【医師監修】溶連菌感染症に子供がかかったら?症状や治療法・予防法について

溶連菌感染症は子供がかかった場合は登園や登校が禁止される感染症です。溶連菌感染症は溶連菌が原因となる病気全般を指す言葉です。実は、原因となる溶連菌は、重度な病気の引き金になることが多いです。感染力が強く、さまざまな病気の原因となる溶連菌と、溶連菌感染症についてご紹介します。

溶連菌とは

溶連菌は、正式名称を「溶血性連鎖球菌」といいます。正式名称の「溶血性」の「溶」と、「連鎖球菌」「連」の頭文字をとって「溶連」菌と呼ばれています。溶連菌はレンサ球菌属に属する細菌の一種です。感染力は、感染した初期が一番強いとされています。

溶血性というのは、血液の中にこの菌を入れると、菌の周りの血液が溶けてしまう、見た目では色がなくなってしまう反応を起こすものを指します。また、連鎖球菌というのは、ネックレスの数珠つなぎのような形で、連なった形で存在している菌のため、そのように呼ばれています。抗生物質には弱いですが、重い病気を引き起こしやすい病原菌です。

溶連菌感染症とは

溶連菌感染症は、レンサ球菌属の菌に感染したことによって発症する感染症を指す言葉です。潜伏期間は2日から5日間です。完治するまでは、治療を受け始めてから、2週間から3週間かかります。抗生物質が処方されるので、もらった薬を最後まで飲みきる必要があります。溶連菌感染症の怖いところは、中途半端なところで治療を中断して、合併症を起こすことです。

薬を飲んでいると、病気の症状がかなり早く和らぎます。そのため、治ったと判断して、まだ菌がいるにもかかわらず、薬を飲むのをやめてしまうと、結果的に、合併症になることがあるのです。溶連菌感染症の合併症の多くは、命にかかわる重大な病気です。そのため、きちんと医師の判断を仰ぐ必要があります。溶連菌感染症は子供に限らず抵抗力の弱い大人や、妊婦にも感染しやすい病気です。

溶連菌の病原因子について

溶連菌の代表である、化膿レンサ球菌の病原因子について説明します。専門的な内容が多いですが、溶連菌感染症がなぜ多くの病気を引き起こすのか、ということが、少しわかるようになるかもしれません。それでは病気の原因になる病原因子について、ピックアップしていきます。

莢膜

「きょうまく」と読みます。莢膜は、菌が動物に感染するときに、その動物の免疫の働きで排除されないように、菌が作り出す防護壁です。

一部の化膿レンサ球菌には莢膜があり、体の中に入り込みやすくなっているのです。形でイメージするならば、体に入りやすくするためのカプセルの中に、菌が入っているイメージです。

化膿レンサ球菌の入ったカプセルは、ヒアルロン酸で作られています。ヒアルロン酸は白血球などの駆除の対象になりにくいので、菌が入り込むための隠れ蓑になってしまうのです。

リポタイコ酸

リポタイコ酸は、化膿レンサ球菌の細胞の外側にあって、細胞の仕切りとなっている細胞膜の外側で壁の役割をしています。糖分でできているので、感染させる粘膜にくっつきやすくなるための役割をしています。

なお、感染するところに定着させる機能を持っている因子を、定着因子と呼びます。実は細胞壁にはもうひとつ役割があります。体の中に入る前に、細胞が成長して、外に出てしまうと、動物に感染する前に、動物の免疫の働きで駆除されてしまいます。そのため、この細胞壁が、細胞が成長するのを抑制する働きをしています。

Mタンパク質

こちらも定着因子のひとつです。こちらは内臓ではなく、皮膚などにくっつきやすくする役割をしています。また、他のものと結合することで、抗食菌作用を持ちます。抗食菌作用とは、白血球が病原菌を捕食する働きに対抗する機能です。

その働きから、自己免疫疾患の原因として考えられている成分のひとつです。自己免疫疾患は、異物を排除する免疫機能が過剰反応して、正常なところまで破壊してしまう病気です。症状の現れ方は、臓器ごとであったり、全身であったりします。それぞれに病名がついています。

C5aペプチダーゼ

C5aは肝臓で作られる、補体という病原菌排除に役立つたんぱく質の一つです。細菌などの抗原に抗体が結合し、その抗体に補体がくっつくことで次々とその経路が活性化され、最終的に細菌に穴を開けて溶菌します。

C5aは補体C1~C9の中でも好中球の走化性(病原菌に感染した部位に、それを殺す好中球を呼び寄せる)が強いのですが、C5aを分解するのがC5aペプチダーゼです。これにより、化膿レンサ球菌は排除されにくくなります。

ストレプトリジン

ストレプトリジンは、化膿レンサ球菌から、放出される毒素です。この毒素は、赤血球などの細胞膜を破壊します(溶血)。組織を破壊することで感染巣を拡大させたり、免疫細胞による排除に対し、抵抗したりします。

ストレプトキナーゼ

ストレプトキナーゼはタンパク質のひとつです。プラスミノーゲンという、血栓を分解する働きを持った酵素の前駆体と結合し、その働きを活性化します。菌の侵襲性に関わり、壊死性筋膜炎の原因といわれています。

体全体に影響するものですが、脳梗塞や心筋梗塞など、血栓を溶かす必要がある場合は、薬として使われることもあります。しかし、血液がサラサラになるためのものなので、出血すると血液が固まりにくくなります。

また、血液が流れやすくなるので、ガンの転移などが早くなるなど、体の内外で出血をする危険性が高くなります。

そのため、必要以上に活性化すると、体には悪影響を及ぼすのです。

発熱毒素群

細菌が発生させるスーパー抗原は、免疫が過剰に働くことで、組織や臓器に傷害を与え、毒素性ショック症候群や全身性ショックを引き起こします。全身に過剰な負担をかけて、発熱や発疹がおきて、多臓器不全や死につながる危険なものです。

溶連菌が引き起こす病気にはどんなものがあるの?

ここまでは、溶連菌に関する説明を中心に行ってきましたが、ここからは、病気について説明していきます。軽いものから重いものまで、多数の病気を紹介していきますが、基本的には抗生物質を使って早期治療を行えば重症化することは少ないです。

軽症のうちに治療を開始できるよう、気になる症状があったら病院で医師の診察を受けるようにしましょう。それでは、具体的に溶連菌が引き起こす病気の種類と症状、治療法についてご説明します。

急性感染症

急性感染症とは、感染菌に感染してから、発病するまで、または、発病してからの進行が早いものをいいます。急性という言葉の通り、突然発症し、強い症状を伴います。症状の内容はさまざまで、溶連菌の場合、感染した部分によって症状が大きく異なります。ここでは、感染菌が引き起こす急性感染症の内容と症状、治療法についてご説明します。

■急性咽頭炎・急性扁桃炎

溶連菌感染症の中で一番多い症状が、咽頭炎と扁桃炎です。主な症状としては、発熱、のどの痛み、リンパ節が腫れるなどになります。

風邪とは違い、菌が咽頭や扁桃に付着した時に、急に症状が出てくるのが特徴です。咽頭炎は、のど全体で炎症を起こし痛みを伴うものです。溶連菌感染症の場合の判断方法が確立されています。

有名な判断方法では、主な症状の4つのうち、3つが該当した場合は溶連菌感染症による咽頭炎という診断になるというものです(センタークライテリア)。

その4つの症状は、以下の通りです。

  • 扁挑がはれている、または、扁桃に白い苔のようなものや浸出液が認められる
  • 前頚部のリンパ節が腫れて、痛みを伴っている
  • 38度以上の発熱がある
  • 咳が出ない

これらに該当した場合は、溶連菌感染症によるものと仮定して治療が進められます。扁桃炎は扁桃にウイルスや細菌がついて炎症を起こしたり、白く膿んだりします。

白く膿んだ症状は、溶連菌感染症の判断基準のひとつとなっています。のど全体ではなく、扁桃でのみ症状が認められる場合に扁桃炎という診断が行われることがあります。

■伝染性膿痂疹

伝染性膿痂疹は、傷口とその周辺が細菌などに汚染されて、傷口の周辺まで炎症を起こしたり、化膿したりする病気です。「とびひ」とも呼ばれます。熱が出ることは少なく、全身ではなく、傷口の周辺に症状が現れるのが特徴です。

引っかいた際にできた傷などの場合、感染した人が持っている菌が手についた状態で傷口に触れたことにより炎症が起こります。

溶連菌による事例は多く報告されていますが、一部では、先に炎症がおき、そこに溶連菌がついた状態で触ってしまったことによって、原因が溶連菌だと誤認されている場合があるのではないかという指摘があります。

どちらにせよ、菌のついた状態で傷口に触れると、炎症を起こすことがありますので、傷の手当を行う際、菌が入らないように気をつけましょう。治療をする人が、感染した人の体を拭いた後、傷を触ったりする場合も、タオルを変えたり、手を洗ったりする必要があります。

そのほか、アトピーや水疱瘡の症状がある場合は、かなりひどくなる場合がありますので、特に注意しましょう。溶連菌による伝染性膿痂疹の場合は、ペニシリン系抗菌薬が有効とされています。

■壊死性筋膜炎

壊死性筋膜炎は、劇症型溶連菌感染症という、溶連菌感染症の中で最も重い病気に分類されるものです。人食いバクテリア感染症とも呼ばれています。細菌やウイルスが皮膚の中に入り込み、体の組織を破壊していく病気です。

傷口がある場合や、水疱瘡などで皮膚が正常な状態ではない場合に発症する危険性があります。発症した場合、細菌は、皮膚や脂肪組織、筋肉、靭帯、末梢神経までのあらゆる組織を壊死させていきます。

進行するスピードは、1時間に数cmといわれていて、指先や足先の末端部分から症状が出ることが多いです。

治療方法としては、まず、壊死した組織を除去する必要があります。外科手術で切り取る必要があるのです。

また、菌の進行を止めるために大量の抗生剤を投与し、同時に症状に対する対症療法、ショック症状への対応が行われます。壊死性筋膜炎の死亡率は30%以上と高くなっています。

■化膿性リンパ節炎

化膿性リンパ節炎は、リンパ節で菌が増殖して腫れたところが、化膿している状況です。化膿性リンパ節炎になると、リンパ節に痛みや赤くなり、腫れがでます。リンパ節への菌の進入経路は主に傷口です。通常であれば、白血球が進入してきた菌の増殖を抑えるのですが、免疫力が落ちている状態だと、体内に侵入した菌を食い止めることができません。

その結果、傷口から入った細菌やウイルスが、リンパ節で増殖して、炎症につながるのです。炎症を起こしたところは、ひどい場合は子供の握りこぶしくらいの大きさまで腫れあがります。

さらに、熱が出ることがあります。溶連菌感染症が原因とわかっている場合は、抗生物質の投与で治療を行います。リンパ節で増殖している原因菌を、早く抑制するのが、最善の治療方法です。治療は早く行えば、その分早く回復します。

薬で対応しきれない場合や、あまりに腫れがひどい場合は、その部分を切開して、膿を出して対応することがあります。

■蜂窩織炎

蜂窩織炎は、皮下組織と呼ばれる皮膚の深いところから、さらに、皮下脂肪までにわたって、細菌に感染し、皮膚の中で化膿して炎症を起こす病気です。顕微鏡で見ると、間質が蜂の巣に、白血球が蜂の幼虫が動いているように見えるところから、このような名前で呼ばれています。蜂巣炎とも呼ばれます。溶連菌や、黄色ブドウ球菌が原因で起こる、皮膚の感染症です。広い範囲が熱を持ち赤くなって腫れたりします。

ひどくなると、熱が出たり、関節痛になったりすることもあります。時間が経つと、腫れて硬くなっていた皮下組織が皮下組織内で膿となり、表面はやわらかくなってきます。膿のある部分の皮膚が破れると、深い潰瘍につながることがありますので注意しましょう。

この症状が出た場合、化膿性関節炎につながるため、治療のためでも、針のようなとがったものを関節や症状が出ている部位に差し込むことができません。通院が可能な状態であれば飲み薬で対応することもありますが、炎症がひどい場合には入院になります。治療は主に点滴で、抗生物質の投与になります。

■化膿性関節炎

化膿性関節炎とは、関節内に細菌やウイルスが入って、化膿してしまう病気です。関節での炎症によって軟骨が破壊され、さらに進行すると、骨まで破壊されていきます。そればかりではなく、炎症が長期になると、脱臼を起こしたり、皮膚に穴があいて膿が出てきたりすることがあります。

進行速度が速い病気なので早く治療を行う必要があります。この病気に溶連菌感染症が原因の場合、注射器で関節液を採取して検査を行うと、細菌を確認することができます。

乳幼児の場合は、股関節で炎症を起こすことがあり、その際は、オムツの交換時に痛みが強くて泣いたり、他の関節の場合、痛みのあるところをあまり動かさなくなったりします。このようなサインを子供が発信していないかどうか、注意する必要があります。

炎症が全身に広がってしまうと敗血症になってしまうこともあります。子供のうちにこの病気になってしまうと、病気によって損傷した骨の部分の成長がうまくいかない後遺障害を残すことがあります。

治療は抗生物質の点滴投与と、関節の固定です。膿の溜まっている部分は注射器などで膿を吸引して取り出します。膿の量が多い場合は管を入れて除去する場合もあります。あまりにも進行している場合には、周辺を切開して、膿や損傷した組織を取り除き、関節内を洗浄する手術を行うこともあります。

関節の軟骨や骨は、骨と骨をつなぐ重要な役割をしている部分です。人間は、関節が正常に動くことで、体を動かすことができます。そのため、大きく損傷する前に、治療することが大切です。

■骨髄炎

骨髄炎は骨髄が炎症を起こした状態をいいます。化膿性骨髄炎とも呼ばれています。溶連菌感染症が原因の場合は、化膿性関節炎によって骨が損傷し、菌が骨髄まで入ってきて増殖し、炎症を起こすことが多いです。

治療は抗生物質を4週間から8週間くらい投与し、菌を減らしていく方法が多いです。長期間、同じ抗生物質を投与することで、まれに耐性菌が出現することがあるので、注意する必要があります。耐性菌が出た場合は、投与する抗生物質を変更して治療を続けることになります。

壊死した組織や膿を除去するため、切開して除去したり、洗浄したりする治療を並行して行うことがあります。

また、さらに骨の損傷がひどくなった場合、骨の移植などの手術が必要になることがあります。溶連菌感染症の治療が終わっても、骨の損傷がひどい場合には、治療が長く、年単位での治療が必要になることがあります。

■結膜炎

溶連菌は目に感染すると結膜炎を起こします。見た目はものもらいに似ていて、目が充血して赤くなります。普通の結膜炎と違って、溶連菌の結膜炎は治りにくいと言われています。結膜に、できものや、水ぶくれ、充血などの症状が多いためです。このような症状が多いことから、化膿性結膜炎とも呼ばれます。

発症から時間が経つと、だんだん、目ヤニの量が少なくなっていきます。また、目ヤニ自体が、膿を含んだねばねばしたものから、水っぽい、透明なものになって治っていきます。

水中で感染することもあるので、プールではゴーグルをして予防しましょう。お風呂の浴槽ももぐったり、浴槽で顔をこすったりすると、次に入る人が感染する可能性がありますので、充分気をつける必要があります。

また、感染した人がいる場合は、目を拭いたタオルで口などを拭いて、口の中に菌が入ると、別の症状が出て悪化します。家族間でも、タオルなどは別のものを使うようにしましょう。

治療は抗生物質と、副腎皮質ステロイドによる結膜炎の炎症を抑える飲み薬を服用し、点眼液を併用して治療をすすめていきます。

毒素性疾患

ウイルスや病原菌だけではなく、体内に入った細菌やウイルスが生み出す、毒素や排泄物のようなものも、やはり人間の害になります。毒素性疾患とは、ウイルスによって生み出された、人間にとって毒になるもので起こる病気です。ここでは、溶連菌感染症の中で、毒素性疾患に分類されるものをいくつかご紹介します。

■猩紅熱

溶連菌が生み出す毒素に対して、毒素に免疫がないために、アレルギー反応を起こして発症します。法定伝染病に指定されていた時期もありますが、現在は、溶連菌感染症として扱われるので、猩紅熱単体での診断は少なくなっています。

溶連菌感染症の共通症状以外に、赤い小さな発疹が全身にできて、舌が腫れてぶつぶつが見えるようになる、「いちご舌」という症状が出ます。また、口の周りだけ白くなり、ここだけ発疹ができないのも特徴のひとつです。皮膚の発疹が治ってくると、皮膚がむけてきます。

猩紅熱は、2歳から、10歳までの子供がかかりやすいといわれています。抗生物質による治療が可能で、3日から5日くらいで回復します。

■毒素性ショック症候群

体の中には、常在菌という、普段から体の中にいる菌がいます。常在菌が本来いるべきではないところに入ったり、常在菌以外の菌が体の中に入ったりしてしまうことで起こります。溶連菌は、人間の肺や血液、筋肉には通常存在していません。

ところが、溶連菌が血液の中に入った際に、溶連菌が作り出した毒素が、血液の中に入ってしまうと、血流に乗って全身に回ってしまいます。

結果、全身に毒が回ってショック症状を起こしてしまうのです。治療を行わないと、48時間以内にショック死する危険性が高いといわれています。血液中に毒が回っていることが多いので、血液検査を行うと、血液の中から菌が出てくることが多いです。

全身に影響するため、肝臓や腎臓など、内臓機能に影響が出ていないかどうかの確認も行われます。また、命にかかわる病気のため、入院して治療にあたることになります。多臓器不全などを起こす可能性もあるため、集中治療室での治療になることも多いです。抗生物質での治療だけではなく、血液浄化法により汚染された血液を除去したり、免疫グロブリンを投与したりといった対処が必要です。他にも、黄色ブドウ球菌によって引き起こされることが有名です。

感染症後遺症

溶連菌感染症は、長期間治療をしなかったり、治療の開始が遅れたりすると、後遺症につながる病気を引き起こすことがあります。ここでは、溶連菌感染症によって起こる可能性のある合併症や後遺症について説明します。

■リウマチ熱

リウマチ熱は膠原病の一種です。溶連菌感染症の症状が和らいでから、高熱が出たり、関節が腫れて痛んだり、血管や神経を蝕んだり、心臓の膜や筋肉に炎症を起こしたりします。

なお、溶連菌に感染してから、1週間から5週間くらいしてから症状が出てくるため、感染症そのものの症状が治まってきたくらいに発症に気がつくことが多いです。5歳から15歳くらいまでの子供が多くかかる病気とされています。

一番多いのは、心臓の膜や筋肉が炎症を起こす心炎による胸の痛みで、その他、多数関節炎、頭痛、倦怠感、食欲不振、皮膚症状(輪状好斑)といった症状が現れます。血液検査では、白血球の増加など、炎症反応が高く出て、抗ストレプトリジンO抗体(ASO)の数値が高くなります。

治療方法としては、栄養補給をしっかりと行い、絶対安静にして、薬を投与する処置を行うことになります。病状が軽減すれば、日常生活に戻ることができますが、完治は難しく、再発する可能性が高いため、長期にわたってペニシリンの投与を続ける必要があります。

■血管性紫斑病

血管性紫斑病は、免疫機能に異常が起こり、血管に炎症が起こるようになる病気です。紫斑病という名前の通り、炎症が起きている部分には紫斑がみられます。発疹が下半身に現れ、左右対称に紫斑がみられます。

この紫斑は、血管が弱くなっているところに、刺激を与えられたことで血管が破れ、皮下出血することによって起こっているものです。さらに、関節痛や腹痛を訴えることがあります。

腹痛がある場合、腸の壁に、浮腫と呼ばれる水ぶくれのようなものができていることが多いです。その場合嘔吐や血便などを伴うため、他の病気と診断されることがあります。これらは数週間で改善されますが、腎臓を悪くしてしまった場合は、長期間の治療が必要となります。

検査は、血液検査と尿検査で行われることが多いです。治療は出てきた症状によって変わります。

血管に炎症が起きているので、止血薬を利用したり、腹痛が強く、嘔吐などをしている場合は、点滴などを利用したりして回復を待つことになります。

このように、比較的容易に改善が見込める症状に関しては、対症療法が行われます。腎臓は腎不全に至らないよう、治療を行う必要があります。

■急性糸球体腎炎

急性糸球体腎炎は、腎臓の炎症の一つです。腎臓の中にある毛細血管が糸玉のように球状に集まった部分を糸球体と呼びますが、この糸球体で炎症が起きている状態になります。

溶連菌への免疫反応によって作られた、アレルギーのもととなる物質が、糸球体にくっつくことで炎症が起きます。この炎症は、慢性の炎症となります。溶連菌に感染してから、2週間から4週間後に発症するとされています。

前症状として、倦怠感や、頭痛、嘔吐、下痢、便秘、血尿、高血圧などの症状が現れます。尿検査、血液検査、細菌学的検査、腎機能検査、などを行って判断されます。治療は特効薬がないため、食事制限や水分制限によって行われます。塩分やタンパク質のとりすぎに注意する必要があります。

病状が進行した場合は、補助的に薬による治療が行われます。急速進行性腎炎症候群まで進んだ場合は、腎不全につながる難病疾患として扱われます。初期の段階では完治が見込める病気なので、早めに治療を開始しましょう。

■掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症は皮膚病の一種です。膿疱という粘りの強い膿が、てのひらや、足の両側に急に出現します。溶連菌感染症が治ってからできる膿疱は無菌性膿疱のため、うつることはありません。膿疱ができて、しばらくするとカサカサになるような症状がずっと続きます。

溶連菌感染症の後の場合は、免疫機能に異常が起こったことによって起こっていると考えられます。

また、この病気とともに、関節炎や、骨化症の合併症を起こすことがあります。骨化症の場合はレントゲンで確認することができます。検査は皮膚や膿を採取して顕微鏡などで検査する皮膚生検という病理検査で行います。

治療としては、ビタミン不足で起こりやすいとされているため、ビタミン剤を飲んだり、骨化症の治療のため、手術を行ったりという対応が必要です。皮膚への塗り薬としては、ステロイドを処方されます。

慢性疾患のため、症状が改善されても、再度ひどくなることがありますので注意しましょう。

溶連菌感染症の検査方法

最近では、溶連菌検査キットというものもあります。これは、のどの粘膜を採取して、試薬に混ぜて、検査機械にかけるものです。

だいたい5分程度で検査を行うことができます。そのため、緊急の場合、病院では検査キットを使って検査することが多いです。簡易的な検査以外では、これから紹介する、「咽頭培養検査」や「血液検査」があります。

咽頭培養検査

のどに綿棒などを入れて、のどに付着しているものをとります。そして、付着した中にいる細菌を培養します。培養された細菌の中に、溶連菌がいるかどうかを確認し、原因を特定します。

培養された細菌は、顕微鏡などを利用して目視で確認します。研究機関や検査機関が病院内にある場合は、比較的早く検査を行うことができますが、そのような設備のない病院では、付着物を採取した後、専門の会社に検査を依頼することもあり、その場合は、結果が出るまでに時間がかかります。

培養された細菌が溶連菌ではなかった場合でも、目視で確認しているので、どのような菌がいるのかを確認することができます。

血液検査

溶連菌に感染すると、抗ストレプトリジンO抗体(ASO)、抗ストレプトキナーゼ抗体(ASK)という抗体を示す数値が高くなります。
この値を測定するために血液検査を行います。

血液検査を行うと、同時に他の病気の発見につながります。もし、溶連菌感染症ではなかったとしても、別の病気の原因が見つかる可能性があります。

しかし、病気であると判断できるくらい数値が高くなるのは、感染してから1週間から2週間程度過ぎてからと言われています。そのため、感染して初期の頃ではわからないことが多いと言われています。

溶連菌感染症の予防方法

何をおいても、うがい、手洗いが一番の予防方法です。手洗いといっても、軽くこするだけ、水をかけるだけ、という洗い方では菌をきれいに落とすことはできません。まず、手についている装飾品をはずします。指輪や時計などをつけたまま洗うと、その部分だけ洗い残しが出てしまうため、はずして洗うのがポイントです。

そして、手をよくぬらし、石鹸をつけてよく泡立てます。その泡で手の甲、指先、爪を洗います。さらに指と指の間や付け根は指を入れて洗います。最後に手首もしっかりと洗って、最後は水でしっかりと石鹸の泡を洗い流します。

そして、手を洗った後はティッシュやペーパータオルなど、使い捨ての紙で手を拭きましょう。その際、蛇口はきれいなペーパータオルなどで閉めるほうがよいです。最後にきれいになった手に消毒をしたら終了です。

うがいも適当なうがいではなくしっかりと行う必要があります。まず口の中をゆすぎ、上向きのうがいを15秒以上、水を替えて数回行います。このうがいは外から帰ったとき以外にも、のどの調子が悪いときや、人ごみから戻った後、のどか乾燥しているときなど、複数回行うといいでしょう。

他にも、感染者の使ったコップや食器、タオルなどは、菌がそこについてしまっていることがあります。それを、感染していない人が使った場合、その人も感染してしまうことがあります。

そのため、感染している人と、別のものを使い、使い終わったものは消毒するようにしましょう。レンサ球菌は消毒に非常に弱い菌です。感染者の触ったものや、菌の繁殖している可能性のあるところを消毒することで、家庭内での二次感染を予防することができます。

食器やタオルのようなもの以外にも、ドアノブやスイッチなど、人が日常的に触るところは、消毒しておくのが有効です。また、換気をして、菌が室内で蔓延しないよう気をつけたり、マスクをして飛沫感染に気をつけたりすることも大切です。

それ以外にも、免疫力を落とさないよう規則正しい生活を行うこと、よく寝て、よく食べるという基本的なことを改めて見直して実践するといいでしょう。現在、溶連菌感染症の予防接種などは行われておりません。

なぜなら、予防接種のためのワクチンが開発されていないためです。その代わりに、感染した可能性のある人に、先に抗菌薬を投与するという方法がとられることもあります。

ただし、これは感染した可能性のある人に行う措置であって、ワクチンでの予防接種のように、誰でも受けておけば症状が軽くなるようなものではありません。

溶連菌感染症になったら登園禁止

学校保健安全法では、適切な治療が開始されてから24時間は登園、登校が禁止ということになっています。ここでいう適切な治療は主に抗生物質や抗菌薬で治療をするということです。

溶連菌は、だいたい、治療を始めてから24時間で効果が出て、感染力がなくなるといわれています。そのため、治療を始めてから、24時間以内は登校、登園禁止となっています。

厚生省のガイドラインでは、抗菌薬内服後24時間から48時間経過していることと、治療は継続していることが、明記されています。よく学校保健安全法を目安に規準が制定されますが、それよりも厳しい制限を行うことは可能です。

ガイドラインでは治療開始から24時間と定められていますが、治療開始から48時間以上というところや、完治してから、病院の許可が出てから、などとすることは可能です。

基準は保育園や幼稚園、学校などによって異なっている場合がありますので、病気が確認できた段階で、確認しましょう。抗菌薬での治療は菌が完全にいなくなるまで行うのが基本です。

その間に体調が良くなってくるので、だんだん元気になっていきます。子供が元気になってきたからといって薬は途中で中断してはいけません。病院から処方された薬は、医師が出したものはすべて飲みきる必要があります。

まとめ

溶連菌に感染すると、色々な病気を引き起こす原因となってしまいます。そのため一番の予防法である、手洗い、うがいを徹底し予防することが一番大切です。また、一度かかったら二回目はかからないというわけではなく、何度でもかかる可能性があるので、注意が必要です。

特に学校で流行した場合や、家族の中に感染した人がいる場合は、その中で繰り返し感染してしまう可能性があります。基本的に飛沫感染が多いですが、感染者が触ったところを消毒し、コップやタオルなどの使いまわしはしないようにしましょう。

冬に多く発症が確認されていますが、年中感染報告がある感染症です。感染力が非常に高い病気なので、冬じゃないから、うつらないだろうということはありません。

放置していると症状が重くなることがありますが、現在は抗生物質による治療が可能です。抗生物質を投与できれば回復することがほとんどなので、昔ほど恐れる必要はなくなりました。抗生物質の治療は、医師の診断の元で行われますので、病院にいく必要があります。

もし、溶連菌感染症だと診断された場合、幼稚園への登園、学校への登校は、学校保健安全法によって規制されています。また、会社の場合は、家族が感染した場合でも、会社の規則にしたがって出社ができなくなる場合がありますので注意が必要です。まずは疑わしい症状が出た場合、病院へ行くことが大切です。

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