ホームヘルパーの資格はどう変わった?これまでの資格との違いや取得方法について

介護職におけるキャリアパスをわかりやすくするために、2013年4月に介護の資格制度が一新されました。新しく生まれ変わった資格とはどのようなものなのでしょうか。従来の資格との違いや、資格の取得方法などと併せて詳しく説明していきます。ホームヘルパーの仕事をしている人はもちろん、これから介護業界への就職・転職を考えている人も、新しい資格制度についてきちんと理解しておきましょう。

なぜ資格制度が変更されたのか

ホームヘルパーの資格はどう変わった?これまでの資格との違いや取得方法について

キャリアパスが複雑だったこれまでの資格制度

日本は現在、国民の4人に1人以上が高齢者である「超高齢社会」に突入しています。2025年には、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、介護を必要とする人がさらに増えることが予想されています。そのため、介護人材の育成のあり方や、介護人材を定着させることが重要な課題となっているのです。

これまで、ホームヘルパーの資格には、ホームヘルパー2級・ホームヘルパー1級・介護職員基礎研修の3つがありました。しかし、これら3つの資格は、それぞれが十分に連動しておらず、学習範囲の整理も不十分であることなどが問題視されていました。国家資格である介護福祉士を目指すにあたって、どの資格を取得してどのようなキャリアを積んでいけばよいのかが、複雑で分かりにくくなっていたのです。そのため、介護福祉士の取得まで遠回りをしてしまったり、介護職として将来の見通しが持てず離職してしまうケースが見受けられてきました。

そこで、介護福祉士取得までの道筋を分かりやすくし、介護職としてキャリアアップしながら長く働き続けることができるよう、新しい資格制度へと移行したのです。人材育成の体制が整ったことで、若者の介護離れに歯止めをかけたり、人材の定着化に繋がることが期待されています。

新しく生まれ変わった資格制度について

介護福祉士へのキャリアアップのルートを一本化

これまでの、ホームヘルパー2級・ホームヘルパー1級・介護職員基礎研修は2013年3月末をもって廃止され、代わりに「介護職員初任者研修」と「介護職員実務者研修」の2資格が新たに誕生しました。介護職員初任者研修とは、ホームヘルパー2級に適合する資格で、介護職員実務者研修は、ホームヘルパー1級と介護職員基礎研修が一体となった資格という位置づけになります。

これにより、介護福祉士を目指すルートが、「介護職員初任者研修」→「介護職員実務者研修」→「介護福祉士」に一本化され、非常に分かりやすくなりました。

では、新しく誕生した「介護職員初任者研修」「介護職員実務者研修」とは、どのような資格なのでしょうか。その内容や取得方法などについて、詳しく見ていきましょう。

介護の入門資格である「介護職員初任者研修」

ホームヘルパーの資格はどう変わった?これまでの資格との違いや取得方法について

資格の内容とは?ホームヘルパー2級とどう違うのか

介護職員初任者研修は、上記でも説明した通り、従来のホームヘルパー2級に代わる資格です。ホームヘルパー2級をすでに持っている場合、介護職員初任者研修修了と同等だと見なされます。

研修では、介護の基礎的な知識・技術を、講義と演習で学べぶことができるため、「介護の入門資格」と呼ぶにふさわしい内容になっています。また、ホームヘルパー2級は、もともと訪問介護を行なうための知識・技術を学ぶ研修でしたが、施設介護に携わる人も数多く取得していた資格でした。その背景を踏まえ、介護職員初任者研修で学ぶ内容は、訪問介護だけではなく、施設介護にも活用できるものとなっているのです。

介護職員初任者研修とホームヘルパー2級との違いは主に以下の2点です。

  1. カリキュラムの内訳の変更
  2. 介護職員初任者研修の受講時間は130時間で、ホームヘルパー2級のときと変わりませんが、カリキュラムの内訳が変更されました。

    ホームヘルパー2級では30時間の施設実習が必須となっていましたが、介護職員初任者研修では任意となりました。その代わりに、介護演習を実際に行なう実技スクーリングの時間が、42時間から90時間へと大幅に増えました。

  3. 修了試験の実施
  4. ホームヘルパー2級では、研修を全て受講して修了とされていました。しかし、介護職員初任者研修では研修修了後、筆記試験に合格する必要があります。

資格取得の方法や費用について

  • 受験資格と試験内容について
  • 受験資格は特にありません。日本語さえ理解していれば誰でも受験できる上、内容も基礎的なものとなっているため、ホームヘルパー未経験者におすすめの資格です。
    130時間の講習の内容は下記の通りです。

<介護職員初任者研修カリキュラム>

科目名時間数
職務の理解6時間
介護における尊厳の保持・自立支援9時間
介護の基本6時間
介護・福祉サービスの理解と医療との連携9時間
介護におけるコミュニケーション技術6時間
老化の理解6時間
認知症の理解6時間
障害の理解3時間
こころとからだのしくみと生活支援技術75時間
振り返り4時間

これらの講習を全て受講した後、1時間の筆記試験に合格すれば、資格取得となります。
●参照:介護職員初任者研修/厚生労働省

  • 難易度はどれくらい?
  • 修了試験として課される筆記試験の内容は、学習の振り返りが中心となっています。研修をひと通りしっかりと受講すれば、ほぼ確実に合格できる難易度だと言われています。

  • 資格の取得方法とは
  • 資格を取得するには、「通学制」と「通学+通信制」の2つの方法があります。

    ■「通学制」の場合
    講義と演習の全課程を、スクールに通学して学習します。

    ■「通学+通信制」の場合
    スクーリングと自宅学習を併用するパターンで、介護職員初任者研修の取得方法としてもっとも一般的です。通信講座で受講できるのは最大で40.5時間です。「通学制」と比べて、通学日数を短くすることができるので、育児や仕事をしながら取得を目指す人なども無理なく受講できます。最短で1か月から取得できるコースもあるので、資格取得を急いでいる人にもおすすめです。

    なお、介護職員初任者研修のカリキュラムには介護技術を習得するための演習が含まれているため、通信講座のみで取得することはできません。通信講座を利用する場合でも、スクーリングは必須となりますので注意しましょう。

  • 受講費用はいくらかかるの?スクール・講座の選び方は?
  • 受講費用は3~15万円ほどで、スクールや講座によって様々です。

    振替授業にも対応していたり、ライフスタイルに合わせてコースを選択できるなど、融通の利きやすいスクールでは受講費用が高くなる傾向にあるようです。キャンペーンの割引価格で1~2万円ほど安く受講できることもあります。受講費用は地域によっても異なるので、パンフレットやホームページで最新情報をチェックするようにしましょう。

    また、勤務先の訪問介護事業所などによっては、資格を持たずに働く介護職員に対して受講料の一部を負担するなど、資格取得をサポートしてくれる場合もあります。

ホームヘルパーの資格はどう変わった?これまでの資格との違いや取得方法について

資格を取得するメリット

  • 仕事の幅が広がる
  • 資格を取得することで、訪問介護の仕事ができるようになります。施設で働く場合、無資格でも介護職として働くことができますが、訪問介護を行なう場合には、介護職員初任者研修などの資格が必須であることが介護保険法で定められています。仕事の幅が広がることで、給料もアップしやすくなりますし、資格手当がもらえる場合もあります。

  • 資格保有者として信頼感がアップ
  • 介護職員初任者研修は、介護の基本的な知識・技術を身に付けていることの証明になります。そのため、利用者の方やそのご家族からの信頼が得やすくなります。また、未経験から働く際にも、利用者との接し方や介護の仕事内容について知っていれば、自信を持って介護サービスを提供することができるでしょう。

  • 就職・転職の際に有利になる
  • 高齢化が進むにつれて介護を必要とする人も年々増加しています。それに伴い、介護人材を確保していくことが課題となっていますが、現状ではまだまだ人手が足りていません。そのため、介護の仕事は常に求人が多くあり、介護資格を持っていれば就職・転職には困らないと言われるほどです。介護の仕事が未経験だったとしても、やる気と介護職員初任者研修の資格を持っていれば、就職・転職の際に有利になるでしょう。

介護福祉士国家試験の受験に必須となった「介護職員実務者研修」

資格の内容とは?

介護職員実務者研修で学ぶことは、介護職員初任者研修よりも位の上がった内容となっています。より介護の実務に即した知識・技術を身に付けることで、幅広い利用者に対して介護サービスを提供できるようになることを目的としています。すでに介護の仕事に就いている人向けの資格です。また、2017年1月からは、介護福祉士国家試験の受験資格として、「3年以上の実務経験」に加え「介護職員実務者研修修了」が必須となりました。

ホームヘルパーの資格はどう変わった?これまでの資格との違いや取得方法について

資格取得の方法や費用について

受験資格と試験内容について

受験資格は特にありません。外国の方でも日本語を理解していれば受験可能です。

資格を取得するには450時間の講習を修了する必要がありますが、介護資格を保有している場合はカリキュラムの一部が免除されます。保有資格と受講時間は以下の通りです。

介護職員基礎研修:50時間
ホームヘルパー1級:95時間
ホームヘルパー2級:320時間
介護職員初任者研修:320時間
保有資格なし:450時間

 
●参考:厚生労働省サイト(実務者研修における「他研修等の修了認定」の留意点について)

喀痰吸引などの医療的ケアに関する研修(50時間)については、保有資格にかかわらず受講が必須となっています。

難易度はどれくらい?

介護職員初任者研修とは異なり、全課程修了後の修了試験は義務付けられていません。基本的には、カリキュラムを全て修了することで資格が得られます。ただし、スクールによっては、学習到達度を確認するための評価を行なう場合があります。

資格の取得方法とは?

介護職員実務者研修は、「通信+通学制」で取得する場合が多いです。仕事をする傍らで資格取得を目指す人が多いため、働きながらでもスムーズに受講できるように、ほとんどのスクールで通信講座と通学を併用するコースを用意しています。「介護課程III」と「医療的ケア」の演習については、通学で学ぶ必要がありますが、他の科目は通信講座での学習が可能です。

受講費用はいくらかかるの?

受講費用は保有している資格によって異なります。スクールによっても様々ですが、保有資格と費用の目安は以下の通りです。

介護職員基礎研修:3~4万円
ホームヘルパー1級:5~8万円
ホームヘルパー2級:9~13万円
介護職員初任者研修:9~13万円
保有資格なし:12~14万円

資格を取得するメリット

  • 介護福祉士国家試験の受験資格が得られる
  • 上記で説明した通り、2017年から介護福祉士国家試験の受験資格が厳しくなりました。「実務経験を3年以上積むこと」に加えて、「6カ月以上の実務者研修の受講及び修了」が義務付けられました。介護職としてのキャリアアップのためにも、介護職員実務者研修の位置づけは重要であると言えます。

  • サービス提供責任者になれる
  • サービス提供責任者とは、訪問介護事業所」に必ず配置される、ホームヘルパーのリーダー的な役割を担う職種のことです。サービス提供責任者の業務を行なうのは、介護職員実務者研修か介護福祉士のいずれかの資格を持っている人が望ましいとされています。介護職員初任者研修やホームヘルパー2級の資格保有者でも、実務を3年以上経験していればサービス提供責任者になることができますが、その場合は介護報酬が10%減算されてしまいます。そのため、訪問介護事業を経営する上でも、介護職員実務者研修の取得者が求められているのです。

  • より高度な専門知識・技術が身につく
  • 450時間のカリキュラムでは、実務ではなかなか修得するのが難しい知識や技術を中心に学ぶことができます。認知症についての専門的な知識や、認知症の方に対する理解なども十分に学ぶことができます。

  • 医療行為の基礎知識が学べる
  • 介護職員実務者研修では、「喀痰吸引」と「経管栄養」の医療的ケアについても学ぶことができます。

    これまで、「喀痰吸引」や「経管栄養」は医師や看護師のみに認められた医療行為でした。しかし、2012年の法改正により、「喀痰吸引等研修」を修了し、「認定特定行為業務従事証」の交付を受ければ、介護職員でもこれら2つの医療行為を行なうことができるようになりました。

    介護職員実務者研修を修了している場合、「喀痰吸引等研修」のうち「基本研修」が免除になります。ただし、医療行為を安全に行なうための技術を学ぶ「実地研修」の修了は必須となります。

未経験ならまずは介護職員初任者研修を目指そう

ホームヘルパーの資格はどう変わった?これまでの資格との違いや取得方法について

介護福祉士へのルートが一本化されたことで、介護職としての将来展望がだいぶ描きやすくなりました。介護業界で長く働ける環境が着実に整ってきています。

未経験で介護の世界に飛び込むなら、まずは介護職員初任者研修の取得を目指しましょう。そののちに、介護職員実務者研修、さらに経験を積めば介護福祉士へとステップアップする道が開かれています。介護福祉士の先には、ケアマネージャーを目指すこともできますし、介護福祉士の上位資格として新たに誕生した「認定介護福祉士」を目指すこともできます。介護の仕事を極める第一歩として、まずは介護職員初任者研修の取得がおすすめです。

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