子供を脱水症状から守る!5つの兆候と症状別対処法

実は大人より子供の方が脱水症状を発症しやすいこと、ご存知でしょうか?脱水症状の具体的な症状や対処法についてご紹介します。

脱水症状になる原因

脱水症状

脱水症状は、「脱水症」ともいい、体内の体液(=水とナトリウム)が欠乏した状態のことを指します。熱中症の症状のうちの1つです。どうして脱水症状になってしまうのか、まずはメカニズムについてご説明いたします。

脱水症状になる体のメカニズム

体内の体液の量は、腎臓によってコントロールされています。腎臓には尿の量やイオンバランスを調整する機能があり、この働きによって体内の体液は一定の量で保たれています。体液は体中を巡って、酸素や栄養を届け、老廃物や二酸化炭素を回収して排出する大事な役割を担っています。体液が一定に保たれているおかげで、体温や体調が安定しています。

では、「脱水状態」にはどのような場合でなってしまうでしょうか?

答えは、腎臓の調整機能がうまく働かない場合、つまり調整しきれないほど多くの水分が体外に排出される、もしくは、摂取量が少なすぎて水分量が一定に保てない状態になる場合です。多くの汗をかいた場合は、水に加えてナトリウムなどの電解質も体外へ排出されます。

水分が足りないと、体内の血の量が減ります。血液が少ないことにより、血圧低下を招き、脳や内臓への血のめぐりも悪くなります。ナトリウムなどが足りないと、手足のしびれや痙攣といった症状が現れます。頭痛や倦怠感といった体調不良は水分不足、しびれなどの身体的な不調はナトリウム不足だといえます。

子供が脱水症になりやすい理由

子供と大人では、体内の水分に関して異なる点が2つあります。

まず1つ目は、体内の水分量。小さい子供ほど体内水分量が高いです。体(体重)の何割が水分かというと、成人は約60%であるのに対して、子供は約70%、生まれたばかりの赤ちゃんは約80%です。成長するにつれて脂肪が増えるため、水分の割合が減少します。

2つ目は、細胞の外に含まれる水分の割合です。体内の水分は、細胞内と細胞外の両方に存在しますが、量が変化するのは細胞外に存在する水分です。細胞内の水分は、ほとんど変化せず一定に保たれています。細胞外の水分が、成人は約20%(細胞内が約40%)であるのに対し、子供は約40%(細胞内が約30%)もあります

よって、大人よりも子供の方が、変化しやすい水分の量が多く、体への影響も多いと言えます。

脱水症状のタイプと具体的な症状

次に、脱水症状の具体的な症状をご紹介します。子供の脱水症状を早めに認識するためにも、ご参考にしてください。

脱水症状か見分ける5つの兆候

脱水症状

先に述べた通り、子供は脱水症状になりやすいので特に注意が必要だといえるでしょう。早めに対処するためにも、脱水症状の兆候を5つご紹介します。子供が脱水を起こしているかどうかの判断基準にしてみてください。

[list class=”li-check li-mainbdr main-c-before”]

  • おしっこをする回数が少ない
  • 泣くときに涙が出ない
  • 唇や口の中が乾燥している
  • 手足が冷たい
  • 皮膚に張りがなく、しわができている(特におなか回り)
[/list]

脱水になると体内の水分が少なくなるため、上記のような症状が現れやすくなります。
いくつか該当する場合は、脱水症状である可能性があります。

また、他にも比較的試しやすい検証方法があります。指の爪を5秒押し、爪の色が戻るまでの時間を数えます。2秒以上かかる場合は、脱水症状である可能性があります

「かくれ脱水」という言葉があります。目に見える大きな変化がなくても、脱水症状が進んでいる場合のことを言います。また、子供は体の調整機能が未発達なので、体調が急変することもあります。食べる量が少なかったり、元気がなかったり、いつもと違うと感じることがあれば、すぐにこの5つのチェックをしてみるとよいでしょう。

症状は3種類

脱水症状は、水分とナトリウムの欠乏によって引き起こされる症状です。水分とナトリウムの欠乏している割合の違いから、脱水症状を3種類に分類することができます。種類によって症状や対処法が異なります。

高張性脱水

欠乏量が「水分>ナトリウム」の場合。

暑い夏シーズンやよく体を動かしたときなど発汗が多い場合に、水分が多く体外に排出されることから引き起こされる脱水症状です。体内の塩分濃度が高くなり、のどの渇きを感じ、尿の排出量減少、めまいや発熱などの症状がみられるでしょう。

体内の水分調整が難しい子供や高齢者が発症しやすい脱水症状の一つです。

中張性脱水

欠乏量が「水分≒ナトリウム」の場合。

体液量の調整機能をもつ腎臓に疾患がある場合、嘔吐や下痢によって体液の排出量が多い場合に引き起こされる脱水症状です。嘔吐、めまい、倦怠感などの症状がみられるでしょう。

低張性脱水

欠乏量が「水分<ナトリウム」の場合。

嘔吐や下痢の症状がひどく、ナトリウムなどの電解質の排出量が多い場合に引き起こされる脱水症状です。高張性脱水とは違ってのどの渇きはあまり感じることはなく、低血圧、しびれ、頭痛などの症状がみられるでしょう。

脱水症状だからといって、水やお茶などのナトリウムが含まれない飲み物で水分補給をすると、さらに症状が悪化する可能性があります。

具体的な体の不調

脱水症状

脱水症状だといえる具体的な体の不調は複数あります。脱水症状の具体的な体の不調の症状を重症度ごとに分類したのでご覧ください。

【軽度の症状】大量の汗、のどの渇き、軽い体のだるさ、尿量の減少
【中度の症状】発熱、頭痛、めまい、吐き気、全身のだるさ、血圧低下
【重度の症状】皮膚の乾燥、しびれ、痙攣、失神

脱水症状の重症度は、体重がどれだけ減少しているかが判断基準となっています。体重が1~2%減少している場合は軽度、3~9%は中度、10%以上は重度です。

アメリカの疾病管理予防センター(CDC)によると、子供の場合、脱水症状が軽度・中度であれば、病院で点滴を受けるよりも経口補水液による水分補給による処置の方が早く回復するといわれています。重度の場合は、早めの病院にかかるとよいでしょう。

子供が脱水症状になりやすいケース

脱水症状

さて、先にも述べましたが、子供は体液量調整機能・体温調節機能が未発達であること、体内に含まれる水分の割合が高いことといった子供特有の体の性質ゆえに、大人と比べて脱水症状になりやすいです。この項目では、子供が脱水症状にかかりやすい場面はどういうときか、いくつかのパターンをご紹介します。予め知識として持っておくことで、早めの対処につなげましょう。

たくさん汗をかいた時

これは一番イメージがつきやすい場面かもしれません。たくさん汗をかくと、それだけ水分とナトリウムなどの電解質が体外へ排出されます。気温が高い日、外で過ごす時間が長い日は、特に注意しましょう。外で過ごす場合は、帽子を被ったり、定期的に日陰で休むようにしたりして、体温が上がらないようにすると良いでしょう。

近年、夏になると真夏日や熱帯夜となる日が増えてきており、気温の変化が大きくなってきています。エアコンの使用により、室内と室外の気温差が大きいと感じることも少なくないでしょう。大人でも難しい体温調節。子供は、暑いか寒いか自分では気づかなかったり、うまく伝えられなかったりするので、こまめに様子をみてあげたり、体調を聞いてみてあげましょう。

下痢・嘔吐が多い日

下痢や嘔吐が多いときも、実は脱水症状になりやすいです。体外に水分が排出されるのは、汗や尿だけでなく、下痢・嘔吐も同じです。特に、子供は感染症にかかりやすく、下痢・嘔吐の症状を引き起こしやすい傾向があります。下痢・嘔吐の症状だけではなく、上記の「脱水症状の兆候リスト」を参考にしつつ、脱水も起こしていないか注意してあげましょう。

就寝時や入浴前後

日常生活の中で汗をかきやすい場面は、寝るときと入浴のときです。一晩寝ると、大人でもコップ一杯ほどの汗をかきます。寝る前や入浴前後に、水分補給をするとよいでしょう。子供は、夜だけではなくお昼寝のときも注意してあげましょう

脱水症状になってしまった時の対処法

脱水症状

最後に、脱水症状になってしまった場合の具体的な対処法をお伝えします。基本は【こまめな水分補給】です。

まずは水分・ナトリウム補給を

脱水症状になってしまう原因は、水分・ナトリウムの欠乏です。

もしかして脱水症状かもしれないと思われたなら、すぐに水分・ナトリウム補給をしましょう。重症化しないためにも、できるだけ早めに水分を与えることがポイントです。

脱水症状の種類(高張性・中張性・低張性)によって、水分補給が適しているのか、ナトリウム補給が適しているかが変わってきます。水分補給がより多く必要な高張性脱水の場合は、たくさん汗をかいた場面で起こりやすく、のどが渇いてきます。

ナトリウム補給がより多く必要な低張性脱水の場合は、のどの渇きがなく、下痢や嘔吐によって引き起こされる場面が多いです。両者の違いを意識しておくとよいでしょう。

子供が1日に必要な水分量は、体重1kgあたり60~120 mlです。年齢によって必要な水分量が異なり、必要量が多い順に、乳児(100~120ml)>幼児(80~100ml)>新生児・学童(60~80ml)となっています。年齢が低い順になっているわけではなく、乳児が最も水分が必要ですので、特に乳児のお子様がいる方はお気を付けください。

目安としては、体内の水分量を維持するために10kgの子供だと約1リットルの水分が必要です。ただし、大量に発汗・下痢・嘔吐がある場合は、これ以上の水分量が必要になってきます。

<参考資料:1日当たりの維持必要水分量・表

飲み物は経口補水液がオススメ

つづいて、水分・ナトリウム補給といっても具体的にどのような飲み物がオススメなのかご紹介いたします。

水分だけならば、水・白湯・麦茶がオススメです。ノンカフェインで子供が飲みやすい飲み物を選んであげましょう。

ナトリウム補給には、経口補水液が一番オススメです。
経口補水液OS-1

スポーツドリンクとの違いは?と疑問をもたれる方もいらっしゃるかと思いますので、スポーツドリンクと経口補水液の違いをご説明します。

実はスポーツドリンクは、塩分が低く、糖分が高い割合で作られています。普段使いや運動時にはスポーツドリンクが適していますが、脱水症状の場合にスポーツドリンクを摂取すると糖分の取りすぎになってしまいます。糖分の過剰摂取によって、吐き気や腹痛、意識障害といった症状がでる「ペットボトル症候群」になりかねないので、注意しましょう。ペットボトル症候群は、若年者がかかりやすいと言われています。

経口補水液は、ナトリウムなどの電解質と糖質のバランスを考えて作られており、脱水症状の方を対象として開発された飲み物です。OS-1シリーズは、世界保健機関(WHO)が提示している経口補水療法(ORT)およびアメリカ小児科学会(AAP)の指針に基づいて、組成が考えられているようです。

よって、脱水症状がある場合は、糖分過剰摂取とならないためにも経口補水液がオススメです。逆に、健康である場合に経口補水液を大量に飲むと塩分過剰摂取となってしまいます。脱水症状になる前、のどが渇く前にこまめに摂取するのなら、スポーツドリンクや水を飲むと脱水症状予防には効果的です。

経口補水液は、スーパーやコンビニでは販売されておらず、ドラッグストアなどに足を運ぶ必要があります。急に必要になったけれど家に経口補水液がなくて困った、という時には家で簡単に作ることもできますので、以下のレシピをご参考にしてみてください。

[list class=”list-raw”]
  • 水 500ml
  • 塩(食塩)1.5g
  • 砂糖 20g
[/list] この3つを混ぜるだけで経口補水液の完成です。塩と砂糖は、少量のお湯で先に溶かすとよく溶けます。また、レモン汁など果汁を加えると、子供も飲みやすくなります。

<参考URL:hatena&style

子供の症状別対処法

症状別の対処法をお伝えする前に、子供への飲ませ方について3つの基本のコツがあるので、ご紹介します。

  • 飲み物を冷やしすぎない
  • 冷たすぎる飲み物の摂取は、体に負担がかかります。脱水症状のときは、体力が低下していて、胃腸器官も弱っています。飲み物は常温もしくは少し冷えている程度にして、体温を下げるなら、氷を当てたり、風を送ったりといった対処をするとよいでしょう。

  • 脱水症状になって3~4時間の間は、できるだけ飲ませる
  • 不足している水分やミネラルを早めに補給することが、回復への近道です。飲めるのならば、経口補水液を飲めるだけ飲ませてあげましょう。ただし、一度に多くを飲ませてしまうと吐いてしまうこともあるので、その場合は、一口ずつ少量を何回も飲ませるようにしましょう。無理はさせず、多くの量を飲ませることがポイントです。

  • 3~4時間経過した後は、下痢・嘔吐・発汗の程度に合わせる
  • そのあとは、経口補水液を飲ませる量を減らして、水やお茶などの飲み物を主に飲ませましょう。尿の量が増えたり、乾燥が治まってきたりと、症状の回復がみられたら、何か食べさせて栄養補給をするとよいでしょう。

つぎに、この基本のコツに加えて、症状別に注意すべきポイントをお伝えします。

熱があるとき

熱が高温の場合や長く続いている場合は、汗を多くかくため脱水症状になりやすいです。脱水症状が悪化する前に予防の意味も込めて、こまめに水分補給させることが大事になってきます。10分おきに少量ずつ水を飲ませてあげるとよいでしょう。発汗を抑えるために、室温や湿度も調節しましょう。

吐き気があるとき

吐き気がある場合は、無理に飲ませようとしても吐いてしまいます。30分~1時間を目安に、症状が落ち着くまでは何も飲ませない方がよいでしょう。何か飲めるようになったら、白湯や経口補水液を少量ずつ飲ませてあげましょう。さらに症状が落ち着いてきたら、バナナやおかゆ、味の濃くないスープなどの刺激が少なく食べやすいものを食べさせて、水分・電解質を補給させましょう。

子供の体調は急変してしまうこともあります。口がひどく乾燥している、ぐったりしているといった様子が見られ、脱水症状がなかなか改善しない場合は、早めに病院にかかりましょう。また、痙攣や意識がはっきりしない症状が出る場合は、重度の脱水症状を引き起こしている可能性があるので、救急車を呼ぶことを検討されてもいいでしょう。

子供のサインを見逃さず、早めの対処を

脱水症状の具体的な症状、兆候、対処法などおわかりいただけたでしょうか。

脱水症状の対処法は、家で行うことができる内容が多いです。脱水症状の初期は兆候がわかりにくいかもしれませんが、子供は発熱時や下痢・嘔吐の症状がある時に脱水症状を引き起こしやすいことを頭の片隅に置いて、なにか様子おかしいと感じたら脱水症状も疑ってみてください。脱水症状の兆候を早めにキャッチできれば、早めに対処することができ、早めの回復につながることでしょう。

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