【医師監修】妊娠中のカフェイン摂取、なぜだめ?妊婦さんや赤ちゃんに与える影響

普段の生活の中で、私たちはよくカフェインを含む食品を口にしています。しかし、過剰摂取による影響は意外と知られていません。特に妊婦さんは要注意です。1日に摂取できるしてよ量を知って、お母さんと赤ちゃんの健康に気を配っていきましょう。

カフェインとは?

私たちが日頃口にしている飲み物や食べ物の中に、カフェインが含まれているものはどれだけあるでしょうか。
身近なものだけでも、コーヒー、緑茶、紅茶、栄養ドリンク、チョコレート等、種類豊富に溢れています。なかでも、コーヒー等の嗜好品は、一日に何回も口にする人も多いことでしょう。知らず知らずのうちに、摂取しているカフェインですが、その作用については意外と知られていません。
ここではカフェインの実態を探ります。

カフェインとは

カフェインとは、コーヒー、緑茶、ウーロン茶、紅茶、コーラ等の飲料やチョコレート等に含まれる、アルカロイドという化合物です。

その含有量は、コーヒー100mlあたり、約60mgになります。カフェインと言えばコーヒーのイメージが強いと思われますが、さらに多く含む飲み物があり、それが「玉露」です。含有量は100mlあたり約160mgと、コーヒーの約2.5倍にもなります。世間一般には「寝る前にコーヒーを飲んだら寝られなくなる」「妊娠中にコーヒーの飲み過ぎはよ
くない」等と言われていますが、玉露を好んで飲む人の方が、よりその摂取量に気を付けなければならないのです。
また、総合感冒薬や鎮痛剤等、医薬品にもカフェインが含まれているものもあります。

カフェインの効果

人々がカフェインに魅了される理由について迫りましょう。
カフェインがもたらすメリットは豊富にあります。

覚醒作用・血管拡張作用

  • 気分が高揚し、眠気や疲労を取り除く。作業効率をアップさせる。
  • 運動機能や呼吸機能を高める。
  • 低血圧を改善する

交感神経刺激(基礎代謝促進)

  • 脂肪が燃焼、ダイエット効果がある。
  • 片頭痛や二日酔いを改善する

胃酸分泌促進作用

  • 胃液を多く分泌し、胃の中の食べ物の消化活動を助ける。

利尿作用

  • 摂取後の3~5時間は腎臓を刺激し、尿の出を良くする。

沈痛作用

  • 痛みを和らげる。(そのため頭痛薬や総合感冒薬等の医薬品にも使用される)

このように、カフェインには様々な効果があります。眠気を覚ましたい時やリラックスしたい時には、コーヒーやお茶を飲んだりしますよね。また、栄養ドリンクでやる気がみなぎるのはカフェインのおかげです。その他にもカフェインは私たちの体調を整える効果も持っているのです。

カフェインの副作用

一方で、一般的には「カフェインの摂り過ぎは良くない」とも言われています。過剰摂取により私たちの体がどのような反応を示すのか等あまり知られていません。
こちらではカフェインがもたらすデメリット、そして、その原因や対処法等もあわせて見ていきます。

覚醒作用による興奮状態が続く

  • 睡眠の質の低下につながる。→寝る前3時間内の摂取は控えるのが良いでしょう。
  • ソワソワしたりや吐き気が出ることもある。
  • 頭痛や集中力の欠如、疲労感、肩こりや腰痛の悪化を起こすこともある。

交感神経を刺激し続けることによる自律神経の乱れ

  • 体力、免疫力を低下させる。
  • だるさ、気分の落ち込みにつながる。

胃酸の過剰分泌

  • 胃腸や内臓を弱らせる。→空腹時の摂取は特に注意する。
  • 胃痛や嘔吐をひき起こす。

貧血

  • 鉄分や亜鉛等のミネラルの吸収を阻害する。→普段から貧血がある場合は注意する。

これらはカフェインの過剰摂取による症状です。1日あたり300~400mg程度であれば体に害を及ぼすことはありませんが、1日にコーヒーを何杯も飲む人や、日頃から玉露等の緑茶を飲む習慣がある人等は要注意です。
その量が30分以内500mgを超えると、中毒症状が出やすいことが分かっています。状の出やすさには個人差がありますが、カフェインには依存性があるので、つい摂り過ぎてしまう人も多いようです。

妊娠中にカフェインを摂取しない方がいい理由

カフェインの過剰摂取は良くない事は理解頂けたかと思いますが、妊娠中、授乳中の女性では、さらに注意が必要になります。
ここではその影響について詳しく見ていきましょう。

妊婦さんに与える影響

流産や早産のリスクが高まる可能性がある
カフェインを大量に接種することにより、流産の頻度が高まるという報告もあります。これは、カフェインが血管を収縮させる作用があり、胎盤への血流量が減るためと考えられています。

カルシウム不足、貧血になりやすい
妊娠中は血流量が増えることで、貧血になりやすい時期です。また、お母さんから赤ちゃんへ栄養分が運ばれていくため、カルシウムや亜鉛等の栄養素が不足しがちとなります。
一方で、カフェインにはタンニンという成分が含まれており、過剰摂取すると、カルシウムや鉄分の排出を促してしまいます。つまり、栄養素の不足や貧血を起こしやすい妊娠中に、カフェインを過剰摂取することで、それを加速させてしまうのです。

胃もたれ
赤ちゃんが急激に成長する妊娠の中期から後期にかけて、増大した子宮に胃が圧迫されて胃液が逆流、胃もたれに悩まされる妊婦さんも多いようです。そのような時にカフェインを摂取すると、胃への負担が増え、胃もたれが悪化する可能性があります。

妊娠中の赤ちゃんに与える影響

カフェインが体内に蓄積する
カフェインはお母さんの胎盤を通過して、お腹の中の赤ちゃんにも移行します。大人ではカフェインを肝臓で代謝することができますが、未熟な赤ちゃんの肝臓は十分に処理することができません。お母さんがカフェインを大量に摂取すると、赤ちゃんの体内に蓄積されてしまうのです。

母乳から赤ちゃんに与える影響

母乳から伝わったカフェインで、赤ちゃんが興奮状態になる
お母さんがカフェインを摂取すると母乳を通して赤ちゃんの口に入ります。母乳に含まれるカフェインの量は摂取した量の0.5~1%程度と言われており、少なく感じるかもしれません。しかし、大人の17分の1程度の体重しかない赤ちゃんにとっては、少量であっても影響は大きく、体内でカフェインを処理する機能も未熟なため、蓄積されやすくなります。
カフェインによる症状としては、赤ちゃんが興奮しやすく落ち着きがない、寝てくれない、泣き止まないなどです。

控えた方が良い期間は?

以上のことから、カフェインの摂取を控えた方が良い期間が自ずと見えてきましたね。カフェインは、お腹にいる赤ちゃんに移行するだけでなく、授乳中も母乳を通じて赤ちゃんの口に入ります。卒乳の時期まで、カフェインの摂り過ぎに注意しましょう。

妊婦さんの1日の摂取量の上限はどのくらい?

いくらカフェインの摂取を控えた方がよいとは言っても、コーヒーや紅茶が好きな方や、リラックスするために飲むことを習慣にしているような方には耳の痛い話です。無理に我慢してストレスを溜めてしまうのは、お腹の赤ちゃんにとっても良いこととは言えません。
そこで、妊婦さんの1日に摂取してよいカフェインの量について検証していきます。

1日に摂取していいカフェインの目安量

「1日にこれだけの量までなら摂取しても大丈夫」等という明確な定めはありません。体格や、体質などによりカフェインの影響力も個人個人で異なるためです。
しかし、基準がなければ調整ることもできませんから、その「目安」となる量が設定されています。

具体的には以下の通りです。

  • 世界保健機関(WHO):1日あたり300mg、コーヒーなら3~4杯までに制限
  • 英国食品基準庁:1日あたり200mgになるように制限
  • カナダ保健省:1日あたり最大300mg以内に制限
  • オーストリア保健・食品安全局:1日あたり300mgを超えないように制限
  • 韓国食品医薬品安全庁(KFDA):1日あたり300mgに制限

国や機関によって多少の違いはありますが、おおむね1日あたりに摂取してもよいカフェインの上限は200~300mgといったところでしょう。それはコーヒーやお茶であれば1日に2~3杯が目安になります。

飲み物・食べ物別!1杯あたりのカフェイン含有量

それでは、どのような食品にどれだけのカフェインが含まれているのか、飲み物と食べ物に分けて見ていきましょう。

飲み物

  • 玉露:150mlあたり180mg
  • コーヒー(ドリップ):150mlあたり100mg
  • コーヒー(インスタント):150mlあたり65mg
  • ココア :150mlあたり50mg
  • 栄養ドリンク(カフェイン入):100mlあたり50mg
  • コーラ:350mlあたり34mg
  • 紅茶:150mlあたり30mg
  • 緑茶:150mlあたり30mg

コーヒーや玉露の摂取を控え、できるだけカフェインの含有量の少ないココアや紅茶に変えてみるのも良いかもしれません。

食べ物

意外に知られていないのが、食品に含まれるカフェインです。知らず知らずのうちにカフェインを摂り過ぎていた、ということもあり得ます。

  • チョコレート:板チョコ1枚(約70mg)あたり17~19mg
  • 眠気覚ましのガム:板ガム1包み(9枚)あたり100mg、1枚あたり10~11mg
  • コーヒー味のアイスやヨーグルト等:1カップあたり30~40mg

その他、チョコレート味、カカオ味のお菓子やシリアル等にも多く含まれているようです。頭痛薬等の錠剤に含まれるカフェインにも注意が必要で、多いものでは、その薬の約40%程度などとも言われています。これは、頭痛を和らげる成分であるアスピリンやアセトアミノフェン等が、カフェインによってその効果を増すためです。
カフェインの過剰摂取を防ぐためには、カフェインの含まれている食品その含有量を知っておくことが大切ですね。

おすすめ!妊婦さんでも安心な飲み物

最近では、ノンカフェインやカフェインレスなどと称した、商品も多数出回るようになりました。そういった商品についているキーワードを基に比較してみましょう。

ノンカフェイン・カフェインレス・デカフェの違いとは?

ノンカフェイン
文字通り「カフェインが含まれていない」ことを指しています。カフェインレスやデカフェには多少なりともカフェインが含まれているので、それらと区別をしているのです。

カフェインレス
これは、「カフェインが少し含まれている」という意味です。
デカフェとの違いは、その量ではなく、カフェインを人工的に取り除いたかどうかという点にあります。

デカフェ
もともとカフェインが含まれている飲食物から、カフェインを取り除いたもの。また、追加されるはずのカフェインを追加しなかったもの。
コーヒーや紅茶等の味や風味が好きで飲んでいるものの、カフェインは摂取したくない、という人にはお薦めです。しかし、カフェインはほとんど取り除かれているので風味が少し落かれているのでちるだけでなく、眠気覚まし等の効能は期待できません。

コーヒー好きな妊婦さんにもおすすめ!カフェインレスコーヒーを扱っているカフェ5選

それでは、私たちの身近にあって、美味しいカフェインレスコーヒーが飲めるお店を紹介します。妊婦であっても、おしゃれに気軽にコーヒーを楽しみたいですよね。

世の中全体が健康志向となり、その流れに合わせて多くの店がカフェインレスコーヒーを取り扱うようになってきました。
賢く選んでコーヒーを楽しむようにしましょう。

カフェインの含有量を知って、賢く制限しよう

コーヒーや紅茶に含まれているカフェインは、リラックス効果があるだけでなく、私たちの体を整えたり、病気を予防してくれたり、と素晴らしい働きをしてくれています。
しかし、それも度が過ぎると反対に体にとって悪い影響が出てしまいます。妊婦さんや授乳婦さんは、過剰摂取で赤ちゃんにも影響が出ますので注意が必要です。

大切なのは、どの食品にどれぐらいのカフェインが含まれているのか、大まかにでも把握しておくことです。そうすれば、普段飲んでいるコーヒーや紅茶を何か他の飲み物に替えたり、カフェインレスのものを選んだり、と工夫することもできますね。

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