妊娠中の体重管理って本当に必要なの?増加による6つのリスクと管理をする4つのコツとは

妊娠して出産するまでに、体重は何キロ増えていいのでしょうか。病院での定期検診で体重管理の指導してくれる病院が増えてきています。では、なぜ妊娠中に体重が増え過ぎたらいけないのでしょうか。お母さんの身体と赤ちゃんにどんな影響があるのでしょうか。ここでは、妊娠中の体重管理の大切さと、なぜそれが必要なのかお話します。

妊娠中に体重管理が必要な理由

妊娠中に体重管理が必要な理由

妊娠したら病院での定期検診で、体重を申告し、増え過ぎだと医師から注意されることがあります。お腹に赤ちゃんがいるのだから栄養を摂らなければならない。と、たくさん食べて太ってしまう。それではお母さんにもお腹の赤ちゃんにもよくないのです。それはなぜでしょうか。知っておかなければならないことをお話します。

妊娠中に増える体重

妊娠して、出産するまでに増える体重の内訳は、

■赤ちゃん-平均3kg
■羊水-0.5kg
■胎盤-0.5kg
■血液、子宮、乳房増加分-3~4kg

■計-7~8kg

単純に増える分はこの体重です。しかし、妊婦さんによって体重の増減は違ってきます。つわりで食べ物が食べられない人は体重が減っていってしまう。逆に「食べつわり」という、食べないと気持ちが悪くなってしまうつわりのため、食べすぎてしまって体重が増えてしまう場合もあります。また、妊娠前の体型によって増えて良い重さが違ってきます。これについては、後ほどご説明します。

妊娠中に体重が増えすぎたらどんなリスクがあるの?

病院の検診の時に、体重が増えすぎないようにしましょう。そう言われるのはなぜでしょう。

妊娠中毒症を引き起こす

妊娠中、体重が増えすぎてしまうと、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)になる可能性が高くなります。症状として、高血圧になったり、むくみや尿に蛋白が出たりします。頭痛を引き起こす場合もあります。もし、この妊娠中毒症がひどくなってしまった場合、妊婦さんには脳出血や子癇(しかん)といわれるけいれん症状が出ることがあり、肝機能にも悪い影響を与えることがあります。

胎児への影響としては、

  • 胎児に栄養がうまくいき届かなくなる、胎児発育不全
  • 生まれる前に赤ちゃんが胎盤がはがれてしまう、常位胎盤早期剥離
  • 赤ちゃんが通常よりも体重が軽く生まれてくる、低体重児
  • 宮内で赤ちゃんが急に亡くなってしまう、子宮内胎児死亡

 
という怖い影響が出る場合があるのです。

赤ちゃんの成長によくない

妊娠中毒症は、胎盤の働きを弱めてしまいます。そうなると、胎児の発育が遅れてしまうことがあるので、妊娠中毒症にならないように努める必要があります。

妊娠糖尿病を引き起こす

元から肥満気味の場合や、体重が増加しすぎると妊娠糖尿病にかかりやすいと言われています。妊娠糖尿病になると、早産のリスクが出てくるほか高血圧症、胎児の発達の遅れが心配されます。ひどくなると、巨大児や流産、胎児脂肪と赤ちゃんに重大な影響を与えることになってしまいます。また、妊娠糖尿病の母体から生まれてきた赤ちゃんは、将来、肥満や糖尿病、高血圧になるリスクが高いことが指摘されています。

お産のときに微弱陣痛になることも

妊娠中に体重が増えすぎてしまうと、産道に脂肪がつき、お産の時の陣痛が弱くなりお産が進まない「微弱陣痛」になりやくなります。陣痛が長く続くと母体は疲れ、胎児には酸素が行き届かなくなる可能性が出てきます。一定の時間が過ぎても陣痛が強まらない場合は、子宮収縮薬を使用したり帝王切開のお産になります。

次のお産への影響

初めての妊娠で太り過ぎてしまうと、お産が終わっても余計な脂肪が残ったままになってしまいます。太りすぎでホルモンのバランスを崩す可能性があり、そうなると生理の再開が遅れたり排卵が不順になったりという影響が出てきます。産後、早く身体を元に戻しておかないと、次の妊娠にも影響を与えてしまうことになります。

腰痛防止の為

妊娠をすると、ホルモンの関係で骨盤まわりの靭帯が緩んできます。それに加え、体重が増加するため腰痛を感じやすくなります。体重が増えてしまったら脂肪がついて身体が重くなり、ますます腰痛がひどくなってしまいます。そうなると歩くのも辛くなり、部屋の中に座りきりになってしまい、ますます腰痛がひどくなるという悪循環に陥ってしまうのです。

自分の体形を知っておこう

自分の体形を知っておこう

体重の増加は、普段の体重を元に考えます。

妊娠前のBMIを知っておく

体重管理のためには、自分のBMIを知っておく必要があります。BMIとは、1994年にできた肥満判定の国際基準のことです。

BMIの求め方

  • 体重(kg)÷身長(m)×身長(m)=BMI

■例:体重50kgで身長155cmの人の場合
50(kg)÷1.55(m)×1.55(m)=20.81

これを元に妊娠中に何kgまで増えていいのか把握するのです。

参考:妊婦全期間を通しての推奨体重増加量|厚生労働省

妊娠中に何キロまで増えたらいいのか

妊娠前のBMIを元に出産まで何kg増えていいかを把握します。

■BMI 18.5以下の痩せ気味の人-10~12kgまで
■BMI 18.5~25までの標準体型の人-7~10kgまで
■BMI 25以上の太り気味の人-5~7kgまで(病院で相談するべき)

また、妊娠の期間を初期・中期・後期で分けてそれぞれの時期に増えてよい体重を管理することも大切になってきます。標準体重の人の場合、以下が目安となります。

■妊娠初期(0~3ヶ月)-2kg
■妊娠中期(4~7ヶ月)-5kg
■妊娠後期(8~臨月) -2kg

毎日の食事で気を付けるべきこと

毎日の食事で気を付けるべきこと

妊娠したら、これからの出産とお腹の中の赤ちゃんのために、しっかり栄養を摂らなければなりません。太り過ぎずに食事を摂るために必要なことを紹介します。

バランスのよい食事を摂る

太らないようにと、無理なダイエットやご飯などを抜く糖質ダイエットをするなどは厳禁です。バランス良く食事を摂ることが最も大事なこととなってきます。たんぱく質、ミネラル、カルシウム、食物繊維を摂るように心がけてください。

主菜として、肉、魚、卵、豆などの大豆製品、副菜として野菜をしっかり摂るようにしましょう。

薄味を心がけて塩分を控える

妊娠中は普段よりも塩分の摂取を減らすように心がけなければいけません。塩分の摂り過ぎは高血圧になる可能性があります。先述したように、妊娠中の高血圧は胎児に悪い影響を与えてしまうことがあるので塩分を控える必要があるのです。

妊婦の三大不足栄養素を摂るように心掛ける

妊婦の三大不足栄養素である3つの栄養素を積極的に摂るように心がけましょう。

葉酸

葉酸は新しい細胞が作られるために必要な栄養素です。妊娠初期に最も必要とされ、不足すると先天性異常や流産を引き起こすと言われています。葉酸が含まれる食品は、ほうれん草、小松菜、アスパラ、枝豆、おくら、モロヘイヤ、アボガド、ブロッコリー、わかめ、さつまいも、いちご等があります。

また、加工食品でも葉酸が入っているものがあり、野菜ジュースに葉酸入りのものがあるので手軽に摂取することができます。葉酸はサプリメントから摂ることもできますので、病院で相談してみるのもいいのではないでしょうか。

鉄分

妊娠中には検診の時に貧血の検査をします。その時に鉄分が不足していると言われたという妊婦さんは多いのではないでしょうか。妊婦さんの3~4割は貧血になると言われているほど、妊婦さんは鉄分不足になりやすいのです。なぜなら、胎児の成長に血液が不可欠なのですが、その補充が母体から追いつかないため鉄分が足りなくなっていくのです。

鉄分が不足すると、立ちくらみからの転倒が心配ですし、いらいらや頭痛の原因にもなります。胎児が低体重になるリスクも出てくるので、積極的に鉄分を摂るようにしましょう。特に妊娠中期から後期には普段の倍の量を摂取するよう心がけましょう。母乳は血液からできるので、出産後も鉄分を摂る必要があるのです。

鉄分を多く含む食品は、ひじき、焼き海苔、ごま、黒砂糖、レバー、しじみ、うなぎ等です。

カルシウム

赤ちゃんの丈夫な骨を作るため、カルシウムを積極的に摂る必要があります。母体から胎児へカルシウムが供給されるため、補充していかないと、母体の骨が弱くなったり虫歯になりやすくなるというリスクがあります。

カルシウムが多く含まれる食品は、牛乳、ヨーグルト、チーズ、油揚げ、木綿豆腐、モロヘイヤ、ケール、ブロッコリー等。

参考元:妊産婦のための食生活指針|厚生労働省

体重管理のコツ

体重管理のコツ

妊娠中の体重を管理するために有効な方法やコツはあるのでしょうか。管理のためには、先日した自分のBMIから増えていい体重を知ること。(この増加体重はかかりつけの病院で相談して、指示を仰いでください。)そして、増えすぎないようにするためには毎日の地道な努力と意識が必要になります。

毎日体重を測る

妊婦でなくても、体重を管理するためには毎日体重計に乗ることが大切だと言われています。毎日同じ時間に体重を測ることで、増えすぎた時に対処することができます。

食べたものを記録する

妊婦の三大不足栄養素を摂ることを意識するためにも、毎日の食事、食べたものを記録する。体重が増えすぎた日の記録を見直すなど、普段から体重管理の役に立ちます。

食事を小分けにして食べる

妊娠中はつわりであまり食べることが出来なかったり、お腹が大きくなると胃が圧迫されて少しずつしか食べられなくなります。あまり食べられないところに無理に食べようとすると、吐いてしまったり気分が悪くなることがあります。朝、昼、晩の3食を、量は変えず6回に分けて食べる方法が体重を管理するためにも健康を維持するためにもよいのでオススメです。食事の時は、食べ物をよく噛んで食べると満足感を得られやすく、太りにくくなります。

適度な運動をする

無理のない運動は健康のためにも必要です。妊婦さんにオススメの運動をいくつかご紹介します。

ウォーキング

天気の良い日は散歩に出かけることは気分転換のためにもよいですね。妊婦さんが日光にあたることで、胎児の骨の形成によいと言われています。下半身の筋肉を鍛えておくことはお産のときにもいいと言われています。血のめぐりがよくなり、妊娠中毒症の予防にもなるのでオススメです。

雨の日などは足元が滑りやすいので、やめておきましょう。また、暑すぎる日は熱中症の危険があるので夕方や早朝など、気温が高くない時間に歩くようにしましょう。

スイミング

妊娠するとだんだん身体が重くなってきて、動くのが大変になってきます。しかし、水の中だと浮力があり、動きやすいのでスイミングもオススメです。水の中を歩く、水中ウォーキングもいいですね。スポーツジムの中には、マタニティスイミングのクラスがあるところもあるので、興味があったら始めてみてもいいでしょう。

ヨガ

マタニティヨガは、妊娠初期から後期まで長く続けられます。無理のないプログラムで身体をほぐし、リラックスできるところがオススメです。産後もヨガをやっていると、身体の回復が早いという点もおすすめポイントです。家の中でもできるので、ストレス発散のためにも始めてみてはいかがでしょう。

普段から座るときはあぐらをかくようにすると、股間の筋肉が柔らかくなって骨盤を広げることになります。安産対策になるので、オススメします。運動する時は、お腹が張ってきたらすぐにやめるようにしましょう。また、始めるのは安定期に入ってからにする、運動する前に医師に相談してから等、注意してください。また、出かける時は、健康保険証、母子手帳を忘れないようにしましょう。

体重があまり増えない場合はどうなのか

体重があまり増えない場合はどうなのか

妊婦さんのなかには、つわりがひどくて食事をすることが辛い、という妊婦さんもいらっしゃるでしょう。つわりは個人差があって、初期だけで治まる人もいれば、出産の直前まで続く人もいます。体重が増えてしまって悩んでいる人もいれば、体重が増えなくて悩んでいる人もいるのです。

BMI別に見た妊娠中に増えてよい増加体重

痩せ型の人は10kg、標準の人は7~8kg、太り気味の人は5kgほどと先述しました。

これはあくまでも目安です。妊娠中につわりがひどくて体重が増えない人がいてもおかしくはありません。検診の時に胎児が順調に育っていれば何ら問題はないのです。

体重が増えない時に摂っておきたいもの

体重が増えない時にとっておきたい栄養は、前述した三大不足栄養素の、葉酸・鉄分・カルシウムの他に、良質なたんぱく質が挙げられます。自分の体重が増えなくても、胎児の体重を増やすために、しっかりと栄養を摂る必要があります。肉類(特に鶏肉)、魚類、卵、大豆製品には良質なたんぱく質が含まれていますので、積極的に摂るようにしましょう。

つわりの時は食べられるものを少量ずつ

体重が増えない人の中には、つわりで食べ物の匂いを嗅ぐと吐いてしまう、という人が多いでしょう。妊娠初期の頃、胎児はお母さんの胎盤が完成するまでの間、卵黄嚢(らんおうのう)というところから栄養をもらいます。

胎盤は妊娠13週目くらいに完成します。胎盤ができたらお母さんの胎盤が赤ちゃんに栄養を送ります。卵黄嚢には栄養があり、もしお母さんが妊娠初期につわりで食べられなくても大丈夫なようになっています。

ですから、つわりで食べられない、赤ちゃんに栄養がいかないのではないかと心配しすぎなくても大丈夫です。つわりの時は、食べられるものを少しずつ食べればいいのです。急にたくさん食べてしまうと、胃がびっくりしてしまい、胃酸がたくさん分泌され胃の調子が悪くなることがあります。そうならないために、消化の良いものを少量ずつ食べるようにしましょう。

また、つわりで吐くことを繰り返していると、知らないうちに脱水症状になってしまうことがあります。意識して水分を積極的に摂るようにしましょう。喉が渇いていなくても少しずつ飲むようにしましょう。

妊婦健診の時に相談しましょう

妊婦健診の時に相談しましょう

妊婦なのに体重が増えないとなると、赤ちゃんは大丈夫なのだろうか、栄養はいっているのだろうか、と心配になるでしょう。一人で悩んでいても身体によくありませんよ。大切なのは、病院でしっかり診察してもらうことです。

自分の体重が増えていない、または少ししか増えていないということを診察の時に伝えて診ていただきましょう。胎児の体重が増えていなければ、病院で指導などがあります。赤ちゃんの体重が増えていれば大丈夫。出来る限り栄養を摂っていきましょう。

神経質になりすぎず、楽しみながら体重管理をしましょう

妊娠中は体重管理が大切だとお話してきましたが、それは赤ちゃんとご自身のためなのです。お産の時に、太り過ぎてしまうと赤ちゃんにも苦しい思いをさせてしまいます。そうならないように、普段から自身の体重と食事に気をつけていきましょう。あまり神経質になりすぎて、イライラしてしまうのは精神的によくありません。気分転換に近所を散歩するなどして、上手に体重管理ができるといいですね。

0