退職金は必ずもらえるものではないって本当?周囲の退職平均額と計算方法について

退職金とは、働いていれば誰でももらえるものだと思っている人は多いのではないでしょうか。しかし、退職金制度が規定により定められている会社と、退職金制度がない会社があるのです。それはなぜなのでしょうか。今回は退職金について、どんな制度なのか平均額はいくらぐらいなのか、詳細を解説していきます。

退職金とはどんな制度なの?

退職金制度とは

退職金制度とは、一定の事由で退職する労働者やその親族に対し、一定の金額を支払う制度のことをいいます。退職金制度は、労働基準法などで支払いが義務付けされているものではありません。退職金の支払いについては、会社の規定で支払うかどうか決めてよいことになっているのです。

もしも支払いがある場合は、就業規則などに支払いの規定があり、退職金は給料の一部としてみなされるので、支給がなかった場合は請求することが可能です。規定に退職金の支払いがある場合、支払い期限についての記載がない場合は退職日より7日内に支払いしなければなりません。金額については、勤続年数能力に応じて算出され、勤続年数が長く能力が高いほど高額になります。

また、会社によって金額の設定が異なり、退職の事由によっても金額が異なる場合もありますので確認しておきましょう。定年や会社都合での退職の場合は、自主都合の場合よりも金額が高いことが多くなります。

会社を退職する時は退職金の支払いがあると思う人は多いでしょうが、厚生労働省が2013年に発表した「平成25年就労労働条件総合調査結果の概況」によると、退職金がある企業は全体の75.5%でした。ということは、全体の4社に1社は退職金制度がないということになります。

このように、近年は退職金制度を設けない、またはなくす企業が増えてきています。企業規模別で見てみると、退職金制度を導入している常用労働者が30~99人の企業は72.0%でした。常用労働者が1,000人以上の企業は93.6%でした。この結果から分かるのは、企業規模が大きくなるほど退職金制度を導入している割合が高いということです。

厚生労働省では、5年ごとに退職金についての調査を行なっています。2013年の調査で退職金制度を導入している企業は75.5%でしたが、2008年は85.3%、2003年の時は86.7%となり1993年の時は92.0%でした。

退職金制度には2種類ある

  • 退職一時金
  • 退職一時金とは、退職するにあたって働いていた会社から一時的に支払われるお金のことです。退職一時金のメリットは、税制優遇があってほとんど非課税になることです。日本は「終身雇用」という、正規雇用の労働者を雇用したら定年まで雇用する日本特有の雇用制度があります。最近は薄れつつありますが、退職一時金は長年同じ会社に貢献してきた功労に対するもので、定年後は老後の生活のための資産になるでしょう。ですので、税制優遇枠があるのです。

  • 企業年金
  • 企業年金とは、企業が労働者に対し年金を支給する仕組みのことです。退職金を年金のようにして受け取る場合は、退職一時金とならず長期的に継続し支払いがされます。退職一時金が、退職したら一回支給されるものであるのに対し、継続性のある退職金が企業年金ということです。

    メリットは公的な年金に加えて企業年金が受給できるので、老後の生活設計が立てやすくなるということです。デメリットとして挙げられるのは、退職一時金よりも受取総額が多くなるのですが、所得が増えることによって所得税や住民税が増える可能性があるということです。

退職金の相場ってどのくらい?

民間企業の学歴別勤続年数による退職金平均額

<勤続年数・学歴による退職金の平均額(自己都合退社)>

勤続年数大学卒高専・短大卒高校卒
10年114万8,000円95万9,000円91万2,000円
15年225万1,000円186万2,000円174万7,000円
20年380万5,000円313万円298万2,000円
25年562万6,000円468万1,000円444万7,000円
30年749万円635万7,000円617万1,000円

平成28年に東京都産業労働局が発表した、モデル退職金は上記の通りです。モデル退職金とは、卒業してからすぐに入社して、能力と成績は普通で勤務していた場合の退職金水準のことを言います。30年勤務した場合を見てみると、大卒と高卒では132万円ほどの差があります。

参考:東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(平成28年度)

民間企業の退職理由による退職金平均額

厚生労働省から平成25年に発表された「就労条件総合調査結果の概要」によると、45歳以上で、勤続20年以上の退職者で、退職事由別でもらった退職金の平均額は以下の通りです。

<退職事由別の退職金平均額(勤続20年以上で45歳以上)>

 大学卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(管理・事務・技術職)
高卒
(現業職)
早期優遇退職1,966万円1,945万円1,418万円
自己都合1,586万円1,159万円784万円
会社都合1,807万円1,573万円1,004万円
定年退職1,941万円1,673万円1,128万円

公務員の勤続年数による退職金平均額

公務員の中で、地方公務員の定年退職金の平均額は、一番高い額は国家公務員、次に指定都市、都道府県、市区町村の順になります。指定都市というのは、政令指定都市とも呼ばれる「政令で指定する人口50万人以上の市」のことを言います。

<勤続年数別退職手当受給者数及び退職手当平均支給額>

退職事由定年自己都合その他
5年未満2,025235961
10~14年8,8592,8615,847
20~24年12,0049,28011,787
30~34年20,60117,06026,305
40年以上23,24222,10337,720

単位:千円

上記の表は、勤続年数を抜粋しています。また、退職事由の「その他」は、任期制自衛官の任期満了や死亡などによる退職が含まれています。

参考:内閣官房 勤続年数別退職手当受給者数及び退職手当平均支給額

退職金の給付について

民間企業の退職金の計算方法

会社では退職金制度を就業規則などに規定されている場合がほとんどです。その規定は会社ごとに定められているので、退職金の算出方法は一定のものがあるわけではありません。そこで一般的な算出方法をご紹介いたします。

退職金=1ヶ月の基本給×勤続年数×給付率

給付率の平均は、自己都合だと58%で会社都合だと67%です。これは一般的な算出方法なので、自社の退職金算出方法は会社規定などで確認しましょう。

(例)基本給が40万円で、勤務年数が25年、自己都合での退職の場合
40×25×58=580万円 となります。

公務員の退職金の計算方法

公務員の退職金は計算方法が決まっています。以下の計算式で退職手当が決定されます。(式内の「俸給月額」とは、公務員の給与に関する法律によって定められたものです。

退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給率)+調整額

退職金には税金がかかるの?

国税庁は、退職金について税負担が軽くなるように配慮をしています。特に退職金の中でも、退職一時金については金額が大きいので、税金がかかると退職した人に大きな負担を与えることになってしまいます。会社に採用したら定年まで雇用するという「生涯雇用」をしてきた日本では、退職金は長年会社のために尽くしてくれたという慰労金の意味を持つとともに、老後を支える大切なお金という意味もあるため、税金の負担を軽くしたのです。

自社の退職金制度を確認しておこう!

企業の退職金は、法律で支払いの義務が定められていませんが、企業で退職金制度を導入している場合は、会社の就業規則などに規定されています。その規定により、退職時にどのような形で退職金が支払われるか分かりますので、自分の会社の退職金制度がどのような規定になっているのか、確認しておきましょう。

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