限定正社員とは?就業規則やメリット・デメリットを知って自分に合った働き方を実現しよう

限定正社員という言葉を一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?限定正社員制度とは、働く側にとって仕事と育児や介護を両立させながら働き続けることができる新しい働き方です。今回は限定正社員制度について詳しくご紹介します。

限定正社員とはどんな制度?

限定正社員制度が生まれた背景

限定正社員制度は2013年にアベノミクスの成長戦略の一環として生まれた制度のことです。非正規雇用の人に対してキャリアアップの機会を創ることと、仕事と育児や介護の両立を目的として作られました。

2013年4月の労働契約法改正により、5年以上働く非正規労働者が正社員として働きたいと申し出があった場合、企業側は正社員に切り替える必要があります。切り替えを希望する非正規労働者は約2〜3割ほどいると予測されているため、もし企業が希望者全員を正規雇用に切り替えた場合、人件費の増大につながり経営を圧迫しかねません。
しかし、限定正社員制度を利用することで人件費の抑制に繋がるため、ユニクロや日本郵政グループを中心に導入が進んでいます。

限定正社員制度とは?

法律上、限定正社員に定義はなく、企業側は正社員と比較して何かを限定しなければいけません。何を限定するかは企業側が自由に決められますが、多くの企業は職種の限定、勤務時間の限定、勤務地の限定の3つのパターンを取り入れています。
限定正社員は時間や場所、仕事内容などは限定されますが、非正規雇用に比べて長く安定して働くことが可能です。

限定正社員と他の一般職や雇用形態との違いは?

  • 正社員とは
  • 正社員は法律上の定義がありません。通常期間の定めのない雇用契約で勤務している社員のことをいいます。

  • 契約社員とは
  • 契約社員は期間の定めのある雇用契約で勤務している社員のことです。そのため契約期間の間だけ働き、契約期間が満了した後は更新がなければ退職しなければいけません。労働契約法では契約社員の契約期間は最長で3年間と決められています。
    しかし、2013年の労働契約法の改正により、契約を更新して5年以上勤務し、希望すれば雇用期間を定めない労働契約(無期労働契約)へ切り替えて正社員になることも可能です。

  • 派遣社員とは
  • 派遣社員は雇用契約は派遣会社と契約を結びますが実際に働く場所は派遣先の企業です。そのため給与は派遣会社から支払われます。
    派遣で仕事をする場合は、派遣会社に登録して実際に派遣先での仕事がスタートしたとき(派遣契約期間開始日)に雇用関係が成立します。派遣期間が満了すると雇用契約も終了です。引き続き同じ派遣先や別の派遣先で働く場合は、再度雇用契約を結んで仕事をします。

  • パート・アルバイトとは
  • パートとアルバイトは実は同じものです。企業側がパート=主婦、アルバイト=学生と便宜的に呼び名を変えているにすぎません。
    パートやアルバイトはパートタイム労働法という法律によって、パートタイム労働者(短時間労働者)と定義されています。パートタイム労働者(短時間労働者)の要件は、1週間の所定労働時間が、勤務先の正社員の所定労働時間よりも短い労働者です。正社員の1週間の所定労働時間は40時間のため、40時間以下であればパートタイム労働者に該当します。

限定正社員の就業規則の例

  • 職種限定正社員
  • 正社員と比べて職務が限定された正社員のことです。販売職の場合は販売業務のみ従事するというように、販売職や、金融・ITなどの分野で高度専門的キャリアや資格が必要な職種で採用されています。

  • 時間限定正社員
  • 育児や介護の両立を目的に勤務時間を限定した正社員です。具体的には短時間限定正社員の場合は1日の勤務時間を6時間と定めたり、勤務時間は8時間でも残業なしと定めることができます。

  • 勤務地限定正社員
  • 育児や介護が理由で転勤ができない人の離職防止が目的のため、働く地域を通勤圏内に限定した正社員です。特に全国各地に店舗や支店を持っている企業で採用されています。

限定正社員の給与や待遇は?

限定正社員の給与は正社員の8割から9割に抑えられていますが、福利厚生は正社員と同じ待遇を受けることができます。ただし、賞与は給与と同じように正社員の8割から9割に抑えられ、退職金は支給されないケースが多いです。また昇格に関しても限定されます。

厚生労働省調べの限定正社員制度の導入事例

限定正社員の導入状況

厚生労働省が実施した「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書の企業アンケートの調査結果によると、全体の約5割の企業が限定正社員制度を採用しています。また、採用企業の9割が職務限定正社員を採用、勤務地限定が4割、勤務時間限定は1割から2割の企業が採用しています。

限定正社員の導入実例

  • 株式会社ファーストリテイリング
  • ユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングは、2007年に地域限定正社員を導入、店舗勤務の非正規社員の正社員化を進めました。2015年には約10,000人の地域限定正社員が在籍し、将来的には16,000人まで増やす計画を進めることで、中長期的な人材確保のために動いています。

  • 日本郵政グループ
  • 日本郵政グループは2014年4月までに4700人が新一般職に転換し、2015年度から正社員の雇用区分を地域基幹職と新一般職に分けて新卒採用をすることで、限定正社員制度の導入を進めています。そしてその非正規社員の受け皿になるのが、転居を伴う転勤や役職登用もなく標準的な業務を行う新一般職です。それにより約20万人以上いる社員のうち、非正規社員の割合を50%まで下げる方針を固めています。

  • 株式会社リンガーハット
  • 地域情報に長けた即戦力の確保と、多様の人材確保を目的として地域限定正社員を採用しています。地域限定正社員をエリア社員と呼び、全国転勤がある正社員をナショナル社員と呼びます。2015年2月28日現在の正社員の数は、ナショナル社員:432名(男性405名、女性27名)で、エリア社員:63名(男性20名、女性43名)です。

  • 吉野家グループ
  • 明確なキャリアアップのシステムと、積極的な正社員転換による非正規社員のモチベーション維持を目的とした地域限定正社員を採用しています。全国転勤のある正社員をグローバル社員と呼び、地域限定正社員をエリア社員と呼びます。平成27年5月1日時点での内訳はグローバル社員は約890名(男性約845名、女性約50名)、エリア社員は約470名(男性約370名、女性約100名)です。

  • 株式会社りそな銀行
  • 2015年10月から勤務時間、もしくは業務範囲を限定した正社員としてスマート社員の制度を導入することで、働き方の選択肢を増やす取り組みを行っています。

  • イケアジャパン株式会社
  • 正社員、パート社員という考えを廃止して全員をコワーカーとして採用し、同一の賃金制度を適用しています。また、長期的にキャリアプランが描けるように職種限定、地域限定、そして勤務時間限定を採用することでライフプランに合わせて働ける環境を創っています。2015年10月1日現在で、コワーカー(フルタイム)1030名(男性490名、女性540名)、コワーカー(短時間)1069名(男性470名、女性1220名)が働いています。

限定正社員のメリット

限定正社員は安定して長く働くことができる

契約社員や派遣社員と違い、無期限の雇用契約によって勤務できます。そのため、自分から退職したり会社が倒産したり、リストラをされない限りは働き続けることが可能です。正社員に比べると解雇しやすいと思われがちですが、実は正社員と同じように労働契約法16条により守られているため、安定して長期的に働き続けることが可能です。

限定正社員は同じ職種で自分のスキルを上げることができる

職務限定正社員として働くことを選べば、会社都合により職種転換を強いられません。そのためシステムエンジニアなど専門的なスキルを要する仕事の場合、職種転換がないことで自分のスキルを究めていくことができます。

限定正社員は正社員と同等の福利厚生を受けることができる

限定正社員は職種や地域だけを限定した正社員のため、福利厚生は通常の正社員と同等のものを受けることができます。

限定正社員は転勤せずに働き続けることができる

地域限定正社員の場合は、勤務地を通勤圏内に限定できます。そのため、飲食店や小売店の場合でも店舗間を移動することはありますが、転勤は伴いません。育児や介護で転勤ができない人でも、自分のキャリアを諦めることなく働き続けることができます。

限定正社員は残業なしで働くことができる

勤務時間限定正社員の場合は、勤務時間を7時間や6時間など短い時間に設定できるだけでなく、8時間勤務でも残業をしないと決めることができます。そのため、残業で保育園のお迎えに間に合わないなどという心配がありません。このように勤務時間を限定して働くことで、子育てを理由にキャリアを諦めずに仕事を続けることができます。

限定正社員のデメリット

限定正社員は仕事がマンネリ化する可能性がある

職務限定正社員の場合、職種が変わることはありません。同様に、地域限定正社員の場合も職場は変わりません。そのため、人によっては仕事や職場環境にマンネリ化してしまう恐れがあります。

限定正社員は契約で定めた仕事や勤務地がなくなると解雇の対象になる

通常の正社員で、もしも勤務地である店舗が閉店した場合は別の地域に転勤することで働き続けることが可能です。
しかし、地域限定正社員の場合は働く場所がなくなるため解雇の対象になる恐れがあります。職務限定正社員の場合も同様に、自分の職種がなくなれば正社員のように職種転換ができないため解雇の対象になることもあります。

限定正社員という働き方でワークライフバランスを実現しよう!

限定正社員はワークライフバランスを実現するための新しい働き方です。今まで子育てや介護でキャリアを諦めていた人でも、限定正社員として働くことで自分のキャリアを諦めずに実現することが可能でになりました。今後はどんな仕事をしたいかだけでなく、どんな働き方をしたいかまで視野に入れて自分らしくワークライフバランスを実現させましょう。

2+