妊婦さんが知っておくべき出産手当金とは?対象者や金額など気になる疑問を徹底解説

働くママの味方で、産休・育休中にもらうことができる「出産手当金」について、ご存知でしょうか。今回、5つのテーマに分けて「出産手当金」について詳しく解説します。小難しい手当申請も、これを読めばきっと疑問なし!

対象となる人は?

出産手当金は、残念ながらすべての妊婦さんに支払われる手当ではなく、対象者が決まっています。下記では受け取れる人の2つの条件をご紹介します。<※本記事は2017年9月現在のものになります>

産休前、出産手当金を詳しく知りたい方へ。対象者や金額など、5大疑問を解決!

健康保険を自分で支払っている

条件の1つ目は、勤め先で加入している健康保険をご自身で支払っているということです。そのうえで、出産をきっかけに産休を取得していることが基本的な条件です。産休期間中、働いていたなら本来支払われるべき給料を、ある程度補填して妊婦さんの生活を助ける意味をもつのが「出産手当金」というわけです。

そのため、産休中、勤務先から通常の2/3以上の給料が出る場合は出産手当金はもらえないので注意してください。産休中の給料について、勤務先に確認してみるのが良いでしょう。退職した人でも条件を満たしていれば出産手当金を受け取ることができます。また、健康保険といっても国民健康保険加入者は対象外となります。

妊娠4ヶ月以上経っている

条件の2つ目は、妊娠期間が4ヶ月(85日)以上の方ということです。医師法で、1ヶ月は28日計算されるので、4ヶ月以上とは、3×28+1日=85日という計算になります。つまり、妊娠4ヶ月以上経ってから流産や死産、人工中絶などの理由で出産できなかった場合でも、手当を受けられるということです。できれば想定したくないケースですが、手当をもらえる機会があることを知識として持っておくとよいでしょう。

無事出産できた場合は、気にしなくても大丈夫な条件です。

パート、派遣の方も保険加入ならばOK

正社員の方だけでなく、パート・アルバイトや派遣社員の方も健康保険に加入していれば出産手当金を受け取ることができます。ただし、勤務先の健康保険に連続して1年以上加入している必要があります。

対象にならない人

先ほど対象となる人の条件を書きましたが、対象にならない人についてもまとめました。主に、下記2つに該当している方です。

国民健康保険に加入している

加入している健康保険組合が、国民健康保険の方は対象外となってしまいます。「出産手当金」は勤務先から産休を取得する場合の生活の補填が基本となりますので、自営業の方や専業主婦の方は手当を受け取ることができません。

夫の扶養に入っている

同上の理由で、健康保険が夫の扶養に入っているママも手当を受け取ることができません。

退職しても3つの条件がそろえばOK

妊娠・出産を機に退職した場合はどうなるのでしょうか。以下の3つの条件が揃えば、退職後の期間に対しても「出産手当金」を受け取れる場合があります。

退職日までの健康保険の加入期間(被保険者期間)が1年以上である

これまで長く保険に加入していたとしても、一度未加入期間をはさみ、かつ退職直前の保険加入期間が1年未満であれば対象外となってしまいます。

退職日が出産手当金の支給期間に入っている

支給期間は出産予定日の42日前からが対象です(詳しくはの項目を参照してください)。それ以前に退職日を迎える場合は、対象外ですのでご注意ください。

退職日に出勤していない

退職日に出勤すると、継続給付を受ける条件を満たさないということになってしまいます。上記2つの条件が満たされているならば、退職日はお休みしましょう。

手当の対象となる期間はいつ?

対象となる人がわかれば、次に気になるのは出産手当金の支給対象期間はいつからいつまでか?ということです。次では、対象となる日にちについてご紹介します。

産休前、出産手当金を詳しく知りたい方へ。対象者や金額など、5大疑問を解決!

産前42日・産後56日が一般的

出産手当金支給対象期間は、基本的に産休取得日数の考え方と同じです。出産前の産前休業日数と出産後の産後休業日数の合計となります。出産予定日を基準として、産前は42日(約6週間)、産後は56日(約8週間)の合計98日間と決まっています。98日が一般的ですが、まず、出産予定日通りに赤ちゃんが生まれるとは限りませんよね。そこで、日にちが変わる3つのケースを合わせてご紹介します。

出産日が予定日からズレた場合

早くなった場合と遅くなった場合、以下の通りに対象期間が変わってきます。

  • 出産日が早まった場合:対象日数=産前42日―早まった日数+産後56日
  • 出産日が遅れた場合:対象日数=産前42日+遅れた日数+産後56日

産後43日から56日の間に職場復帰した場合

この時、出産手当金の産後対象日数は56日よりは短くなり、産後~復職するまでの日数となります。産後42日は、労働基準法でママが仕事に復帰することが許されていません。もし43日以降に働きたいと思われるのなら、医師の許可が必要となりますので相談してみましょう。

双子など多胎児出産の場合

この場合、基本となる産前対象日数が98日と増え、合計の対象日数は154日となります。

参考元:全国健康保険協会 出産手当金について

金額はいくら?計算方法は?

続いて、支給額の計算についての疑問にお答えします。計算はややこしいけれど、目安を知っておいて、今後のお金の計画に役立てましょう。

基本の計算式

計算に必要な数字の項目は、以下のキーワード3つです。特に「平均値」がややこしいので、詳しく解説していきます。

キーワードは「平均値・2/3・手当対象日数」

まず平均値について。何の平均値かというと、「標準報酬月額」という給料の金額によって定められている一定の金額の平均値です。「標準報酬月額」は、都道府県ごとによって異なります。標準報酬月額を決める元になる報酬月額は、基本給だけではなく、残業代、ボーナス、各種手当、交通費なども含まれます。

おそらく、月ごとに「標準報酬月額」が変わってくるでしょう。手当対象期間の最初の月より前の12か月分の標準報酬月額を算出し、平均値を出す必要があります。

  • 出産手当金の合計金額=【各月の標準報酬月額(手当対象期間の月より前12か月分)の合計金額の平均値】÷30日×2/3×【手当対象日数】

計算式をまとめると、このようになります。標準報酬月額の2/3の金額が支給額になります。2/3とは、報酬に対する手当の割合を示します。最初2つのキーワードを用いて、1日あたりの支給額を計算し(30で割る)、最後に手当対象日数をかけると、合計金額が算出されます。

  • 都道府県別・標準報酬月額表


ちなみに、こちらは都道府県別で標準報酬月額が見られるサイトです。
ぜひ活用してみてください。

転職した場合、月額の計算は?

転職により入社期間が短く、手当対象期間以前の月が12ヶ月に満たない場合はどうなるでしょうか。2つの金額を比べて、少ない方の額が採用されます。

  1. 入社してからの期間の標準報酬月額の合計値の平均値(例えば、5か月分)
  2. 各健康保険組合が指定している額(例えば、協会けんぽ加入者は28万円)

全国健康保険協会に加入している方は、書類の提出も必要となります。

  • 書類フォーマット

詳しくは、ご自身が加入されている保険組合に、問い合わせしてみましょう。

参考元:全国健康保険協会 Q3

会社からもらうお金があるとどうなる?

出産手当金は、産休で会社からお金がもらえない状況を補填するための手当です。会社から支払がある場合はどうなるのでしょうか。2つのケースについて、お伝えします。

給与がある場合

有給を使った場合や会社の福利厚生として一部給料が出る場合は、会社からお金をもらうことになります。出産手当金を受け取れるケースは、出産手当金の額が高く、給与の額の方が低いときです。その差額を手当金として受け取ることができます。反対に、給与の額が高く、出産手当金の額が低いときは、出産手当金は支給されません。

傷病手当がある場合

傷病手当の支給期間と出産手当金の支給期間が被った場合は、出産手当金の支給が優先されて支払われます。傷病手当と比較する場合は、傷病手当金の額が高く、出産手当金の額の額が低いとなれば、その差額が出産手当金に上乗せされて支給されます。

申請方法は?

続いては、実際に申請する場合、具体的にどう行動したら良いかについて解説します。

産休前、出産手当金を詳しく知りたい方へ。対象者や金額など、5大疑問を解決!

申請時期は出産後です。1ヶ月ごとに、もしくは複数回に分けて申請を出すことができます。でも、その都度申請書類を作成する必要があるので、多くは手当対象期間である産後56日を過ぎてから1回にまとめて申請することが多いようです。

申請期限は、産休開始日の翌日から2年間です。2年を過ぎると、その超過日数が手当対象日数から引かれるのでご注意ください。うっかり忘れていて2年が過ぎた場合でも、受け取れる場合があるので、計算してみてください。

誰が申請するのが一般的?

基本的には働くママ本人が、健康保険組合に対して申請の手続きを行います。ただし、申請書の中で必要な会社の証明をもらう際に、そのまま会社の担当者の人が健康保険組合に提出してくれることもあるようです。一度、会社に確認してみるとよいでしょう。

申請先の機関

申請先は健康保険組合です。ご自身で申請される場合は、保険証の下部に記載されている保険者所在地に郵送すればOKです。

申請の流れ

  1. 申請書をもらう(産休前)
  2. 申請書の正式名称は「健康保険出産手当金支給申請書」です。勤務先でもらうことができます。

  3. 記入する
  4. 自分で記入する欄、医師の記入欄、会社の記入欄があります。出産時(入院するとき)に、病院に申請書を忘れずにもっていきましょう。出産後、勤務先に申請書を持っていき、記入欄に記載してもらいましょう。勤務先へは持参するべきか郵送でもよいか、会社によって異なるので事前に確認すると良いですね。

  5. 提出
  6. 全ての欄が間違いなく記載されたことを確認できたら、健康保険組合に提出します。

参考元:全国健康保険協会

書き方のノウハウ

フォーマット

加入している健康保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、インターネットからダウンロードすることができます。会社の保険組合が設立されている場合は、会社に問い合わせしましょう。

  • 協会けんぽ・健康保険出産手当金支給申請書

手当金が支給されるのはいつ?

申請方法までの流れは掴めましたでしょうか。最後の疑問として、支給される時期についてご案内します。

出産・書類提出後、早くて2週間

手当が実際に支給されるのは、出産後です。前項で記載した通り、出産後に書類を提出し、申請先で確認作業があった後で、ようやく振り込まれます。また、勤務先の記入欄は出勤状況や給与額といった細かい内容になるので、案外手間がかかります。そのため、記入してもらうのに時間を要する場合もあると心得ておくとよいでしょう。書類を提出してからだと、早くて2週間、遅くて2ヶ月後には振り込まれるようです。出産後から考えると、一般的に2ヶ月半~4ヶ月後に支給されるようです。

申請先で申請が受理されると、「出産手当金支給決定通知書」が届くので確認するようにしてください。

お金の管理は計画的に

最後に妊娠・出産に関わる費用・手当の一覧をご紹介します。差し引いて、どれだけのお金を用意しておけばよいか、今後の計画を立てる際の参考にしてみてくださいね。

出産にかかる費用一覧(名称:総額相場)

  • 妊婦検診費:5万~10万
  • 検診回数は約14回。国や市町村からの「妊婦検診費の助成」があります。

  • 出産準備費:10万~13万
  • マタニティー用品やベビー用品、入院のための備品など。お下がりやリサイクルを利用すれば、費用を抑えることができます。

  • 分娩入院費:約40万円
  • まとまったお金を用意する必要があります。健康保険に入っていれば42万円の給付がされるので、実質負担額は0~数万円程度です。

  • その他
  • 里帰り出産費、内祝い、行事にかかる費用など

手当申請の心配はなくして、快く出産を迎えよう!

今回は、働くママが対象となる「出産手当金」にスポットを当てました。妊娠中は体調の変化もあり、なにかと不安になるものです。特にお金関係は難しく感じる内容が多いので、体調が良い時など、時間に余裕をもって下調べしておくことをオススメします。1つずつ疑問を解消して、ストレスなく、出産の日を迎えられるといいですね。健やかな日々をお祈りしています。

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