【医師監修】妊娠検査薬はいつから反応する?正しい使い方と陽性・陰性の判定について

自分自身で妊娠の可能性を確認できる妊娠検査薬は便利なものですが、日常的に使うものではないので意外と使い方を知らない方も多いでしょう。そこで、初めて使用する方にもわかりやすく、使い方や判定の見方などを解説します。

妊娠検査薬の基礎知識

妊活中の女性にとって妊娠したかどうかはいち早く知りたいもの。産婦人科の受診を待たずに妊娠検査薬を試す方も多いでしょう。妊娠検査薬は自分で簡単に妊娠の可能性をチェックできる便利なアイテムですが、正しく使用しなければ判定することはできません。

妊娠検査薬の正しい使い方や見方を確認しておきましょう。そもそも、妊娠検査薬はどのようなメカニズムで妊娠の有無を判定するのでしょうか。妊娠検査薬の基礎知識について解説します。

妊娠検査薬のしくみ

妊娠検査薬は、尿内のホルモンの数値を感知して、それにより妊娠の可能性を判定するものです。

妊娠すると女性の体ではホルモンの状態が変化します。妊娠を維持し出産に備えるためにふたつの女性ホルモン(卵胞ホルモン・黄体ホルモン)の分泌量が上昇し、さらにhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)というホルモンがつくり出されます。

このhCGは黄体ホルモンの分泌を促し妊娠をサポートする働きがあり、着床して初めて、胎盤をつくる絨毛という組織から分泌され始めます。その後は徐々に分泌量を増し、妊娠3か月頃にピークに達します。

妊娠検査薬は、尿の中に出されたhCGを感知することで妊娠の可能性を判定します。

妊娠検査薬の精度

妊娠検査薬の判定のポイントとなるhCGは、通常妊娠しなければ尿の中に出てくることはありません。そのため、妊娠検査薬でhCGが感知されればかなりの高確率で妊娠の可能性があると考えられます。一般に販売されている妊娠検査薬は、その多くが「精度99%以上」となっています。

ただし、妊娠検査薬が正しく使われていなかった場合や、特定の病気、特定の治療を受けている場合などはこれに当てはまりません。詳しくはこのあとの「4」「5」で解説します。

妊娠検査薬の目的

妊娠検査薬の精度が99%以上、と聞くと、ほぼ確定診断のように感じられるかもしれません。しかし、妊娠検査薬はあくまで妊娠の可能性の有無を早期に知ることを目的として使用するものです。妊娠検査薬で確定診断はできません。

妊娠検査薬で陽性が出たら、きちんと産婦人科を受診して診断を受ける必要があります。

異所性妊娠(子宮外妊娠)でも、妊娠検査薬で陽性となり、早急な手術が必要になる場合もあるからです。

妊娠検査薬の正しい使い方

99%以上の精度をもつ妊娠検査薬ですが、この数字は正しく使用されていることが前提です。正しい使い方を理解しておきましょう。

妊娠検査薬の使い方

市販されている妊娠検査薬はスティック状になっており、尿をかけるもしくはコップなどに採った尿をつける形で検査します。主な流れは以下のとおりです。

    妊娠検査薬に尿をかける(もしくはつける)

    妊娠検査薬を袋から取り出し、採尿部のキャップをはずします。キャップをとった採尿部に尿をかけます。どのくらいの時間尿をかけるかは製品により異なるので事前に説明書を読んで確認してください。

    水平な場所に置き判定結果が出るのを待つ

    採尿部分に再度キャップをし、水平な場所に置いて判定結果が出るのを待ちます。待ち時間も製品により異なりますがおおよそ1分程度で判定が出ます。

    判定結果を確認する

    妊娠検査薬の判定窓に陽性・陰性の判定結果が出ます。陽性であれば妊娠の可能性があります。

妊娠検査薬の陽性・陰性の見方

陽性・陰性の判定がどのような形で出るかは製品によって異なります。陽性であれば「+」のマークが出るものもあれば、陽性であれば判定窓にラインが2本(陰性であれば1本)出るもの、単純に判定窓にラインが出るか何も出ないかで判定するものもあります。説明書を読んで、使用する妊娠検査薬の判定がどのような形で出るかを確認しておきましょう。

妊娠検査薬はいつから使える?

一般の妊娠検査薬が使える時期

妊娠検査薬は、尿の中に含まれるhCGというホルモンを感知することで妊娠の可能性を判定します。hCGは着床後につくられますが、つくられてすぐに尿に出るわけではありません。hCGがつくられてから尿に出るまでは数日かかるとされています。

また、一般の妊娠検査薬は尿の中のhCGの量が50mIU/mL以上になると陽性反応を示しますが、尿の中のhCG量がどのくらいの期間で50mIU/mLに達するかには個人差があります。

受精から着床まではおよそ1週間かかり、早ければその後1週間後くらいには50mIU/mLに達することもありますが、基本的には「生理予定日の1週間後以降」が検査日の目安となっています。生理周期がはっきりしない人の場合は、「セックスした日から3週間後以降」であれば精度の高い判定が得られます。

生理予定日から判定できる早期妊娠検査薬もある

妊娠検査薬は検査日を守って正しく使うことが大切ですが、妊娠を早く知りたい人にとって3週間も待たなければならないのはなかなかつらいものです。より早く妊娠の可能性を確かめたいのであれば、早期妊娠検査薬を使うという方法もあります。

早期妊娠検査薬とは、その名の通り一般の妊娠検査薬よりも早期に使用・判定が可能な妊娠検査薬。一般の検査薬が50mIU/mL以上のhCGを感知するのに対し、早期妊娠検査薬は25mIU/mL以上から感知できます。日数でいうと、一般の妊娠検査薬よりもおよそ1週間早く使用できるため、検査日の目安は「生理予定日当日以降」となります。

妊娠検査薬を使用する時間帯は朝?夜?

妊娠検査薬は、きちんと検査日を守っていれば朝・昼・夜のいずれの時間でも検査可能です。とくに朝起きて最初の尿はホルモンの濃度が濃い傾向があるため、より精度の高い判定が得られやすいとされています。

妊娠検査薬で陽性が出たらどうすればよい?

妊活中にしろそうでない想定外だったにしろ、陽性が出たら慌ててしまいますよね。陽性が出たということは、お腹に新しい命が宿っている可能性があるわけですから、このまま何もしないわけにはいきません。まずは落ち着いて、やらなければいけないことを考えましょう。

産婦人科で判定を受ける

妊娠検査薬の精度は99%以上とかなり高いものですが、妊娠検査薬だけでの確定診断はできません。妊娠検査薬はあくまで妊娠の可能性があるかないかを確認するもの。確実に妊娠しているかどうかは、産婦人科で診察を受け、医師に診断してもらう必要があります。

産婦人科では超音波検査で胎嚢という赤ちゃんのお部屋が子宮内に確認されれば妊娠と診断されます。産婦人科の受診があまりに早いとまだそれが確認できず、1週間後程度の再受診となる可能性もありますが、妊娠検査薬の陽性には異常妊娠やなんらかの病気が含まれていることもあります。

本当に子宮の中に妊娠しているのか、正常な妊娠なのかを確かめるためにも、陽性反応が出たらなるべく早めに産婦人科を受診しましょう。

妊娠が確実にわかったら

産婦人科で診察を受け妊娠の確定診断が出たら、病院から「妊娠届出書」をもらいます。妊娠届出書とは、地方自治体から母子手帳を発行してもらうための書類。妊娠届出書をもらったら必要事項を記入し、地方自治体の窓口に提出します。このときに発行してもらえる母子手帳は、妊婦健診の記録を書き込んだり赤ちゃんの成長を記録したりする重要なもの。妊婦健診費用の補助券も付いているので大切に保管してくださいね。

産婦人科で妊娠の診断が出たけれど、想定外の妊娠だった…という場合は、パートナーとしっかり相談し、どのような道を選ぶかを決める必要があります。自分の人生に関わることですから、冷静に長い目で見て判断しましょう。

妊娠していなくても陽性が出るケースもある

妊娠検査薬はhCGの分泌量のみを基準にして判定するものです。つまり、妊娠していなくてもなんらかの原因でhCGが分泌されていれば、それを感知して陽性反応が出ることもあります。実際に妊娠していなくても陽性反応が出てしまうケースとしては以下のものがあります。

不妊治療でhCG注射を打っている

hCGは、妊娠するうえで重要となる女性ホルモンの分泌を促す「黄体化ホルモン」と似た構造を持ちます。そのため、排卵障害や黄体機能不全の治療として用いられることがあります。不妊治療でhCG注射を打っている期間は、尿の中にhCGが排出され、妊娠検査薬で陽性反応が出ることがあります。

閉経期

閉経とは、生理が永久的に終わることを言い、多くの場合50歳前後で閉経を迎えます。閉経後はhCGと似た物質が分泌されるため、妊娠検査薬はhCGと間違って感知し、陽性反応が出ることがあります。

異常妊娠

受精卵が本来着床するべき子宮内膜に着床せず卵巣や卵管に着床してしまう「子宮外妊娠」などの異常妊娠でも陽性反応が出ることがあります。このような異常妊娠で妊娠の継続が難しい場合でも着床したことには変わりないのでhCGが分泌され、陽性となるのです。

hCG産生腫瘍

hCGは着床すると分泌されるホルモンですが、それだけでなく悪性腫瘍によっても分泌されることがあり、がんの腫瘍マーカーとしても利用されています。hCGが産生されるがんとしては、卵巣がんや胃がん、肺がんがあり、また、男性の精巣がんでもhCGが高い値を示します。

妊娠しているのに陰性が出るケースもある

閉経や異常妊娠のケースとは逆に、妊娠していても妊娠検査薬では陰性だった、というケースもあります。この場合の原因としては、以下のようなものが考えられます。

フライング検査

まず始めに考えられるのが、妊娠検査薬を使用した日が早すぎた、というケースです。妊娠検査薬が判定の基準とするhCGは、着床後すぐに尿に排出されるわけではありません。

数日かけて尿に出始め、徐々にその量が増えていきます。尿に出されたhCGが一般の妊娠検査薬での陽性の基準となる50mIU/mLに達していなければ、妊娠していても陰性となる可能性があります。

検査日の目安は、一般的な妊娠検査薬で「生理予定日から1週間後」、早期妊娠検査薬で「生理予定日当日」以降からです。フライング検査をして陰性だった場合は、目安の期間にもう一度試してみましょう。

生理予定日の勘違い

規定通り生理予定日の1週間後に検査をしたとしても、その生理予定日だと思っていた日を間違って計算していた場合、結果的にフライング検査となって正しい判定が出ないことがあります。妊活中の方は、生理がきた日や基礎体温などを記録する習慣をつけるとよいでしょう。

化学流産

着床が成立したにもかかわらず、早い段階で発育が止まってしまい妊娠が継続できなくなった状態を化学流産と言います。着床したためhCGが分泌され陽性反応が出ることがありますが、化学流産後はhCGの分泌量は減少します。一度陽性が出たのに数日後は陰性だった、という場合は化学流産の可能性があります。

尿の濃度が薄い

水分の摂り過ぎなどで尿が薄まると尿のhCGの濃度も薄まるため、妊娠検査薬が感知できず、妊娠していても陰性となることがあります。

妊娠検査薬のよくある質問

妊娠検査薬を正しく使い、正しく判断するためにも気になる疑問は解消しておきたいですね。妊娠検査薬のよくある質問をまとめています。

薬の服用・アルコール摂取は判定に影響する?

胃腸薬などの一般的な薬やアルコールが体内に入っていたとしても妊娠検査薬の判定には影響しません。ただし、不妊治療などでhCGホルモンの薬剤を投与している場合は、妊娠していなくても陽性となることがあります。妊娠検査薬を使用する前に医師に相談してください。

薄い判定は陽性?陰性?

色が薄くても判定窓にサインが出ている場合は妊娠の可能性があります。

色が薄くなる原因としては、規定よりも早期に検査を行ったり尿の濃度が薄かったりすることで尿の中のhCG濃度が判定基準を上回っていないことが考えられます。また、逆に適切な時期よりもだいぶ遅れて検査した場合でも、hCGの濃度が妊娠検査薬の感知範囲を上回ってサインが薄くなることがあります。

一度サインが出たのに消えてしまったときは陽性?陰性?

判定窓に一度サインのような線が出たのに判定時間になったら消えてしまった、というときは陰性と考えられます。これは、妊娠検査薬に尿が染み込んでいく過程で一時的に線が出たものと考えられます。

妊娠検査薬に使用期限はある?

妊娠検査薬には使用期限があります。昔買った妊娠検査薬を使うときは、外箱の使用期限を確認しましょう。

使用期限を過ぎた妊娠検査薬を使用して陽性が出たときは妊娠の可能性があると言えますが、陰性のときは正しい判定とは言い切れません。再度新しい妊娠検査薬で検査してみることをおすすめします。

妊娠検査薬は正しく使用することが大切

ドラッグストアなどで誰でも購入でき、自分自身で妊娠の可能性を確認できる妊娠検査薬は大変便利なアイテムです。ただ、使用法を間違うと正しく判定できないことがあります。早く結果を知りたいからと焦ってフライング検査をしてしまう気持ちもわかりますが、それで陰性だと、結局正しい検査日にもう一度検査し直すことに。せっかく高い正確さを持つ妊娠検査薬ですから、正しく使用して精度の高い結果を確認できるようにしましょう。

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