建築士の仕事内容や必要な資格とは?一級・二級ごとの試験内容や難易度・受験資格まで徹底解説

建築士の仕事は女性でも長く続けることができるやりがいのある仕事です。今回は建築士の資格の違いや、仕事の内容やなり方について詳しく紹介いたします。

建築士の仕事内容や年収・将来性

建築士の具体的な仕事内容と一日のスケジュール

お客様のイメージを形にする

建築士の仕事は、建築物の設計や工事の監理をすることです。そのため建築士は住宅であれ、商業施設であれ、最初にお客様からどんな建物を建てたいかをヒアリングし、お客様の頭にある漠然としたイメージを図面に起こします。もし図面でのイメージ共有が難しい場合は、ミニュチュアを作成して完成イメージを共有します。

工事現場で現場を監督する

工事に入ったら、設計図通りに工事が進んでいるか監理します。実際に現場に行き、細くチェックして指示を出したり修正案を考えたりします。そのため現場の工事業者とやりとりしながら、設計の手直しをすることもあります。

安心、安全な建物を設計する

建築物は長く世の中に残ります。もちろんお客様のイメージと予算に合わせて建物を建てることも大切ですが。同時に安心で安全な建物を設計することも大切な仕事の一つです。そのため安全性や耐震性を考慮した構造設計を行います。

建築士の一日のスケジュール

企業に勤務する建築士の一日のスケジュールを紹介します。

9:00 会社に出社しメールチェックなど
10:00 お客様と打ち合わせ
12:00 休憩
13:00 設計図の作成など
18:00 退勤

個人事務所の建築士も同じようなスケジュールで仕事をしています。建物の設計図を書くためにお客様との打ち合わせは欠かせません。お客様との打ち合わせは先方の都合に合わせなければいけない時もあります。

建築士の年収と待遇

一級建築士の年収

一級建築士の年収は、平成28年の賃金構造基本統計調査によると約644万円で比較的高めです。また事業者の規模別に見ると、10〜99人の事業所の一級建築士は562万円、100〜999人は666万円、1000人以上690万円と、大手の建設会社に勤務している建築士ほど年収が高くなります。

個人事務所の場合は、本人のスキルや人脈、仕事量によって年収が変わります。また、扱う建築物が個人宅か、もしくは公共のコンサートホールや橋、公園などの公共施設や商業施設か、など建物の規模によって単価に大きく差がでます。建築士として知名度が上がればデザイン料を高く設定することも可能です。
個人事務所の場合、報酬は自分で決めるため、実力次第では年収数千万円まで狙うことができます。

勤務時間や休日は

勤務時間は平日9時から18時までが一般的です。しかし、お客様の都合で打ち合わせが土日になったり、設計図の締め切り前などは深夜の残業もザラです。建築士の仕事は事務職と言うよりもクリエイティブな仕事です。建物に関するアイディアはいつ頭に浮かぶかわからないため、アイディアが浮かべば休日関係なく仕事をする人もいるでしょう。

家事や育児と両立は可能?

建築の仕事は男性社会ですが、最近は女性の建築士も増えてきました。しかし、残業や休日出勤、お客様との打ち合わせが土日に土日に集中してしまうため、家事や育児と両立させるには家族の協力が欠かせません。
家族や育児を優先させたいなら、独立するのも有効な手段です。設計の仕事はCADなどの基本的なソフトウェアがあれば自宅でも仕事ができるため、自宅兼事務所として仕事量をコントロールしながら続けるのもいいでしょう。

建築士の仕事の将来性

街づくりに欠かせない仕事

建築士はただ建物を設計するだけでなく、街づくりに関わる仕事です。公共施設などの建物を設計する時は、その施設を利用する人の流れを考えながら設計します。つまり町の印象や住みやすさを決めるのは建築士が設計した建物次第です。そのため建築士の仕事は街づくり欠かせない仕事だと言えるでしょう。

社会貢献度の高い仕事

高齢化社会が進んでいく日本では、今後お年寄りや障害のある人が生活しやすいバリアフリーの建物の需要が増えていくでしょう。また地球の温暖化対策としてエコハウスや太陽光の活用、大規模な震災に備えるための免震性や耐震性建物が社会全体として求められます。そのため建築士の仕事は日本に住む人が安心して、安全に生活できる社会の基盤を作る社会貢献度の高い仕事だと言えます。

建築士になるには?必要な資格や大学・試験

建築士の資格の種類・受験資格

一級建築士

建築に関する資格の中で最も難易度が高い資格です。資格を取得することで、個人の住宅からスタジアムまで設計できる建築物の種類が増えます。
受験資格には実務経験が必須で、四年制の大学を卒業後(指定科目の取得が必要)は2年の実務経験、建築系の短期大学を卒業した場合は実務経験が3~4年必要です。また、二級建築士から一級建築士を目指す場合は、二級建築士として4年の実務経験後、受験資格が与えられます。

二級建築士

一般の住宅の設計ができる資格です。個人宅の設計がメインであれば二級建築士の資格でも仕事ができるため、二級建築士の資格のみの建築士も多くいます。
受験資格は一級建築士に比べると緩和されています。四年制の大学を卒業後は(指定科目の取得が必要)実務経験がなくても受験することができます。また、建築の指定科目が学習できる高校を卒業すれば、実務経験が3年。建築関係の学歴がない場合は7年以上の実務経験があれば受験できます。

木造建築士

木造住宅程度の建築物を設計できる資格です。そのため二級建築士よりも設計できる建築物の幅が狭くなります。受験資格は二級建築士と同じです。

一級建築士と二級建築士の資格や仕事内容・試験・難易度の比較

資格の違い

一級建築士と二級建築士では免許を交付する機関が異なります。一級建築士は国土交通大臣が免許を交付し、二級建築士は各都道府県知事が免許を交付します。
国土交通大臣が免許を交付する一級建築士は、二級建築士よりも大きな権利が与えられます。それと同時に、公共施設などの大きな建造物の設計を行うことができるため、それだけ責任も大きいと言えます。

仕事の内容の違い

一級建築士は個人の住宅からスタジアム、商業施設と設計できる建物の制限がありません。それに比べ、二級建築士は住宅のみ設計ができます。そのため、個人の住宅の設計をメインで仕事をするなら二級建築士の資格だけでも充分に仕事をすることは可能です。

試験や合格率の違い

平成28年の二級建築士の合格率は学科試験で42.3%、製図試験で53.1%です。一級建築士は、学科試験で16.1%の合格率、製図試験で42.4%の合格率です。このようにどちらの試験も学科試験の方が合格率が低いため、しっかりとした準備が必要です。

学べる学校や、学科の違い

二級建築士、一級建築士の受験資格には大学や高等専門学校、短期大学、専修学校で「指定科目」の単位が必要です。必要な単位数は建築技術普及センターホームページに詳しく紹介してありますが、基本的に大学や高等専門学校、短期大学、専修学校の建築学科に進めば問題なく指定科目の単位は取得できます。

一級建築士になるための3つルート

高校卒から一級建築士を目指す

高校の建築・土木科を卒業後、実務経験を3年積むことで二級建築士と木造建築士の受験資格が与えられます。二級建築士の資格取得後は、二級建築士として実務経験を4年積むと一級建築士の受験資格を取得できるため、一級建築士の試験を受験し合格できれば一級建築士になることができます。

二級建築士の資格取得後、一級建築士を目指す

大学で建築系の学科を卒業後、実務経験なしで二級建築士の受験資格が与えられます。二級建築士の資格を取得し、そこからさらに二級建築士として実務経験をを4年積むと一級建築士の受験資格が与えられます。そして一級建築士の試験を受験し、合格すれば一級建築士になることができます。

大学卒業後、実務経験を経て、一級建築士を目指す

大学で建築系の学科を卒業後、二級建築士の資格を取得しなくても実務経験が大学卒の場合は2年、短大卒は3年から4年、高専卒は4年あれば、一級建築士の受験資格が与えられます。

建築学科のある大学や学校の選び方

同じ建築学科でも大学によって特色があります。建築の分野には意匠、構造、設備、施工など複数の分野があり、大学によって力を入れている分野が異なります。そのため大学の建築学科に進学する時は自分が建築のどの分野について学びたいか、将来、建築の分野でどのような仕事をしたいかを決める必要があります。

建築系の大学で学ぶ内容

建築系の大学では建築物の美しいデザインや安全性、住みやすさの計画について学びます。建築学科で学ぶ主な科目は建築計画と建築工学です。

建築計画

建物を利用する人の住みやすさや使いやすさを考えるのが建築計画です。既にある建築物を題材にして、どのような建築計画に基づいて設計されたのか考えていきます。また、自分が書いた設計図を基に模型を作成して、部屋の配置や動線が本当に住みやすく、そして使いやすいか考察していきながら学びます。

建築工学

安全な建築物を設計するための構造力学について学びます。構造力学は物理学を建築物に当てはめた学問です。簡単な数式を使って建物の耐震性や免震性を計算する方法や、アーチ構造やトラス構造などいろいろな建築構造の種類や特徴を学びます。

建築士の仕事に必要な能力やスキル

建築士の仕事に必要な能力

空間をイメージする能力

建物を設計する時に、その建物が利用する人にとって使いやすいように設計しなければいけません。また、壁や天井の色はどんな色や部屋の大きさなら心地よいかを想像する必要があります。そのため、頭の中で自分の思った通りの空間をイメージできる能力が必要です。

美的センスに優れている

建築物は機能性だけでなくデザイン性も求められます。特に公共施設などは、その町のイメージを作るため、建築士は高い美的センスが要求されます。美的センスを身につけるために、過去の建築家の作品から最新の建築デザインまで幅広く学ぶほか、美術館などで常日頃から感性を磨いておく必要があります。

正義感がある

国内の建築物は建築基準法に則って建てられています。建築基準法には建物の耐震強度についても定められており、建物の安全性を守っています。そのため建築士は、お客様の要望であっても、法律を遵守し建物の安全性を守るという使命感を持って仕事をする必要があります。

建築士に最低限求められるスキル

図面作成スキル

建築士の最初の仕事はお客様のイメージする建物を図面に起こすことです。そのため建築士の仕事をする以上は自分で図面を作成するスキルが必須です。

PCスキル

図面の作成にはCADソフトを使うのが主流です。またプレゼンのためにパースなどの3D図面を作成するソフトやパワーポイントで資料を作成します。そのため最低限これらのソフトを使いこなすスキルが必要です。

コミュニケーションスキル

お客様にヒアリングする時や工事現場の監理の時に完成イメージを共有するためにも高いコミュニケーション能力は必須です。

建築士の仕事のやりがいや大変なこと

建築士の仕事のやりがい

実力次第でキャリアアップが可能

建築士の仕事は自分の実力次第でキャリアアップが可能です。建築士として知名度が上がれば、誰でも知っているような公共施設などの設計の仕事をもらうチャンスがあります。また、日本だけでなく海外でも活躍するチャンスもあるため、自分の力を試したい人にとっては魅力的な仕事です。

ずっと形に残るものを残すことができる

個人住宅でも公共施設でも、建物は何十年も残っていくものなので、何十年も先の未来に自分の仕事を残すことができます。そして良い建物であれば自分が死んだ後も多くの人に愛される建物を世の中に残すことが可能です。

誰かの夢を叶えるお手伝いができる

マイホームを持つことは個人の大きな夢のひとつです。建築士の仕事はマイホームを持ちたいという家族の夢を叶える仕事です。

建築士の仕事の大変なこと

法律に基づく手続きが多い

日本の建物は建築基準法と呼ばれる法律に合致して設計しなければいけません。そのことを証明するためにも、建築士は確認申請書類などを準備しなければいけません。これらの作業は設計図を書くよりも大変で地味な作業です。

納期のプレッシャーが大きい

建築の仕事は納期厳守の仕事です。例えば、店舗のなどの商業施設の場合、工事の日程が遅れると開店日に間に合わなくなります。そうなると多くの人に迷惑をかけてしまいます。工事は天候によって遅れることもありますが、設計に関しては納期は必ず守る必要があるため、常に納期のプレッシャーと戦うことになります。

デザイン性と安全性の両立が難しい

個人住宅の設計の時に、高い吹き抜けのある明るい玄関にしたいなど様々な要望を叶えながら、建物の安全性も守るために建築基準法を遵守する必要があります。建物のデザイン性と安全性の両立は想像以上に難しいです。

人の命を預かる仕事のため社会的責任が大きい

建物の安全性を守ることが建築士の使命です。かつて、一級建築士が地震などに対する安全性の計算を記した構造計算書を偽造していたことが発覚した事件は社会に大きな衝撃を与えました。地震などの大規模災害が起きても被害が大きくならないようにするために、建築士一人一人が建築基準法を守って仕事をするという社会的責任が求められます。

建築士は多くの人の夢を叶える仕事

いかがでしたでしょうか?建築士は建物の設計を通して多くの人の夢の実現をサポートする仕事です。また、建築士の仕事は自分の実力次第で女性でもキャリアアップができます。もし自分の夢だけでなく、人の夢の実現に関わる仕事がしたいなら建築士を目指してみませんか?

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