腰のトレーニング、リハビリ、おむつの交換や動物病院への送迎などが仕事内容です。
参考:一般社団法人ペットフード協会 平成29年全国犬猫飼育状態調査結果
動物介護士の年収・給料はどのくらい?
動物介護士の給料は、職場によって異なりますが、平均16万円~18万円ほどです。年収は200万円~240万円ほどになります。高級ペットホテルや人気のサロンなどでは、高収入が得られるようですが、高度のサービスや技術・知識が求められます。
動物介護士に向いている人
- 向上心がある人
- 体力・精神力がある人
- 人とのコミュニケーションが上手な人
- 動物の気持ちに寄り添いたいと思える人
- 気配りができる人
- 介護に関心がある人
動物介護は介護について正しい知識を持っていることが大切です。介護が必要になった動物へのケアは医療とも密接に関わります。動物介護士は医療行為はできませんが、身体の仕組みや治療へ理解がなければ対応できません。医学は日々進歩していて、介護についても日々新しい知識を必要とします。動物介護士になる人は、常に向上心を持っていて勉強が苦でない人が向いているでしょう。
身体を動かすことができなくなった動物を抱えておむつ交換をしたり、体位変換などを行うには体力が必要です。また、散歩をさせたりリハビリを行う時も身体を持ち上げることがあります。そして、悲しいことに立ち会わなければいけないのが動物介護士なのです。
精一杯介護をしても、目の前で動物が亡くなることもありますし、長く関われば関わるほど情が移り、死を受け止めることが辛くなるでしょう。しかし、その悲しみをいつまでも引きずっていたら他の動物の介護ができなくなってしまいます。動物介護士には強い精神力も必要なのです。
動物介護士は動物とだけ関わればいいというわけにはいきません。介護をするペットの飼い主さんとの信頼関係はとても大事です。愛するペットを預けるのですから、信頼できる人ではないと飼い主さんが不安になってしまいます。自宅でのペットの介護方法をアドバイスしたり、お世話の方法を教えたりして飼い主さんとじっくりコミュニケーションを取ることは大切なことです。
動物介護士は楽しいことばかりではなく、苦しんでいる動物を目の前にしなければならないこともあります。単に動物が好きだという理由だけではできない仕事です。言葉を話せず、自分の体調や痛みを伝えられない動物に寄り添って、その辛さを理解してあげることが大切になります。
ペットを飼ったことがある人には分かると思いますが、動物は一緒にいる時間が長ければ長いほど、動物の表情や仕草で何を訴えたいのか分かってきます。動物介護士にはこのように、細やかな観察力を持ち合わせて動物に心から寄り添える人が向いていると言えるでしょう。
動物介護士は、動物の介護に関して動物や飼い主さんへの気配りができることが大切です。与えられた仕事の中で、どれだけ気配りができるかによってきめ細やかな介護に繋がるのです。動物だけではなく、飼い主さんへの気配りも必要ですし、動物病院の勤務ではまわりのスタッフや獣医師への気配りも大切になってきます。
動物介護士はペットの介護を通じて、ペットが健康に、そしてより快適に暮らすための手助けをします。ペットだけではなく、日頃から介護に関心があり、どう接したらもっと快適になるのかと考えられる人は動物介護士に向いているでしょう。
動物介護士になるには
就職にも繋がる【専門学校】で学ぶ
専門学校では、動物介護士の資格を目指して勉強できる専門コースを設けている学校が多くあります。専門学校では動物の介護だけでなく、トリミングやグルーミング、ペットのトレーニングなどを学びます。専門学校は老犬介護施設などで実習をして、実際の現場でプロの動物介護士に仕事を教えてもらうことができるという利点があります。また、介護以外のトリミングなどペットを癒やすための技術も学ぶことができるのが専門学校です。
自宅でできる【通信講座】で学ぶ
学校へ通う時間がない人へは通信講座がおすすめです。自分のペースで空いた時間を使って、テキストやDVDを使って学ぶことができます。希望者は学校での実習や、プロの人についてお客様の自宅へ一緒に行き、実際に介護の仕事を目の前で見て手伝うことができる講座もあるので、希望者は探してみてはいかがでしょうか。また就職に関しても、資格協会や学校が相談に乗ってくれるところもあります。
【独学】で動物介護士の勉強はできる?
動物介護士の仕事は、介護以外にもシッター、トリミング、グルーミング、動物の身体の仕組みやしつけなどに関してなどの幅広い知識が必要です。この知識を独学で身につけるのは困難です。動物介護士を目指すなら、学校へ通うか通信講座を利用することをおすすめします。
動物介護士は資格が必要?
動物介護士として働くために、必要な国家資格などの公的な資格はありません。しかし動物介護士は、ペットの介護をするために専門的な知識と技術が必要です。その知識や技術を有していることの証明になるのが資格なのです。資格には民間のものがいくつかあり、ペット業界へ就職するとき、資格を持っていることで就職が有利になる可能性もあります。このため、動物介護士を目指す人には資格を取得することをおすすめします。
動物介護に関するおすすめの資格とはどんなものある?
- ペット介護士
- 小動物介護士
- 老犬介護士
- ドッグヘルパー
通信講座大手「がくぶん」と、群馬県にある「世界の名犬牧場」というドッグコミュニティパークが認定する資格です。がくぶんの「ペット介護士養成講座」を修了すると資格認定を得られます。
小動物介護士は、一般社団法人 日本ペット技能検定協会の認定資格で、協会が指定している教育課程を修了して筆記試験に合格すると資格が取得できます。教育課程は通信講座で受講することができるので、忙しくて通学できない人におすすめです。
一般社団法人 日本キャリア教育技能検定協会(JCSA)が認定する「老犬介護士養成専門講座」を修了して、認定課題を一定水準の知識・技術を満たすことでJCSA認定マスターライセンス「老犬介護士」の資格を取得することができます。
一般社団法人 日本キャリア教育技能検定協会(JCSA)が認定する「ドッグヘルパー講座」を修了して、添削課題をクリアすることで資格が取得できます。指定の教育課程は通信講座で受講することが可能です。
資格試験の難易度は?
動物介護士の資格を取るためには、各協会が認定する教育課程を修了することが必要です。通学講座か通信講座のカリキュラムを修了し、試験を受けて合格すると資格が取得できるシステムになっています。難易度は講座によって違いますが、だいたいの資格が70点以上で合格としています。教育課程をしっかり勉強していれば合格できる難易度なので、勉強したら復習するように心がけているといいでしょう。
動物介護士の就職先
動物介護士が活躍する場所はどんなところ?
- 動物病院
- ペットホテル・ペットサロン
- ペットシッター
動物病院は動物介護士の知識や技術が充分に生かせる場所です。動物病院には動物看護師がいないところもあるので、動物介護士はペットの世話や看護を行います。また、動物病院へ来る飼い主さんの不安を取り除いたり、相談に乗ることもあります。
ペットを飼う家庭が増えてきていますが、ペットは「家族の一員」として大切にされています。飼い主さんが家を長く留守にする時に、ペットを預けるペットホテルの需要は年々高まっています。また、ペットの健康やシャンプーやカットなどの身だしなみに気を配る飼い主さんも多いため、ペットサロンが多くできてきました。動物介護士はこのような場所でも活躍しています。
飼い主さんは、大事なペットを預けるために色々なペットホテルやペットサロンを吟味して探します。預け先に動物介護士の資格を持っている人がいれば、何かあった時に安心です。そのため、ペットホテルやペットサロンでは動物介護士の資格を持っている人を採用することがあるのです。
ペットの寿命が長くなってきたことで、ペットを介護する飼い主さんも増えてきました。愛するペットが高齢のため、歩けなくなったり排泄を失敗するようになり、夜泣きがひどくなるなどすると、飼い主さんはどうしたらいいのか悩みます。シニア期のお世話の知識がないことで、疲れ切ってしまう飼い主さんも少なくありません。
ペットシッターの会社では、シニア期のペットを預かるところもあり、飼い主さんが一人で悩みを抱え込まないように、相談に乗ったりお世話の仕方をアドバイスします。ペットから目が離せない飼い主さんの代わりに、ペットを預かりお世話をしたり、必要に応じてトレーニングを行います。
動物介護士の求人はある?
動物介護士の資格は、ペット関連の資格の中でも比較的新しい資格です。そのため、認知度が低いのが現状です。「動物介護士」としての求人は多いとはいえません。しかし昨今、ペットの高齢化が進む中で、ペットにも認知症があるということも分かってきていることでペットの介護に関心が高まってきているのは確かです。ペットシッターでは介護を専門とする会社も出てきていますし、今度は動物介護士の資格を持っている人が活躍できる場所が増えていくことでしょう。
動物介護のやりがいと苦労とは
動物介護士のやりがいとは
- 動物介護士だからこそできることがある
- 動物と飼い主に喜びを与えることができる
動物介護士は専門的な知識と技術を持った人です。一般の人にはない知識があることで、動物の介護を適切に行うことができます。飼い主さんにとっては、ペットは何歳になっても大切な家族ですから、最期まで快適に暮らせるようにと願っています。動物介護士は、その願いを叶えるため持っている知識を生かして、飼い主さんとペットの手伝いができるのです。
高齢のペットは食欲が落ちて急にご飯を食べなくなったりします。また、足腰が弱ってしまい大好きだった散歩ができなくなってしまうペットもします。動物介護士は、専門的な知識や技術を生かしてリハビリなどを行い、飼い主さん一人では体力的にも精神的にもきつい介護を手助けすることで、少しずつ回復して散歩ができるようになったり食欲を取り戻すことがあります。飼い主さんがそんなペットの姿を見て喜んでいる姿を見ると、動物介護士になってよかったと思うでしょう。
動物介護士の苦労はどんなこと?
- 体力が必要
- 飼い主さんとのコミュニケーションがうまくいかない
- 死に立ち会うことがある
大型犬の介護の際など、寝たきりの犬を抱えて体位変換をするのはかなりの体力が必要です。また、散歩やリハビリにも体力は必要となります。男性が少ない職場だと力仕事が辛いと感じることがあります。
ペットの介護を頼む飼い主さんの中には、協力的ではない人もいます。ペットの介護についてアドバイスしようとしても聞いてくれない場合もあり、そんな時は難しさを感じることがあるでしょう。
介護をしているペットの死に立ち会う場面もあるのが動物介護士です。お世話をしていたペットを看取るのは何度経験しても辛いものです。
命と向き合う仕事
ペットを飼う家庭が増えてきている中、今後そのペットが歳を取っていくことで、動物介護士の役割は大きくなっていくことでしょう。ペットを飼い始めるとき、最期まで責任を持つことを覚悟して飼い始めたとしても、いざそれが現実になると知識も技術もない人はどうしたらいいのか戸惑うのです。動物介護士は動物だけでなく、飼い主さんのケアもしながらペットが最期まで幸せでいられるような手助けをしていく大切な役割を担っています。