【医師監修】無痛分娩のメリット・デメリットとは?筆者のリアルな無痛分娩体験談

出産は楽しみでもありますが、陣痛や分娩の痛みに恐怖を感じることもあります。その中で注目されているのが「無痛分娩」です。でも費用もかかるし、デメリットも考えてしまいがちですよね。実は筆者も無痛分娩で出産を経験した1人。今回は、実際にかかった費用や、メリット・デメリットなど、無痛分娩にまつわる筆者の経験を赤裸々にお話します。

無痛分娩とは

無痛分娩って?

無痛分娩とは「和痛分娩」ともいわれ、麻酔薬を使って陣痛の痛みを和らげながら出産する分娩方法です。一般的には下半身麻酔となります。はっきりと意識はある状態での出産であり、痛みを全く感じないのではなく、「痛みが軽くなる」というものです。ですので、分娩時のいきみは必要ですし、出産直後に赤ちゃんを抱っこすることも可能です。

費用はいくらかかるの?

通常の出産と同じく、保険適用外となります。
一般的には、個人施設で0~5万円、一般総合病院で3~10万円、大学病院で1~16万円です。初産か経産婦か、時間外の場合などは費用が加算されますので、詳細はスタッフの方に確認しておきましょう。

また、無痛分娩で出産を行っている際に、急遽緊急帝王切開になった場合は健康保険が適用されることもあります。

痛みはあるの?

「無痛分娩」という言葉だけ聞くと、全く痛みのない分娩と思いがちですが完全に痛みがなくなるわけではありません。無痛分娩を行う病院での麻酔の量にもよると思いますが、分娩時のいきむタイミングははっきり分かります。痛みがなくなるわけではありませんが、自然分娩と比べるとはるかに痛みが軽減されます。

麻酔の種類

硬膜外麻酔
一般的に行われるのが、硬膜外麻酔です。これは、脊椎を含む硬膜の外側にある硬膜外に注射針やカテーテルを刺し、麻酔を注入する方法です。子宮口が少し開いてから行うので、それまでは陣痛の痛みがあります。また、血液に麻酔液が入らないので、赤ちゃんへの影響はほとんどありません。

会陰部神経麻酔
陣痛が進み、赤ちゃんの頭が産道を出る直前に会陰部に麻酔液を注射する方法です。産道の出口付近だけ麻酔が効くようになるので、母体や赤ちゃんへの影響はありません。しかし、麻酔をかける直前まで痛みがあり、陣痛から分娩まで長い間痛みがあることになります。

脊椎麻酔
脊椎にある、クモ膜下腔という部分に麻酔液を打つ方法です。痛みを取り除く効果は非常に高いのですが、陣痛が弱くなる可能性も高くなります。

無痛分娩のメリット・デメリット

無痛分娩って安全?費用は?リアルな体験談を赤裸々大告白!

メリット

出産の恐怖から解放される
経験したことのない出産の痛みは、恐怖でもありストレスでもあります。痛みが想像できないので、自分が耐えられるのだろうかとストレスに感じて、妊娠中も憂鬱になりがちです。無痛分娩という選択肢があることで、このようなストレスから解放されます。

分娩中の痛みが軽減される
痛みは感じますが、まだまだ我慢できる痛みです。また、お母さんが痛みに耐えている間は、赤ちゃんに届く酸素の量が減ってしまい、血流が少なくなることもあります。無痛分娩では、痛みが軽減されるので赤ちゃんにしっかり酸素を送ることができます。

産後の回復が早い
普通分娩のように、陣痛や出産によって体力が削られることがなく、出産後も痛みが少ないために体力の回復がとても早いです。産んだ後は24時間体制の育児が待っています。体力の回復が早いと、精神的にも肉体的にもメリットが大きいことです。

デメリット

費用が高くなる
無痛分娩は全額自己負担となりますので、通常の出産費用より高くなります。金額は病院によって異なりますので、無痛分娩を検討する際に必ず確認しましょう。

痛みは個人差がある
無痛分娩を決め、いざ出産となったときに麻酔が効きすぎた、ほとんど効かなかったというように、個人差があります。いきむタイミングが分からなかった、または無痛分娩をした意味がないほど痛かったということあります。

麻酔のトラブルがある
個人差が大きいですが、麻酔による副作用が出てくる場合もあります。赤ちゃんにはほとんど影響がありませんが、母体にかゆみや吐き気、頭痛や発熱などおこることがありますので、麻酔後、少しでも違和感を感じたら助産師さんや看護師さんに相談しましょう。

吸引分娩の可能性がある
麻酔(硬膜外)により分娩の最後の最後で、足に力が入らないことによりうまくいきめないこともあり、あまり分娩に時間を要するようなら赤ちゃんの状態を見つつ、吸引分となることがあります。発生頻度は施設によりことなりますが、自然分娩予定のおける吸引分娩率と無痛分娩での吸引分娩率を確認しておきましょう。

無痛分娩の流れ

無痛分娩を行う病院の選択
現在の日本では無痛分娩は主流ではありませんので、無痛分娩が可能な病院は限られています。2008年に厚生労働省が行った調査によると、硬膜外麻酔による無痛分娩を行った施設は250にとどまります。これは、日本にある約2800の分娩施設と比べても約1割程度となります。

まずは近くの分娩施設が無痛分娩に対応しているか確認しましょう。対応していない場合でも、近くの無痛分娩ができる病院を紹介してもらうことも可能です。手続き等ありますので、なるべく早く相談しましょう。

参照:厚生労働省が緊急提言! 麻酔を使った「無痛分娩」について(マイナビニュース)

分娩方法の選択
無事に無痛分娩に対応している病院を選び、無痛分娩の予約ができました。では、無痛分娩には、あらかじめ出産日を決めて出産を行う“計画無痛分娩”と陣痛が起きてから出産を行う“自然無痛分娩”とがあります。

計画無痛分娩

あらかじめ出産予定日を決め、計画的に出産を行います。出産予定日の前日に入院し、事前検査を行い、子宮口に風船のようなものを入れて(ミニメトロ)子宮口を5cmほど開くようにします。その後、麻酔を入れ、陣痛促進剤を入れて出産を行います。

事前に予定日が分かるので、家族の立会いなどのスケジュールが立ちやすくなります。

自然無痛分娩

自然陣痛が起きるのを待ち、子宮口が少し開いてから麻酔を注入します。これは24時間体制の医療機関で多く見られます。子宮口が約5cmほど開くまでは、通常の出産と同じ痛みを感じます。

しかし、自然陣痛を待つ場合は、予想よりお産の進み具合が早いと麻酔の注入が間に合わない場合もあります。

出産
麻酔を入れているか入れていないかの違いで、通常の分娩と変わりません。もしいきむタイミングが分からなくても、助産師さんや看護師さんが手伝ってくれるので、心配はいりません。
また通常分娩も同様ですが、お産の進み具合によっては、帝王切開に切り替える場合もあるということを認識しておきましょう。

出産後
出産直後、赤ちゃんを抱くことができます。その後、お医者さんによる処置が行われます。会陰切開を行った場合、また会陰部に傷が生じた場合に傷を縫い合わせ、処置を終えた後に麻酔用のチューブを取り除きます。

麻酔が切れるまで少し時間がかかるので、その間ベッドの上から動くことはできません。ある程度感覚が戻ってきた後でも、1人で動くことは止められ、看護師さんの介助してもらって、トイレに行ったり病室に行きます。

私のリアル無痛分娩体験記

1年前、実際に無痛分娩での出産を行った筆者がリアルに体験したことをお伝えします。なぜ無痛分娩を選択したのか。本当に痛くないのか。デメリットはあったのか。かかった費用はいくらだったのか。赤裸々にお伝えします。

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無痛分娩を行った理由

出産する病院がたまたま無痛分娩を行っていた
第一子ということで里帰り出産を行ったのですが、家から一番近い病院がたまたま総合病院で、無痛分娩を行っていました。しかし私は、妊娠してからも「無痛分娩」という言葉さえ知らず、出産は自然分娩と帝王切開の2種類だと思っていました。

里帰りの際の初めての検診の時に、「無痛分娩も対応しています」と言われたのですが、私には関係のないことだな、という程度の認識でした。

母の強い勧め
母に連れてきてもらった検診の際に、母に無痛分娩を勧められました。母自身が第一子である私を産むときに、意識がとんだり、酸素吸入しながらの大変な出産だったそうで「少しでも痛みが和らぐなら」という思いからでした。

出産への恐怖心
実際出産が近づくと、ネットでさまざまなことを検索してしまいます。私は何より痛いのが嫌いです。出産という、想像もつかない痛みへの恐怖心が日に日に強くなっていき、誰しも経験することだとは分かっていてもやはりストレスに感じてしまいました。結局は、痛みを伴う出産によるこれ以上の恐怖は無理だと判断し、すぐに無痛分娩に決めました。

無痛分娩説明会

私が出産した病院は、無痛分娩を希望する妊娠30週をこえた妊婦さんへの説明会(座談会)が定期的にあります。無痛分娩を希望する場合は、必ずその説明会に出席しなければならず、説明会後に同意書がもらえます。ですので、説明会に出席していなければ、出産時にどんなに無痛分娩を希望しても対応してもらえません。

その説明会では麻酔科の先生からのお話があり、実際に無痛分娩とはどのようなものなのか、どんな麻酔を使うのか、痛みはどのぐらいか、など、メリットとデメリットも合わせての説明がありました。

まず、肝心の痛みですが、麻酔の量はかなり少なくしているので実際の出産の痛さが10だとすると、無痛分娩の場合は3ぐらい、とのことでした。これだけ聞くとどのぐらいか分かりませんが、「痛い生理痛ぐらい」とのことです。ただ、痛みを一切排除するのではないということを強く言われました。

また麻酔は硬膜外麻酔で背中からチューブを入れる方法です。ベテランの麻酔科医が担当するので、麻酔に関しては安心してくださいとのことです。しかし、陣痛がきて麻酔を注入する時間が深夜であったり、他の手術が重なっていて麻酔科医が全員不在の場合は対応できないとも言われました。

私が一番心配したのは、麻酔による赤ちゃんへの影響です。これに関しては、これまでほとんど報告はありません、とのことでした。ただ、母体へは頭痛や発熱などの影響がある場合があると言われました。

陣痛から出産まで

等間隔の陣痛
私は計画無痛分娩ではなく、自然陣痛からの無痛分娩を選択しました。

出産予定日の夜、21時頃から「陣痛っぽいもの」がやってきました。初めての出産なので、まずは陣痛がどんなものなのか分からないのです。でもとにかく痛い。すぐに陣痛の間隔時間を測定するアプリで測り始めます。22時に一度病院へ電話します。この時点では陣痛の間隔が長いでも一旦待機です。

そして、23時半頃にもう一度病院へ電話し、自宅から病院まで30分ほどかかること、陣痛感覚が10分きったことで「来てください」と言われ、入院バッグを持って向かいます。このときに助産師さんから「無痛分娩どうしますか?」と聞かれたので、「無痛分娩します」と即答しました。やはり思ったより痛かったのです。

入院
深夜0時半頃に入院手続きをして、LDRへ。このときの内診では、子宮口はまだ2~3cm程度。麻酔を入れるには早すぎるとのことで、痛みを感じながらベッドに横たわっていました。

そして、夜中3時頃に「麻酔入れましょう」とのことで麻酔科の先生が病室にきました。この麻酔を入れるときの注射等にも相当恐怖を感じていたのですが、痛くないように軽い麻酔を予めかけてくれたので、気づいたら麻酔がかかった状態に。麻酔科の先生によって麻酔がきいたのを確認し終わった段階で、私は猛烈な吐き気に襲われます。看護師さんに「吐きそう、吐きそう」いいながら、すぐに酸素吸入を付けてくれて落ち着きました。

体が麻酔に反発したのかな…と思いつつも、その後は麻酔のおかげで痛みは全く感じません。心にも余裕が生れて、少し仮眠をとることにしました。


朝に主人が病室へくるも、痛みもなにもない私はただベッドに横になっているだけです。付き添ってくれた母や主人はすることがなく、とても暇だったと思います。


ここで予想外の出来事がおきます。陣痛が遠のいたのです。でも、私は痛みを感じないので遠のいたかどうかも分かりません。お腹に付けている計測計が明らかに反応しなくなっていました。お医者さんの判断で、陣痛促進剤の投与をし、万が一に備えて帝王切開の可能性も説明されました。この時に、陣痛促進剤投与の同意書と帝王切開の同意書を主人が書いています。

分娩開始
陣痛促進剤の投与のおかげで陣痛がすすみ、全く感じなかった痛みが少しずつ感じるようになってきました。

破水して子宮口も全開になったのが15時頃。ここから分娩開始です。計測計の数値が99を超えて振り切っていたので相当痛みを感じるはずですが、泣き叫ぶほどでもなく。でも痛みは感じているので、いきむタイミングははっきりと分かります。助産師さんのタイミングに合わせて、呼吸を整えつつ、いきむということを繰り返し、そして、16時半頃に無事出産しました。

出産後
私の初めての出産は、16時間ほどかかりましたが、実際に頑張ったのは分娩を開始してからの2時間ぐらいです。

産んだ直後は、赤ちゃんを抱っこすることもできました。その後、分娩時に会陰切開は行っていないものの、会陰部がところどころ裂けている状態だったので縫い合わせて、麻酔をはずし、無事私の出産は終わりました。

麻酔をはずした後も、2~3時間ほどは麻酔が効いているので立ち上がることができませんでした。出産した翌日から母子同室になり、さっそく育児が始まります。しかし思ったより体力を消耗していないので、夜中の授乳なども問題なく終えることができました。

私が思ったメリット・デメリット

【メリット】

出産で疲れない
出産直後からとても元気です。頑張ったけど、そこまで疲れてもいないので体力の回復が段違いだと思います。産んですぐに食欲全開で、次は子育てだー!となることができました。何より、写真を見返しても一切疲れた顔をしていないのが印象的でした。

出産の恐怖から逃れられる
出産前の気持ちの問題ですが、想像できない痛みというのはストレスそのものです。でも無痛分娩を行えるということで、まだ頑張ろうという気持ちになれました。

次の出産が楽しみになる
産んだ直後ですが「まだまだ産めるかも!」という気持ちになりました。初めての出産が「しんどいもの・つらいもの」ではなく、「頑張ればすごい達成感を味わえるもの」になったのは、私にとってものすごいプラスです。

【デメリット】
無痛分娩への負い目
「楽をした」「痛みから逃げた」と思われると、その通りかもしれません。それに打ち勝つ精神力があれば全く問題ないのですが、妊娠前に言われると精神も不安定になっている状態なので、かなり負い目を感じるような気がします。なので、出産に立ち会いをしてくれる人以外は、一切口外しないことをオススメします。

「麻酔のせいかも…」と頭によぎる
子どもが生れて、3週間ぐらいしてから顔に湿疹が出るようになり、ずっと治らない状況が続きました。診断の結果、アレルギー性皮膚炎でした。遺伝によるものだと思うのですが、どこか「もしかしたら麻酔の影響で…」という思いもあります。子供の体になんらかの症状が出た場合、麻酔は全く関係なくても、頭によぎることはあります。

出産神話
まだまだ「痛い思いをしてこそ、母性が芽生える」というのを思っている人はいます。若い人も年配の人も同じです。決してそんなことはないのですが、この意見に悩まされ、精神的に追い込まれることもあります。一番の解決方法は、出産が終わるまで「無痛分娩をする」ことを言わないことです。

無痛分娩を実際に経験してみて

無痛分娩って安全?費用は?リアルな体験談を赤裸々大告白!

主人の反応
私が無痛分娩を決めた時も、主人は特に何もいいませんでした。実はこれが何よりもありがたかったのです。一番の味方である主人に反対されたら、それこそ心は揺らぎます。実際、出産後に聞いてみると若干否定的ではありました(母性うんぬんではなく、健康な体に麻酔なんて…というもの)が、「2人目も無痛分娩にしないと産まない!」と言い切れるほど、私の無痛分娩への思いは強くなっていました。

支払った費用
私が退院時に病院に支払ったのは、8万円。出産一時金の42万を含めると、出産費用・入院費・無痛分娩費で合計50万程でしょうか。

無痛分娩だけでみると、費用は10万円でした。おそらく、時間外に麻酔を入れたので少し加算されていると思います。それでも実費負担は8万円でした。

おそらく無痛分娩にしなければ実費負担0円で、42万円からお釣りがきたと思います。

2人目も無痛分娩で
現在第二子妊娠中の私ですが、最初から無痛分娩を希望しています。ただ、第二子の場合は第一子に比べて一般的に出産時間が短いと言われているので、お医者さんからは「病院に着いた時の状況次第」と言われています。病院に着いた時点で子宮口がほぼ開いていると麻酔を入れる前に産まれることがあるからです。

第二子の場合に無痛分娩を行うなら、一般的に計画分娩を勧められると思いますが、今回は運に任せようと思っています。

無痛分娩で良かった
私は、初めての主産で無痛分娩を選択して本当に良かったと思います。妊娠中の友人にも無痛分娩をオススメするぐらいです。確かに出産の本当の痛みを私は知りませんが、だからといって子供への愛情が減るわけでは絶対にないと思いますし、今現在、子供に対し十分な愛情を持って育児をしています。

「無痛分娩」という選択肢が当たり前のようにあって、それを妊婦さん自身の意思で選べるようになったらいいのに、と心から思います。

無痛分娩も自然分娩も同じ出産

無痛分娩も自然分娩も同じ出産であることには何も変わりがありません。痛みが伴っても伴わなくても、母親であることに変わりはなく、子どもを必死で育てようという思いは一緒だと思います。無痛分娩にもメリットとデメリットがあります。お母さんが安心して子どもを産むための選択肢として、お医者さんや家族とよく話し合って選んでくださいね。

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